汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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これはとある提督を追った、記録映像である……。
そこには恐ろしい日常風景が映し出されていた!

今回のお話は三人称視点になります。



第三十一話 虐待提督と一日

 虐待提督の朝は早い。

 

 毎晩しっかりと睡眠時間を取っているため、殆ど朝まで熟睡である。

 赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに、目を覚ませているのだ。

 

 布団の中で目覚めた提督がまずやることは、カーテンを開ける事。

 朝の日差しを全身に浴び、新しい一日の始まりを実感するのだ。

 

「おはよう妖精さん」

 

 勿論、妖精さんに朝の挨拶をすることも忘れない。

 親しき仲にも礼儀ありであった。

 

 そして軽く伸びをした後、顔を洗いに洗面所に向かう。

 

 朝の鎮守府本館は静かだ。 

 艦娘達はまだ寮棟にいるため、建物には提督と妖精さんしか居ない。

 

 もう少し経てば、朝食を摂りに艦娘達が来るだろう。

 それまでは、静かな時を過ごす。

 

 顔を洗い、口を濯ぐ。

 彼は寝癖が少ない方なので、鏡を見て軽く整える。

 整髪料は少なめだ。

 

 そして、また自室に戻っていくのである。

 極稀に、早起きした艦娘がこの時の提督を目撃することがある。

 

 非常にレアな顔を見られるので、朝一のラッキーだと言われている。

 因みに某重巡洋艦はあまり早く起きられないので、写真撮影が難しいようだ。

 

 

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「今日も元気に虐待だぜ!」

 

 制服に着替え、身だしなみを整えた提督が次に向かうのは、食堂だ。

 

 朝食当番の艦娘と、補助妖精さんが食堂に一足早く出向いている。

 基本的に、提督はその次くらいに食堂に来る。

 

 定位置の椅子に座り、新聞を手に取る。

 そして食堂に入ってくる艦娘達からの挨拶を返していくのだ。

 

「お早うございまーす!」

 

「おう、おはよう」

 

 その度に視線を新聞から艦娘に向けるのは、彼の礼節を重んじる性格のせいか。

 どんどん増えていく喧騒は、彼の周囲を取り囲んでいく。

 

 提督の指定席は、食堂左端。

 彼の正面席と右隣は、早い者勝ちの場所である。

 

 ただ基本的に、正面はその日の秘書艦が座るという暗黙のルールがあるのだが。

 提督はそのことに気づいていない……。

 

「せーの、いただきます!」

 

「いただきまーす!!」

 

 今日の朝食は目玉焼き、ベーコン、味噌汁、山盛りのキャベツ。

 ご機嫌な朝食であった。

 

 提督は朝からカップ焼きそば。

 本人がそれでいいと言っているのでどうしようもない。

 

 最近、『提督の食生活を改善しようの会』が艦娘間で発足したらしい。

 その先頭に立つのは、露出度の高い補給艦ということだが……?

 

「付属のワカメスープは飲まれるんですね」

 

「もったいねえからなぁ!」

 

 

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 朝食の後、午前の活動部隊を送り出すと、執務室に篭もる。

 彼は書類仕事を午前中に全て片付けてしまう人間であった。

 

 その日の秘書艦と業務をこなしつつ、虐待について思案する。

 基本的にこの時間は物静かである。

 

「……ククク」

 

 バリバリ仕事をこなしながら怪しい含み笑いをしている姿。

 それが何故か艦娘達には人気であった。

 完全に不審者なのに。

 

 仕事の合間に休憩として、お茶をたしなむ。

 日本茶から紅茶、マテ茶まで、様々なものを飲む提督。

 

 金剛からは不評の、コーヒーを飲む時もある。

 だが、彼が一番好むのはコーラであった。

 

 理由はシュワっとしてるから、そして黒いから。

 

「糖が回った、力が湧いたぁ!」

 

 休憩を終えると彼はスパートをかける。

 絶対に仕事は午前で終わらせ、午後は絶対に遊ぶ(虐待)という気概に満ちていた。

 

 余談だが、書類処理能力の高い軽巡洋艦が、最近長い休みを与えられたようだ。

 『私ならまだまだ頑張れますよ!?』と、強がりを言う健気な彼女。

 

 しかし提督はバランスを重んじる。

 結局眼鏡の彼女は、長期休暇を手に入れてしまった。

 

「嬉しいんですけど、嬉しくないです!」

 

 

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「犠牲者はどこだぁ~? クックック」

 

 昼食を終えた提督は、フラフラと鎮守府をうろつく。

 座学の授業は、最近重巡や練巡、大井、北上などに任せているらしい。

 

 兎に角目に入った艦娘に寄って行っては、虐待になりそうなことを考える。

 まぁ、彼が行くまでもなく、艦娘の方から近づいてくるのだが。

 

「オラ! くすぐりの刑だ!」

 

「ふわっ、わっ、わぁ~!? く、くすぐったいよぉ~!」

 

 今日も廊下で駆逐艦の少女を襲撃している。

 金髪の彼女の顔に、不快感は一切ない。

 

 完全に戯れているだけであった。

 故に、周囲の艦娘達の目も優しいものだった。

 

「あははっ! さっちんを放せー!」

 

「援軍かぁ!? かかってこいよォ!」

 

 駆逐艦達と遊んでいる提督は本当に幸せそうで。

 その様子を見ているだけで嬉しくなってしまうんだ、と。

 

 ビッグセブンの一人は静かに語った。

 

 

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「そこで俺は言ったのさ。虐待こそ我が人生ってな!」

 

「あらあら、うふふ♪」

 

 夜。

 夕食を終えた提督は、居酒屋で愉しむ。

 彼の疲れた虐待脳に、酒精が染みこんでいく。

 

 つまみが減塩気味なのは、店主の策である。

 最近、鎮守府全体が提督の体調管理に動いているようだ……。

 

「妖精さんは、もう潰れちまってるなぁ~」

 

 彼の傍の妖精さんは、少量の酒で酔っぱらってしまっていた。

 菓子を好む彼女達に、大人の味は早かったらしい。

 

 気持ちよさそうにすやすや寝ている。

 

「あ~しかし、愛する道具に囲まれて吞む酒はいいねぇ~!」

 

「あ、愛!?」

 

 彼は己の道具を愛する者だった。

 だから自分の好きなように使い、虐める。

 

 酒は提督の本音をさらけ出すものだ。

 

 

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「うぁ、飲み過ぎたぜ、おぉ」

 

「提督しっかりしなよ。ほら、立って!」

 

 先程まで居酒屋に居た夜戦大好き軽巡に肩を担がれながら、提督は自室に戻る。

 何故か今日は吞み過ぎたらしい。

 

「ほら、服はともかく布団には入りなよ」

 

「おゥ……ありがてぇ」

 

 提督を横にして、毛布をかける。

 夜に強い艦娘だと、こういう役得があったりするのだ。

 

「……おやすみ提督、良い夢を」

 

「お休みだぜ……ぐぅ」

 

 提督の額に手を当て、微笑みかけ。

 背後から聞こえる彼の寝静まった声を聴き、彼女は部屋から出ていった。

 

 

 …………。

 

 

「今日もまた良い虐待日和だ! クックック!」

 

 提督の一日がまた始まる。

 艦娘達に虐待する、悪逆非道で残虐極まりない恐怖の一日が。

 

 この鎮守府はもう地獄と化した。

 二度と戻る事はないだろう。

 

 ずっとこのまま、艦娘と提督の日常は続いていく……。

 

 

 

 

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 とある山奥の、とある建物にて。

 一人の男が、一人の少女……時雨に近づいていく。

 

「嫌だよ……僕をここから出して……!」

 

「それは出来ない」

 

 弱弱しく頭を振る時雨。

 

「皆の所にかえして……!」

 

「それだけは絶対にダメだ」

 

 男が取り出した『モノ』を見て、時雨は身体を硬直させる。

 瞳孔がキュッと縮まり、プルプルと震えている。

 

「止めて……、いやだ……っ!」

 

「……」

 

「怖いっ! 怖いよ……!」

 

 

 そして……。

 

 

 …………。

 

 

「さぁ、『オクスリ』の時間だよ」

 

「また、それを飲むの?」

 

「そうだ。これを飲めば幸せになれる。スッと楽になれるよ」

 

 時雨の目に、抵抗の色は薄い。

 初日こそ反抗していたものの、薬の効果を身をもって知ってしまったのだ。

 

「こ、怖いけど、分かったよ……」

 

「良い子だ」

 

「んっ、……苦い」

 

 時雨の口元から、白濁色の液体が垂れ落ちる。

 男はその様子を見て満足そうにうなずいた。

 

 男は少しずつ、少しずつ時雨を侵食していく。

 時雨も、それに気づいている。 

 しかし、抗えない。

 

 助けなど、どれほど待ってもやってくるはずがないのだから。

 そして、それを時雨自身もよくわかっているのだから。

 

 

 ……雨は、未だ止まない。

 

 




提督パートと時雨パートの雰囲気の落差にドン引きました。
時雨に、笑顔を……。






ネタバレ…時雨が居る所は『海軍の何者か』が建てた場所。 
     その存在は一部の関係者にしか知らされていない。
     もし此処で行われている『こと』が露見してしまえば、
     とんでもない事態になる事が予想される。

     

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