EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第十一話 狂三がFlying!(後編)

「スナイプウゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「グラファイトオォォォォォ!!」

 

 

仮面ライダースナイプ・・・狂三とグラファイトの戦いは、お互いの名を叫んで始まった。

 

グラファイトはともかく、普段から貞淑な感じの狂三まで感情を露にして叫ぶことに、駆けつけた士道達も驚いた。

 

 

走って接近する両者。グラファイトは武器にエネルギーを溜めて、破壊力を高めて狂三に向けて斬りつける。

 

狂三は体を傾けて紙一重でかわし、グラファイトの体に向けてガシャコンマグナムから弾を連射する。

 

弾はグラファイトに命中したが、グラファイトはダメージを無視して狂三を斬る。

 

狂三もダメージを受けライダーゲージが減るが、ダメージを無視してグラファイトの腕を掴んで強引に引き寄せ、頭突きを当てる。

 

ぐらついた所に、更に腹を蹴りつける。

 

 

後ろに下がったグラファイトは、再び武器にエネルギーを溜めて、今度は真空刃のように斬撃を放つ。

 

しゃがんで避けてから、低い姿勢のまま前に走りガシャコンマグナムの銃身で直接殴る。

 

グラファイトは狂三の頭を掴み、地面に叩きつける。

それを三回ほど繰り返し、横へ投げ捨てる。

 

投げられながら狂三は弾を撃ち、着地してから走りながら撃っていく。

 

 

グラファイトも狂三に並んで走り、右手にヴァグバイザーを持ちエネルギー弾を撃つ。

 

弾が外れ、地に着弾する。弾と弾がぶつかり合い、相殺される。

ある程度それが繰り返された所で、両者は再び接近戦に入る。

 

 

接近戦も激化していくが、接近戦ではグラファイトの方に分がある。狂三は武器の一撃を受けて、地を転がる。

 

「狂三さん!」

「私達も加勢します!」

 

三人はゲーマドライバーを装着し、レベル3になるべくガシャットを取り出したが・・・。

 

 

「貸しなさいっ!」

 

狂三は素早く近づくと、一番近くにいた士道と折紙からゲキトツロボッツとドレミファビートのガシャットを強引に奪った。

 

「大丈夫!?」

倒れる士道と折紙に駆け寄る栞。

 

狂三は奪ったガシャットでグラファイトに攻撃をする。

 

ゲキトツロボッツを、ガシャコンマグナムのスロットに入れてクリティカルフィニッシュを発動する。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《GEKITOTU!CRITICAL FINISH!!》

 

銃口から、「ゲキトツスマッシャー」を模したエネルギーの固まりが発射される。

 

グラファイトは、手に持つ武器を回し盾の様にして防いだ。

 

狂三はゲキトツロボッツガシャットを捨て、ドレミファビートガシャットを入れる。

 

 

《DOREMIFA!CRITICAL FINISH!!》

銃口から、音符の形をしたエネルギー弾を連射する。

 

グラファイトは短剣に力を込めて一閃。

連射されたエネルギー弾を全て切り裂いて消してしまった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドレミファビートガシャットも投げ捨て、雄叫びを上げて再び接近戦を挑む。

 

 

士道と折紙は急いで狂三が投げ捨てたガシャットを回収。狂三の方を見ると、激戦になっていた。

 

激戦だが、両者は完全に防御を捨てており、ダメージを受けても無視して戦うという無茶な戦い方をしていた。

 

このままでは、共倒れということも考えられる。

狂三は傷つき、ライダーゲージは減り続ける。しかし狂三は止まらない。延々とグラファイトに攻撃を続けるように。

 

 

(このままじゃあ、狂三さんが・・・・・・!)

そこまで考えた瞬間、士道の足は自然と狂三に向かって走っていた。

 

そして、狂三とグラファイトが一旦離れた所で、狂三に抱きついて地面を転がった。

 

「士道さん!?」

驚く狂三。士道が狂三のライダーゲージを見ると、残り残り20%位しかなかった。

 

士道は素早くゲーマドライバーのレバーを閉じ、バンバンシューティングガシャットを抜いて、狂三の変身を解いた。

 

変身が解けた狂三の姿は、服も少々ボロが出ていて、体から血が出ている所もある。

 

 

「何をするんですか士道さん!?」

「エグゼイド!戦いの邪魔をするな!」

 

狂三とグラファイトの二人が士道に非難の声を上げるが、士道は先程回収したゲキトツロボッツガシャットを単体で起動した。

 

 

《ゲキトツロボッツ!》

 

ロボッツゲーマが出現し、グラファイトに向かって攻撃を仕掛ける。

 

ゲーマを召喚するタイプのガシャットは、ドライバーを付けず単体で起動すると、ゲーマを召喚して攻撃を任せる事が出来る。

 

急な事態の時に護身として使え、またちょっとした作業を手伝ってもらう事も出来る。

 

 

《ドレミファビート!》

《ギリギリチャンバラ!》

 

折紙と栞もゲーマを召喚。グラファイトに攻撃を命じる。

 

ゲーマ達にグラファイトを足止めしてもらっている間に、三人は狂三の側に。

 

 

「狂三っ!!」

「っ!?」

士道が狂三の名前を大声で呼んだ。今まで「さん」付けだったが、呼び捨てで呼んだのだ。

 

 

「落ち着け、狂三。お前が栞のお姉さん・・・薫さんの命を失う原因となってしまったグラファイトが許せないのはわかる。でもな・・・・・・。

 

怒りに飲まれたままで、グラファイトを倒せるか?冷静さも無く、闇雲に突っ込むような戦いじゃあ駄目だ!

 

お前の身に取り返しのつかない事が起こったらどうする!?薫さんがどう思うのか、お前ならわかるだろ!」

 

「士道さん・・・・・・」

 

 

「狂三さんがお姉ちゃんを大切に思ってくれているのは、妹として嬉しいです。

 

でも、もう自分を責めないでください。狂三さんが過去の辛い思い出に縛られている姿を見るのは・・・お姉ちゃんも私達も辛いですから」

 

「栞さん・・・・・・」

 

 

「私は狂三さんと多くの時間を過ごした訳では無いから、わからない事の方が多いけど・・・。

 

狂三さんは、栞ちゃんのお姉さんの為に怒れる優しい人です。でもその怒りに飲まれたまま戦ってはダメです。栞ちゃんのお姉さんだけでなく、自分自身も大切にしてください」

 

「折紙さん・・・・・・」

 

 

皆からの説得を受けて、狂三は冷静さを取り戻した。

 

数秒目を閉じて気持ちを落ち着かせてから、狂三は士道の差し出した手を握って立ち上がった。

 

そして、三人に頭を下げた。

 

 

「皆様、すみませんでした。数々の見苦しい姿、ガシャットを強引に奪ったこと、謝罪いたします」

 

「もう大丈夫か?」

「はい」

 

士道の問いに頷く狂三。士道達は安心してゲーマを下げさせる。グラファイトは狂三の雰囲気が変わったことに気付き、武器を構える。

 

「いつもの狂三ちゃん、リターンです!」

狂三は笑顔で言うと、二つのガシャットを持った。

 

一つはバンバンシューティング。もう一つは、最後のコラボスバグスターを倒して手に入れたジェットコンバットだ。

 

 

「わたくしによる空の銃撃、お見せしますわ」

 

《バンバンシューティング!》《ジェットコンバット!》

 

 

狂三の背後に、バンバンシューティングとジェットコンバットのタイトル画面が表示される。

ジェットコンバットの画面からオレンジ色の"コンバットゲーマ"が出現。空を飛んで狂三の前へ。

 

狂三と軽くハイタッチをして、狂三の周囲を飛んでいく。

 

ゲーマドライバーにガシャットを二本セットし、レバーを開いた。

 

 

「第参弾、変身!」

 

《ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!》

 

《アガッチャ!ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!ジェット!ジェット!ジェットコンバット!》

 

 

新たにバイザーが装着され、空中を飛行することが可能となり、腰の左右にあるガトリングによって高い火力を得た。

 

 

仮面ライダースナイプ、コンバットシューティングゲーマー・レベル3!変身完了!

 

 

「ミッションスタート!」

 

宣言の直後、ガトリングを持ってコンバットゲーマから噴出される炎で空を飛んだ!

 

グラファイトは武器から真空刃を複数放ち、空中の狂三に攻撃する。

 

しかし、狂三は高い機動力を活かして空を飛びながらかわし、隙を見てガトリングを放つ。

 

飛べないグラファイトは空中からの攻撃に対処できず、攻撃をくらう一方になる。

 

「舐めるなあぁぁぁぁ!!」

 

グラファイトは短剣にエネルギーを溜めて、溜まった所で一気に解放する。その範囲は広く、広範囲の攻撃を放てば当たる、と考えたのだろう。

 

 

その攻撃が狂三を飲み込む・・・・・・様に見えた。

しかし、狂三は即座に下に向かって急降下。

 

下に向かって行くことで範囲から外れてかわす。

 

更に地面間近の超低空飛行で素早くグラファイトに接近し、そのまま体当たりをして急上昇。グラファイトと一緒に空に上がる。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

そのままガトリングをグラファイトの体に放つ。ほぼゼロ距離で連射を受けて、ダメージを多く受けたグラファイトは、連射が終わってそのまま地面に落下した。

 

「決めましょう」

 

狂三は空中を飛んだままジェットコンバットガシャットを抜いて、キメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

 

《キメワザ!》

《JET!CRITICAL STRIKE!!》

 

ガトリング砲にエネルギーが溜まり、引き金を引くと強化されたエネルギー弾が無数に発射。更に、背中からミサイルも十発発射される。

 

 

「ぐあああああ!!」

 

発射された弾の威力は大きく、防御していたグラファイトは宙に吹っ飛ぶ。

 

狂三はキックの体制を取り、足にジェットコンバットガシャットのエネルギーを溜める。背中の炎を逆噴射してグラファイトに向けてキックの体制のまま突っ込む。

 

グラファイトはすぐに短剣のエネルギーを使って前方にバリアを展開。ステンドグラスのような鮮やかな色のバリアが張られた。

 

 

狂三のキックがグラファイトの張ったバリアにぶつかる。狂三はバリアを破ろうと力を込め、グラファイトも破られない様に力を込める。

 

数秒の拮抗の末、両者の間で爆発。狂三はグラファイトから離れた。ダメージを受けているが無事だった。

 

グラファイトも着地。バリアを張っていた為倒せなかったが、大きなダメージを受けていた。

 

 

「俺は・・・仲間を・・・守れなかった・・・・・・」

 

呆然と呟き、グラファイトは静かにワープして姿を消した。

 

 

「ミッション、完了」

 

狂三も着地して、変身を解いた。流石に狂三も疲労がかなり溜まっており、倒れてしまいそうになるが・・・・・・。

 

 

「狂三!」

 

士道が受け止めた。

 

「あら・・・士道さん。ありがとうございます」

「大丈夫か?」

 

「えぇ、流石に体が痛くて疲れてしまいましたわ。という訳で士道さん。わたくしを癒してくださいまし」

「い、癒す・・・?」

 

「そうですわ。わたくしを背負って士道さんのお家まで運んで、士道さんがわたくしにマッサージ。ふふふ、わたくしを止めてくださったお礼です、私の体を触っても宜しくてよ」

 

狂三という美少女が色っぽい声と潤んだ瞳、赤い頬でそんな事を言えば、ぐらつかない男はいない。

 

現に士道は今、必死に己の理性で邪な心を抑えていた。

 

 

「「こらー!!」」

 

当然、狂三による士道への攻略等見過ごせず、折紙と栞が割って入り狂三を士道から引き離す。

 

 

「あぁん、ひどいですわぁ」

「狂三さん、あまり士道君を誘惑しないで下さい!」

「そうです!士道の純情を弄ぶのは禁止です!」

 

「残念ですわ。でも今回、わたくしを止めてくださった時の士道さんが素敵でして、ついつい」

 

「「む~」」

 

「ふふふ、今日はこの辺で。士道さん、本日のお礼は日を改めてさせていただきますわ」

 

「そんなの気にしなくて良いのに」

 

「いえいえ、わたくしが気にしますので。ですが士道さん。今後も"適合者"として戦い続けると言うのならば、グラファイトは避けられない大きな壁。

 

黒いエグゼイドの事もありますから、頑張って参りましょう」

 

「あ、あぁ・・・」

「では、ごきげんよう」

 

去っていく狂三。士道は狂三の背中を見ながら小さく呟いた。

 

 

 

 

「"適合者"って、何の事だ・・・・・・?」

 

 

 

その後、感染者の岩代はゲーム病の完治が確認されて退院。様子を見に来た狂三に感謝の言葉を述べて帰った。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同日、夜。幻夢コーポレーション内。

 

グラファイトは仲間のコラボスバグスターを守れなかったショックで落ち込んでおり、トボトボと歩いていた。

 

そして、社長室の所を通った所で、黎斗とパラドの会話が聞こえた。

 

 

「おいおい、大丈夫かゲンム?辛そうだな」

「・・・心配している表情ではないな。まぁ、わかっているだろうが、プロトガシャットの副作用だ」

 

「プロトガシャットは、使った相手に強大な力を与えてくれる。だが、体への負担も大きい。使い続ければ、何れ身を滅ぼす諸刃の剣だ」

 

「わかっている。四年前の時崎 狂三と風鳴 薫も、そして今の私もその負担を受けている」

 

「それでも使い続けるなんてな」

「自分の身を可愛がっていては、目的を達成できない」

「恐ろしいな、お前は」

 

二人の机の上には、ケースに納められたプロトガシャットが十本入っている。

 

グラファイトは二人の話を聞いて、音も立てずにその場を去った。

 

「プロトガシャット・・・・・・それがあれば!」

 

 

「・・・・・・ところでパラド、適合手術の事は知っているか?」

 

黎斗がパラドに質問する。パラドは驚くことなく平然と答えた。

 

「あぁ、人間の体内に少量のバグスターウィルスを入れて、バグスターウィルスの抗体を作るやつだろ?

 

そして抗体を持っている事が、仮面ライダーに変身する条件だ」

 

「その通りだ。しかし・・・・・・仮面ライダーに変身する者達の中に一人だけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その人物こそが・・・」

 

パラドは笑顔で、その人物の名を口にした。

 

 

 

「五河 士道」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

コラボスバグスターとの戦いから三日後。士道がCRに入ると、狂三がいた。

 

狂三が士道に綺麗にラッピングされた袋を差し出す。袋の中はカップケーキだ。狂三の手作りである。

 

自分を止めてくれた時のお礼として、作ったという。食べた士道は味を絶賛。狂三も嬉しそうに微笑んだ。

 

 

全てのライダーがレベル3の力を手に入れた。次は、"レベル5"だ。そして五月。士道は新たな精霊と出会う事になる。

 

 




今回で、レベル3のガシャットについての話、及び第一章は終わりです。

次回から第二章、原作二巻の話に入ります。同時にエグゼイド本編の九~十話の話にもなります。

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