今回のお相手は円卓の騎士の皆さんです。
初日に(アルトリア組にとって)凄まじい出来事を起こした2人だが、マスターを始めカルデアのメンバーや大勢のサーヴァントとも馴染みつつあった。
気の合うサーヴァントやクラス組に親しくなった者、
兎にも角にも2人はカルデアに溶け込みつつあった。宝具も確認でき、戦力としても申し分ない。
頃合いだと感じるようになった藤丸兄妹は、ダ・ヴィンチちゃんとマシュの相談の下、危ない橋を渡る決意をする。
―彼女達にとって、最も因縁深い相手と対面しなければならないのだから。
――
カルデアには様々なサーヴァントが居る。強力な英霊や名高き英霊、反英雄や黒化英霊などなど、画面の向こう側にいる皆さんから見たら羨ましがる程に多く揃っている。
これだけ大勢サーヴァントが集まっていれば関連性を持つ組み合わせが多くなるのも必然だろう。牛若丸と弁慶とか、セプテム組とか、暗殺教団とか、酒気帯びると意気投合するYARIOとか。
中でも闇の深い関連性を持つサーヴァントといえば、アルトリア・ペンドラゴンことアーサー王伝説で有名な「円卓の騎士」だろう。全員ではないがそれなりの人数が居る。
その円卓の騎士の皆さんに、並行世界のアルトリアとモードレッドを会わせるのだ。バッタリ会って混乱を起こさない為にも。
ただし、一度
「……この先におられるのですか?その……
個室の扉を前にしたセイバー版ランスロットが呟き、それに応えるようにぐだ男こと藤丸立香が頷く。
彼の他にトリスタン・ガヴェイン・ベディヴィエールも待機している。この場に居る、カルデアに召喚された円卓の騎士は(隔離中の
「黒王に獅子王と驚かされてきましたが、まさか新たな並行世界の王が召喚されるとは……王の可能性、ひいてはブリテンの可能性は多々あるということですか」
自嘲するように薄ら笑いを零すはトリスタン。アサシン?彼女は置いといてあげて。
尚、彼らは本来の歴史(いや人類が知るアーサー王とは別物だが……)に存在する
「既に
「何にしてもマスター、我々へのご配慮、感謝します」
何故か死んだ魚のような目で「強く生きろ」と言われた事を思い出しつつ、ようやく対面の機会を与えてくれたマスター2人に感謝するベディヴィエールとガヴェイン。
因みに円卓の騎士は
そんな藤丸兄妹からは「まぁ頑張って」と言わんばかりに肩を叩かれるが……一体どんな騎士王なのだろうと今から不安になる騎士達。
そんな不安を払拭するように、先陣を切ったランスロットの目の前で個室のドアが開かれる。
―並行世界の騎士王
「……(おどおど)」
((((え、何これかわいい))))
―小動物のように部屋の中央で怯えている
―――
「ランスロット、トリスタン、ガヴェイン、ベディヴィエール……」
―ドバァ。
円卓の騎士をマジマジと見た後、突如として滝のように涙を零し始めた
そんなキャストリアの涙を見た3名は数秒間硬直してしまう程に衝撃的で、我に返った頃に彼らが見たのは女性らしい嗚咽を漏らすキャストリアの姿だった。
「すみません……並行世界とはいえ、貴方達の姿を久方ぶりに見たもので……色々な感情が……」
慌てて何か言おうとした円卓の騎士らよりも先にキャストリアが手で制し謝るが、すぐさまドヨ~ンと暗いオーラのような物が溢れ出る。
このような対応はこれまでのアルトリアシリーズとの対面を考えても初めてで、円卓の騎士は戸惑うばかり。アサシンはアサシンで独特だったが。
「王よ、どうか落ち着いてください……一体何があったというのです?」
元々女性を敬うランスロットは、自身に不貞や裏切りの罪があったとしても放っておけず、キャストリアを落ち着かせようと問いかけてみる。
とはいえ、他の三人もキャストリアの落ち込み具合を見て大体の事は予想している。何せ生前は数えきれないほどの不義理を犯したのだから。
しかし彼らの予想に反し、キャストリアの応えは―――。
「
「……はい?」
「
―――
そこからはキャストリアの懺悔だった。並行世界の存在故に意味はないのだがキャストリアは話したいと望み、円卓の騎士も了承したのだ。
弱き民を間近で見て人を知ったキャストリアは、円卓の騎士の亀裂を察知し、それを受け入れていた。
ギネヴィアを幸せにできない後悔は、ランスロットが代わりに幸せにしてくれるだろうと押し付け、そんなランスロットを許せないガヴェインの気持ちを察しておきながら、しかしランスロットとギネヴィアの為にと心を閉ざした。
トリスタンの「人の心が解らない」という言葉も「ああ、まさしくその通りだ」と彼らの知らぬ陰で泣いて、それをモードレッドが理解してくれた。ただ一人の人間としてみようとしていたベディヴィエールにも、人としての自分を見せる事ができず後悔した。
彼らの全てを受け入れたからこそ、キャストリアは全てを明かすという選択を避け、皆の前から姿を消す決意をした。自分が居なくなり王の座を
そしてそれは単なる自分の逃げ道でしかなかったのだとキャストリアは後悔で涙を濡らし、そしてこうして並行世界の存在とはいえ顔を見る事ができて幸せだと嬉し涙を零した。
子供のように嗚咽を零しながら語るキャストリアを前に、円卓の騎士達は黙ってそれを聞いていた。
そして一つ理解した事がある―――
この話は並行世界……それも互いに別世界の存在だ。話しても聞いても意味はないし、有り得るだろう未来と過去を思い描いても仕方がない。
それでも「人としての王と解り合えた世界」という可能性を見出した騎士達は、一筋だけ涙を零すのだった。
―――
そわそわ。そわそわ。そわそわったらそわそわ。
「あの……先輩方、少し落ち着かれては……」
「そういうマシュちゃんだってそわそわしているじゃない」
そわそわしているマシュをじっと見ながら言う立夏に対し、兄の立香はその通りだと頷く。
二人のマスターと一人のサーヴァントは、円卓の騎士をキャストリアの待つ部屋に通した後、ずーっと扉の横で待ち続けていた。
円卓の騎士はともかく陰気なキャストリアに問題があるのだ。もしかしたらパニックを起こして彼女の宝具・
すると扉の開く音が聞こえ、三人がビクリと反応する。
心配そうな顔で開いたドアから何が出るかと待っていると―――。
「凄い話でした……」
「私も驚きを隠せません。今なら黒髭の気持ちが解ら……なくてもいいですね」
「王とベディヴィエールを此処まで狼狽させるとは……恐るべしランスロット卿」
「いえ、私は単にギネヴィアの良さを語っただけなのですが」
「禁断の恋を得たリア充の話は
顔を真っ赤にするキャストリアを筆頭に和気藹々としている円卓の騎士の図。さながら猥談を終えたアラサー集団の如く。
てっきりアルトリアズのように円卓の騎士の心をへし折られるのかと思っていたぐだーずとマシュは予想外な展開に首を傾げる。
とりあえず立香が円卓の騎士にキャストリアと対面してどうかと聞いた所、キャストリアの顔を見た後……。
「「「「凄く話しやすかったです」」」」
全ての罪や後悔を吐き終えた彼女と彼らは、清々しい微笑みを浮かべていた。
キャスター・アルトリア。王から逃げ出し魔術師としての人生を歩いた
それは円卓の騎士にとって理想の王とは言えぬが、
「お前ら」
朗らかな空気を瞬時にして張り詰めた空気に変える一言が背後より伝わる。
円卓の騎士4名は瞬時に感じ取り悟った―――この気配はモードレッドであり、モードレッドでない。
矛盾しているかもしれないが事実だ。彼らの感じ取った気配は良く知るモードレッドの物だが、気配の気質そのものが違っている。
それは騎士王の持つ凛々しさでも、獅子王の持つ神々しさでも、黒王の持つ暴君の気配でもない……まるで頂点に立つのが当然と言わんばかりに佇む竜の如き威圧感。
ゆっくりと振り向けば、竜を模した赤い鎧を身に纏った
「
問いかけた先は円卓の騎士ではなく立香。彼らが部屋を出たということはそういう事なのだろうと、立香は短時間で考え抜き有無を言わず頷く。
「父上、並行世界故に意味はないだろうが……話したいことは話したか?」
「ええ。私が話したい事は全て話し終えました……意義のある時間でした」
少し陰りのある笑顔を
そんな二人を見て色々な意味で驚愕している円卓の騎士を他所に、モードレッドは緩ませた頬を正し、鉄面皮で彼らに振り向く。
「ガヴェイン、ランスロット、トリスタン、ベディヴィエール……来い」
有無を言わさぬ王の言葉。それを聞いた円卓の騎士は、相手がモードレッドだという事を忘れて背を伸ばし、彼女の後に続いて部屋に入る。
「これが
藤丸兄妹も並行世界のモードレッドのカリスマ性に感服しているようで、少し呆然としていた。勇猛・カリスマ・戦闘続行の複合スキルは伊達ではない。
この場で動けるのは只一人……円卓の騎士達を案じオロオロとしているキャストリアだけだった。
その数十分後に罵声合戦、さらにその数分後には殴り合い、そして最終的には泣いて笑って大騒ぎのドンチャン騒ぎになっていた事をココに記す。
お酒の飲みすぎ、ダメ、絶対―――藤丸立香
―終―
●
ランク:A
種別:対城宝具
レンジ:1~99
最大捕捉:100人
背丈ほどもある杖の先端に埋め込まれた宝石に魔力を集中、極太ビームを放つ。
キャストリアが唯一覚えた攻撃系魔術。黒髭ぐらいなら軽く消し飛ぶ。
「エクスカリバーぶっぱできない日々が続いたら禁断症状が出たもので……」
~おまけ1「黒髭危機2発」~
黒髭「デュフフフフwww凛々しい女騎士が気弱系になっちゃうご都合主義展開キタコレですぞwwwこれは襲い掛かる案件ですなぁキャーキャー言いながら抗いもできずセクハラされまくっちゃってイヤンアハンな事になんて」
狂化モードレッド「むがぁぁぁぁぁ!」
キャストリア「
黒髭「アーッ」
~おまけ2「恋とはなんぞや」~
キャストリア「ふう……すみません皆さん、私だけ話してばかりで……どうかしましたか?」
ガヴェイン「いえ、なんでもありません……私達にとっても有意義な時間でした」
キャストリア「そうだったらいいのですが……そういえばランスロット、一つ聞きたい事が」
ランスロット「なんでしょうか?」
キャストリア「その……ギネヴィアとはどういったお付き合いをしていたのでしょうか?(もじもじ)」
ランスロ「え゛」
キャストリア「あの頃の私は彼女を幸せにできなかったですし、恋の1つも知らなかったので……どんな物なのかなぁと(もじもじ)」
ガヴェ・トリス・ベティ(こ、これが人を知った王……ですが聞く相手が悪すぎです!)
~おまけ3「酒のパワーは偉大なり」~
狂化モードレッド「だからぁ!父上は人の心以前に国を大事に考えるしかなかったんだって!酒の1つもなけりゃ語る事もできねぇよ!解るか!?俺に泣く泣く語った父上の苦悩が!人間関係が!おうこら飲め飲め!王たる俺の注ぐ酒が飲めねぇってのか、あぁん!?」
円卓の騎士ズ(色々な意味で逆らえない……)
今後は一話完結式に更新していきます。思い付きでババっと書きます(ぇ)
次回はキャストリアと一部サーヴァントの交流を描く予定。
誤字報告・感想・ご意見・リクエスト等お待ちしております。