銀魂×リリカルなのは 作:久坂
「今日はまた随分とデケー月が出てるな。かぐや姫でも降りてきそうな夜だと思ったが、とんだじゃじゃ馬姫が2人も降りてくるたァな」
左手に持ったキセルで紫煙を燻らせ、静かにそう語る男──高杉晋助。
その高杉の背後から日傘に仕込まれた銃口を突きつけている神楽だが、高杉から感じる不気味な雰囲気に本能が「ヤバイ」と警告を鳴らしていた。
「残念だが、降りてきたのはかぐや姫でもじゃじゃ馬姫でもねーよ……高杉晋助」
と、その時……そんな高杉に対して口を開いたのは、ヴィータだった。しかもグラーフアイゼンを本格的に起動させたのか、服装が先ほどまでの着物姿とは異なり、真紅のゴスロリ風の服装に身を包んでいた。これがヴィータのバリアジャケットと言われる戦闘服である。
「フッ…確かに姫なんて大層なモンじゃねーなこりゃ。ずいぶんと躾けの悪そうな子兎が月から迷い込んできやがった」
「躾けが悪そうなのはお互い様だろ、狂犬みてーなアブネー目ェしやがって。まだウチの守護獣の方が可愛げがあるぜ。警察より先に保健所に突き出してやろーか?」
「おまけに口まで悪いときやがったか。何なら俺が躾け直してやってもいいんだぜ?」
「ほざきやがれ。お前がアタシに教えられることなんざ、そろばんくれーだろ」
お互いにそう言いながら…ヴィータはグラーフアイゼンを高杉に突きつけ、高杉はキセルをふかしながら鋭い目つきでヴィータを一瞥する。
「ククク……相変わらず口が減らねーチビだ」
「お前はずいぶんと変わっちまったけどな……晋助」
薄く笑う高杉に対し、どこか悲しそうに表情を僅かに曇らせながら、そう呟くヴィータ。
「ゲボ子、お前こいつと……」
「知り合いアルか?」とその様子を見ていた神楽が、ヴィータにそう問い掛けようとしたその時……2発の銃声が鳴り響く。
同時に背後から殺気を感じていた神楽とヴィータはそれを予期していたように、その場からそれぞれ別方向に飛び退くと、2人が今まで立っていた場所に2発の銃弾が撃ち込まれる。
「チッ」
ヴィータが思わず舌打ちを漏らす間も、休みなく銃弾は神楽とヴィータを狙って降り注ぐ。2人はそれを甲板を動き回って回避し続ける。
「おおおおおおおお!!」
すると埒が明かないと判断したのか、船の屋根の上から銃を撃っていた張本人が、神楽目掛けて飛び降りてきた。
ドオゥッ! という激しい落下音が響くと、その人物と神楽は二丁拳銃と日傘の銃口を向け合っていた。
「神楽ァ!!」
それを見たヴィータがすぐに神楽の方へと向かって駆け出そうとする。だがその瞬間…ヴィータの目の前に突如として人影が割って入った。
「!?」
ヴィータは顔を上げて、その人影を見上げるが…月明かりによってできた影が顔を覆っている為に見えなかった。しかしそのシルエットからその人物は長身の女性で……ヴィータに向かって拳を振り上げているのが分かった。
「くっ…」
咄嗟にそれを回避しようと、横に大きく飛んで床を転がるヴィータ。同時に振り下ろされた拳が、床を叩き割るような音が聞こえた。
「今のは……!!」
そう言いながらヴィータは床に膝をつけて立ち上がろうとするが……それは許されなかった。
「動くな」
何故なら……さっきまで目の前にいたハズの人物が、立ち上がろうとしたヴィータの背後で一瞬で回り込み、手首部分から伸びた紫色に発光する翼のような刃を首元に突きつけていたのだから。
「テメェ……ナンバーズか」
首元に刃を突きつけられ、無暗に動くことを封じられたヴィータが、視線だけを動かして背後にいる人物を睨む。今度は月明かりに邪魔されず、ハッキリと視認する事ができた。
そしてヴィータはその顔に見覚えがあった。
濃い藍色のボディスーツを身に纏い、紫の短髪に男性的な顔つきが特徴の女性。スカリエッティの部下に当たるナンバーズの中でも、もっとも戦闘力に秀でた実戦リーダー……NO,3の『トーレ』。超高速機動能力で高速戦闘を得意とする戦闘機人である。
「貴様らァァ! 何者だァァァ!? 晋助様を襲撃するとは絶対許さないっス! 銃を下ろせ! この来島また子の早撃ちに勝てると思ってんスかァ!?」
神楽に二丁拳銃を突きつけている、片方だけ結った金髪とへそ出し仕様の和服が特徴的な少女…『来島また子』は神楽に対して大声でそう言い放つ。しかし神楽はそれにまったく動じず、不遜な態度で言葉を返す。
「また子、股見えてるヨ。シミツキパンツが丸見えネ」
「甘いな、注意を逸らすつもりか! そんなん絶対ないもん! 毎日取り替えてるもん!!」
「いやいや付いてるよ。きったねーな、また子の股はシミだらけ~」
「来島…お前…」
「何でトーレの姉御まで疑惑の目で見てんスかァァ!? これ以上晋助様と姉御の前で侮辱することは許さないっス! 晋助様ァ!! 違うんス、ホントッ! 毎日取り換えてますから! 確認してくださいコレ…──ぐっ!!」
そう言ってまんまと注意を逸らされたまた子は、神楽の不意打ちの蹴りを喰らって床に倒れる。
「ゲボ子ォ!! 伏せるネ!!」
その隙に起き上った神楽は日傘の銃口をトーレへと向けると、そのまま発砲する。
「!」
突然の反撃にトーレはほんの少し目を見開きながら、両腕から伸びる翼のようなブレード状の固有装備『インパルスブレード』を盾にしてその銃弾を防ぐ。だがそれは同時に、ヴィータを解放することに繋がってしまった。
「ナイスだエセチャイナァァ!!」
解放されたヴィータはその場でグラーフアイゼンを振り被るように構えると、そのままグルリと体を捻るように回転させながら、背後に立っているトーレ目掛けて遠心力を乗せたグラーフアイゼンを振るった。
「ブッ飛べェェェェェ!!!」
「チッ………!?」
それに対してトーレはインパルスブレードを盾にして受け止めるが、勢いまでは防ぐことができず…思いっきり振り切られたグラーフアイゼンの一撃によって吹き飛び、そのまま壁に激突した。
「神楽!! 退路は開いてやるから、お前は逃げろ!!」
「命令すんじゃねーヨ! 私はヅラを見つけるまでは帰らないネ!!」
そう言いながら2人は合流して、その場から逃げようとして走り出す。
「クソガキ共ォォ!! 武市先輩ィィ!! そっちっスぅぅ!!」
「「!!」」
憤慨したように叫ぶまた子。すると、今度は2人に向けて眩いライトが浴びせられる。そして目の前には、大勢の浪士たち。
「みなさん、殺してはいけませんよ。女子供を殺めたとあっては侍の名が廃ります。生かして捕らえるのですよ」
見上げると、2人を照らす屋根の上のライトの隣には、艶のない目を見開いた表情が常の男が立っていた。
「先輩ィィ!! ロリコンも大概にするっス! ここまで侵入されておきながら何を生温いことを!」
「ロリコンじゃないフェミニストです。敵といえども女性には優しく接するのがフェミ道というもの。特にそちらの赤いゴスロリのお嬢さんは丁寧かつ紳士的に接して捕らえるのですよ」
「それがロリコンだって言ってんスよォ!!」
怒鳴るまた子に対してロリコン…『武市変平太』は表情を変えぬままそう語る。
「なんだァこの小娘共!? やたら強いぞォォ!!」
このまま黙って捕まる神楽とヴィータではない。2人を捕えようと襲い掛かって来る浪士たちを、次々と薙ぎ倒していく。
「どきやがれェェェ!!」
「ヅラぁぁぁ!! どこアルかァァ!? ここにいるんでしょォォォ!! いたら返事をするアル!!」
退路を切り開く為に浪士たちを殴り飛ばすヴィータと、それに続いてヅラの名を叫びながら奮闘する神楽。だがその時……
──ドォン!
「ぐっ!」
「神楽!?」
背後から発砲したまた子の銃弾が神楽の左肩を撃ち抜き、血が噴き出す。更に追い打ちをかけるように続けて銃弾が放たれ、今度は神楽の左脚を撃ち抜く。
「あうっ!」
「今だァァァ! 押さえつけろ!!」
左脚を撃たれて倒れる神楽。それを好機と見た浪士が一斉に神楽を捕えにかかる。
「オラァァァ!!」
「ぐぎゃあああ!!」
それを庇うようにヴィータが割って入り、グラーフアイゼンの一振りで浪士たちを吹き飛ばす。
「逃げろ神楽!! ここはアタシが食い止める!!」
「すまないアル……ふんごをををを!! ヅラぁぁぁ!! 待ってろォォ!! 今行くぞォォォ!!」
神楽は痛む体に鞭打ってほとんど気合で立ち上がり、ヨタヨタと左脚を引きずりながら船内へと向かって行く。
「いかん! 工場の方に!!」
「行かせるかァァ!!」
「ぎゃああああ!!」
船内に入った神楽を慌てたように追いかけようする浪士。それを許すまいと、殴り飛ばすヴィータ。
「ハア、ハア、ハア」
そして船内に逃げ込んだ神楽は息を乱しながら、ふと逃げ込んだその場所を見た。
「なんだ、ココ」
目の前に広がる光景に、絶句してその場で立ち尽くす神楽。すると先回りをしていたのか…そんな神楽の背後からまた子が後頭部に銃を突きつけた。
「そいつを見ちゃあ──もう生かして帰せないな」
その直後……銃声が響き渡る。
「!? 神楽ァァ!? どうしたァ!?」
その銃声を聞きつけたヴィータが戦いの手を止めて、振り返りながら叫ぶ。そしてそれが……致命的な隙を生んでしまった。
「貴様も大人しくしていろ」
「!?」
直後──その一瞬でヴィータの背後に立ったトーレが、インパルスブレードを纏った右腕を高々と掲げて静かにそう言い放った。
完全に不意をつかれたヴィータはすぐさま振り返るが間に合わず……真っ赤な鮮血が飛び散ったのであった。
*
懐かしい夢を見ていた。
右か左かも、上なのか下なのかすらもわからない真っ暗闇の空間……その中で、聞き覚えのある声が聞こえた。
『人に怯え、自分を守るだけに振るう剣なんて…もう捨てちゃいなさい』
どこからともなく聞こえてくるのは……かつて、屍を喰らう鬼と言われていた
『敵を斬る為ではない、弱き己を斬る為に……己を守るのではない、己の魂を守るために……』
そんな言葉と共に暗闇の中に浮かんだ恩師の顔はひどく朧気だったが…優しく微笑んでいるのは確かだった。
『……あの子を…頼んだわね』
続いて聞こえてきたのは恩師の声ではなく……今にも消えてしまいそうなほどに弱々しい女の声。
『大丈夫よ…あなたなら……私が壊そうとしたあの子の心を…護ってくれたあなたなら……』
そう言い残して、床に伏せりながら息を引き取った女の顔は…とても安らかだった。
そしてその2人と交わした言葉は……今でも心に刻み込んでいる。
『仲間を、みんなを、護ってあげてくださいね』
『ずっと…あの子の側で……ね』
──約束ですよ。
──約束よ。
*
「う…ん……」
小さく呻き声を上げながら、ゆっくりと目を覚ました銀時。目を開けて最初に飛び込んで来たのは、見覚えのある天井……どうやら万事屋の寝室らしい。窓の外からは雨が降っているのか、水を打つような音が聞こえてくる。
体を動かそうとすると、全身に激痛が走る。身体中に巻かれた包帯を見るに、どうやら命は拾ったらしい。
「あ…銀時! よかった、気がついたんだね!」
次に目に映ったのは、銀時の妻であるフェイト。
安堵と不安が入り混じったかのような表情で銀時の顔を覗き込むその様子から、どれだけ彼女が心配していたのかが窺える。
「大丈夫? 意識はハッキリしてる? 私のことがわかる?」
「俺の嫁」
「大丈夫そうだね」
ぼんやりとしながらもそう答えた銀時に、フェイトは今度こそ安心したように息を吐いた。
「俺は…どうなったんだ……?」
「覚えてない? 昨日の晩…ボロボロになった銀時とシグナムを新八とエリザベスがここに運んでくれたんだよ。それからすぐにシャマルを呼んで、魔法で治療してもらったの」
「そうか……シグナムは無事だったのか?」
「うん。魔力不足で弱ってはいたけどケガ自体は酷くなかったから、今朝にはもうほとんど回復して屯所に戻ったよ」
「そりゃなによりだ。そういや、新八と神楽はどうした?」
「2人とも用事で出かけてるよ」
「用事ってなによ」
「いいから銀時はもう少し寝てて。シャマルの魔法でも治し切れなかったくらい酷い傷なんだから。開いたら大変だよ」
「オイ、お前なんか隠して……」
──ズドォォン!!
明らかに話を逸らそうとしているフェイトに、銀時は問い詰めようとして上体を起こそうとする。だがその瞬間……銀時の顔面の横スレスレに、バルディッシュが振り下ろされる。
「絶対安静だよ──寝てなさい」
「………………」
目元に影を帯びながらニッコリと笑顔を浮かべてそう言い放つフェイトに、銀時は青ざめながら顔を引きつらせた。
──ピンポーン!
するとその時、万事屋に来客を知らせるインターホンが鳴った。
「はーい」
それを聞いたフェイトはバルディッシュを仕舞って立ち上がり、玄関へと向かう。そしてガラガラと戸を開けると、そこには刀鍛冶兄妹の妹……村田鉄子が立っていた。
「…………」
「何か御用ですか?」
「あの…あれ……」
フェイトがそう問い掛けると、鉄子はもじもじと気恥ずかしそうにしながら言葉を探している。それを見て、彼女が銀時を訪ねてきたのだと察したフェイトは、遠慮気味に言う。
「すみません、主人は今……」
「ここにいるぜー」
それを遮ったのは、フェイトの隣からひょっこり顔を出した銀時だった。
「おー入れや。来ると思ってたぜ」
*
その頃…真選組の屯所。今朝がた治療を終えて戻って来たシグナムが、昨晩に起きたことを局長である近藤をはじめとした土方と沖田のトップ3、そしてはやてに報告していた。
「件の辻斬りの正体が岡田似蔵……」
「そして妖刀・紅桜……か」
「申し訳ありません主はやて、近藤局長。私が岡田に後れをとらなければ……」
「いや、気にするな。シグナムさんが無事で何よりだ」
「せやで。命あっての物種や」
深く頭を下げて謝罪の意思を見せるシグナムに対して、近藤とはやては苦言を呈すことなく、彼女の無事を喜んだ。
「しかしシグナム姐さんがやられちまうたァ、その紅桜ってのはとんでもねー代物みたいですねィ。話を聞く限り、とても妖刀なんぞという生易しいもんじゃありやせんぜ。鬼兵隊が開発した兵器か何かだと思いやすが…」
「さしずめ人斬り似蔵による辻斬りは、ソイツの試し切りって所だろーな。だがまさか、その過程で桂まで殺っちまうたァな」
「死体があがっていない以上、断言はできんがな」
紅桜の話を聞いて沖田が推測し、土方がタバコを吹かしながらそう呟き、近藤が補足するようにそう言う。
「それにその剣は魔力も吸収してまうんやろ? 魔導師にとったら天敵みたいなもんやな」
「ええ、恐らくその開発にはあの男が関わっているでしょう。むしろ、鬼兵隊において魔導師に対抗できる武装の開発など…あの男しか考えられない」
「スカリエッティか……また厄介なもんを作りよったなぁ」
紅桜の開発に関わったであろう男の名を呟きながらはやては重い溜息を吐く。
「せやけど、これ以上好き勝手はさせへん。今度はこっちから仕掛ける番や」
すると、すぐに気持ちを切り替えたように真剣な表情で強くそう言い放つはやて。その言葉に対して、シグナムは疑問符を浮かべながら問い掛ける。
「主はやて、もしや奴らの潜伏先を?」
その疑問に、はやては静かに頷いて肯定する。そしてはやてに代わって近藤と土方が口を開く。
「実は…昨日から捜索に出たヴィータちゃんがまだ帰ってきておらず、連絡がつかない」
「あいつはガキだが、どこぞのサド野郎みてーに仕事をサボるような奴じゃねェ。それにあいつが担当していた場所は旧市街区の港…高杉一派の潜伏先の有力候補だった場所だ。恐らくだが……」
「
近藤と土方が言わんとすることを察したシグナムがそう言うと、近藤は頷き、土方は目を伏せて肯定の意を見せる。
「ヴィータに万が一のことがあれば、夜天の書を通じて私に伝わるようになっとるから、まだ最悪の事態にはなってへんハズや」
「すでに山崎を調べさせに行かせているが……十中八九クロだろーな」
「これでようやく暴れられまさァ」
「俺たちも準備が整い次第、現場に向かう」
はやて、土方、沖田、近藤がそう言うと…その部屋にいた者全員が誰からともなく一斉に立ち上がる。
そして最後の締めくくりとして……近藤が強く高らかに叫んだ。
「真選組──出動だ!!」
*
「こっぴどくやられたものですね。紅桜を勝手に持ち出し、更にそれほどの深手を負わされ逃げ帰って来るとは。腹を切る覚悟はできていますよね、岡田さん」
一方…港に停泊している鬼兵隊が潜伏する船にある一室。そこでは武市が窓の外に広がる雨模様の空を見上げながら、似蔵に対して責め立てるような口調でそう言う。しかしそれに対して岡田は悪びれた様子もなく言う。
「片手落とされてもコイツを持ち帰ってきた勤勉さを評価してもらいたいもんだよ。コイツにもいい経験になったと思うんだがねェ」
「だからと言って、貴様の身勝手な行動が許されるわけではないだろう。特に最近のお前は目に余る」
「姉御の言う通りッスよ。聞けば昨晩、管理局の魔導師とも殺り合ったらしいじゃないッスか。幕府の犬に紅桜の存在が知られるのも時間の問題ッスよ。アンタ、晋助様の邪魔なんスよ」
トーレに続いて、そんな厳しい叱咤の言葉を似蔵に浴びせるまた子。
「しかも桂の次は坂田銀時? 晋助様を刺激するような奴ばかり狙って、一体何考えてんスか。アンタ、自分が強くなったとでも思ってんスか、勘違いすんじゃないよ。アンタが桂に勝てたのは全て紅桜の……」
更に叱咤の言葉を続けたその時……紅桜を持つ似蔵の左腕から触手のようなコードが伸び、また子の首に巻き付いて締め上げた。
「ぐっ!!」
「来島!?」
「おっと悪く思わないでくれ…俺じゃないよ。
似蔵は薄ら笑いを浮かべながらそう言うと、床に叩きつけるようにしてまた子を解放する。床に倒れて咳き込むまた子を、トーレが介抱する。
「岡田さん、あなた」
「……どうにも邪魔でねェ。俺達ァ、
そこまで言うと似蔵は、その盲目の目を強く見開きながら言い放つ。
「目障りなんだよ、邪魔なんだよ奴ら。そろそろ古い伝説には朽ちてもらって、その上に新しい伝説を打ち建てる時じゃないかィ?」
*
「本当のこと、話に来てくれたんだろ。この期に及んで妖刀なんて言い方で誤魔化すのはナシだぜ」
万事屋に鉄子を招き入れた銀時はフェイトと並んでソファに座り、テーブルを挟んだ対面のソファに鉄子を座らせて、紅桜について尋ねていた。
「ありゃなんだ? 誰が作ったあの化け物」
「……紅桜とは、私の父が打った紅桜を雛型に作られた、対戦艦用
銀時の問い掛けに対して、鉄子は静かに紅桜について語り始めた。
「『電魄』と呼ばれる人工知能を有し、使用者に寄生することでその身体をも操る。戦闘の経緯をデータ化し学習を積むことでその能力を向上させていく、まさに生きた刀……あんなもんを作れるのは、江戸には1人しかいない」
そこまで言うと鉄子は両手をテーブルの上につけて、土下座のように頭を深く下げながら言った。
「頼む──兄者を止めてくれ。連中は…高杉は…