銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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この話は前から書いていたのでちょっと手直しするだけですぐ投稿できました。


みんなカブト虫が好きって言うけどクワガタ虫の存在も忘れてはいけない

 

 

 

 

 

「カブト狩りじゃああ!!!」

 

 

ある夏の日……万事屋にて、麦わら帽子を被り、虫かごを肩にかけ、虫取り網を手にした神楽のそんな声が響き渡る。

 

 

「かー……くー……」

 

 

「?」

 

 

「……………」

 

 

しかしそれに対して、銀時はジャンプを顔に乗せて昼寝、フェイトは神楽の叫びの意味が分からないのか首を傾げ、新八は新聞を読んで無反応だった。

 

 

「カブト狩りじゃああ!!!」

 

 

もう1度叫ぶが、変わらない。

 

 

「カブト狩りじゃあああああ!!!」

 

 

「うるせェェェェェ!!!」

 

 

3度目にて、ついに銀時がキレて叫ぶ。

 

 

「なんなんだよオメーはさっきから1人でゴチャゴチャと」

 

 

「カブトって、カブトムシのこと? 神楽、カブトムシが欲しいの?」

 

 

「そうです、だから私はこれからカブト狩りに行こうと思います。どーですか?」

 

 

「どーですかって、行けばいいじゃない」

 

 

「行けばいいじゃないじゃない!!!」

 

 

「ぶべら!」

 

 

適当な返事をした新八に、神楽の平手打ちが炸裂する。そして神楽はそれに至った経緯を涙ながらに語る。

 

 

「聞いてヨ! 私もう堪忍袋の緒が切れたネ。私のカワイイ定春28号が憎いあんちきしょーにやられちまってヨー。それでさァ、曙Xまでやられちゃってね、みんな持っていかれちゃったアル。ねぇ聞いてる?」

 

 

「あー聞いてる聞いてる」

 

 

「それでネ、私みんなの仇をとろうと思ってネ……ねぇ聞いてる?」

 

 

「あー聞いてる聞いてる」

 

 

「でも私、カブトムシの捕り方なんて知らないネ。だから教えてよ」

 

 

「カブトムシブーム再燃だとよ、時代は繰り返すね」

 

 

「なんかカブトムシ同士で相撲をとらせる遊びが流行ってるみたいですよ」

 

 

「えっと……私はあんまり虫には詳しくないから分からないかな……」

 

 

そう言う銀時の目はテレビのニュースにしか向いておらず、神楽の話は思いっ切り耳から耳へ聞き流していた。新八も同様である。唯一フェイトだけはちゃんと話を聞こうとしていたが、神楽の要領を得ない話に首を傾げるばかりだった。

 

 

「ねぇ教えてヨ」

 

 

「あー聞いてる聞いてる」

 

 

「聞いてるじゃなくて教えてヨ」

 

 

「アレだよお前、曙は今、東関部屋で師範代を……」

 

 

「曙の部分しか聞いてねーじゃねーか!!」

 

 

適当な返事を返す銀時の顔面に神楽の鉄拳が減り込む。

 

 

「もういいネ! とにかく一緒に来てヨ! 私どうしてもカブトムシが欲しいネ!」

 

 

「冗談じゃねーよ。いい年こいてなんでカブトムシ捕りなんてしなきゃならねーんだ」

 

 

「銀時、そんなこと言わずに手伝ってあげようよ。カブトムシのことはよく分からないけど、私も協力するから」

 

 

「甘やかすんじゃありません。子供の自由研究は子供が自分でやるものです」

 

 

銀時からあふれ出る鼻血を拭いてあげながら、神楽を手伝ってあげようと進言するフェイトだが、銀時は甘やかすなと一蹴する。

 

 

「だいたいよォ、何でそんな一銭にもならんことを……」

 

 

『ええー!!』

 

 

そう言いかけた銀時の言葉を遮ったのは、テレビから流れるアナウンサーの驚いたような声だった。内容は先ほど銀時自身も言っていたカブトムシブームに伴う、カブトムシの価値についてだった。

 

 

『このカブトムシ、そんなに高いんですか!? 車買えますよそんな値段!』

 

 

『ええまァ、僕にとっては車より大切なモノですから』

 

 

『このように大変高額なカブトムシも登場し、カブトムシブームは大人も巻き込んでの大きなものとなっていきそうです』

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「カブト狩りじゃあああああああ!!!」

 

 

そんな訳で、彼らは今カブトムシ捕獲の為に山へとやって来ていた。

 

 

「狩って狩って狩りまくるんじゃあ!!」

 

 

「狩って売って売って売りまくるんじゃあ!」

 

 

「なんでこうなるの?」

 

 

「本当に現金なんだから……」

 

 

金になると分かった瞬間に喜々としてカブト狩りへと乗り出した銀時と神楽に、フェイトと新八は呆れたような顔でそう呟いた。

 

 

それから彼らは宿営地となる場所にテントを張ると、銀時が仁王立ちで口を開く。

 

 

「おめーら、巨大カブトを捕まえるまで帰れると思うなよ。ビジネスで来てんだからなビジネスで。キャンプ感覚ではしゃぐんじゃねーよ。森は魔物だ、浮かれてたらあっという間に飲み込まれるぞ」

 

 

「大丈夫、ぬかりはないネ。食料もしっかり買い込んだし」

 

 

風呂敷を広げながらそう言う神楽が用意したという食料は、大半がポテチなどのお菓子類だった。

 

 

「食料っていうかオヤツだよね、ピクニック気分だよね」

 

 

「バカヤロー、何浮かれてんだ。オヤツは300円以内に収めろって言っただろーが!!」

 

 

「お前もかいィィ!」

 

 

ビジネスだと自分で言っておいて自分がピクニック気分になっている銀時に新八がツッコミを入れる。

 

 

「残念でしたァ、酢昆布はオヤツの内に入りません~」

 

 

「入りますぅ、口に入るものは全てオヤツですぅ、ジュース類も認めません~」

 

 

「いいアルか、そんなこと言って。私銀ちゃんがこっそり水筒にポカリ入れてきてるの知ってるんだからね」

 

 

「あれはポカリじゃありません~、ちょっと濁った水です~」

 

 

「お前ら森に飲み込まれてしまえ」

 

 

銀時と神楽のそんなしょうもないやり取りを見て、新八がそう呟く。するとそこに、フェイトがパンパンと両手を叩きながら割って入った。

 

 

「はいはい、銀時も神楽もそのへんにしようね。食料なら私がちゃんと別で管理してあるから。それとポカリなら水筒に入れて人数分用意してあるから、ちゃんとこまめに水分補給をすること。脱水症状とか怖いんだから。それと日射病にも気を付けてね。特に神楽はただでさえ日光に弱いんだから麦わら帽子だけじゃなくて日傘もちゃんと差すこと。いい?」

 

 

「「は~い」」

 

 

「フェイトさん流石だよ、アンタもうオカンだよ、万事屋のオカンだよ」

 

 

テキパキと指示を出すフェイトに、銀時と神楽も素直に返事を返し、その手際の良さに新八はただただ感服したのだった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

それから早速カブトムシの探索に乗り出した銀時たち万事屋一行だったが、肝心のカブトムシはどこにも見当たらなかった。

 

 

「意外に見当たりませんね」

 

 

「スグ見つかると思ったのに…どうすればイイネ?」

 

 

「身体中にハチミツ塗りたくって突っ立ってろ、スグ寄って来るぞ」

 

 

「わかったアル。じゃあフェイトの身体に塗りたくってやるネ」

 

 

「えっ!? 私がやるの?」

 

 

「おいおい何言ってんだ、んなもん変態しか寄ってこねーに決まってろんだろ」

 

 

「いやアンタが発案したんだよ」

 

 

「そもそもフェイトの身体にヌルヌルと液体を塗りたくっていいのは俺だけなんだよ、他の変態共に指1本触れさせるかってんだバカヤロー」

 

 

「銀時やめて。子供たちの前でそういう卑猥なこと言うのはホントやめて」

 

 

そんな会話を繰り広げながらも、カブトムシの探索は続くが、一向に見つからない。

 

 

「流行ってるって話だし、この辺はもう取り尽されてるのかもしれませんね。──ん?」

 

 

するとそこで、新八が何かを見つける。それに釣られて銀時たちもそちらに視線を移して見ると……

 

 

──そこには、ふんどし姿で身体中に塗りたくったハチミツを滴らせながら片足で突っ立っているゴリラ似の男の姿があった。

 

 

それを何も言わずに素通りすると、新八が顔を青くして口を開く。

 

 

「銀さん、帰りましょうよ。この森恐いです」

 

 

「体中にハチミツ塗りたくってたネ」

 

 

「気にするな、妖精だよ妖精。樹液の妖精だ。ああして森を守ってんだよ」

 

 

「でも銀時、なんか見たことある人だったんだけど……」

 

 

「ゴリネ、ゴリだったアル」

 

 

「じゃあゴリラの妖精だ。ああしてゴリラを守ってるんだよ」

 

 

「ゴリラを守ってるって意味が……!」

 

 

そこでまたもや新八は何かを見つけ、銀時たちもそちらを見る。

 

 

──そこにいたのは、バケツいっぱいのマヨネーズを一心不乱に木に塗りたくっているタバコを咥えた男だった。

 

 

銀時たちは同様に素通りしながら口を開く。

 

 

「銀さん、帰りましょうよ。やっぱりこの森恐いです」

 

 

「マヨネーズ木に塗りたくってたネ」

 

 

「気にするな妖怪魔妖根衛図(マヨネーズ)だよ。ああして縄張りにマーキングしてんだよ」

 

 

「もしかしてあの人、銀時たちの知り合い?」

 

 

「ニコ中ね、ニコチン中毒だったアルネ」

 

 

「じゃあ妖怪ニコチ○コだ。ああして2個チ○コあるんだよ」

 

 

「いや、2個チ○コないですから──!」

 

 

2度あることは3度あるように、新八は三度何かを発見する。

 

 

──そこにはおかしな6人組の集団が、その内の1人であるふんどし姿の犬耳を生やした男の身体に、寄ってたかってスイカの汁を塗りたくっている光景があった。

 

 

当然それも素通りすると、今度はフェイトも一緒に青い顔で口を開く。

 

 

「銀さん、ホント帰りましょう。マジでこの森恐いです」

 

 

「スイカの汁を塗りたくってたネ」

 

 

「ねえ銀時、今のって……」

 

 

「気にするな、ただの化け狸と愉快な仲間たちだよ。ああして人間へのイタズラを仕掛けてるんだよ」

 

 

「でも皆いたよね? 一家総出でいたよね?」

 

 

「じゃあ化物集団、八神一家だ。ああして誘き寄せた人間から魔力を奪って、世界を滅ぼす魔導書に喰わせてるんだよ」

 

 

「その冗談笑えないから。っていうかもう八神って言っちゃったよね?」

 

 

「あの…ひょっとして今の人たち、銀さんとフェイトさんの知り合──!」

 

 

そこまで言いかけて、新八は本日4度目となる何かを発見し、絶叫する。

 

 

「ぬっ…うおぁぁぁぁ!! なっ…なんじゃありゃぁぁ!!」

 

 

見上げてみると、そこにはなんと人並みの大きさはあるだろう巨大なカブトムシが木に張り付いていた。

 

 

「おいおいウソォ? ウソだろ! とんでもねェ大物じゃねーか! 何モタモタしてんだ、早く落とせオラァ!!」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

「オラァ!! 死ねオラァ!!」

 

 

その巨大カブトに驚きながらも、さっそく銀時たちは捕獲の為に動き出し、巨大カブトがとまっている木を4人がかりで蹴り揺らす。すると、その巨大カブトはズズゥンっと音を立てながら地面に落下した。

 

 

「「よっしゃああ!!」」

 

 

「これで定春28号の仇が……」

 

 

そう言って神楽は巨大カブトに駆け寄り、その体に手をかけてひっくり返すと……

 

 

「なにしやがんでェ」

 

 

それは巨大カブトではなく、カブトムシの着ぐるみを着た男であった。見覚えのあるその男──『沖田総悟』に、フェイトを除いた3人が踏み付けるように蹴ると、神楽が青筋を浮かべながら怒鳴る。

 

 

「お前こんな所で何やってるアルかァァ!!」

 

 

「見たらわかるだろィ」

 

 

「わかんねーよ、お前が馬鹿と言う事以外わかんねーよ」

 

 

「ちょ、ゴメン起こして。1人じゃ起きられないんでさァ」

 

 

「あ、大丈夫?」

 

 

着ぐるみのせいで起き上がれない男の後ろに回って、フェイトが背中を支えながら助け起こす。

 

 

「あ、どうもすいやせん。フーまったく、仲間のフリして奴らに接触する作戦が台無しだ」

 

 

「オイ、何の騒ぎだ?」

 

 

するとそこに、騒ぎを聞きつけて先ほど見かけた集団がやって来た。

 

 

「ん?」

 

 

「あっ、銀ちゃんにフェイトちゃんや」

 

 

「お前ら!! こんな所で何やってんだ!?」

 

 

その集団とは、近藤勲が局長を務める黒い制服に身を包んだ特殊警察『真選組』と、時空管理局特別捜査官の『八神はやて』とその家族、八神一家の面々であった。

 

 

「何やってんだって…全身ハチミツまみれの人に言う資格があると思ってんですか?」

 

 

「これは職務質問だ、ちゃんと答えなさい」

 

 

「職務ってお前、どんな職務についてたらハチミツまみれになるんですかハニー?」

 

 

「銀ちゃん、こっちは曲がりなりにも警察なんや。ちゃんと質問には答えた方がええよ」

 

 

「寄ってたかって犬耳男にスイカ汁を塗りたくってる警察なんざ聞いたことねーよ。何がしてーのか逆にこっちが質問してーよ」

 

 

色々とおかしい行動をしていた真選組に一通りツッコミを入れると、新八がはやてたち八神一家を指差しながら言った。

 

 

「だいたいその人たちは誰なんですか? 真選組に女性の隊員が入ったなんて聞いたことありませんよ。銀さんの知り合いなんですか?」

 

 

「あー…まぁな」

 

 

新八の問いに銀時はめんどくさそうにボリボリと後頭部を掻くと、はやてたち一家を1人ずつ指差しながら紹介する。

 

 

「えーっと……タヌキと妖精モドキと、ピンクにロリータ、あとジミ子とザフィーラだぼらァァ!!」

 

 

その瞬間、八神一家6人全員が一斉に銀時に飛び蹴りをかました。

 

 

「何やその紹介!! テキトー過ぎるやろこの天パ!!」

「リィンは妖精じゃないですぅ!!」

「人の紹介くれェまともにできねーのかテメーは!!」

「貴様それでも侍か!!」

「シャマル先生はジミなんかじゃありません!!」

「何故俺の名前だけ普通に言った? ボケるなら最後までボケろ!!」

 

 

そして倒れる銀時に降り注ぐスタンピングの嵐。その中から「アァァァァッ!!」と流れる断末魔。それがひと段落すると、一家の代表であるはやてが「んんっ」と咳払いしながら初対面の新八に名乗る。

 

 

「初めまして、時空管理局より真選組に出向してきました、八神はやて言います。で、こっちが私の家族で同じく真選組に出向になった……」

 

 

「リィンです!」

 

 

膝まで届きそうなほど長い水色の髪をした小さな少女、リィンこと『リインフォースⅡ』。

 

 

「シグナムだ、よろしく頼む」

 

 

長いピンク色の髪をポニーテールにし、男勝りな口調で武士のような雰囲気の女性『シグナム』。

 

 

「ヴィータだ」

 

 

小学生のような外見と、後頭部で縛った2本の三つ編みおさげが特徴の少女『ヴィータ』。

 

 

「シャマルです、よろしくね」

 

 

短い金髪に優しげな顔立ちをし、おっとりとした雰囲気をした女性『シャマル』。

 

 

「ザフィーラ」

 

 

褐色の肌と筋骨隆々とした体を持ち、犬のような耳と尻尾を生やした白髪の男性『ザフィーラ』。

 

 

彼らもはやてに続いて、自身の名前を名乗ってそう短い挨拶をする。それに対して新八は戸惑いながらも頭を下げ、神楽は不遜な態度で鼻をほじっていた。

因みに形式上、真選組に出向となっている為、彼女たちの着ている服も真選組と同じ隊服である。しかも女性仕様となっている為か、女性陣の隊服の下半身部分はタイトスカートに黒のブーツとなっている。

 

 

「はやて、みんな! 久しぶり!」

 

 

「フェイトちゃん、元気やったか~?」

 

 

昔からの馴染みであるフェイトとはやては久しぶりの再会を喜び、お互いの両手を握って握手を交わす。

 

 

「アレが旦那の嫁さんですかィ。近藤さんの言う通りキレーな人ですねィ、土方さん」

 

 

「フン」

 

 

そんなフェイトを遠巻きで見ながらそう呟いた沖田に対して、真選組副長の『土方十四郎』は興味ないと言いたげに鼻を鳴らし、紫煙を吐いたのだった。

 

 

「でも、どうしてはやてたちが? 真選組に出向するほど、江戸(こっち)でそんなに大きな事件は起きてないんじゃ……」

 

 

「……せやな、フェイトちゃんには話しとかなアカンな」

 

 

フェイトがそう問い掛けると、途端にはやては神妙な面持ちになり、そう呟いた。

 

 

「これを話すにはまず、私らが真選組に出向したあの日のことから話す必要がある。そう……あれは数週間前のことや……」

 

 

そしてはやては、物憂げな表情で森の木々の隙間から見える夏の空を見上げながら……静かに語り始めたのだった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「なに勝手に回想行こうとしてんだよ。させねーよバカヤロー」

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「ちょっ、銀ちゃぁぁぁん!?」

 

 

はやては絶叫しながら銀時に詰め寄る。

 

 

「何で邪魔したん!? 文面に『*』が入ったら場面が変わるか、回想に入るかって決まっとるやろ!?」

 

 

「だからもう1回『*』入れて場面戻しただろ」

 

 

「戻るどころか変わってへんやん! 速Uターンしただけやん!」

 

 

銀時にツッコミを入れながらはやては怒鳴るが、当の銀時は右手の小指で右耳をほじっており、完全に他人事である。

 

 

「ったく、ポンポコうるせーなァ。おめーらのどうでもいい回想なんぞに割いてる文章はねーんだよ。文字と行数の無駄だコノヤロー」

 

 

「どうでもいいわけないやろ! 私らが何で真選組に出向することになったのかとか、ちゃんとそこらへん説明せな読者の皆さんが納得せぇへんやろ!」

 

 

「大丈夫だよ、ここの読者さんたちなら。俺とフェイトが何の前触れもなく結婚して夫婦になっても受け入れてくれる広ーい心の持ち主たちばかりなんだからよ。きっとお前らがチンピラ警察になろうが、タヌキとゴリラが結婚しようが受け入れてくれるさ」

 

 

「何どさくさに紛れて私と近藤さんを結婚させとんねん!? そんなカップリング私は絶っ対イヤやからな!!」

 

 

「……アレ? 今俺、一言もしゃべってないのにフラれた?」

 

 

予期せぬ流れ弾に近藤の心が多大なダメージを受けて涙目になっていたが、2人には一切気にせず口論を続けている。

 

 

「せやけど回想を通して説明せなアカンことが山ほどあるんやで! 管理局から脱走した凶悪な次元犯罪者が江戸に逃げたこととか、それを地元の警察組織である真選組と協力して捕まえる為に私らが出向することになったこととか、私ら管理局組と真選組のすれ違いとか、シグナムと総悟君の死闘とか、管理局嫌いのトシちゃんとの衝突や和解とか、のちに設立される『真選組魔法部隊』のこととか……」

 

 

「はい、ということがありました。以上、回想終わり」

 

 

「強引に纏めんなァァァ!!」

 

 

結局……銀時がはやての回想をムリヤリ纏めて終わらせたことにより、決着がついた。

 

 

「ホンマ銀ちゃんケチやわ~。回想くらいさせてくれてもエエやんか」

 

 

「俺たちはカブト狩りで忙しいんだよ。んなもんに構ってられっか」

 

 

「え? カブト狩り? 銀ちゃんたちも?」

 

 

「も?」

 

 

キョトンとした顔ではやてが言った言葉に引っ掛かりを覚えた銀時は怪訝な顔をする。

 

 

「私ら真選組もカブトムシとりに来てんねん。ねぇ近藤さん」

 

 

「おい八神、そいつらに余計なことを……」

 

 

「その通りだ」

 

 

「言っちゃったよどいつもこいつも。もうちょっとこうなんか…」

 

 

警察組織である真選組がこの森にいる理由が、彼らと同じカブトムシが目的だと聞いて、万事屋一行は驚嘆する。

 

 

「カブトムシとりィ!?」

 

 

「オイオイ、市民の税金搾り取っておいてバカンスですかお前ら? 馬鹿んですか!?」

 

 

「こいつは立派な仕事だ。とにかく邪魔だからこの森から出て行け」

 

 

そんな中、神楽はビシッと沖田に指を指した。

 

 

「ふざけるな! 私だって幻の大カブトを捕りにここまで来たネ! 定春28号の仇を討つためにな‼︎」

 

 

「何言ってやがんでェ。お前のフンコロガシはアレ、相撲見て興奮したお前が勝手に握り潰しただけだろーが」

 

 

「誰が興奮させたか考えてみろ! 誰が一番悪いか考えてみろ!!」

 

 

「お前だろ」

 

 

「うん、流石にそれは神楽の逆恨みだよ」

 

 

神楽の頭をスパンっと銀時がはたく。彼女はずっと定春28号が沖田にやられたと言っていたが、どうやら自業自得だったらしい。フェイトも呆れたようにそう呟く。

 

 

「総悟、お前また無茶なカブト狩りをしたらしいな。よせと言ったはずだ」

 

 

「犬兄さんの身体にスイカ汁を塗ってカブトムシを釣ろうとするのは無茶じゃないんですか?」

 

 

「はやてちゃん、またザッフィーにスイカ汁を塗っていたのか。ダメだと言っただろう」

 

 

「トシちゃんのマヨネーズ作戦の方がダメやと思いますけど」

 

 

「トシ、お前まだマヨネーズで捕ろうとしてたのか。無理だと言っただろう。ハニー大作戦で行こう」

 

 

「いや、マヨネーズ決死行でいこう」

 

 

「いや、なりきりウォーズエピソードⅢでいきましょーや」

 

 

「いや、傷だらけのハニー湯煙殺人事件でいこう」

 

 

「いや、ドキッ! スイカだらけの大運動会でいけるハズや」

 

 

近藤、土方、沖田、はやての4人がそれぞれの作戦を言い合ってまったく譲ろうとしない。するとその時、真選組の隊士の1人が、双眼鏡を覗きながら叫んだ。

 

 

「あ゛あ゛、アレ! 局長見てください! カブトムシです! 前方まっすぐの木にカブトムシが…」

 

 

「「「カブト狩りじゃああ!!」」」

 

 

隊士が言い終わる前に、万事屋からは銀時と神楽、真選組からは近藤、土方、沖田、はやてが一斉にそのカブトムシに向かって走り出した。

 

 

「待てコラァァ! ここのカブト虫には手を出すなァ!! 帰れっつってんだろーが!!」

 

 

「ふざけんな! 独り占めしようたってそうはいかねーぞ。カブト虫はみんなのものだ! いや! 俺のものだ!」

 

 

「クソッ! オイ、奴らにアレを渡すな! 何としても先に…ぶっ!!」

 

 

その中で、神楽が土方を足蹴にして跳躍する。

 

 

「カブト狩りじゃあああ!!」

 

 

カブトムシに向かって手を伸ばす神楽。しかしその時、沖田が彼女の足首を掴んでそれを阻止した。

 

 

「カーブト割りじゃああ!!」

 

 

そのまま思いっきり神楽を地面に叩きつける。

 

 

「カブト蹴りじゃあ!!」

 

 

そこに銀時が飛び込んできて、沖田を木に蹴り付けた。そして木にしがみついて登ろうとする銀時だが、いつの間にか近藤が木に登り、上から銀時に向かってドヤ顔を向けていた。

 

 

「ワッハッハッハッ! カーブト……」

 

 

だがこの時、近藤の全身がハチミツ塗れなのが災いし……

 

 

「割れたァァァ!!」

 

 

手がズルっと滑ってそのまま頭から地面に落ちてしまった。

 

 

「カーブト…踏みやァァ!!」

 

 

「ぐおっ!!」

 

 

すると、下から登って来たはやてが、銀時の身体と頭を踏み台にして一気に駆け上がる。しかし銀時はそれを許さず、落下しそうになりながらも踏み止まり、すぐに手を伸ばしてはやての右足首を掴む。

 

 

「カーブト投げじゃァァァ!!」

 

 

「にゃアアアァァァァ……!!!」

 

 

銀時はそのまま思いっ切り振りかぶって投げ飛ばし、はやては森の彼方へと消えて行った。その際、遠くで枝などがバキバキと折れる音や、グシャっと何かが潰れるような音がしたのはきっと気のせいだろう。

 

 

「カーブト……」

 

 

「言わせるか! カーブト……」

 

 

「俺がカーブト……」

 

 

そして残った銀時と土方が木の上でそんな争いをしていると、その下で先ほど倒された神楽と沖田が起き上り、並んで立っていた。そんな2人のただならぬ雰囲気を見て、嫌な予感がした銀時と土方は冷汗を浮かべる。

 

 

「「カー、ブー、トー」」

 

 

「……オイ、ちょっと待て」

 

 

「俺たち味方だろ、俺たち……」

 

 

「「折りじゃァァァァ!!」」

 

 

その予感は的中し、上にいる2人などお構いなしに、神楽と沖田はそれぞれ蹴りと刀を木に叩き込んだ。

 

 

「「ぎゃあああああ!!」」

 

 

結果、木は轟音と銀時たちの断末魔と共に薙ぎ倒され、その騒ぎの中でカブトムシは羽を広げて飛んでいってしまったのだった。

 

 

「いっちゃったね…」

 

 

「いっちゃいましたね…」

 

 

その光景を、新八は真選組監察の『山崎退』と共に遠い目で眺めていたのであった。

 

 

「……さて、主はやてを探しに行くか」

 

 

「んだな」

 

 

「ですねー」

 

 

そして同じく静観を決め込んでいた、はやての守護騎士たちも、森の彼方へと飛んで行ってしまった主を探しに歩き出した。

 

 

「そう言えば、ヴィータちゃんが参加しなかったのは意外ね。こういうの好きそうなのに」

 

 

「まーな。アタシはカブトよりガ○ック派だからな」

 

 

「いやそれ、理由になってないと思うけど…」

 

 

「そうだぞヴィータ、何を言っている。ガ○ックよりもサ○ードが一番だろう」

 

 

「シグナム? あなたどうしたの? そんなキャラじゃないハズよね?」

 

 

「シグナムは結局、剣を使う人が好きなだけじゃないですか。リィンは断然ドレ○ク派ですぅ!」

 

 

「何を言っている、キッ○ホッパーこそ最高だ」

 

 

「リィンちゃんにザフィーラまで!? なにこれ!? みんなボケる感じなの!? じ…じゃあシャマル先生はやっぱり、ダーク──」

 

 

「主はやてが心配だ! 急いで探すぞ!!」

 

 

「「「おう!」」」

 

 

「ちょっとォォ!! せめて最後まで言わせてよぉーー!!!」

 

 

まるで狙っていたかのように一斉に走り出して一瞬で遠ざかっていくシグナムたちの背中に、シャマルの絶叫に似たツッコミが森に木霊したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、次元犯罪者が管理局から脱獄して江戸に逃げたって言ってたけど、誰が脱獄したんだろう…………まぁ、あとで聞けばいっか」

 

 

そんなフェイトの呟きは、バカどもの喧騒の中に消えていった。

 

 

 

 

 

つづく




最後のフェイトの呟きに関しては……わかりますよね。


今回ははやてが目立ち過ぎたので、最後に申し訳程度のヴォルケンズ。

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