銀魂×リリカルなのは 作:久坂
ほとんど勢いで執筆した見切り発車作品です。もしウケがよければ続くかもしれません。
感想よろしくお願いします。
女っ気のない奴に限って実はちゃっかり結婚していたりする
『侍の国』
この国がそう呼ばれたのは今は昔。江戸に舞い降りた異人『
そしてその江戸にある町『かぶき町』。その町の大通りには、とある3人組と1匹が歩いていた。
「いや~今回はなかなか大仕事だったなぁ」
銀髪の天然パーマ、死んだ魚のような目、着物を片側だけ着崩し、柄に『洞爺湖』と刻まれた木刀を腰に差した男。かぶき町にて『
「まったくネ、まさかあの場面であんな事が起こるなんて思いもよらなかったアル。ねー定春」
「ワン!」
日傘を差し、透けるように白い肌にオレンジの髪を頭の両サイドで三つ編みにしてぼんぼりで纏めて団子状にした少女『神楽』。万事屋の従業員にして、宇宙最強の戦闘民族『夜兎族』の少女である。
そして彼女が跨っているのは、ヒグマ並の巨体を持つ、真っ白な毛並みが特徴の超巨大犬の『定春』。万事屋のマスコットにして神楽のペットである。
「でもその分、報酬を弾んでもらったんですから、よかったじゃないですか」
神楽と同じく万事屋の従業員で、特に特徴も無く地味で眼鏡な少年『志村新八』。
「オイィィィ! なんか僕の紹介だけおざなりすぎるんだけどォォ!」
「しょうがないヨ、所詮新八はただの眼鏡アル。描写があるだけ感謝するがいいネ」
「それもう人間じゃねェだろォ! 違うからね! 新八はちゃんとした人間だからね!」
因みに、彼のツッコミのセンスは群を抜いており、江戸一番のツッコミ使いである。
「うーしテメェら、帰ったら今日はたんまり頂いた金でウマイもんでも食いにいくかァ」
「キャッホウ! マジでか銀ちゃん! 久々に卵かけご飯をお腹いっぱい食べられるネ!」
見かけによらず大食漢である神楽は大ハシャぎである。対して新八は、若干不服そうに声を漏らす。
「ご飯もいいですけど、ちゃんと溜まった家賃と僕らへの給料も払ってくださいよ」
「へいへい、わーってるよォ」
ひらひらと右手を振りながら適当な返事で答える銀時。そんな銀時の態度に新八は「こいつ払う気ねーな」と、額に血管を浮き上がらせながら呟いた。
そんな会話をしている間に、一行はかぶき町の一角にあるスナック『お登勢』の2階に立つ『万事屋銀ちゃん』へと帰ってきた。スナックの前を横切り、その先にある階段をのぼって2階に上がる。そして廊下を少し歩いて、ようやく到着した。さっそく家主である銀時が引き戸の鍵を開けようとしたその時……
「あり?」
突然、銀時がそんな声を漏らした。
「どうしたんですか、銀さん?」
「鍵、開いてら」
なんと、銀時が開ける前からすでに鍵が開いていたらしく、それを聞いた新八は非難の目を銀時に向ける。
「ちょっと銀さん、まさか鍵開けっ放しで出てきたんですか? 戸締りはちゃんとしないとダメじゃないですか」
「いやいやいや、銀さんちゃんと鍵かけたからね。しっかりLOCKしたの確認したからね」
「なんで発音良く言ったんですか」
軽いツッコミを入れながらも、新八は疑わしそうな目を銀時に向けている。普段のちゃらんぽらんな姿をよく知っているがゆえに、おいそれと信用できないのだ。
すると、神楽がハッとしたような顔で口を開く。
「もしかしたらドロボーかもしれないネ。まずいアル、きっと私の下着目的ネ」
「誰もテメェのゲロ臭ェ下着なんざ興味ね──ぶっ!!」
余計なことを言った銀時の右頬に、神楽の強烈な右ストレートが炸裂した。殴られた箇所を抑えながら、銀時は話を続ける。
「ま、まぁ仮にドロボーだとしても、ウチの金庫にはもう小銭とチクワしかねーから大丈夫だろ」
「いやそれ別の意味で大丈夫じゃないです」
「とにかく、一旦休んでからメシ行くぞ。今日はパフェ3杯はいけてー気分なんだよ俺ァ」
「アンタホントもう糖尿になりますよ」
そんな会話をしながら、ガラガラと音を立てて引き戸を開けて玄関に入り、3人ともさっさと靴を脱いでさっさと奥の広間へと向かって足を進めて行く。
だが銀時たちは気がつかなった。玄関に3人のものではない──女性ものの靴があったことに。
「うーい、万事屋銀ちゃんのお帰りだぞォっと」
広間への引き戸を開けながら、何気なくそう言った銀時。中には誰も居ない。そう思っていたからこそ、本当に何気なく言ってみただけだった。
だから銀時は思いもよらなかった──
「あ、おかえりなさい♪」
「──え?」
まさか返事が返ってくるとは、思いもしなかった。
返事を返したのは、絶世の美女だった。腰まで届く長い綺麗な金髪をストレートにして下部分を黒いリボンで結い、ルビーのような紅い瞳に、幼さを残しつつもキリッとした凛々しい顔立ち。そして出る所は出て、引っ込む所は引っ込んだほぼ完璧なプロポーションを持った美女は、部屋着と思われる服の上から黒いエプロンを身に着けた姿で、銀時たちを出迎えたのだった。
「(だ…誰ェェェエエエ!!?)」
突然の美女の登場に、新八は心の中でシャウトした。その隣にいる神楽は、警戒心を露にしながら美女を睨む。そして新八と神楽が美女に対して口を開こうとした瞬間、銀時が言い放った。
「おーなんだ、帰って来てたのか」
「うん、ついさっきね」
「「(え?)」」
思わず新八と神楽は半目で銀時を見る。彼の美女に対する対応が、あまりにも気安かったからだ。だがそんな2人を他所に、銀時と美女は会話を続ける。
「あっちでの仕事は終わったのか?」
「うん、ようやくね。しばらくはこっちでゆっくりできそうだよ」
「そうか。ま、おかえり」
「えへへ、ただいま♪」
銀時がポンっと軽く美女の頭に手を置くと、頬を朱に染めて嬉しそうに美女は笑った。それに釣られるように、銀時も無言で微笑み返した。
「えっ…ちょっ……なにこれ? なにあれ? なにあの銀魂にあるまじき甘い雰囲気? なにあのピンク色の空間? あそこだけ完全に別世界になってんだけど」
「なんか見てるだけで胸焼けしてくるネ。今にも砂糖吐きそうアル」
完全に蚊帳の外になりながらもその光景を眺めていた新八は顔を引きつらせながら神楽にしか聞こえないくらいの小声で呟き、青い顔した神楽が同じく小声で吐き気を訴える。
「ってゆーかあの人誰? 銀さんの知り合いみたいだけど……」
「気になるネ。新八、オマエちょっと聞いてこいヨ」
「いや、流石にあの雰囲気に割って入るのは空気読めない奴みたいでちょっと……」
「新八がKYなのはいつものことアル。心配せずにいつもみたいに大声でKYツッコミを入れてくるがヨロシ」
「KYツッコミって何だァァ!? そもそもオメェも十分KYだろーがァ! 所構わず毒舌とゲロを吐き散らかすゲロインのくせに!」
「んだと駄眼鏡コラァ!! その眼鏡叩き割ってただの影の薄いダメにしてやろーか! アァン!?」
互いを罵りながら取っ組み合いを始める新八と神楽。ただし声はちゃんと小声なので、銀時と美女に聞こえることはなかった。
最終的にこのケンカは神楽の強烈なボディブローが新八の鳩尾に叩き込まれたことで決着したが、さすがに暴れ過ぎたのか、銀時が2人に振り向きながら言った。
「おい、さっきから後ろでバタバタうるせーよ。第1話だからってハシャいでんじゃねーぞバカヤロー」
新八は「誰のせいでこんな事になったと思ってんだ」と怒鳴りたくなったが、そこをグッと抑えながら……ついでに神楽に殴られた鳩尾も抑えながら……謝罪ついでに聞いた。
「す…すみません……ところで銀さん、そちらの女性は……?」
「あ、あーこいつか? こいつはーそのー…アレだよ……」
新八の問いに、銀時にしては歯切れが悪く、それでいて珍しく少し照れたように頭をガシガシと掻きながら、言った。
「──妻だよ」
その瞬間、ピキリっと空気が凍ったような音がした気がした。
「え…え~と……つま? つまってアレですよね? 刺身とかに添えられてる、大根の細いやつですよね」
「その女がつまなら、銀ちゃんはチリチリ焼かれたカツオのたたきネ」
「誰がチリチリ頭のカツオのたたきだコラ。オメーらを叩き潰すぞ、カツオで」
完全に顔を引きつらせながらボケに走った新八に神楽が便乗し、銀時が顔に血管の十字路を浮かばせながらツッコミを入れる。
「そっちのつまじゃなくて妻! 嫁だ嫁!!」
「……嫁って、そちらの金髪の美女が?」
「銀ちゃんの?」
「そうだよ」
銀時が頷くと、新八と神楽が顔を俯かせて黙り込む。そして……
「「嘘つけェェェエエエエ!!!!」」
「ぶべらァァ!!」
大シャウトしながら同時に銀時に飛び蹴りをかました。当然銀時は勢いよく床に叩きつけられて転がる。しかし新八と神楽は収まらず、2人は揃って銀時を踏み付けるように蹴りながら叫ぶ。
「あんな美女がテメーの嫁なわけねェだろうがァ!! ここが二次小説だからってどんな設定でも許されると思うなよボケがァァ!!!」
「そうアル! おまえみたいな万事屋とは名ばかりの万年プー太郎の腐れ天パに嫁なんか来るハズないネ! 来たとしてもそいつはきっとビニールで出来た嫁アル!!」
なかなか酷い事を言いながら、銀時をガスガスと容赦なく蹴りまくる新八と神楽。それを止めたのは、事の張本人でもある美女だった。
「待って待って! 新八君も神楽ちゃんも待って!」
名乗った憶えもないのに、見知らぬ美女から名前を呼ばれた新八と神楽は、驚いて思わず銀時への制裁の手(足)を止めて美女の方を見た。
「あの、何で僕と神楽ちゃんの名前を? そもそも、あなたは一体……?」
新八の問い掛けに、美女はくすりと笑いながら答えた。
「2人のことは、銀時からたまに送られてくる手紙で聞いてたから」
そして美女は、ニッコリと綺麗な笑顔を浮かべながら、静かに名乗った。
「初めまして、私はフェイト・T・サカタこと、坂田フェイトです。正真正銘──坂田銀時の妻です」
そう言って美女──フェイトは左手薬指で光沢を放つ、指輪を見せたのだった。
それを聞いた新八と神楽は、揃ってこれでもかと言うほど目を見開き……
「「マ…マジでかァァァァァアアアア!!!!」」
かぶき町中に響き渡るのではないかというほどの、全力の大声で叫んだのであった。
つづく
作者は銀時×フェイト推しです。