「ふぅ……うん。愛莉も自分の体の使い方が良くわかって来たみたいだね。すごく良かったよ」
「えへへ、ありがとうございますっ。長谷川さんにそう言って頂けると、なんだか自信が持てそうな気がしますっ」
俺の率直な感想に、愛莉はとても嬉しそうに目を輝かせ表情を綻ばせた。
まだお互いの体を軽く温めあった程度だが、この感触ならおそらく本番もさぞ楽しめるに違いない。
「智花ちゃんが少し羨ましいな……」
「え?」
愛莉が俯き加減にポツリと呟いた言葉に思わず聞き返す。
「……長谷川さんといつもこんなに楽しいことしてるんだな。って思ってしまって……えへへ、ちょっとだけヤキモチ妬いちゃいましたっ」
「ヤキモチなんかじゃないよ。……そうだな。愛莉が望んでくれるんだったら、俺で良ければいつでも相手をさせてもらうよ」
照れたようにはにかむ少女の頭に手を置き、さらさらの手触りの良いショートヘアを優しく撫でると嬉しそうに目を細めてくれた。
「……いいんですか? 私、智花ちゃんみたいに慣れてもないし上手くもないから、いっぱいご迷惑を掛けてしまうかもしれませんよ?」
「俺だって愛莉の成長をしっかり確かめさせて欲しいからね」
ここで智花を引き合いに出す少女がおかしくて思わず笑みが零れてしまった。
やはり智花は愛莉の中でも大きな存在となっているのだろう。
そして、愛莉はその彼女に幾ばくかの対抗心を燃やすようになるまでに成長していたのだ。
初めて出会った頃の気弱な少女は、自分の恵まれた体の魅力を自覚しつつある。
ならば、もっともっと彼女の魅力を引き出してあげながら、俺もそのおこぼれに、その体を思う存分堪能させてもらうとしよう。
「あ……」
少女の肩にそっと手を置くと、小さく声を上げる。
触れている指先や手の平からは先程まで二人でやってた本番前の軽い前戯で火照った体の熱がじんわりと感じられる。
期待に満ち、強い意志が感じられる双眸からも、彼女がその気になってくれていることが十分に伝わってくる。
「それじゃ、さっそく今日できることから始めていこうか。……ほらっ。みんなもすっかりその気みたいだしね」
お互いに絡め合っていた視線を外す。
そこで愛莉も、この場にいるのが俺たち二人だけじゃないということに気づいたようだ。
俺たちの視線の先には、先ほどまでの俺と愛莉と同様に今もなお、少女たちが互いの小さな体を絡め合せるように肌を温め合う光景が繰り広げられていた。
「んっ。……よかったのか、もっかん。アイリーンにすばるん譲っちゃってさっ」
「ふぇぇ!? へ、へんなこと言わないでよっ。べ、別に私がいつも昴さんのお相手をするわけじゃ……」
「くふふ。でも、こことか、こことか。すばるんに触って欲しかったんじゃないのか?」
「ひゃうんっ!? そ、そそそんなとこっ。すばるさんにだって触られたことないよっ!?」
智花にしては珍しいくらい素っ頓狂な声がこちらにまで届いてきた。
会話の流れから察するにどうやら真帆が、智花のかなり敏感な部分に触れてしまったのだろうか。
普段物静かで、我慢強い彼女があそこまで大きな声を出してしまうほどの部位……気になる。
「お? そーだったの? ごめんなーもっかん。あたしがもっかんのハジメテ奪っちゃったか」
「もうっ。変ないたずらして……真帆だってここが弱いくせにっ」
少しだけ二人に近寄って、新たな発見ができないかと思っていたところで、今度は智花が反撃に出たようだ。
「うひゃあっ!? ちょっちょちょちょっ!? もっかんっ! ごっごめんっ!? ほんとにアヤマルから、マジでそこやめてーっ!!」
「…………」
聞く耳持たずといった感じで頬をぷっくりと膨らませているのが、なんとも微笑ましい。
無言で悶える真帆を押さえつけ、彼女の弱点を責め立てている。
……そういえば真帆はうなじが弱点とか言ってたっけな。
ふとそんなことを思い出している間に、どうやら仲直りも済んだようで、仲睦まじく行為の続きが再開される。
「少しずつしていくからね。痛いところで一回止めるから教えてね」
「あたしはそんなヤワじゃねーっ。いーから、おもっきしやっていいよーっ」
「もう……ダメだよ。昴さんだって、やる時はゆっくり優しくね。って言ってたんだし、私だって、大切な真帆に痛いことなんてできないよ」
「うーっ。……きゅ、急に恥ずかしくなるこというなよなー」
思いのほか予想外の不意打ちだったのだろう。
ぶっきらぼうに答えているが頬が真っ赤に染まってしまっている。
背中を向けている智花には真帆の表情が見えていないだろうけど、優しく微笑んでいる様子からきっと彼女も気配で察していることだろう。
さて、俺たちがいることを忘れてすっかり二人きりの世界に入ってしまったようだが、もう少しだけこのままそっとしておいてあげよう。
残りの二人の少女たちの様子を確認しようと振り返ると、途中で背中の方から「ぎゃーーっ!!」という悲鳴が聞こえてきたが、まぁこればっかりは仕方ないだろう。
誰もが通る道だから。
初めの内は痛いけど、ちょっとずつ慣れて行って、最後までできるようになると、それが快感にも自信にもなるのだから。
心の中で真帆にエールを送りつつ、改めて未確認少女二名の姿を確認する。
うーん。これはこれでなかなか。
当然頭の中では理解していたのだが。
実際にその光景を目の当たりにすると、すごく新鮮だった。
紗季とひなたちゃんという、これまたかなりレアな組み合わせ。
この組み合わせを見れただけでも眼福なのだが、この二人がこれからどんな絡みを俺に見せてくれるのか、まるで想像できない。
紗季がひなたちゃんの行動を読み切り、いいように御し切れるか。はたまた、ひなたちゃんが紗季の予想を裏切り続け翻弄するか。
期待に胸を躍らせながら、息を弾ませ対峙している二人の観戦を始めたのだが……残念。どうやら少し遅かったようだ。
「はぁ……はぁ……まだ本番も控えてるんだし、このくらいにしておくぞ、ひな」
「ふぅぅぅー……おー。そうだったー、このあとはおにーちゃんが、いっぱいオアイテしてくれるんだった」
「まったく……やっぱり、忘れてたか。いいのか、長谷川さんに見られちゃったかもしれないぞ?」
「おー。おにーちゃんに、まだ見せちゃいけなかったのに、見られちゃったかも? ひな、うっかりー」
なにそれ!?
すごい気になるぞっ!?
くそっ。もっと早く二人の様子を良く見ておくべきだったか。
ひなたちゃんの俺には見せちゃいけないもの。
いやいや、ひなたちゃんは『まだ』と言ったのだから、もしかしたらこのあとじっくりと見せてくれるかもしれない。
ひなたちゃんの『見せちゃいけないもの』か……。早く見せて欲しいな。
なんだかんだで、ひなたちゃんは意外と色んな物を無意識に隠しちゃう子だからな。
本当なら余すことなく俺に曝け出して欲しいのに、上手く頼まないと中々見せてくれないし。
ちょうどいい機会だ。ひなたちゃんの全てを俺に見せてもらえるようがんばるか。
さて、みんなもいい具合になってきたみただし、そろそろいいだろう。
あんまり焦らしすぎると、今の相手で燃え上がり過ぎて俺とする前に果てちゃうかもしれないし。
「よしっ。みんな集合ーっ」
『はいっ!』
俺の号令に声を揃えながら集まる五人の小学生たち。
全員が息を弾ませ、わずかながら頬を紅潮させていた。
そんな中、一際期待で胸いっぱいにしている様子の少女が目につく。
「ふふっ。気合十分みたいだねっ。真帆」
「あったりまえじゃんっ! あたしがゼッテーすばるんのハジメテになってやるんだっ」
やる気満々の真帆の姿に智花も嬉しそうに微笑んでいた。
確かに、普段から自分だけが独り占めしてしまっているようでズルい気がする。と、どこか負い目を感じていたようだが、今回はそんなこと気にする必要は一切ない。
今回はこうして五人一緒に参加しているのだ。
この日、俺はもうすぐ卒業間近の小学生五人を引き連れて総合アミューズメント施設『オールグリーン』屋上まで来ていた。
目的は俺と彼女たちとの超真剣勝負。
超が付くくらいなのだから、ガチンコ以上に本気だ。
言うならばガチガチンコだ。
目の前の五人の少女たちが、ガチガチの俺の相手となるのだ。
彼女たちは俺への初勝利を目標に、そして俺は彼女たちの成長を直に肌で感じ取れる。
まさに最高のレクリエーションと言っても過言ではないだろう。
「いいの? トモ。あんまりうかうかしてると本当に長谷川さんの初めて取られちゃうかもしれないわよ? 当然、私も狙ってるんだし」
「……わ、私も、がんばってみたいな。自信ないけど、でも、精いっぱいできるところまでは、やってみたいな」
「おー。ひなもひなもー。おにーちゃんの初めて、がんばっていただいちゃうぞーっ」
「ふぇぇ!? そ、その私も昴さんの……は、初めてになりたいけど…………うんっ。みんなだって同じ気持ちなんだし。それなら、みんなといっしょにがんばりたいっ。みんなで昴さんの初めてになろうよっ!!」
うんうん。みんなのやる気がひしひしと伝わってくる。
正直、俺なんかの初めてを景品にすること自体、バカバカしいと思っていたのだが、ここまで彼女たちが本気になってくれるとは思わなかった。
一人一人で、あるいはお互いに体を重ね合わせながら、念入りに体と心の準備を整え、今か今かと待ちわび続け、そして遂にその時が来たと胸を躍らせているのだ。
俺自身もまた、彼女たちのそんな姿を見て、高まる気分を抑えずにどんどんと解放していく。
彼女たちの期待とやる気に満ちた表情を目の当たりにして、俺自身もそろそろ覚悟を決める時かも知れないと感じたからだ。
少女たちは今から、俺と共にまた一歩大人の階段を昇るのだから、ちゃんと優しくリードしてあげないとな。
――だけど、俺だってそう簡単に初めてをあげるつもりはないぞ。
一度深呼吸をし、昂らせ続けていた感情の波を心の奥底へ深く沈めて行くのだが……
……はは。なんか試合の時以上に感情をコントロールするのが難しいな。
可能な限り自分の感情をフラットにしようとしているのに、ワクワクする気持ちが全然おさまらない。
オトナゲないと言われそうだけど、彼女たちとガチガチの状態でやりたくてやりたくて仕方ないのだ。
今回の小学生たちとの連戦という経験が、長谷川昴という男をまた一歩成長させてくれるに違いない。
そんな確信めいた期待を胸に、俺は一人コート内に残った少女とゆっくり対峙するのだった。