EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~   作:エルミン

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第八話 悲しい心をSlashせよ!(前編)

この日、五河 士道は風鳴 栞と一緒に歩いていた。

 

栞が学校でも元気が無く、どこか暗い感じが強かったからだ。そこで、少しでも元気になれば、と士道は栞と一緒に遊ぶ事を提案。

 

栞もそれを了承して一緒に街を歩いていた。

 

 

「その、士道・・・心配をかけてしまって、ごめんなさい・・・です」

 

栞もいつもと違って元気が無く、一瞬別人に見えてしまった程だ。

 

「栞に元気が無いのは、俺だって辛い。だから、すぐにとは言わないけど、相談してくれよ。喜んで力になるから」

「うん・・・・・・」

 

やはり元気が無い。それは先日、ドレミファビートのコラボスバグスターと決着を付けたあの日からこうなっていた。

 

何かを悩んでいるのか。士道はすぐにでも訪ねたかったが、無理に聞き出すのも悪いからと、今は栞を元気にすることを優先することにした。

 

まずは一緒にカラオケにでも行こうと、道を進んでいく。すると、途中でとある場所が目に入った。

 

そこは、ごく普通の道路。特におかしい所はない。しかし・・・。

 

「ぁ・・・ぁ・・・」

「栞!?」

 

栞の様子が激変した。顔色が悪くなり、体も小刻みに震えていて、暑くないのに汗が流れ出ていた。

 

「栞!大丈夫か、栞!」

 

「っ!?」

士道に肩を揺すられ、栞は我に帰った。

 

「な、何でも・・・」

「何でも無くないだろ!・・・今日はまっすぐ帰って休んだ方がいい。送っていくよ」

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

栞はおとなしく頷き、帰路に着こうとしたが・・・。

 

CRからゲーム病患者が搬送されたという連絡が入り、二人で急行することになった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRに着いた所で、同時に着いた折紙と合流。

 

CRの制服に着替えて患者が寝ているベッドまで赴き、患者・・・初老の男性である五十嵐と少し話をしているとバグスターウィルスが活性化しバグスターユニオンが姿を現した。

 

《マイティアクションX!》

《タドルクエスト!》

《爆走バイク!》

 

「「「変身!」」」

 

 

三人はレベル1に変身。ステージセレクトでゲームエリアを変更して戦う。

 

東洋の龍のようなバグスターを、三人は軽やかに動きながら連携で追い詰める。

 

士道がガシャコンブレイカーのハンマーで殴り。

折紙がガシャコンソードで切り裂き。

栞がタイヤで殴る。

 

それを繰り返し、最後は三人同時に攻撃して患者と分離させた。

 

倒れた五十嵐を急いで下がらせて分離したバグスターと対峙する。

 

刀を持つ侍のような黒いコラボスバグスターだ。

士道はコラボスバグスターに刺さっているガシャットを見る。

 

「あれは"ギリギリチャンバラ"。プレイヤーも敵も、一撃で勝負が決まる文字通りのギリギリなチャンバラゲーム・・・厄介だな」

 

 

すると、ゲームエリア内に黒いエグゼイド・・・ゲンムが乱入。

 

《シャカリキスポーツ!》

 

ゲンムは無言のまま、シャカリキスポーツのガシャットを取り出して起動。

 

それをゲーマドライバーではなく、キメワザスロットに装填した。

 

《ガシャット!》

スポーツゲーマを召喚し、レベル3のように纏うこと無く乗る。

 

 

「黒いエグゼイドは私が!セカンド・ギア!」

 

栞はレベル2になり、自身で走ってゲンムに突っ込んでいく。

 

「待て栞!」

「士道君、来るよ!」

 

士道は栞を止めようとしたが、折紙の言うとおりコラボスバグスターが斬りかかって来た。

 

《ゲキトツロボッツ!》

《ドレミファビート!》

 

「第三変身!」

「ステージ3!」

 

士道と折紙はレベル3になり、コラボスバグスターと戦う。

 

ギリギリチャンバラは一撃のダメージが大きい為、一撃当たるだけでもヤバい。

 

だから、二人は遠距離攻撃で戦う事にした。

 

士道は左腕のゲキトツスマッシャーをロケットパンチのように放ち攻撃。

 

コラボスバグスターはかわして刀で斬りつける。

折紙がガシャコンソードを氷属性にして地面に刺してコラボスバグスターの足元を凍らせて動きを封じる。

 

音符型エネルギーを飛ばして攻撃する。コラボスバグスターはそれを全て刀で切り裂き防ぐ。

 

足元の氷も斬って動けるようにしてから、再び斬りかかってくる。

二人はすぐにかわして、攻撃に当たらないように気を付けながら戦う。

 

 

一方、栞はバイクの姿で動きながらゲンムを攻撃する。

 

ゲンムは、スポーツゲーマを巧みに操りその全てをかわしていく。

 

スポーツゲーマは自転車、故に自在に操るには高度なテクニックが要求される。

 

そのスポーツゲーマを自在に操っている時点で、ゲンムは高度なテクニックを持っている事がわかる。

 

 

攻撃してくる栞をいなし、ゲンムが体当たりで攻撃。

 

栞はその攻撃をかわしきれず受けてしまう。それが数回続き、ダメージの蓄積で動きが鈍った栞に、ゲンムがトドメをさすべく動く。

 

キメワザスロットのスイッチを二回押して、必殺技を発動する。

 

 

《キメワザ!》

《SYAKARIKI!CRITICAL STRIKE!!》

 

スポーツゲーマの車輪にエネルギーを集中。

スピードを上げて走り、ジャンプして回転。エネルギーを纏った回転攻撃で栞に向けて体当たり。

 

回転攻撃を受けて大ダメージを受けて倒れ、変身が解けてしまう。

 

「くっ・・・うぅぅ・・・!」

また負けてしまい、栞は倒れてしまう。

 

「弱いな。所詮はその程度・・・」

ゲンムはそう言ってバグヴァイザーの銃口からエネルギー弾を放つが・・・。

 

「栞いぃぃぃ!!」

 

コラボスバグスターを振り切って栞を庇う。エネルギー弾をくらって倒れる士道。

 

 

「士道・・・」

栞は士道の元に行こうとしたが、気を失ってしまった。

 

ゲンムはため息を吐いてコラボスバグスターの元へ。コラボスバグスターを回収して一緒に姿を消してしまった。

 

「栞!」

自力で起き上がった士道と折紙は栞を回収、ゲームエリアから出た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

栞は、天宮総合病院の病室、その個室で眠っていた。ダメージが大きいのか、まだ目を覚まさない。

 

十香と琴里も知らせを聞いて、駆けつけた。

 

 

「栞は大丈夫なの?」

「あぁ、命に別状は無い。気を失っているだけだから」

「栞・・・・・・」

 

「とにかく、栞ちゃんは大丈夫だから。きっと目を覚ますよ」

 

そして、ある程度時間が経って、十香と琴里は病院内の購買へ必要な物を買いに。折紙は五十嵐の様子を見るためにCRに向かった。

 

病室にいるのは、士道と栞だけだ。

 

「栞・・・・・・」

 

 

パイプ椅子に座り、栞の様子を見る士道。

少しして、栞が目を覚ました。

 

「ここは・・・」

「栞!気が付いたか」

 

「士道・・・そうか、私は黒いエグゼイドに負けたんだ・・・それで、士道は私を庇ってくれて」

 

「大丈夫か?」

「うん・・・士道、ごめんなさい」

「大丈夫だ、栞が無事で良かった。栞は大丈夫か?」

 

「大丈夫、もう痛くないよ」

「・・・栞?」

 

栞の様子が違う。話し方が全く違い、一瞬別人に見えてしまった程だ。

 

士道の疑問に気付いた栞は説明した。

 

 

「士道・・・これが、本当の私なの。今までのは、私のお姉ちゃんの真似をしていただけ」

 

 

「お姉ちゃん・・・?それって、前に話してた人の?」

 

「風鳴 (かおる)。私のお姉ちゃんで、四年前に仮面ライダーになってバグスターと戦っていた人」

 

「・・・・・・」

 

「お姉ちゃんはお母さんと同じ医者になることを夢見て医学の勉強の為、医療の大学に入学した人で、お母さんからバグスターウィルスの存在を以前から聞いていた。

 

それで、ゲーム病になる人を救いたいって言って、仮面ライダーになった。

 

プロトガシャットの一つ、プロト爆走バイクガシャットでプロトレーザーに変身していたわ」

 

 

「プロトガシャット?」

 

「壇社長が以前開発したライダーガシャットのプロトタイプなの。

それで仮面ライダーに変身していた。でも、バグスターとの戦いに負けて・・・・・・もう会えなくなっちゃった」

 

 

栞は説明を続ける。

 

「その後、私はお姉ちゃんの分も頑張らなきゃって思って、お姉ちゃんのゲームと同じ爆走バイクを選んでレーザーになったの」

 

「・・・・・・」

 

「性格もお姉ちゃんみたいにして、お姉ちゃんのように戦う事にしたの。そうしないと、お姉ちゃんが頑張った証が・・・お姉ちゃんがいたっていう事実が消えてしまうって思ったから」

 

「・・・・・・」

 

「でも、お姉ちゃんみたいに上手く出来ない。お姉ちゃんの分も頑張らなきゃいけないのに・・・今の私は役立たずだよ・・・」

 

「栞・・・お前は一生懸命頑張っているじゃないか。

お前がいてくれたから勝てた戦いだってあった。だから、自分を卑下するような事は言っちゃダメだ。

 

そんな事ばかり言っていたら、本当にそうなってしまう」

 

 

「ありがとう、士道。やっぱり、士道は優しい。

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「・・・?幼い時って・・・・・・」

 

「覚えてる?士道は、私を助けてくれたんだよ。幼い時、車に轢かれそうになった私を助けてくれた」

 

「車に轢かれそうになった・・・あぁ!?」

士道は覚えていた。確かに、士道はあの時・・・!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道と栞が通った道路。そこは、ごく普通の道路で特におかしい所はない。しかし、そこは士道にとって大変な事があった場所だ。

 

数年前、士道は親から捨てられたショックから暗くなっていた時の事。

 

その日は琴里は仕事から帰ってきた両親と一緒に出かけている為、士道は外の公園でブランコに一人で乗っていた。。

 

新しい両親とどう接すればいいのかわからず・・・でも、そんな自分が嫌になって俯く。

 

その時、士道に声をかける女の子が現れる。それが幼い時の栞だった。

 

「暗い顔をしてどうしたの?元気ないの?」

「前のお母さんがいなくなって・・・・・・新しいお父さんとお母さんと、どうやって話せばいいかわからないから・・・・・・」

 

「・・・・・・ねぇ、私と一緒に遊ぼう?」

「え?」

 

「私があなたの寂しい気持ちを、楽しい気持ちに変えるの。一緒に遊んで、元気いっぱいになるの。

 

きっと、あなたのお父さんとお母さんも元気になってほしいって思ってるよ」

 

「・・・僕は、五河 士道」

「私は、風鳴 栞。よろしくね、士道!」

 

この時の栞は、母と姉の三人で天宮市へ引っ越してきたばかりであった。故に、公園に来た時に元気の無い士道を放おっておけなかった。

 

それから一緒に遊び、それからも一緒にいる時間が増え、士道は栞のおかげで少しずつ明るくなっていく。

 

そして運命の日。この日は雨だったが栞は雨の中でもはしゃいでいた。そのまま道路に出てしまったが走っていた車に轢かれそうになった。

 

「危ない!!」

 

幼い士道は、沸き上がってくる衝動のままに走り、轢かれそうになっていた栞を突き飛ばして車から離した。

 

幼い士道は栞が車から離れた事に安心して・・・代わりに、自身が轢かれたのだ。

 

 

そして病院へ搬送され、自分を手術し命を救ってくれた医者から頑張ったご褒美としてゲーム機を貰った。これがきっかけで士道は天才ゲーマーSになっていく事になった。

 

同時に、医者に憧れ自分も医師を志す切っ掛けになった。

 

そういうところは事があったのだが、士道にとっては別にトラウマになった訳でもない。

 

女の子を助けることが出来たのだからそれでいいと思っている位である。

 

 

だがし・・・・・・。

 

栞は士道が轢かれた現場を見てしまったショックから気絶してしまい、士道の事を忘れてしまっていた。

 

この事については、士道が轢かれた所を見てしまった精神的なショックが強く、幼い栞の心を守るため脳が防衛機能を働かせ、その時の事を忘れさせたのだろう、との事だった。

 

士道も、栞に会えずに退院したのだった。

 

栞が士道の事を思い出したのは、来禅高校とは違う高校に入学した少し後に交通事故に関するニュースを見たときに思い出したのだ。

 

士道が車に轢かれそうになった自分を庇ってくれて、そのお陰で自分は助かったという事を。

 

思い出した後、仮面ライダーとなって戦いながら士道を探したがタイミングが悪かったのか出会えなかったのだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「そうか・・・・・・そうだったんだ」

 

全てを聞き終えた士道は納得した。栞に初めて会った感じがしなかったのは、過去に助けた女の子だったから。

 

 

「士道・・・私のせいであなたに大変な目に合わせてしまった。本当に・・・ごめんなさい」

 

栞は涙を流しながら、士道に謝罪した。栞と自身の"接点"、それを知った士道は・・・。

 




次回予告


士道は栞に伝えるべき事を伝え、栞は前に進む、
そして手に入れるのは、人々を救い敵を切り裂く刃。


第九話 悲しい心をSlashせよ!(後編)


「前に進み人々を救う、その為の力なんだ!」


ーーーーーーーーーー


士道と栞の出会いついては上記の通りに、自分なりに考えてこのようにしました。
士道を手術して救った人物は後に出す予定です。

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