EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~ 作:エルミン
士道が"ハーミット"と出会った日の翌日。
この日、CRに呼び出された士道、折紙、栞の三人はCRの責任者であり、天宮総合病院の院長でもある人物と話をしていた。
「皆、突然呼び出しちゃってごめんなさいね」
「だ、大丈夫です」
士道は若干の汗を流しながら責任者と話している。
今の士道は緊張状態にある。理由は、まだ責任者と話すことに完全には慣れていないからだ。
目上の者と話す緊張感・・・はもちろんあるが、慣れていない理由はもう一つある。それは・・・・・・。
「もう、士道ちゃんったら緊張がまだ解けないの?私がたくっさんハグして落ち着かせてあげるわ~」
「院長さん、その"筋肉逞しいマッチョボディで中身がオカマ"なあなたが士道に抱きつくのはやめてほしいです」
「んもう、栞ちゃんたらヤキモチ妬いちゃって、可愛いわ!それに、"オカマ"なのは否定しないけど、そんなに筋肉モーリモーリかしら?」
「よし、早くなんとかしないと・・・」(ガシャットを構える)
「あぁん、落ち着いて栞ちゃん!」
「俺は大丈夫です・・・大丈夫です・・・」
「本当に大丈夫?士道君・・・汗が増えてるよ?」
「大丈夫だ折紙、俺に熱い視線を向けている事なんて気にしてない。掘られる(意味深)のではないかと不安になんてこれっぽっちもなってない」
「全然大丈夫じゃないよね!?」
「やれやれ・・・・・・院長、あまり彼にプレッシャーを与えないでください」
CRの職員に復帰した栞の母親、風鳴 エレナがため息を吐きながら言う。
CRの責任者であり、天宮総合病院の院長でもある人物は筋肉逞しいオカマ。男の声で女口調であるため威力もある。
名は、
明るく、ムードメーカーのような感じで堅苦しさを感じさせない好人物。だがオカマだ。
医師としての腕はかなり優秀で、困難な手術や治療を数多くこなしてきた凄腕である。だがオカマだ。
医学の知識も豊富で、時に若い医師達に教鞭を振るう事がある。だがオカマだ。
なぜオカマなのかは本人が語らないので不明だ。
「まぁまぁ、落ち着いてねん。それでねここに呼んだ理由だけど衛生省の最高幹部の方がここに視察へ来ることになったの。
それで、皆は会ったこと無いでしょ?だから会わせておこうと思ったの」
「そう言えば、琴里と令音さんは会ったことあるんだよな。誰かは聞かなかったけど」
「その人の名前は、
今は衛生省の最高幹部だけど、かつては凄い腕を持つ名医だったのよ」
「恭太郎先生が!?」
士道が驚いて立ち上がった。
「あら、士道ちゃん・・・日向先生を知っているの?」
「宗次郎先生は、俺の命の恩人なんですよ」
「あら、そうなの?」
「はい、事故にあった俺を手術して救ってくれた先生なんです」
「あの事故にあった士道を・・・」
「そうか・・・優しい先生なんだね」
「あぁ、凄く優しい先生だ」
ーーーーーーーーーー
同時刻、天宮総合病院の地下駐車場。黒塗りの高級車が止まり、中からスーツ姿の男性が降りてきた。
四十代後半位で黒い髪の男性。彼こそが元医者で衛生省の創設者にして大臣官房審議官。バグスター対策の責任者である、日向 恭太郎である。
"人を救い守る事こそが、国を守る事に繋がる。人があってこその国である"
そういう信念の持ち主であり、医者として活動していたのもそれが理由だ。
今でこそ衛生省の幹部だが、人を慈しみ守る信念は変わっていない。
車を降りて、CRに入ろうとした所で・・・・・・。
「見つけたぞ、日向 恭太郎。お前には消えてもらう」
そんな言葉が聞こえた直後、オレンジ色の霧のようなのが宗次郎に降り注ぐ。
恭太郎は咄嗟に口を手で塞ぐが、遅かった。ドラゴナイトハンターZから作り出したバグスターウィルスだ。
そのウィルスを浴びせたのは、人間態になっているグラファイトだ。
「バグスターの繁栄の為、邪魔な組織を上から潰す」
グラファイトは呟き、去っていった。
苦しみ、倒れる恭太郎。近くにいた人が慌てて駆け寄る。事態は急変していく。
ーーーーーーーーーー
CRに、バグスターウィルスに感染した恭太郎が運び込まれた。すぐに士道達も駆けつける。ベッド毎機械に繋がれ、様子がモニターされる。
「・・・・・・お久しぶりです、恭太郎先生」
「久しぶりだね、士道君。まさか、こういう形で再会する事になるなんて」
再会の挨拶は最小限で済ませ、専用の機材で体を恭太郎の体をスキャンすると、バグスターウィルスのマークが表示された。
「やはりゲーム病か・・・」
「大丈夫です、恭太郎先生は必ず救います」
「皆、一旦上に戻ってこれからどうするかを話し合いましょう。日向審議官、少しの間席を外しますわ」
「わかりました、お願いします江原医院長」
皆は一旦上に戻り、話し合いを行おうとしたが・・・。
「すみません、お邪魔していますよ」
檀 黎斗がおり、エレナと話をしていたようだ。テーブルの上にはGDのロゴが入ったケースが置かれている。
「黎斗さん!?」
「事情は伺いました。こちらでも調べた限り、犯人はグラファイトでしょう」
「グラファイトが・・・」
「えぇ。そこで、これを」
黎斗はケースを開けて中身を見せる。その中には、金色でグリップ後部にドラゴンの頭部のような装飾が施されているガシャット・・・ドラゴナイトハンターZガシャットが入っていた。
しかし、プロトドラゴナイトハンターZガシャットにあったような龍の絵が書かれていない。
「ドラゴナイトハンターZのガシャット。これで仮面ライダーはレベル5になれる。五河君、どんなゲームかは知ってるよね?」
「はい。最大四人でプレイする、強力なドラゴン達を討伐するハンターゲームです」
「そう、グラファイトもこのドラゴナイトハンターZのバグスターなんだ。
ならば、同じゲームで挑むべきだろう。だが、問題はこのガシャットが未完成だということ・・・」
黎斗は皆に未完成の理由を説明した。
黎斗が過去に開発したガシャットのプロトタイプ、プロトガシャット。
マイティアクションX、タドルクエスト、バンバンシューティング、爆走バイク、ゲキトツロボッツ、ドレミファビート、ギリギリチャンバラ、ジェットコンバット、シャカリキスポーツ、ドラゴナイトハンターZ。
計十本の上記のプロトガシャットが存在する。
そのデータを元に、今士道達が使っている正規版ガシャットを開発していた。
ところが、ドラゴナイトハンターZを開発している途中で、グラファイトが幻夢コーポレーションに侵入しプロトドラゴナイトハンターZガシャットを奪取。
そのせいで、ゲーマのデータを入れることが出来ず未完成のままになってしまった。
「おそらく、そのゲーマのデータはウィルスと一緒に日向審議官に感染しているでしょう。
日向審議官からゲーマが出たら、そのゲーマを倒してこのガシャットにゲーマのデータを入れて欲しい。
そうすれば、ドラゴナイトハンターZのガシャットは完成して君達が使えるようになる」
黎斗はガシャットを取り出して、士道に差し出した。
「このガシャットは君に渡す。必ず日向審議官を救いグラファイトを倒してくれ」
「わかりました、必ず」
士道は頷いて、ガシャットを受け取った。黎斗はよろしく頼んだよ、と言ってCRを去った。
黎斗は皆に背を向けた直後、一瞬狂気の笑みを浮かべた。
その事に気付かなかった士道は、ベッドに寝かされている宗次郎、未完成のドラゴナイトハンターZガシャットを見る。
そして、昨日出会った新たな精霊"ハーミット"の事も考える。
「俺が必ず止める、そして・・・あの子を救う」
士道は静かに、そして力強く己の決意を宣言した。
ーーーーーーーーーー
同時刻、天宮市に雨が降り始めた。精霊"ハーミット"が顕現したためだ。
それから少しして、ASTの部隊が現れた。
「攻撃開始!」
日下部 燎子の指示で、全員がCR-ユニットで攻撃。
"ハーミット"はAST達に攻撃する事なく、ただ避けて逃げ回るだけである。
「ねぇねぇ、一旦どこかに隠れない?」
「うん・・・」
パペットからの声に従い、"ハーミット"はビルの中に隠れようとする。その時・・・。
「ハーミット!覚悟!」
隊員の一人が先回りして現れ、ミサイルランチャーの銃口を"ハーミット"に向け、ミサイルを発射。
突然の事に"ハーミット"は対応出来ずに、ミサイルをモロにくらってしまう。
霊装のお陰で、ダメージはゼロ。しかし・・・。
「あーれー」
「あっ・・・!?」
衝撃で"ハーミット"が付けていたパペットが、手元を離れ落ちてしまった。
しかも直後に、"ハーミット"自身の意思と関係なく隣界へ戻されてしまい、姿を消した。
優しい精霊"ハーミット"は、今の唯一の心の支えと離されてしまった。しかし彼女はこの先、自身を救ってくれるヒーローである少年と出会う事を。
そのヒーローに十香と同じく心の底から恋をする程に信頼し、大好きになる事を。
この時の"ハーミット"は、まだ知らない。
次回予告
翌日に恭太郎から現れたゲーマと戦う士道達。そして、士道はパペットを無くしてしまった"ハーミット"と再会する。
第三話 Rainの中で一緒に
「ほら、一緒に行こうぜ」
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四糸乃は原作よりも早くパペットを無くしてしまいました。そして士道は、グラファイトと四糸乃を同時に攻略する事になりました。
来年以降も紅牙絶唱(キバ)とEX-AID・A・LIVE(エグゼイド)をよろしくお願いいたします!