EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第三話 Rainの中で一緒に

士道がドラゴナイトハンターZガシャットを受け取った日の夜。

 

士道、折紙、栞は恭太郎のゲーム病が悪化した時にすぐに動けるように、CRに泊まる事になった。

 

十香は事情を知った琴里や令音が面倒を見てくれている。途中経過はエレナが見てくれている。

 

すると、恭太郎のゲーム病が急に進行。大きなドラゴン型ゲーマが怪物になったようなものが現れた。

 

それが、恭太郎に感染したハンターゲーマのデータを取り込んだバグスターウィルスだ。

 

 

士道達はすぐにレベル1に変身して、ゲームエリアをステージセレクトで現実から切り離す。

 

ハンターゲーマは雄叫びを上げて士道達に襲いかかる。

三人はジャンプしてかわし、士道が作り出したチョコブロックを足場にしてジャンプ。

 

上空で三人が攻撃していく。ゲーマは飛びながら回避し、炎を吐きながら攻撃していく。

 

 

「空を飛んでいるから、中々攻撃が当たらないね・・・」

 

「狂三が持っている、ジェットコンバットが欲しいぜ」

 

「無い物ねだりをしてる暇はない・・・!」

 

「呼びました?」

「「「えっ!?」」」

 

後ろから、レベル3のスナイプに変身している狂三が声をかけた。

 

「いつの間に?」

「ふふ、いつの間にでしょう?さて、あのドラゴンさんを倒せば良いのでしょう?お任せくださいな」

 

狂三は空を飛びながらガトリング砲を連射して、ゲーマを攻撃していく。

 

細かく飛び回る狂三に対応が追い付かず、ゲーマはダメージをどんどん蓄積させていく。

 

そして、狂三が加速した勢いを乗せたキックでゲーマを地面に落とす。

 

「今ですわ!」

「サンキュー!」

 

 

士道、折紙、栞はレベル2になり士道と折紙はガシャコンウェポンにガシャットを入れる。

 

そして、バイクになった栞に乗り、そのまま運転してゲーマに突っ込む。

 

《キメワザ!》

《MIGHTY!》《TADORU!》

 

《CRITICAL FINISH!!》

 

折紙が冷気を飛ばしてゲーマを凍りつかせ、凍ったゲーマに栞と一緒に突進し一閃!

 

遂にゲーマを倒し爆散したゲーマのデータが現れる。ドラゴナイトハンターZのガシャットを掲げてデータを回収した。

 

それによりドラゴナイトハンターZのガシャットは完成し、ドラゴンの絵が追加された。

 

「よし・・・!」

「完成した!」

 

「やった!」

「ですが・・・日向審議官の問題は解決していないでしょうね」

 

「狂三?」

「ドラゴナイトハンターZのバグスターウィルスに感染しているならば、グラファイトを倒さないと終わらないでしょう」

 

狂三の言うとおり、恭太郎のゲーム病は消えていなかった。しかし、ゲーマのデータが消えた分、症状は軽くなっていたが危ないことには変わりない。

 

 

今も苦しむ恭太郎を見た士道は、一人CRから立ち去ろうとする。

 

「・・・・・・俺がグラファイトを探す。そして倒す」

 

「士道・・・?」

「恭太郎先生は俺を救ってくれた。今度は俺が救う番だ!」

 

士道は一人でCRを出る。自分が救うという事で頭が一杯である士道は、栞達に頼る事を失念してしまっていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

外に出た士道は、グラファイトを探すが見つからない。

 

外は相変わらずの雨が降っている。

 

今現在、天宮市は四糸乃とASTの戦闘で破壊された後は、AST側の"顕現装置"で生活に支障がない位には修復された為、少しずつだが人も外に出ている。

 

 

士道がグラファイトを探し続けていると・・・。

 

 

「・・・・・・ううっ」

 

可愛い意匠に身を包んだ小柄な少女、この前出会った精霊"ハーミット"の姿があった。

 

ハーミットは今にも泣き出しそうに、目に涙を溜めながら地面に両膝をつき、商店街で何かを探している様子だった。

 

士道はすぐハーミットの後ろへと行き、頭が濡れないように傘を持った腕を伸ばす。

 

霊装を纏っている為、濡れる事は無いが士道は傘を差し出す。

 

 

「大丈夫か、風邪引くぞ?」

 

士道に気づいたハーミットは、慌ててその場を離れようと立ち上がって士道に背中を向ける。

 

士道はハーミットに手を伸ばし、制止を呼びかける。

 

「ま、待て!俺だ、神社で出会った時の!君を驚かせに来たわけじゃない!」

 

そこで、士道はハーミットの手にウサギのパペットが無いことに気付いた。

 

 

「・・・君、あのウサギのパペットはどうしたんだ?」

 

「・・・!」

 

ハーミットは美しい蒼玉を思わせる瞳を大きく見開く。パペットが左手に無いことを突かれて驚いたのだ。

 

ハーミットは士道のところまで走り、士道の制服を掴む。

 

「・・・まさか、無くしたパペットを探していたのか?」

 

士道の言葉にハーミットは首を縦に振る。今にも泣き出しそうなハーミットを見て士道は言う。

 

「そうか・・・じゃあ、パペットを一緒に探そう!」

 

「え・・・!?」

「一人で探すより、俺と君で探した方が早く見つかると思ってさ」

 

士道はグラファイトを探しだし、恭太郎を治療しないといけない。しかし、泣いているハーミットを放っておく事も出来ない。

 

 

・・・そして士道は、琴里達フラクシナスのメンバーに頼る事も失念してしまっていた。

 

今のハーミットは静粛現界である為、フラクシナスでもハーミットの出現を感知していない。

 

士道が今連絡をしない為、ラタトスク側も何も知らない・出来ない状態なのだ。

 

 

「は、はい・・・ありがとう・・・・・・ございます」

 

「あ・・・そうだ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は士道。五河 士道っていうんだ。君の名前を聞いていいか?」

 

「わ、私は・・・四糸乃(よしの)・・・・・・です。パペットは、よしのんって・・・いうんです・・・」

 

「四糸乃、か。かわいい名前だな」

「っ!?・・・うぅ」

 

名前を誉められて、照れるハーミット・・・四糸乃。

 

士道と四糸乃は一緒に、よしのんを探すことになった。更にグラファイトも同時に探す事になるが、士道はその両方を一人で成そうとしていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あれから、よしのんもグラファイトも見つからず。途中で休憩のため、二人は公園に向かった。

 

屋根付きのベンチに並んで座る。四糸乃は士道が買った暖かい紅茶を少しずつ飲んでいる。

 

 

「なぁ四糸乃、お前にとって、よしのんってどんな存在なんだ?」

 

気になった事を訪ねる士道。四糸乃は少しずつだが、士道に見えるようにして答える。

 

「・・・・・・よしのんは、私の、ヒーロー・・・です」

 

「ヒーロー・・・」

 

 

四糸乃は、よしのんについて話し始める。

 

「よしのんは・・・私の、理想・・・・・・です。憧れの自分、です・・・。私、みたいに弱くないし、うじうじしない、強くて格好いい・・・です」

 

士道は四糸乃の話を聞いて、思ったことをそのまま口にした。

 

「そういうもんなのか?俺から言わせてもらえば、四糸乃の方が好きだけどな。とても可愛いし」

 

「・・・っ!!」

 

士道の言葉に四糸乃は顔が真っ赤になった。そして、四糸乃は恥ずかしくなったのか、霊装のフードを深く被り顔を隠す。

 

「あれ?四糸乃、俺なんかおかしいこと言ったか?」

 

 

「そんなこと、言われたの・・・初めて・・・・・・だから・・・・・・」

 

「そ、そうか・・・。四糸乃。俺はもう一つ聞きたいことがあるんだ」

 

「・・・?」

 

「君は今までに、他の人間から攻撃を受けていた。でも一切反撃しないで逃げ回っている・・・そう聞いたんだ。それはどうしてなんだ?」

 

士道は琴里から、「ASTから攻撃を受けても、一切反撃すること無く逃げ回るだけ」と聞いてから気になっていた事を聞いたのだ。

 

 

士道が問うと、四糸乃はスカートの部分を強く握りしめ、消え入りそうな声を出す。

 

「私は、痛いのが、嫌いです・・・・・・。怖いのも・・・・・・嫌いです。

きっと、あの人たちも・・・痛いのや、怖いのは・・・嫌だと思います。だから、私は・・・・・・」

 

「なっ・・・!?」

 

士道は四糸乃の言葉を聞いて、大きな衝撃を受けた。

 

 

"相手も攻撃されたら痛い思いをして嫌だろうから、反撃しない"

 

四糸乃が言っている事はそういう事だ。四糸乃は涙を啜るようにして続ける。

 

「でも・・・私は、弱くて・・・・・・泣き虫、だから・・・一人だと、ダメです。

怖くて、どうしようもなくなって・・・・・・頭の中がぐちゃぐちゃになって・・・・・・。きっと、みんなに・・・・・・ひどいことを・・・・・・・・・」

 

 

士道は四糸乃の言葉を、拳に爪跡が出来るほど拳に力を入れて聞いていた、そして理解した。

 

四糸乃は誰よりも優しく、強い心の持ち主だと。

 

 

何も悪いことをしていないのに悪と決めつけられて攻撃される。

 

そんな理不尽な事があっても、よしのんが四糸乃の心の支えになっていたから歪むこと無く、本来の優しさと強さを保てていたのだろう。

 

士道は四糸乃の頭を優しく撫でた。

 

 

「よく頑張ったな、四糸乃」

 

「・・・・・・ふぇ?あ、あの・・・・・・」

 

「俺が必ずよしのんを探し出す!そして四糸乃にもう一度合わせる!

 

それに、四糸乃にひどい事をするやつからも、守ってみせる!つまり、俺が四糸乃のヒーローになるって事さ」

 

四糸乃の話を聞いた士道は決心した。俺が必ず救う・・・と。

 

 

「俺は必ず、君の笑顔を取り戻す。だから大丈夫。平気、へっちゃらだ」

 

真剣な表情で、でも優しい声で四糸乃に言う。

 

四糸乃は、その言葉と表情に嘘が無いことがわかり、嬉しさが込み上げてきた。それ顔が赤くなり、胸がドキドキする事を自覚した。

 

 

「あ・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・・」

 

赤くなった顔を隠すように俯きながらも、ちゃんとお礼を言う四糸乃。

士道はそんな四糸乃の頭をもう一度、優しく撫でた。

 

 

「さて、頑張ってよしのんを探そう!」

 

士道は立ち上がり、四糸乃の方を向いて手を差しのべた。

 

「ほら、一緒に行こうぜ」

 

四糸乃は差し出された手に自分の手を伸ばして、そっと置いた。士道も小さくも暖かい手を包むように優しく握り、二人で歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

しかし、事態は士道のいない所で動き始めていた。

 

 

 

傘をさして歩いていた男性が、突然倒れたのだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

一人で飛び出して、連絡しても出ない士道を探していた折紙は、すぐに駆け寄って男性の具合を見る。

 

すると、オレンジ色のスパークが走る。まさかと思い、ゲームスコープで確認すると、ドラゴナイトハンターZのバグスターウィルスに感染していた。

 

だが、この男性だけでなく、その周辺にいた他の人間も同じようにバグスターウィルスに感染して、ゲーム病を発症していた!

 

折紙達の周辺にいた二十人以上の人間全員に、ウイルスが感染したのだ!

 

ウイルスに蝕まれた影響で、周囲の人達は気を失ってしまう。

 

 

「こんなに、たくさん・・・!?」

折紙は感染した人数の多さに驚きながらも、CRに連絡をして、天宮総合病院に送るように依頼した。

 

更に、栞から連絡が入る。

 

 

『折紙さん!』

「栞ちゃん!連絡は聞いたよね?」

 

『うん、でも・・・こっちもなの!』

「こっちもって、まさか!?」

 

『私のいる所でも、バグスターウィルス感染者がたくさん・・・!』

「そんな・・・!?」

 

バグスターウィルスが、天宮市の多くの人間に感染をしていた。それは、グラファイトが仲間を増やすためウィルスを広範囲に散布したからだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「わかった・・・すぐにグラファイトを!」

 

士道は折紙からの連絡で、ウィルス感染者が大量に出たことを知り、宗次郎だけでなく多くの人々を苦しめるグラファイトに強い怒りを抱いた。

 

「・・・あの野郎・・・!」

「し・・・士道、さん・・・?」

 

「!・・・ごめん四糸乃。怖がらせちゃったな」

「どう・・・したんですか・・・?」

 

「四糸乃、聞いてくれ。今、天宮市に人々を苦しめるバグスターウィルスって言うのがばらまかれているんだ」

 

「バグスター・・・ウィルス・・・?」

 

「そのウィルスをばらまいている奴をやっつけないと、人々を助けることが出来ないんだ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・そうだな。バグスターウィルスに感染した人を助ける為に戦うお医者さんって感じだな。

大丈夫だよ四糸乃。よしのんはちゃんと見つけるさ。でも、ウィルスで苦しんでいる人達も放っておけない。だから・・・」

 

 

「随分簡単に言ってくれるな」

「!」

 

背後から声をかけられた。振り向くと、そこにはグラファイトが立っていた。

 

「見つけたぞ、エグゼイド」

「グラファイト!」

 

グラファイトの姿は人間の姿だが、纏う雰囲気や力強さは以前より大幅に増している事がわかる。

 

 

「エグゼイド。貴様達と同じく、俺もレベルアップを果たした。今までのように行くと思うなよ」

 

「うるせぇ。お前は今日先生を、天宮市の人達を苦しめている。お前は絶対許さねぇ!」

 

「ならば、倒して見せろ!この俺を!」

 

 

士道はグラファイトの動きに注意しながら、四糸乃に言う。

 

「四糸乃、危ないからどこかに隠れているんだ」

「士道・・・さん・・・?」

 

「行けっ!!」

 

四糸乃は士道の鋭い言葉に驚き、体をビクッと震わせ走るように茂みの方へ。

 

しかし、士道が心配で茂みから顔を出して様子を見ていた。

 

グラファイトはガシャコンバグヴァイザーを取り出し、グリップに付けて怪人態になる。

 

士道もゲーマドライバーを付けて、ガシャットを入れて変身する。

 

 

「培養!」

《INFECTION!THE BUGSTER!!》

 

《マイティアクションX!》

「第二変身!」

 

 

それぞれの戦う姿になった士道とグラファイトに驚く四糸乃。そして降り続ける雨の中、士道とグラファイトの戦いが始まった。

 




次回予告


グラファイトとの戦いで、士道はレベル5になる。それがもたらした結果は、士道を更に追い詰める。

その時、恭太郎は士道に語りかけた。


第四話 士道のFault


「士道君、今の君は間違っている」


ーーーーーーーーーー


原作と違い、四糸乃からよしのんの話を聞くとき、四糸乃が親子丼を食べるシーンがありません。

恭太郎がウィルスに感染して、グラファイトを探さないといけない今の状況では、家に行って作る余裕が無いからです。

四糸乃とのご飯は後にお預けです。次回はグラファイトとの戦いから入ります。

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