銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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正直やり過ぎたと思ってる。


バカとワルは高い所がお好き

 

 

 

 

旧市街地の港に停泊している高杉一派の船。その船は現在、突如として空から降り注ぐ砲弾の雨による襲撃を受けていた。

 

 

「なんだァ!!」

 

 

「なんの騒ぎだ!?」

 

 

「あ…アレは……!!」

 

 

轟音が鳴り響き、船がひっくり返るような振動の中で、狼狽える浪人たちは空を見上げて叫ぶ。

 

 

厚い雲に覆われた曇天の空に浮かぶ、3隻ほどの飛行船。

そして中央の船の甲板には黒い制服を着こんだ集団……その中で最前線に立ち、抜身の刀を杖のように地面に突き刺した男が高らかに叫ぶ。

 

 

 

 

 

「御用改めである!! 真選組だァァァ!!!」

 

 

 

 

 

真選組局長、近藤の叫びに後ろに控える隊士達も続いて「うおおおお!!」と雄叫びに似た声を上げる。

 

 

「高杉ィィィ!! てめーらの船はすでに包囲されている!! 神妙にお縄を頂戴しろォ!!」

 

 

近藤の隣に位置する土方が叫び、3隻の船の大砲から砲弾が発射されたのであった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「なに!? 真選組が……」

 

 

「すぐに船を出す準備を。このままでは上空から狙い撃ちされ、撃沈されます」

 

 

部下からの報告にまた子が声を上げ、武市が船を出すように部下に指示を出す。

 

 

「幕府の犬に勘づかれたって事っスか…似蔵め、全部奴のせいっス」

 

 

「恐らく紅桜の存在も露見したのでしょう。紅桜を殲滅し、我々の武装蜂起を阻む目的もあると思います。とにかくまずは奴らの包囲網を突破しなければ……」

 

 

「だったら先輩、ちょうどいいものがあるじゃないっスか」

 

 

「そうですね、この娘たちは間違いなく奴らの仲間……コレを利用しない手はないです」

 

 

そう言ってニヤリと笑うまた子の視線の先には、浪士達に刀を首元に突きつけられて拘束されている神楽とヴィータの姿があった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

『ハイ聞けェェェェ幕府の犬共ォ!! この2人がお前らの仲間ってことはわかってるっス!! そんなにバンバン撃ってコイツらに当たっても知らないっスよォ!!』

 

 

「なっ…!?」

 

 

陣頭指揮を執っていた近藤が目を見開く。何故なら高杉の船の甲板には、神楽とヴィータが木造の十字架に磔にされた状態で人質にされていたのだから。

 

 

「ヴィータ!!」

 

 

「やはり捕まっていたか……」

 

 

「神楽ちゃんもいますです!!」

 

 

磔にされたヴィータを見て、はやてとシグナムは顔をしかめ、リインは何故かこの場に神楽がいることに驚いていた。

 

 

「イカン……ヴィータちゃんと一般市民のチャイナさんを盾にされては、迂闊に手が出せな…」

 

 

 

──ドゴォォォン!!

 

 

 

「「総悟ォォォォ!?」」

 

 

近藤が手が出せないと言った途端……なんの躊躇なく甲板目掛けてバズーカ砲を発射した沖田。

みごと甲板に命中し、爆炎を上げている高杉の船を見て近藤と土方が絶叫する。そしてすぐさま、はやてが総悟の胸倉を掴んで問い詰めにかかる。

 

 

「総悟くーーん!? 何考えてんねや!? ヴィータと神楽ちゃんが人質になってたやん!!?」

 

 

「実は俺この前、ヴィータのアイスを間違って食っちまいやしてねェ。で…それがバレたらめんどくせーんで、この機会にチャイナもろとも抹殺して有耶無耶にしよーかと」

 

 

「そんなしょーもない理由で撃ったんかいィィィ!!!」

 

 

そんな沖田の言い分に、はやてが怒鳴るようにツッコミを入れる。

 

 

そして、そのしょーもない理由で砲撃を喰らった鬼兵隊の船の甲板では……

 

 

「武市先輩ィィィィ! 話が違うじゃないっスかァァ!!」

 

 

「予想が外れましたね。まァ砲弾も外れたからヨシとしましょう」

 

 

「外れてるのはアンタの頭のネジっスよォォ!!」

 

 

爆撃でススだらけになったまた子が、同じくススで黒くなった武市に詰め寄りながら怒鳴る。

 

 

「オイコラ総悟ォォ!! 今の絶対にお前が犯人だろ!! この状況で仲間ごと攻撃するようなドS野郎はてめーしかいねェェェ!!」

 

 

「ふざけんじゃネーぞクソガキがァ!! マジぶっ殺してやるネ!!」

 

 

ヴィータと神楽も先ほどの攻撃が沖田の仕業だとすぐに勘付き、磔にされながらも真選組の船に向かって力の限り怒鳴り散らした。

 

 

『あーあー…真選組隊士総員に告ぐ、真選組隊士総員に告ぐ』

 

 

するとその真選組の船から、拡声器を使用した沖田の声が聞こえてくる。

 

 

『高杉の船をここで逃がすワケにはいかねェ。人質は気にせず、総力をもって奴らを撃ち沈めろ。責任は全て俺が持つ────って土方さんが言ってやした』

 

 

『おいィィ!! 総悟てめっ、ふざけんじゃ……』

 

 

ブツ…と、ここで拡声器の音声が途切れる。

 

 

「総悟ォォォォォオオ!!」

 

 

「クソガキィィィィィ!!」

 

 

途端、神楽とヴィータの絶叫に似た怒声が響き渡る。

 

 

直後……その指示を鵜呑みにした真選組の船から再び砲撃が発射される。しかも今度は確実に直撃するコースだ。

 

 

「うわァァァァ! 逃げろォォォ!!」

 

 

「ちょっ! お前らそんな無責任な!」

 

 

「おいヤベーぞ!! これマジで当たる!! これマジで当たる!!」

 

 

また子たち鬼兵隊は一目散に退散して甲板から離れる。当然、磔にされた2人を助ける義理など彼らにはない。

 

 

「「うわァァァァァ!!」」

 

 

迫る砲弾に動けない2人の絶叫。直後……再び甲板に爆炎が巻き起こる。

 

 

「チッ、何の役にも立たなかったっス」

 

 

立ち上る爆煙を手で払いながら、また子は吹き飛んだ2人に対して吐き捨てるようにそう言った。

 

 

「!!」

 

 

しかしそこで気がついた。爆撃された甲板のそばに、見慣れない地味目な男2人がいた事に……そしてその2人が、吹き飛んだハズの神楽とヴィータを十字架ごとそれぞれ脇で抱えている事に。

 

 

「お待たせ、神楽ちゃん」

 

 

「間一髪だったね、ヴィータ姐さん」

 

 

「しっ…新八ィィ!!」

 

 

「山崎ィィ!!」

 

 

救出された神楽とヴィータは安堵の表情で、銀魂きっての地味な2人…志村新八と山崎退の名を呼んだのだった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「ぬぐぐ……」

 

 

遠くで響く砲撃音を聞きながら、似蔵は1人…船内の倉庫で苦し気に呻きながら蹲っていた。

 

 

「よォ」

 

 

その時、高杉が倉庫の戸口にもたれかかりながら声をかけた。その隣には、スカリエッティの姿もある。

 

 

「お苦しみのところ失礼するぜ。お前のお客さんだ。色々派手にやってくれたらしいな。おかげで幕府の犬と早々にやり合わなきゃならねーようだ」

 

 

高杉の言うお客さんとは、真選組の事だろう。幕府の警察組織が攻めてきたというのに高杉の言葉は冷静で、どこか楽し気だった。

 

 

「…桂、殺ったらしいな。おまけに銀時ともやり合ったとか。わざわざ村田まで使って。で? 立派なデータはとれたのかぃ。村田もさぞお喜びだろう、奴は自分の剣を強くすることしか考えてねーからな」

 

 

「……アンタはどうなんだい」

 

 

飄々とした態度の高杉に、似蔵はそう問い返す。

 

 

「昔の同志が簡単にやられちまって、哀しんでいるのか、それとも……」

 

 

似蔵がそう口走った瞬間……高杉が腰の刀を抜き、似蔵の頭目掛けて振り下ろす。それに反応し、すでに似蔵の失くした右腕代わりとなった紅桜がその一太刀を受け止めた。

 

 

「ほォ、随分と立派な腕が生えたじゃねーか。仲良くやってるようで安心したよ。文字通り一心同体ってやつか」

 

 

紅桜と短い鍔迫り合いをしたのち、高杉は刀を収めながら踵を翻し、似蔵に背を向けた。

 

 

「さっさと片付けてこい。アレ全部潰してきたら今回の件は不問にしてやらァ。どの道連中とはいずれこうなっていただろうしな……それから」

 

 

そこまで言って高杉は戸口へと向かっていた足を止め、振り返って似蔵を睨む。

 

 

「二度と俺達を同志なんて呼び方するんじゃねェ。そんな甘っちょろいモンじゃねーんだよ、俺達は。次言ったら紅桜(そいつ)ごとブッた斬るぜ」

 

 

それだけ言い残して高杉は倉庫から去って行き、終始何も言わなかったスカリエッティもそれに続いた。残された似蔵は、高杉が本気の殺意にゴクリと息を呑んだのであった。

 

 

それから高杉が倉庫をあとにしてしばらく通路を歩いていると、その後ろに続いて歩いていたスカリエッティがようやく口を開いた。

 

 

「さっきの一太刀、本気で彼を斬るつもりだったね? 晋助君」

 

 

「だったらどうした」

 

 

スカリエッティの問い掛けに、こともなげにそう答える高杉。彼のその態度にスカリエッティは、可笑しそうに「ククク」っと笑いながら言葉を続けた。

 

 

「いやなに……だとすれば、今の紅桜は君の本気の一太刀を受け止めるほどに成長しているということだ。その分、似蔵君の身体への負担はとてつもないものになっているだろうけどね。私の見立てでは、長くもって3日だろう」

 

 

「らしくねーなジェイル。似蔵に気ィ使ってんのか?」

 

 

「まさか。彼は紅桜のデータだけではなく、私の研究データにも大きく貢献してくれたからね。あれほどの実験体を失うのは少々惜しいと思っていただけさ。何だったら、紅桜の負担にも耐えられるように私が改造してあげてもいい」

 

 

スカリエッティのその言葉に対し、高杉はキセルで紫煙を吹かしながら口角を吊り上げて笑った。

 

 

「ククク……てめーにとっちゃ、生命さえも研究材料ってか。相変わらずイカれた科学者だ」

 

 

「その言葉、そのまま返すとするよ……世界を壊すなどと(うそぶ)く、イカれた大法螺吹き君」

 

 

高杉とスカリエッティは、そろって狂気じみた笑みを浮かべながら、船内の通路を歩いて行ったのであった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

その頃、鬼兵隊の船は船体後部のブースターが起動し、その噴出される勢いで海ではなく空へと漕ぎ出した。

 

 

「んごををををををを!!」

 

 

「あわわわわわわわわ!!」

 

 

船が飛び上がった際、船体が大きく斜めに傾いたことにより、新八と山崎は後方へと転がり落ちそうになる身体を坂道を駆け上がるように必死に前へと走らせていた。当然、それぞれ神楽とヴィータの十字架を抱えながら。

 

 

「何者っスかァ!! オイぃぃ答えるっス!!」

 

 

後ろから同じ状態のまた子の声が聞こえるが、今の2人にそれに答える余裕はない。

 

 

「また子さん、走ることに集中した方がよさそうですよ。でないとああなります」

 

 

同じく走りながら武市は、横でゴロゴロと転がり落ちていく浪士を指差しながらそう言うが、その直後、顔面に空き瓶が直撃して自分が同じ末路を辿ることとなった。

 

 

「ダメッ、もう落ちる! 神楽ちゃん、助けに来といてなんだけど助けてェェェェェェ!!」

 

 

「そりゃねーぜぱっつァん」

 

 

「のん気でいいなてめーはよう!!」

 

 

「オラ山崎、もっと気合い入れて走れ。もし落ちたらあとで総悟と一緒にブッ潰すから」

 

 

「無茶言わんでくださいヴィータ姐さん!! 元はと言えばアンタが捕まったから、俺がこうして浪士のフリしてこっそり船に潜入してアンタを救出することになったんでしょーが!!」

 

 

「だったらもっと早く助けろや!! 死ぬかと思っただろーが!!」

 

 

「スゲーなアンタ!! この状況でよくそんな強気でいられるな!!」

 

 

新八と神楽、山崎とヴィータはそれぞれそんな口論をしながらも必死で走り続ける。

 

 

「新八、私こんな所までヅラ捜しに来たけど、やっぱり見つからなかったネ。ヅラは……どうなったアルか? 銀ちゃんとフェイトは……何で銀ちゃんとフェイトいないの」

 

 

「……………………」

 

 

神楽からのそんな問い掛けに、新八は答えられずに押し黙る。

 

 

「新八」

 

 

そんな彼の様子に、神楽が再度新八の名を口にしたその時……またもや船に撃ち込まれた砲弾が、新八達の近くに被弾する。更にその衝撃で吹き飛ばされてしまい、神楽が新八の手から放れてしまう。

 

 

「神楽!!」

 

 

「チャイナさん!」

 

 

「神楽ちゃ……」

 

 

磔のまま宙を舞い…船から放り出されそうになっている神楽に向かって、新八は無我夢中で腕を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「あーあー、エラい事になってやすぜィ。ヴィータもチャイナも死んだんじゃないですかィ? どーしてくれんだ土方コノヤロー」

 

 

「いやなんで俺のせいみたいに言ってんだよ!! お前が勝手に出した指示のせいだろーが!!」

 

 

「落ち着けトシ、あの船には山崎が潜伏している。きっとうまくヴィータちゃんやチャイナさんを救出してくれているさ」

 

 

真選組の船の甲板から、高杉の船の様子を見ながらそんな口論をする土方と沖田。そんな2人を近藤が宥める。

 

 

「……む? なんだアレは?」

 

 

すると、ザフィーラが何かに気がついてそう呟く。その視線の先で捉えたのは、高杉の船の船底から飛び出して来た飛行する物体。

 

 

「あれは……岡田似蔵!?」

 

 

それを見たシグナムが叫ぶ。飛び出して来たのは…『屁蛾煤(ペガサス)』と書かれた馬を模したホバーバイクに跨った似蔵だった。

 

 

「単騎で何するつもりや!?」

 

 

「撃てェェェ!! 奴を船に近づけさせるなァァ!!」

 

 

はやてが叫び、土方が大声で指示を出す。それにより真選組の船の大砲から砲弾が発射されるが、ホバーバイクで空中を駆け回る似蔵にはかすりもせず、似蔵は徐々に近づいて来る。

 

 

一方で似蔵は、何故かふと…高杉と出会った日のことを思い出していた。

 

 

人斬りだった自分に「そんな小せーモン壊して満足か」と声をかけ…「どうせ壊すならどーだい、一緒に世界をブッ壊しにいかねーか」と誘われた日の事を。

 

 

「壊してやるよォ!! 何もかもォォ!!」

 

 

似蔵は高らかに吼える。

そして一隻の船の側面に、紅桜の刀身を突き刺した。

 

 

「あああああああああ!!」

 

 

その状態でブースターを全開にして一直線に突き進む。

そしてそのまま思いっきり紅桜を振り切ると……真選組の船は爆音を轟かせながら落ちていったのであった。

 

 

「か…刀1本で船を……!」

 

 

「アレが紅桜……確かにありゃ化け物だ」

 

 

「つーか、もう刀なんて呼べる代物じゃねーでしょう」

 

 

落ちていく味方の船を呆然と眺めながら…たった1人、たった1本の刀で船一隻を落としてしまうその戦闘力に、近藤と土方と沖田がそう呟いた。

 

 

「ハハハハ!! 全て壊してやるよ!! この紅桜で!!」

 

 

似蔵は興奮し切った様子で、続けてもう1隻の船に強襲を仕掛けようと空を翔ける。

 

 

「行けェェ紅桜ァァァ!!」

 

 

その叫びに呼応するように右腕のコードの束がうごめき、紅桜の刀身が十数メートルはあろうという長さにまで伸びる。

 

 

「おおおおおお!!」

 

 

そのまま伸びた刀身を縦一直線に真っ直ぐに振り下ろす。

誰もがその巨大な刃で船が真っ二つに切り裂かれてしまうという考えが頭をよぎった。そして万事休すかと思われたその時……

 

 

 

──ガキィィィン!!

 

 

 

そんな甲高い金属音が…曇天の空に鳴り響いた。

 

 

「!?」

 

 

右腕から伝わる感触に、似蔵は眉をひそめる。

 

 

「これ以上はやらせんぞ、岡田似蔵」

 

 

すると同時に、似蔵の耳にそんな声が聞こえてきた。その声に似蔵は聞き覚えがあった。なんてことはない…昨晩、銀時のついでに戦って破った女剣士……シグナムの声だった。

 

 

「おやおやお嬢さん、またアンタかィ」

 

 

相手がシグナムだと知ると、似蔵は薄ら笑いを浮かべなら紅桜の刀身を元のサイズに戻す。

 

 

「アンタも懲りないねェ……また紅桜に斬られにきたのかィ?」

 

 

「いいや……貴様を斬りに来た」

 

 

似蔵の言葉に対し、シグナムは静かにそう言い放つ。

 

 

「ククク…紅桜に魔法は通じないのを忘れたのかィ? 管理局の魔導師ってのも存外バカなんだねェ」

 

 

「バカは貴様だ。ベルカの騎士に同じ手が二度通じると思うな」

 

 

似蔵の小バカにしたような言葉を一蹴し、シグナムはレヴァンティンを構え直す。

 

 

「真選組魔戦部隊副隊長…烈火の将シグナム──参る!!」

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

被弾した爆風で船から放り出されそうになった神楽の手を新八が掴み、その新八の服の裾を山崎が掴んでいる。

 

 

「ふぎぎ!!」

 

 

「新八君、ふんばれェェ!」

 

 

なんとか2人を引っ張り上げようと力を入れる山崎だが…流石にヴィータを抱えた状態で、片腕1本で2人を引き上げるのはキツイ。更には砲弾で壊された甲板のギリギリの場所で掴んでいる為、いつ3人まとめて滑り落ちてもおかしくない最悪の状況だった。

 

 

「!!」

 

 

すると……新八の身体が重力に負けて、徐々にずり落ち始めた。ヤバイと感じた新八も山崎も踏ん張ろうとするが、ズルズルと身体が引きずられていく。

 

 

もうダメだと思ったその時──何者かが新八の襟首をつかみ、そのまま神楽も山崎もまとめて引き上げてくれた。

 

 

助かった新八はその人物に振り返ると……そこにはエリザベスが立っていた。

 

 

「エリザベス!! こんな所まで来てくれたんだね!!」

 

 

安心したようにそう言う新八。その傍らでヴィータが神楽が無事だった事にホッとひと息をつき、山崎は「アレ? こいつ確か桂んトコの…」と呟きながらエリザベスを訝しげに見ているが、エリザベスは気にした様子もなくプラカードを見せる。

 

 

【いろいろ用があってな】

 

 

プラカードを見せてそう答えるエリザベス。だがその矢先……エリザベスに背後に現れた男が、その白い胴体を刎ねた。

 

 

「エリザベスぅぅぅ!!」

 

 

エリザベスの斬られた上半身の布がぱさりと床に落ち、新八の絶叫が響き渡る。

 

 

そんな中で、エリザベスの胴体を刎ねた男……高杉が笑みを浮かべて口を開く。

 

 

「オイオイ、いつの間に仮装パーティ会場になったんだここは。ガキが来ていい所じゃねーよ」

 

 

「ガキじゃない」

 

 

「!!」

 

 

その時だった。斬られたハズのエリザベスの半身の中から、何者かが飛び出して来たのだ。

そして次の瞬間──そのエリザベスの中から飛び出した男が、抜身の刀を横一閃に振り…高杉を一刀のもとに斬り倒した。

 

 

ゆっくりと床に倒れる高杉……そんな高杉に対して、男は静かに言い放った。

 

 

 

 

 

「──桂だ」

 

 

 

 

 

つづく


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