EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~ 作:エルミン
折紙達がゲームセンターについて、美九と合流した頃。フラクシナス司令室。
「・・・琴里、ちょっといいかい?」
「令音?どうしたの?」
「・・・数日前に出会った、風鳴 栞と鳶一 折紙について調べたんだ」
「まぁ、いい気はしないけど仕方ないと思うしか無いわね・・・・・・それで?」
令音に栞と折紙について調べさせたのは、琴里の指示によるものだった。
琴里個人としては、士道の仲間である二人を信じたいという気持ちがある。
しかしフラクシナスの司令官として、ラタトスクという組織の一員としては本当に大丈夫なのかを調べなければならない。
「・・・風鳴 栞に怪しい点は無かったよ。ただし、鳶一 折紙は・・・今は辞めているが、過去にASTに所属していた経歴がある」
「何ですって!?」
驚く琴里だが、無理もない。精霊との対話による空間震の平和的解決を計るラタトスクと、精霊を武力によって討伐しようとするAST。
全く正反対だし、そもそもラタトスクはASTにも知られていない秘密組織。だからこそASTを止められるというのもある。
「不味いわね。鳶一 折紙が元ASTだったなんて。そうと知らずに私達の事を話してしまったわ。
辞めたといっても繋がりはあるだろうし、もし彼女経由でラタトスクの存在をASTに知られてしまったら・・・・・・」
「大丈夫じゃないかな?」
「え?」
「・・・鳶一 折紙は私達の事をASTには話さないと思うよ」
「どうしてそう思うの?」
「・・・・・・勘、かな」
令音は曖昧にしか答えなかったが、本当に話さないという予感があった。
ーーーーーーーーーー
ダンスが苦手な折紙の為に、士道と美九がレッスンを行い、十香と栞は本当に美九が折紙にいやらしい事をしないかを監視する。
「「じー」」
「あぁん、十香さんと栞さんに見つめられるのも良いですねー。・・・・・・コホン、それではレッスンスタートです!」
「よ、よろしくお願いします」
「はい♪まずは、音楽に合わせて踊るにあたって必要なのは、リズムを掴むという事ですね」
「リズム・・・」
「はい。曲のリズムに瞬時に対応して踊ることができる安定したリズム感を掴み取る、これを求められますね。
本当は他にも事やポイントはあるんですけど、時間が全然足りませんからこの一点を重点的に覚えましょう。
今から一曲踊ってみますね。リズムを掴めばこの通り・・・・・・」
美九がお手本として、曲を一曲選んで踊る。
今までの豊富な経験から曲のリズムを掴み、それに合わせてしっかりと踊って見せた。
「凄い・・・」
「おぉ!凄いではないか!」
「はい!とっても素敵なのです!」
「流石美九。こういうのは俺より上手い」
折紙も十香も栞も士道も絶賛、今を活躍するアイドルとして恥じない姿だ。
「こんな感じですぅ」
「ありがとうな、美九。鳶一、俺からもアドバイスだ。先程見た美九の躍りを脳内で自分が踊るようにイメージしてみろ。
脳内で踊る姿を思い浮かべて、そこに自分を当てはめてその通りに体を動かすんだ」
「だーりんならそうアドバイスすると思いまして、踊り自体は簡単な物にしましたよ」
「イメージして、リズムを掴めば・・・」
「鳶一、一度やってみるか?」
「うん、一回やってみる」
「わかった。ダメなところを見つけたらちゃんと教えるから、思った通りにやってみろ」
今度は折紙が踊り出す。美九のダンスを見て自分の脳内でイメージした通りに動かしていく。
上手くないが、体を動かすこと自体は得意であるためか少しずつだが様になっていく。
踊り始めて一時間。休憩を挟み、アドバイスをもらっていくにしたがって段々と上手くなっていった。
折紙は上手くなっていく事を自覚して喜んでいた。
そして、今は少し離れたベンチに座って休憩している。
美九と十香と栞の三人で踊って遊んでいる光景を眺めながら。
「ふぅ・・・」
「お疲れ、鳶一。ほら」
「ありがとう」
自販機で買った水のペットボトルを渡す。飲んだそれは冷えていて、踊りで熱く火照った体を冷ましてくれる。
「五河君・・・私、ちゃんと踊れてる?」
「あぁ。もう少し練習すれば、きっと大丈夫だ」
「良かった。私、足手まといになりたくなくて頑張ったけど、それなら安心かな」
「でも、油断はしないでくれよ。何が起こるかわからないからな」
「うん、わかってるよ」
「・・・それにしても、鳶一って強いよな」
「え?」
「仮面ライダーに変身しても、生身でも、鳶一は強いと思うぜ」
「当然だよ。だって私のこの強さは、ASTで鍛えた強さが下地になってるから」
「・・・え・・・AST!?」
折紙の突然の言葉に驚く士道。折紙の言葉は続く。
「うん・・・五河君。私は高校に入学する前まで、ASTにいたの」
「・・・・・・」
「五河君、聞いてほしいの。私は五年前に発生した天宮市の大火災に巻き込まれた。
両親は無事だったけど、その時に精霊の存在を知ってASTに入ったの」
「・・・・・・」
(五年前・・・天宮市の大火災・・・)
そのキーワードを聞いた士道の頭に、とある光景が過る。
『大■■だ、■■ないで。■■・・・本当■■■■■■ら・・・!」
『おに■■■■・・・た■けて!』
『■■、お■ちゃ■が必■■■るか■な!』
「・・・・・・!?」
「五河君、どうしたの!?」
「あ・・・ごめん。ちょっと、ビックリしてただけだ」
「そっか。ごめんね、突然こんな話をして」
「いや、いいんだ。それで、その・・・」
「大丈夫だよ。ラタトスクの事は、ASTには話さないから」
「え・・・」
「黒いエグゼイドとの戦いの時、その後に一緒にいると、十香さんは本当にいい子だって思うようになった」
折紙は十香を見ながら言う。
「五河君や私達の事を守ろうとしてくれた優しさがあるし、今こうして私達と一緒にいる十香さんは、本当に普通の女の子だよ」
「鳶一・・・」
「私は、精霊を・・・精霊を救いたいという五河君を信じたい」
「・・・・・・ありがとう、鳶一」
「うん」
お互いに笑顔で頷き合う二人。その時、CRからコラボスバグスターの出現情報が入った。
皆にその事を伝えて現場へ急行する事になる。
まだ、折紙の特訓は完全に終わっていないままに。
ーーーーーーーーーー
現場に到着。街の開けた場所で、士道達がコラボスバグスターと対峙する。
しかし、ここで更なる敵が現れる。グラファイトだ。
コラボスバグスターを護るように前に出る。
「仮面ライダー共。俺の仲間に手出しはさせん。培養!」
《INFECTION!THE BUGSTER!!》
バグスターの姿になり、武器を構える。三人もガシャットを構える。
《マイティアクションX!》《ゲキトツロボッツ!》
《タドルクエスト!》
《爆走バイク!》
「第三!」
「ステージ2!」
「セカンド・ギア!」
「「「変身!!」」」
士道はエグゼイド・レベル3になりグラファイトに、折紙と栞はブレイブ、レーザー・レベル2になりコラボスバグスターに戦いを挑む。
美九と十香は、少し離れた所で戦いを見守っている。
士道の左腕のアームと、グラファイトの武器がぶつかり合う。
グラファイトの武器をかわしながら、士道はカウンターのようにアームのパンチを当てる。
ダメージを受けながらも、グラファイトは武器を咄嗟に士道に向けて降り下ろした。
士道もダメージを受けて、両者は後退。
次に士道はアームをロケットパンチのように放ち、グラファイトは武器からエネルギーを放つ。
ロケットパンチとエネルギーがぶつかり爆発するが、その瞬間に士道が飛び蹴りをグラファイトに当てる。
「やるな、これがレベル3か」
「まだまだ!」
士道とグラファイトが戦っている中で、折紙と栞もコラボスバグスターと戦っていた。
栞は誰も乗らない状態で自分で動き、その速さでコラボスバグスターを攻撃。
コラボスバグスターは栞の隙をついて音符型爆弾を放ち、命中させる。
大きなダメージを受けた栞は変身が解けて倒れてしまった。
「くっ・・・まだまだ!」
「栞ちゃん!無理しないで!」
「大丈夫か!栞!」
「あっちまで運びますよ!」
更に突っ込もうとした栞を折紙が止める。
十香と美九が栞に肩を貸して後方まで下がらせる。
「どうして、私は・・・」
栞は弱い自分への不甲斐なさと怒りから、一筋の涙を流しながら十香と美九に支えられ後方へと下がる。
その時、コラボスバグスターが再びメロディと共に音符を放つ。以前、折紙が踊れなかった曲だ。
折紙は心を落ち着かせて、一瞬で踊る姿をイメージ。そして音楽に合わせて踊り出す。
「それ、それ」
GOOD、GOOD、GOOD
「よし!」
今度はちゃんと踊れた。GOODばかりだが、それでも格段の進歩だ。
そしてついに、すべて踊ることが出来た。上手いとは言えないが、MISSばかりだった最初と比べると桁違いに上手くなっている。
コラボスバグスターは、踊りきられた事に驚いて隙を作ってしまう。
その隙を逃さないように折紙が動く。隣の宝箱をガシャコンソードで切って開けて、高速化のエナジーアイテムを修得。
高速移動しながらコラボスバグスターを切り裂く。
「ブレイブ貴様、俺の仲間を!」
グラファイトはコラボスバグスターを追い詰めている折紙を見て、コラボスバグスターに加勢しようとするが、士道が体を張って止める。
「オペの邪魔はさせねぇ!」
グラファイトを折紙とコラボスバグスターから引き離すように戦う。
そして折紙は、タドルクエストのガシャットをゲーマドライバーから抜いて、ガシャコンソードのスロットに装填。
トリガーを押して、ガシャコンウェポンでの必殺技を発動。
《ガシャット!キメワザ!》
《TADORU CRITICAL FINISH!!》
刀身に炎を纏わせ、高速化で高速移動をしたまま動き、両手でガシャコンソードを持ってすれ違い様に一閃!
炎の一閃を受けて、コラボスバグスターは倒された。
《GAME CLEAR!》
音声と共に、ゲームの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。
折紙は黄色のガシャットを入手する。
「貴様ら、またしても・・・俺の仲間を!」
グラファイトは力を込めて士道を突き放し、標的を完全に折紙に切り替えた。
「私はまだ、踊れる。今の私に出来る最高の躍りを!」
《ドレミファビート!》
タイトル画面が表示されて、黄色い小さなDJのようなロボット・・・ビートゲーマが出現。陽気に踊りながら音符を飛ばしてグラファイトに攻撃。
折紙はガシャコンソードを投げ捨てて、ゲーマドライバーのレバーを閉じてドレミファビートガシャットを、タドルクエストの隣に入れる。
《ガシャット!》
「ステージ3!!」
《ガッチャーン!レベルアップ!》
《タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!!》
《アガッチャ!ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OK!ドレミファビート!!》
頭部はDJ風インカムのついたキャップ状になっていて、胸部装甲も追加され防御力も上昇する。
ラジカセやスピーカー型のパーツを装着しており、その姿はまさにDJ。
仮面ライダーブレイブ、ビートクエストゲーマー・レベル3、変身完了!
「私のリズムを刻む!」
折紙は右腕のターンテーブルを回しメロディを流す。
攻めてきたグラファイトに対して、明るいメロディに合わせて動き、攻撃をかわしながら折紙自身の攻撃を叩き込む。
評価も全てGREATを出している。
今までの躍りが苦手な感じが嘘のように、上手く踊ることが出来ている。
これは、折紙が"自信"を身に付けたからだ。
今までは躍りが苦手であり、自分は上手く踊れないと強い思い込みがあって上手くなる事が阻害されている感じだった。
しかし、美九と士道との特訓による上達。そして先程踊りきる事が出来た喜び。
それが折紙はちゃんと踊れるという自信を得て、今こうして完璧に踊れる程になっていた。
完璧にリズムを掴み、イメージ通りに体を動かせた。それを攻撃に生かすことが出来た。
そして、折紙は最後まで踊りきり、メロディの最後に合わせて強烈な一撃を当てた!
《PERFECT!》
最高の評価であるPERFECTを出せた折紙は内心でガッツポーズを取っていた。大きなダメージを受けて倒れるグラファイト。
折紙はドレミファビートガシャットを抜いて、キメワザスロットに入れて、スイッチを二回押す。
《ガシャット!キメワザ!》
《DOREMIFA!CRITICAL STRIKE!!》
右足にエネルギーを集中。同時に、楽譜型のエネルギーが肩のスピーカーから放たれグラファイトを縛って動きを封じる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
動けなくなったグラファイトに、エネルギーを集中させた強烈なキックをくらわせた!
強力な一撃を受けて吹っ飛んだグラファイト。大きなダメージを受けて戦闘続行は出来ないが、倒せなかった。
「・・・くそぉ・・・!」
グラファイトは仲間を守れなかった事を悔しく思いながら姿を消した。
戦闘は終わった。折紙は変身を解いて、手に入れたドレミファビートガシャットを見つめる。
「良かった・・・ちゃんと出来た・・・!」
「よく頑張ったな、鳶一。鳶一のお手柄だ」
「折紙、凄かったぞ!カッコ良かったのだ!」
「折紙さん素敵です!今度私と一緒に踊りましょう!」
「折紙さん、良かったです・・・」
「皆、本当にありがとう!」
折紙は満面の笑顔で皆に感謝の気持ちを伝えた。
しかし、皆浮かれていた為・・・栞の様子がおかしいことに気づけなかった。
ーーーーーーーーーー
その後、ゲーム病患者だった宇佐美は無事に回復。
彼氏の佐藤と一緒にお礼を伝えて無事に退院することが出来た。
琴里からも電話があり、折紙本人からASTであった事などを聞いたが、折紙自身が伝えないと言ったことを話した。
時刻は夜。士道と折紙は二人で並んで帰っていた。美九が気を効かせて二人きりになれるようにしたのだ。
「五河君。今日は本当にありがとう。私が踊れるようになったのは、五河君のお陰だよ」
「気にすんなって。それに俺だけじゃなくて、皆の協力があったからだ」
「それでも、だよ」
「そうか・・・まぁ、鳶一の役にたてて良かったよ」
折紙は数秒程考えて、口を開いた。
「折紙」
「え?」
「折紙って呼んで。私もこれからは名前で呼ぶから。えっと、今回の事がきっかけで今までより仲良くなれたかなって思って・・・迷惑かな・・・?」
「そんな事無いって。わかった、俺の事も士道って呼んでくれ。これからもよろしくな、折紙」
「・・・!うん、よろしくね・・・士道君!」
士道に名前で呼んでもらえた喜びから、笑顔で名を呼ぶ折紙。士道も嬉しく思いながら、一緒に帰宅していった。
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「・・・・・・」
同時刻。栞は電気を消して暗い自室のベッドで横になっていたが、寝ることが出来ないままだった。
以前から思っていた。自分は乗り手がいないと能力を出しきれず、単体では満足に戦えない。
「私は、頑張らないといけないのに・・・どうして私は・・・」
いつもと違う口調。明るい雰囲気は嘘のように消え失せ、悲しみが出ている。
「私・・・自信を無くしちゃいそうだよ・・・・・・お姉ちゃん」
ベッドに埋めていた顔を上げて、机の上の写真立ての中の写真を見る。
その写真には、
次回予告
栞の様子がおかしい事に気付いた士道。そして士道は、自身と栞の"接点"と仮面ライダーとなった切っ掛けを知る。
第八話 悲しい心をSlashせよ!(前編)
「そうか・・・そうだったんだ」
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今回の話に出てきた写真の女性については次回以降及び、いずれ書く予定のスナイプ(狂三)のエピソードZEROの話で描く予定です。