きゃすたー・おぶ・じ・あるとりあ   作:ヤトラ

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FGO始めたからか久々に書く気になりました。アポクリファもチラっとでも見ると素敵要素満載です(笑)

黒のキャスターがキャストリアに、赤のセイバーが勇モー王になったIFの話。

注意:アポクリファはアニメをちょっと見た程度の完全ニワカなので続きません。


きゃすたー・いん・あぽくりふぁ

 それは、突如としてブリテンの君主・アーサー王が失踪した事から始まった。

 

 選定の剣を抜いて王となったアーサー王は、「完璧な王」としてブリテンを治め、ブリテンの敵を悉く倒していった騎士の王である。

 しかし、彼を支えるはずの円卓の騎士との間には多くの不和があった。その中でも、ランスロットとギネヴィアとの逢引、そして異父姉モルガンの子・モードレッドとの会食は大きいだろう。

 

 『モードレッドとの会食』―――説では酒で酔った所をモードレッドに襲われ、命乞いをしたアーサー王が王位をモードレッドに譲ると約束したとされるが……未だ真実は明らかになっていない。

 解っているのはアーサー王が忽然と姿を消した翌日、折れし選定の剣とアーサー王の聖剣がモードレッドに託された事で、モードレッドが新たなブリテンの王になったという事実だ。

 

 これだけなら醜い話とも酷い話だとも思うだろう……しかし、この決断はブリテンの未来を大きく変えた。

 

 モードレッド(が)王となったことでアーサー王に対する円卓の騎士との不和は解消し、モードレッドは今までとこれからの不和を帳消しにすべく、円卓の騎士やモルガンに様々な罰や改善を施した。

 その多くの内容にも様々な憶測や説があるが、此処では省略させていただく。1つだけ記すとすればランスロットとギネヴィアを国外に追い出した事か。

 そしてモードレッド王はアーサー王に匹敵、いやそれ以上の快進撃を続けた。政治に関する良い話は聞かないが、戦と争いに関しては無敗と言っても過言ではない。

 快進撃に合わせるように苦しんでいた民達は息を吹き返し、モードレッド王の雄姿を目の当たりにしてきた。その記録は多く残されており、貧しいながらも未来に生きた当時の日々が伺える。

 

 

 ブリテンが滅びた後も、生き延びた人々はモードレッド王の事をこう呼ぶ―――勇猛王モードレッドと

 

 

 一方でブリテンでは「魔術師アルトリア」という古い伝説が残っている。

 

 こちらは前述した「勇猛王伝説」とは打って変わり、記した者の殆どが平民という御伽噺のような曖昧な物となっている。

 

 民を救えなかった事に嘆いたアーサー王が魔術師として生まれ変わり、ブリテンの人々を救い続け、最期は勇猛王と共にカムランの丘に向かったという短い物語だ。

 数多く残っている伝承を解析したところ、当時最悪とも言えたブリテンの食糧問題を改善し、現代における薬剤学や治療術を編み出したとされる。

 中には衰弱した勇猛王が完全復帰を遂げたのは、不義の子とはいえ息子の病を嘆いた魔術師アルトリアが治したからだと書かれているが……これも定かではない。

 

 この「魔術師アルトリア」の存在は平民が生み出した空想上の人物と思われていたが、かつてカムランの丘と呼ばれた場所にてある物(・・・)が出た事で一転する。

 

 

 

 

 ―ユグドミレニア一族が、遥か地中に眠っていた『約束されし勝利の剣(エクスカリバー)の鞘』と『アルトリアの宝杖』を発掘したのだ。

 

 

 

 

 ルーマニアのとある地……ユグドミレニア一族が支配する城砦にて、ある模擬戦闘が行われていた。ホムンクルスの定期的な練習試合のようなものである。

 勿論、ただの戦闘訓練ではない。魔術が飛び交い、武器を交わし、様々な戦略や人海戦術を当主に披露し「使える」事をアピールする為の大事な物だ。

 とはいえ、戦うのは全てホムンクルス……量産こそされるが短命とされる彼らの戦闘能力は、魔術師やある存在(・・・・)から見れば雑兵も当然である。

 

 それは凄まじい戦闘だった。

 

 ただの槍でも振えば岩が裂け、ただの弓でも矢を放てば弾速を超え、一般的な魔術を放てば高火力となって地面にクレーターを作る。

 拳を振えば音を置き去りにし、大地を蹴れば土を抉り、駆ければチーターを思わす速度を出す。体術・剣術・槍術といった武術は全て達人のソレだ。

 そんな身体能力を持ちながら頭脳も優れており、様々な陣形や乱戦、時には1対100の劣勢ですら熟している。皆真剣で、知恵を絞り、模擬でも決死の覚悟で戦う。

 

 こんな、魔術師にとって一般的な「ホムンクルスの常識」を覆す大戦闘が行われているなど、誰が想像できよう。

 

「……素晴らしい光景ではないか、ダーニック」

 

 そんなホムンクルス達の模擬戦を高所から見下ろしている男が居た。黒い貴族服を着込んだ彼は、数十名の激しい戦闘を眺めながら感嘆の溜息を零す。

 一方で、そんな彼の隣に立つ若い男は対照的だった。額には冷や汗が滲んでおり、笑顔は引きつっている。幸いにも隣人は眼下の光景に夢中だったので、こっそりとハンカチで汗を拭う。

 

 後者は、ここミレミア城砦の支配者にしてユグドミレミア一族の長・ダーニック=プレストーン=ユグドミレミア。見た目は若い(※年若い=年齢が若い)が齢百歳前後の高齢にして腹黒い男だ。

 前者は、そんなダーニックによって召喚された英霊……ここルーマニアのかつての支配者であるヴラド3世である。クラスはランサー。

 

「生前の余に恵まれなかったもの……それは数多あるが、1つは彼らのような精鋭だ。1人1人が屈強にして賢人、何より余への忠誠と敬意を示している……良き兵達よ」

 

「そのようですな……まさかこれ程の物とは思いませんでした」

 

 冷や汗を拭いながらヴラド3世の言葉に頷くダーニック。長年生きて来た彼だからこそ、眼下に広がる有り得ない戦闘力を受け入れるのに苦労しているようだ。

 だがこれはダーニックにとって良い兆候だ。ヴラド3世ら英霊には及ばないとはいえ、量産可能なホムンクルスがこれほどまでの戦闘能力を持つとなれば間違いなく害を為せる。

 彼らに上等な装備を与えれば更に戦闘力は増すだろうと、ダーニックは脳内で武器の輸入や精製のプランを考慮する。

 

 ダーニックにとって、此度の聖杯大戦(・・・・)は負けられない……負けるわけにはいかないのだから。

 

「これも貴様の成果の1つか、キャスターよ」

 

 そんなダーニックを他所に、笑みを深めるヴラド3世は後ろを振り向いた。

 

 そこに居たのは若い女性だった。青を基調として白の装飾が施されたローブを纏っており、フードを目深に被っている。

 先端に赤い宝石が埋め込まれた木の杖を両手で握り、女性は俯き気味だった顔を上げてヴラドを見据える。その瞳は若干の恐怖こそ滲んでいるものの、穏やかな笑みを彼に向けていた。

 

「ええ、我が王。私の持ちえる全ての知恵を、彼らの為に……ひいては王の為に働かせました」

 

「ダーニックは貴様を『治療と防御に秀でているキャスター』とは言っていたが、まさかホムンクルスの強化まで施せるとは。大儀である」

 

「ありがたきお言葉です」

 

 かつて自国の将に「串刺し公」と恐れられ裏切られたヴラド3世にとって、キャスターと呼びし女性の小さな恐怖など気にしない。

 遠慮なく彼女を評価し、彼女も嬉しそうに微笑んで頭を垂れる。ダーニックも今更になって彼女の類まれなる才能を認め、同時に警戒を強める。

 

 彼と彼女は特例によって召喚された英霊だ。特にキャスターは、ミレミア城砦の防御力強化の為に早々から召喚し、こうしてホムンクルスの強化に宛がっている。

 正直に言えばダーニックはキャスターの持つ宝具と魔術に目が行っていた。何故ならキャスターはそれほどまでの知名度と伝説を持つ存在―――『魔術師アルトリア』なのだから。

 

「キャスター、貴女の要望には応えてきましたが、我々はより高い成果を求めています。此度の聖杯大戦、負けるわけには行かないのです」

 

「ええ、承知しておりますダーニック氏。かつては私も、弱いとはいえ国を救うべく魔術師となってでも立ち上がった身。護国の助けになるとなれば、全力を尽くします」

 

 何故かビクっとダーニックに怯えつつも、力強く答えるキャスターことアルトリア(・・・・・)。同じ国を護ろうとした身として、ヴラド3世も彼女の意気込みに共感していた。

 

 彼女の要望……それはマスターに変わる英霊への魔力供給の手段として、ただ無為に生み出す為のホムンクルス達に救いを与える事だった。

 幸いにもキャスターはホムンクルスを強化・改善する術を心得ており、数多のホムンクルス全てに延命や身体強化を施し、培養液漬けの日々から解放させることに成功。

 誕生こそ培養液からだが、魔力供給は彼女が編み出した宝具……約束されし勝利の剣(エクスカリバー)の鞘を媒体とした『全てを救いし理想郷(アヴァロン)』に祈れば良いというお手頃な物となった。

 

「『全てを救いし理想郷(アヴァロン)』の構築も順調です。順当にホムンクルスを増やし強化していけば、いずれはあらゆる厄災を跳ねのけましょう」

 

「強く出ますね……相手は我々と同じ7騎のサーヴァントです。何が出るか解らないのですよ?」

 

「解らないからこそ……私のような未熟者には、それぐらいの意気込みが無いとやっていけないのです」

 

 どよん、と暗くなるキャスター。通常の聖杯戦争でも生き残れる自信が無いのに、7対7の(・・・・)亜種聖杯戦争(・・・・・・)に挑む事を恐れているのだ。

 キャスター……かつてアーサー王と呼ばれし魔術師を黒の陣営として召喚できた事を喜んでいたが、こんな弱気で大丈夫なのかと眉間に指を添える。

 

「やっぱりここにいた! せんせーい!」

 

 無邪気な声が遠くから聞こえてくる。キャスターのマスターである少年……人形工学に精通している魔術師ロシェ=フレイン=ユグドミレミアである。

 子供好きであるキャスターの表情が少し明るくなり、駆け付けて来たロシェに振り向く。

 

「マスター、如何なさいましたか?」

 

「如何も何も、ゴーレムの作り方を教えてーっていうから時間空けたのに、先生ったらちっとも来ないんですから!」

 

「そうでした、ほったらかしにして申し訳ありません。では王よ、席を外しても?」

 

 魔術師としてゴーレム作成に関心を持ったキャスターはロシェに知恵を学び、同時にロシェはキャスターの斬新な発想と工夫に興味を持った。

 オマケにロシェは幼い頃からの養育をゴーレムに任された為、キャスターの「頼りないけど暖かい感じ」を大層気に入り、彼女を「先生」と呼んで慕っている。

 そんなロシェとの触れ合いを大事にしたいキャスターは、念のためにヴラド3世に確認を取る。

 

「良い。これからも励むが良い」

 

「……王の為にも」

 

 深々と頭を下げ、ロシェと共に歩き出す。護国の将としての自分を見てくれるキャスターの背を見送ってから、再びホムンクルス達の模擬戦を眺める。

 嬉しそうに先頭を歩くロシェの後姿を追いながらキャスターは思案する。ユグドミレミア一族。ヴラド3世の過去。フィオレの足。ホムンクルス達。ダーニックへの警戒。そして……。

 

(1つだけ他とは違う兆しが見えたホムンクルス……確かな結果が出るまで待つのが賢明でしょうね)

 

 我が子(・・・)の病魔を払う為に鍛えたホムンクルスに対する知恵。数多くの魔術の中でも自信があるからこそ、キャスターはある予兆を感じ取っていた。

 多くのカプセルの中で眠る造られたばかりのホムンクルス達……その中に僅かな、しかし確かな違いを示すホムンクルスが一体だけいる。

 

(ですがもしも(・・・)の事もあります。彼なら私の杖を授けるに相応しい……)

 

 手に持つ樹の杖……宝具にまで昇華した『アルトリアの宝杖』を握る手に力が籠る。この杖の宝具としての力を大きく引き出す可能性を、あのホムンクルスは実現しようとしているから。

 

「先生、なにボーッとしているんですか? 新しいゴーレムのアイディアでも浮かびました?」

 

 くるり、と翻って後ろ歩きでキャスターを見やるロシェ。対人関係に疎い彼だが、そこそこの付き合いだからかキャスターの顔色を伺うぐらいはできるようだ。

 声を掛けられて咄嗟に「なんでもありませんよ」と言ってロシェに前を向かせ、横に並んで歩く。何気なくロシェはキャスターの手を握り、ルンルン気分で歩き出す。

 

(……今はいいにしましょう。まだ聖杯大戦も始まっていませんし……せめて彼の為にも、頑張りませんと)

 

 

 ―いつか来る大戦の為に、キャスターことアルトリアが出来る事は多い。ロシェの笑顔をみて微笑みながら、彼女は心の中で決意するのだった。

 

 

 

 

―――

 

 フリーランスの傭兵にして死霊魔術師、獅子劫界離の英霊召喚は成功した―――はずだった。

 魔術協会から受け取った「円卓の破片」を触媒にセイバーとして円卓の騎士を召喚する―――そのはずだった。

 

 獅子劫界離の眼前には、巨大な赤い竜が佇んでいた。陽炎のように揺らめく竜は胸を張って彼を見下し、得物を見定める捕食者のような威圧感を放っている。

 冷や汗が止まらない。喉が渇く。眼前の威圧感に圧倒されている獅子劫の脳は停止状態に近かったが、辛うじて意識を保っている。

 

 不意に竜が消えた。赤い陽炎が大きく揺らいだかと思えば瞬時に威圧感と姿を消す。竜から解放された獅子劫は安堵の溜息を盛らすよりも先に、見上げていた視線を下に移し、召喚陣を見やる。

 

 

 ―そこに立っていたのは、赤を基調とし金の装飾が施された、竜をモチーフにしたような鎧を纏う騎士だった。

 

「お前……」

 

 獅子劫は思わずと言わんばかりに声を漏らす。先程の竜の気配はお前が発したのか。お前は何者なのだと様々な疑問が頭をよぎる。

 騎士は何も言わないし何もしない。しかしフルフェイスの兜が独りでに動き出し、獅子劫の警戒心を若干強める。

 

 竜の頭のようなフルフェイスは蒸気のように魔力を吹き出しながら大きく開口。下顎は宝石が埋め込まれた先端を胸当てに押し付け、刺々しい首飾りになる。

 上顎は大きくスライドして背面に固定。後ろ向きに伸びる角も合ってブースターのように見え、実際にブースターの役割でもあるのか魔力の炎が小さく噴出した。

 

 そんなギミックを獅子劫が見やる事は無い。彼の視線は騎士の素顔……金色の髪に翠の眼を持つ少女に釘付けだったのだから。

 可憐さに惚れたわけでもない。女だった事実に驚いたわけでもない。彼は少女から放たれる、王気ともいえる威圧感に息を飲んでいたのだから。

 

 少女は何も言わずに腰の両端に吊るされた剣……燦然と輝く王剣(クラレント)約束された救国の剣(エクスカリバー)を片手ずつ握り、地面に突き刺す。

 獅子劫は二振りの剣を見て今度こそ驚愕した。その二振りの剣は歴史に詳しいわけでもない獅子劫から見ても解る……解ってしまう程に有名な宝具(・・)なのだから。

 

 

「我が名はモードレッド=ペンドラゴン」

 

 

 少女は竜の如き威圧感を多少緩め、しかし凛とした声で告げる。

 

 

「騎士王アーサー=ペンドラゴンの、唯一にして正当な後継者」

 

 

 左にクラレント。右にエクスカリバー。2本の剣を杖代わりに手を添えて見せつける……「自分こそ王である」と。

 

 

「故にブリテンの民はこう呼ぶ―――勇猛王モードレッドと」

 

 

 『勇猛王伝説』の御本人様かよ……獅子劫界離は己の幸運と悪運を、この時ばかりは盛大に喜んだ。

 

 

「問うぞ。お前がオレのマスターか」

 

 

 

 ―この聖杯大戦は、俺()の勝利だと。

 

 

 

 

 並行世界の騎士王と反逆の騎士の運命(Fate)は、ここから始まる。




 ●黒のキャスター:アルトリア(キャストリア)
 触媒はアルトリアの宝杖。黒の陣営ではチート化。
 宝具と魔術で防衛は完璧だしゴーレムとホムンクルスを強化したりフィオレの足を黒のアーチャーのアドバイスで治すかもしれないしジークを強化した上で逃がしたり黒のランサーの吸血鬼化を止めたり赤のアサシンの城にホムンクルス数十人分の魔力を乗せたエクスカリバービームぶっぱしたり赤のセイバーと和解したりと大活躍(かもしれない)
 天敵は赤のキャスター。宝具使われたら過去のトラウマでSan値直葬まっしぐら。

 ●赤のセイバー:モードレッド(勇モー王)
 触媒は円卓の破片(騎士時代の名残)。赤の陣営ではチート化。
 素のステータスが滅茶苦茶高いしエクスカリバーとクラレントの二刀流にキャストリアの強化で周囲の魔力を吸収して燃費が良く獅子劫とも相性が良くキャストリアが敵陣営に居ると直感で察知しやる気も上々で黒のアサシン戦も圧勝(かもしれない)
天敵は勿論黒のキャスター。涙見せられたら戦えないし和解もしちゃう。

 因みに『モードレッドの会食』とは只の酒の席で、アルトリアとモードレッドが酒の勢いで色々とぶちまけた話。
 獅子劫と酒を飲みかわす際にその話を振られてブチ切れたりする。自分は父上を闇討ちする気などないと。

 そんな妄想とニワカ交じりのアポクリファでした。

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