銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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そろそろ紅桜篇に入る前にコイツ等を出しておきたかっただけです。

感想お待ちしております。


兄弟がみんな仲が良いとは限らない

 

 

 

 

 

とある日の、夕暮れ時の頃の時間帯……いつものようにこれといった依頼もなく、暇をお持て余している万事屋一行。

 

銀時は座っているオフィスチェアの背もたれにもたれながら、デスクに両足を乗っけた体勢でジャンプを読みふけり……フェイトは台所で洗い物をしており……新八はぼんやりとテレビを眺め……神楽は定春と戯れてるなど、みんな思い思いに暇を潰していた。

 

 

──ピンポーン

 

 

「「「!」」」

 

 

その時、家のインターホンが鳴った。

 

 

「ごめん銀時ー、今手が離せないから出てくれない」

 

 

「あいよー」

 

 

依頼人などの来客があった時、いつもならすぐに応対するフェイトだが、今は手が離せない状況らしく、台所から声を上げて代わりを銀時に頼む。銀時もそれに対して気の抜けた返事を返す。

 

 

「つーわけで新八、行ってこい」

 

 

「なんで僕!? 頼まれたのも返事したのもアンタでしょーが!!」

 

 

「俺も今手が離せねーんだよ。ワンパークがすげーいい所でさー」

 

 

「理由になってねーよ!! んなモンあとでいくらでも読めるだろーが!!」

 

 

引き受けておいてシレっと新八に押し付けようとする銀時に、新八がツッコミを入れる。

 

 

「チッ、めんどくせーな」

 

 

「めんどくせーって言ったよ。依頼人かもしれないのにめんどくせーって言ったよこの人」

 

 

結局、渋々と立ち上がった銀時が来客を迎えることとなった。

 

 

「はいはーい、どちら様ですか~?」

 

 

めんどくさいという気持ちを隠そうともせず、気だるげな声でそう言いながら、ガラガラと引き戸を開ける銀時。

そして開けた戸の先にいた人物に目を向けた瞬間──その目を大きく見開て、顔をしかめた。

 

 

「──ゲッ!?」

 

 

思わずそんな声も出てしまう。しかし相手は、銀時のそんな態度に対して、どこか含みのある笑顔を浮かべながら口を開く。

 

 

「久しぶりに会って第一声が『ゲッ』とは、とんだ挨拶だな」

 

 

落ち着いていて、どこか銀時に似た声質の男の声。そこに立っていたのは、白のYシャツに青いネクタイを締め、その上から肩章付きの黒い制服をきっちりと着こなした黒髪の男性だった。

 

その男がそう言い切ると同時に、銀時は即座に引き戸を逆にスライドさせて閉めようとする。が……それよりも早く、その男の片手がねじ込まれて阻止される。

 

 

「すんません、今ちょーっと立て込んでるんで、帰ってもらっていいですか?」

 

 

「すまないがこっちも急ぎの用でな、時間を作ってくれるとありがたい」

 

 

「ねーよ。お前の為の時間なんざ一生存在しねーよ」

 

 

「とりあえず中に入れろ。話はそれからだ」

 

 

「いやだから帰れっつてんだろーが」

 

 

お互い顔に青筋を浮かべ、ギリギリと戸を押し引き合いながらの応酬。するとそこに、また新たな人物が男の背中から顔を出した。

 

 

「何を遊んどるぜよ、提督殿」

 

 

「! お前は……辰馬んとこの……」

 

 

「久しぶりじゃの」

 

 

青の野良着の上に紫の道中合羽を羽織り、編み笠を被った長い茶髪の女性。

彼女の名前は『陸奥』。銀時のかつての戦友『坂本辰馬』が社長を務める『株式会社快援隊商事』の副官である。

そんな彼女の登場に、銀時は僅かに目を見張る。

 

 

「銀時? 玄関で何やって………あ」

 

 

そこへさらに、洗い物を終えたフェイトが台所からひょっこり顔を出す。同時に来客である男性の顔を見て、銀時と同じく目を見張りながら言った。

 

 

「──クロノ?」

 

 

「久しぶりだな、フェイト」

 

 

そんなフェイトに対して、男性──『クロノ・ハラオウン』は柔らかな笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「フェイトさんのお兄さん!?」

 

 

「マジアルか、フェイトに兄貴がいたアルか」

 

 

「うん。義理のだけどね」

 

 

「クロノ・ハラオウンだ。よろしく頼む」

 

 

あの後、フェイトに家の中に招かれた──銀時はかなり渋った──クロノと陸奥を応接用のソファに座らせ、そこで軽い自己紹介をしていた。そこでフェイトの義兄(あに)だというクロノに、彼女に兄妹がいたということすら初耳の新八と神楽は驚愕を露にしたのだった。

 

 

するとそこで、ある事実に気がついた新八が、反対側のソファにふんぞり返るように座る銀時を横目で見ながら言った。

 

 

「え……ってことは、クロノさんって…その……銀さんのお義兄さんでもあるってことですよね」

 

 

「「不本意ながらな」」

 

 

新八のその言葉に対し、銀時とクロノが一言一句違わずまったくの同時にそう言い放つ。

すると、セリフが被ったのが気に食わなかったのか、2人は嫌悪感を前面に押し出しながら睨み合って火花を散らせる。

 

 

「オイオイ、久しぶりに会う義弟(おとうと)に対してずいぶん辛辣じゃねーの──お義兄さん」

 

 

「いやいや君こそ、相も変わらず義兄(あに)に対してずいぶんと不遜でナマイキな──義弟だ」

 

 

 

 

 

「「って誰が義兄(あに)(義弟(おとうと))だァ!! 虫唾が走るわァァ!!」」

 

 

 

 

 

言うや否や、ダンッと立ち上がってお互いの胸倉を掴みあって怒鳴り合う銀時とクロノ。

 

 

「言っとくけどなァ…てめェとは一応義兄弟なだけで、俺ァてめェみてーな真っ黒くろ助を兄貴なんて思ってねェから。てめェみてーな堅物兄貴なんざ願い下げだからァ」

 

 

「そうか、気が合うな。僕も君のような自堕落でダメ人間な弟なんてゴメンだ。それじゃあまずはその一応の義兄弟の縁を切ることから始めよう。というわけで、このフェイトとの離婚届に判を押してもらおうか」

 

 

「どういうわけェ!? 何シレっと俺とフェイトの夫婦の縁まで切ろうとしてんだァ!! しかもこれマジの離婚届じゃねーか! んなモンに判を押すわけねーだろォ!!」

 

 

「何だ…口ではあんなこと言っておいて結局僕との義兄弟の縁は切りたくないのか。とんだツンデレ気取りだな君は」

 

 

「気持ちワリーこと言ってんじゃねーぞ腹黒提督! いつ誰が誰にデレたよ!? どっちかつーとバリバリのツンだろーが! ツンツンに尖ったツンで刺し殺してやろーかァ!!」

 

 

「今のは殺人予告だな。よし、現行犯で逮捕する」

 

 

「やれるもんならやってみろやボケェ! 不当逮捕で逆に訴えたらァ!!」

 

 

「ああ、あと罪状に侮辱罪も追加しておこう。それと確か、君には結婚詐欺の容疑があったな。ウチの義妹から一体いくら騙し取るつもりだったんだ?」

 

 

「オイぃぃ! 何話前のネタ引っ張り出してきてんだァ!! つーかいい加減にしろよてめェ!! さっきからボケ倒しじゃねーか! お前そんなボケるキャラじゃねーだろ! アレですか、イメチェンですか? 銀魂とのクロスオーバーを機に真面目キャラからクールボケキャラにイメチェンですかコノヤロー!」

 

 

「君相手に真面目にやっても疲れるだけだからな。こっちも軽くふざける位の対応でちょうどいい。毒を以て毒を制すという奴だ」

 

 

「誰が毒だコラァ!!」

 

 

そんな義兄弟の険悪なやり取りの様子を眺めながら顔を引きつらせた新八は、銀時の隣に座るフェイトにこそっと話しかけた。

 

 

「あの…フェイトさん、もしかしなくてもあの2人って…相当仲悪いんですか?」

 

 

「うん、昔からね」

 

 

新八の問いに対して、フェイトは苦笑しながら答える。

 

 

「今はだいぶ柔らかくなったけど、クロノはすごく生真面目で正義感が強い人でね、色々とテキトーで自堕落な銀時とは、全然反りが合わないんだよ。あと甘党の銀時と違って、クロノは甘い物が苦手だし……」

 

 

「なるほど…色々と真逆な2人ってことなんですね…」

 

 

「まるで水とガソリンアル。同じ杉○でもエラい違いネ」

 

 

「油ね油。あと神楽ちゃん、声優ネタはやめようか」

 

 

そこまで話したところで、今まで黙っていた陸奥が静かに口を開いた。

 

 

「すまんが、そろそろ本題に入らせてもらうぜよ」

 

 

「あ、ごめんなさい。ほら、銀時もクロノもその辺にして座って」

 

 

「……ケッ」

 

 

「……フン」

 

 

フェイトの鶴の一声により、ようやく互いに矛を収めた銀時とクロノは毒づきながらソファに腰を下ろした。

 

 

「改めて…久しぶり、陸奥。今日はどうしたの?」

 

 

「ふむ…実はのう……」

 

 

フェイトに尋ねられて、陸奥は万事屋にやって来た理由(わけ)と経緯を話し始めた。

 

 

 

陸奥の話によると……昨夜、江戸の港にある倉庫で快援隊は、とある企業と商談による取引をしていた。商談は滞りなく成立し、あとは企業から大金を受け取って商品を引き渡すだけだった。

 

だがその時、何者かが取引現場を襲撃。立ち込める煙幕に動揺している間に、金も商品も全て奪われてしまったとのことだった。

 

 

 

「──という訳で積荷も金も奪われてしまったきに。頭といえば地球に着くなりフラっと外に出て行ったきり行方不明じゃ。おまん、何とかするぜよ」

 

 

「なんとかって同情か? 慰めてほしいのか? 優しい言葉をかけてほしいのか?」

 

 

「違うよ銀ちゃん、罵倒ヨ。汚い言葉を浴びせかけてもらいたいアルヨきっと」

 

 

「どっちも違うから。あと神楽、女の子がそんなこと言っちゃダメっていつも言ってるでしょ」

 

 

「そうですよ。これって依頼ですよ、たぶん」

 

 

「たぶんじゃないきに。立派な依頼じゃ」

 

 

「依頼ィ? 言っとくけどこれビジネスだから。知り合いだからって割引きなんてしねーよオイ」

 

 

「金ならある」

 

 

「で、依頼内容は?」

 

 

「切り替え早っ」

 

 

鼻をほじりながらやる気のない態度だった銀時が、陸奥が差し出した厚みのある封筒を見て、即座に態度を切り替える。そんな現金な銀時に新八が軽くツッコんだ。

 

 

「これを見るぜよ」

 

 

そう言って陸奥がテーブルに置いたのは1枚の写真。そこにはドラム缶ほどの大きさの電池のようなものと、それらが梱包されたダンボールが写っていた。どうやらそれが今回奪われた積荷の写真らしい。

 

 

「これって、ずいぶん大きいけど……電池?」

 

 

「そうじゃ。しかしただの電池ではなか。『感電血』と呼ばれるナッシオナル星の特殊鉱物より抽出された物質で作られた、これ1本で宇宙戦艦の動力全てを賄える優れものじゃ」

 

 

「僕がここに来たのも、この感電血が目的だ」

 

 

するとここで、クロノが腕を組みながら口を開いた。

 

 

「実を言うと……時空管理局も、この感電血を購入しようと前々から快援隊に取引を持ち掛けていたんだ」

 

 

「管理局が?」

 

 

「つーか、快援隊って管理局とまで取引してんのかよ」

 

 

「管理局だけじゃないきに。頭が得意の口八丁で局の上層部を誑し込んで快援隊の次元渡航許可証をもぎ取ってきたおかげで、今や宇宙だけでなく次元世界までもがわしら快援隊の商いの場じゃき」

 

 

「あのバカ……いつの間に……」

 

 

銀時は相変わらずの『サギ師』と比喩されるほどの商才を持つ戦友の顔を思い浮かべながら、呆れたように呟く。

直後、「アッハッハッハ」と耳障りな幻聴が聞こえてきたので、すぐに脳内からそいつの存在を消したのは銀時だけが知るところである。

 

 

「……話を戻そう。その快援隊と取引予定だった、たった1本で戦艦1隻の動力全てを補える感電血…これを次元航行艦の新たな動力源にすれば、かなりコストを削減できる。そしてその試験機として、僕が艦長を務める『クラウディア』に導入されることが決定していたのだが……」

 

 

「その取引の前に、感電血が全て奪われてしまった…ってこと?」

 

 

フェイトが続けて言った言葉に、クロノはコクリと頷いた。

 

 

「で、わざわざ艦長様が直々に取り戻しに来たと? 大変ですねェ提督様も。つーか、だったら俺たちに依頼するより、てめェら管理局で動いたほうが早くね?」

 

 

「それができたら苦労しないんだよ。特にこの江戸ではね」

 

 

銀時の嫌味の篭った言葉にやれやれ…と言いたげに嘆息するクロノ。そんなクロノに代わって、フェイトが説明する。

 

 

「銀時、管理局ではね…幕府との条約で、基本的に江戸で起きた事件には一切関与することはできないんだよ。江戸で捜査するには幕府からの許可のもと…江戸の警察組織に出向するか、彼らと合同捜査を行うしかない。だから今回のことも江戸で起きた以上、管理局は介入できないんだよ」

 

 

「ふーん。要するに色々めんどくせーんだな管理局」

 

 

フェイトのその説明に銀時は小指で耳をほじりながら、分かったのか分かってないのか曖昧な返事をする。

 

 

「つまり…僕は今回、局員や提督ではなくクロノ個人としてここに依頼に来たという訳だ。もちろん快援隊同様にこちらからも報酬も出す。君たちなら江戸に詳しい上に、顔も利くだろう」

 

 

「そういうわけで、おまんらにやってもらうのは感電血と金の回収、及び頭を見つけ出してわしの前に連れてくることじゃきに」

 

 

「言うのは簡単だがよォ、手がかりが少なすぎやしねーか? 江戸ったって広いんだよ。これは砂浜から特定の砂粒見つけ出すようなモンだぜ」

 

 

言い方はアレだが、銀時の言い分は正しい。江戸の街はかなり広い。街中を地道に調査するとなれば、かなり骨が折れるだろう。

すると、そんな銀時の言い分に対し、陸奥は懐から1枚の名刺を取り出した。

 

 

「快援隊に心当たりはない。何か探りたいなら、取引相手の所に行くぜよ」

 

 

その名刺には『青木商会』という会社の名前が記載されていた。どうやらこの会社が、昨夜の取引相手らしい。

 

 

「ああそうそう、それと……困った時はコレを使うぜよ」

 

 

そう言うと陸奥は思い出したように、また懐から取り出したものをゴトリとテーブルに置いた。それは紛れもない一丁の拳銃だった。

 

 

「あの…陸奥…それ拳銃だよね? そういうのはちょっと……」

 

 

「気にするな、念の為ぜよ。持っておいても損はないきに」

 

 

フェイトがやんわりと返却しようとするが、結局陸奥に押し切られる形で銀時が持つことになった。

 

 

「依頼内容は以上だ。大変だと思うが、よろしく頼む」

 

 

「それからもし頭を見つけたらまずは──ふぐり蹴っ飛ばしといてくれ」

 

 

クロノと陸奥のその言葉を最後に話は終わった。そして若干の情報不足は否めないが、銀時たち万事屋一行はさっそく捜査の為に江戸の街に繰り出したのであった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

すっかり日が傾き……夕陽で赤く染まる江戸の街を、どこかに向かって歩く万事屋一行。

 

 

「銀さん、まずはその取引相手の所に行くんですよね?」

 

 

「いいや」

 

 

「じゃあどこ行くアルか?」

 

 

「ふぐり蹴り飛ばしに」

 

 

「ふぐり?」

 

 

「神楽は知らなくていいから」

 

 

因みにふぐりとは……要するにキン○マのことである。

 

 

「ああ、坂本さんのことですね。どこにいるか見当がついてるんですか?」

 

 

「まァな」

 

 

「やっぱりアレですかねー、快援隊の隊長なわけですから、責任を感じて独自に調査とかしてるんですかね」

 

 

「新八、それは絶対にないと思うよ。私も数年前にちょっとしか面識ないけど…あの人がそんな殊勝な人とは到底思えないから」

 

 

「フェイトの言う通りだ。前にも言ったよなァ? あいつ、頭カラだから」

 

 

それからしばらくして、銀時について行くままにたどり着いたのは……新八の姉、お妙が働いているキャバクラ『スナックすまいる』。

 

 

「おりょうちゃァァん!! 結婚してェェェ!!」

 

 

「ノーセンキュー!!」

 

 

そこではサングラスをかけた黒いモジャモジャ頭の男が、大声で求婚しながらキャバ嬢にダイブし、断られながらふぐり蹴飛ばされていた。

その深紅のチェスターコートと白いマフラーを身に着け、下駄を履いた男こそ…快援隊の社長にして銀時のかつての戦友『坂本辰馬』である。

 

 

「本当アル、カラだったアル」

 

 

「俺が蹴るまでもなかったな」

 

 

「アッハッハッハッハ!」

 

 

股間を蹴られて床に倒れながらも能天気な声で大笑いをしている坂本を、銀時たちは冷めた目で見下ろしている。すると坂本は、そんな銀時たちに気がつくと、ガバっと勢いよく起き上った。

 

 

「おおっ! 金時! それにファイトちゃんじゃなかか!! 久しぶりじゃのー! 元気じゃったか!?」

 

 

「金時じゃねェ、銀時だ。いい加減覚えてくんない?」

 

 

「私もファイトじゃなくてフェイトです。そんなやる気に満ち溢れた名前してませんから」

 

 

相変わらず人の名前を間違える坂本にツッコミを入れる銀時とフェイト。銀時はそんな彼に呆れて溜息をつくと、そのモジャモジャ頭の髪をむんずと鷲掴みにする。

 

 

「オラ行くぞ」

 

 

「イタタタタタ!! いきなり何しよるがか!? おい金時ィ!」

 

 

喚く坂本を引きずって、すまいるを後にする万事屋一行。

店から外に出ると、もうすでに陽は沈んで夜になっていた。それでも昼間よりも活気があるように見えるのは、このかぶき町が夜の町とも呼ばれる所以だろう。

 

 

「イダダダダ!! 千切れる! ホント千切れる! やめるぜよ金時!」

 

 

「何度も言わせんじゃねーよ! 金じゃなくて銀だから! いつまで引っ張るつもりだそのネタ!」

 

 

「わ、わかった! わかったぜよ! だから放すぜよ!」

 

 

そう言うと、銀時は不満気ながらも坂本の髪から手を放す。

 

 

「イタタタ……んで、ワシに何の用じゃ? 金時」

 

 

「って何聞いてんだおめェ!!」

 

 

「待ってください銀さん! こんなことやってたらいつまでも話が先に進みませんよ!」

 

 

わかったと言いながらも名前を間違える坂本に、キレた銀時が殴り掛かろうとするが、それは新八が必死に止めた。

 

 

「まったく、相変わらず乱暴な奴ぜよ。ファイトちゃんもあがな旦那を持って大変じゃの~」

 

 

「フェイトです。わざとですよね? もうわざと言ってますよね? いくら私でも怒りますよ」

 

 

「アハハハハ! そげな怖い顔すると美人が台無しぜよ! ファイトちゃん」

 

 

「ねえ、もうこの人の頭叩き割っていいかな? 言葉のキャッチボールもまともにできない頭なんて必要ないと思うんだ」

 

 

「アハハハハ! 何を言うとるんじゃファイトちゃん! キャッチボールくらいワシにだってできるぜよ! こう見えてワシは根っからの巨人ファンじゃからのー! アハハハハ!」

 

 

「何でこの人こっちの投球(ことば)を全部無視しするの? 何で魔球(ボケ)しか投げてこないの? 何でツッコむ気が失せるくらいに明後日の方向に大暴投するの? もう打っていいかな? ボールの代わりにこの人のふぐりをホームランしてもいいかな?」

 

 

「ダメですってフェイトさん!! 気持ちはわかるけど落ち着いてくださいィィ!!」

 

 

顔に青筋を浮かべてバルディッシュをまるでバットのように構え始めるフェイト。そんなフェイトに新八がすかさず止めに入る。しかしそこへ更に、木刀を持った銀時と日傘を持った神楽までが加わる。

 

 

「そうだぞフェイト、無理すんな。俺が代打でその毛玉をホームランしてやらァ」

 

 

「待つアル! 代打なら私に任せるヨロシ。宇宙の果てまで場外ホームラン確実ネ」

 

 

「おいィィ!! おめーらまで入ってくんじゃねーよ!! 余計に話が進まねェだろーがァァ!!」

 

 

夜の大通りで人目も気にせずギャーギャーと騒ぎ立てる万事屋一行。すると、そこへ事の発端である坂本が呑気な口調で割って入る。

 

 

「あの~、こう見えてもワシャ忙しいきに。用がないなら帰らせてもらってもいいかのう? アハハハハ!」

 

 

「「「「てめェの為に動いてんだよこっちはァァァ!!」」」」

 

 

その言葉に万事屋一行が激怒し、彼らの怒声が夜のかぶき町に響き渡ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

つづく






遊び過ぎた。恐らくあと2話ぐらいはかかります。

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