おにーちゃんとHの秘密特訓
「実はね。ずっと前から君の身体に興味があったんだ。ひなたちゃん」
「おー? そうなのー?」
「うん。これからちょっとずつ確かめさせてもらいたいんだけど、いいかな?」
「おー。いいよー」
これから俺に何をされるのかを全く疑うことなく、天使のような笑顔を向け、その幼くも俺の心を強く惹きつける小さな身体を差し出してくれる少女。
イノセントチャーム――無垢なる魅了の二つ名の通り、何も知らない彼女に自分がどれだけ魅力的な体の持ち主であるのかをたっぷりと教えてあげないとな。
ほんの少し触れただけで折れてしまうのではないかと心配になってしまうくらい、か細く小さな体に俺の両手が触れる。
彼女の体の感触を確かめるようにゆっくりと彼女に触れている手の平や指先を動かしていく。
「おー。おにーちゃんになでなでされるの気持ちいいよー」
無遠慮に伸ばし、その未熟な体を一つ一つ確かめるように撫でまわしている俺の手を振り払うことなく、彼女はかわいらしく天使のような笑顔と期待に満ちた眼差しを俺に向けながら受け入れてしまっている。
どうやら彼女はまだ俺の目的に気づいていないのだろう。
まぁ、たとえ本人が気づいていない間にも、体の方は順調に準備が整いつつあるようだ。
ひなたちゃんが驚いたり、痛みを感じないように細心の注意を払いながら、優しく手を動かしていた成果もあり、彼女の体はすっかりと解れてきている。
「よし、そろそろひなたちゃんの体も良い具合になってきたみたいだし、さっそく始めよっか」」
「おー。おにーちゃん。はやくはやくー」
「あはは。そんなに慌てなくても、時間はたくさんあるんだから大丈夫だよ」
あまりにも無邪気にせがんでくるその様子に思わずこちらの頬も緩んでしまう。
やはり初体験以来、すっかりあの快感にハマってしまったのだろう。
強いて言うなら、彼女の初体験は竹中の手によってもたらされてしまったのは、少々悔しい気がしないわけでもないが、
まぁ、あいつにも少しくらいは想い人との甘いひとときを過ごさせてやるくらいはいいだろう。とか思ったんだし。
なにより、俺の知らないところで「いっぱい上手くなっておにーちゃんにほめてもらいたい」という彼女の健気で可愛らしい目標を聞かせてもらった時には思わず胸が熱くなったものだ。
これからは俺がたっぷりと手取り足取り色んなことを教えてあげるからね。
そんな想いを胸に、少女に両足を開かせながら身体をゆっくりと自分の方へと引き寄せて行く。
「ひなたちゃん、大丈夫?」
「おー。ぜんぜんへいきー」
まだ始めたばかりではあるが、もしかしたら痛がってしまうのではないか? そんな俺の心配をよそに、ひなたちゃんは余裕の笑顔だ。
「もう少しだけ強くしてみるけど、痛かったり、ビリって感じたら、すぐに止めるから絶対に無理しちゃダメだよ」
「おー。とっても気持ちいいよー。おにーちゃんのおすきなようにどうぞー」
他の子たちの中には痛みを感じたり、これ以上は無理だと思うくらいには強くしてしまっていると思うのだが……やはり彼女には素質があるのだろう。
ひなたちゃんの様子を確認するのだけは決して怠らず、徐々に力強く少女の身体を引き寄せていったのだが、驚くくらいあっさりと最後まで到達してしまった。
確かめるようにお互いの体位を変えながら、何度か試させてもらったのだが、ひなたちゃんの体は最高だった。
求めている俺自身ですら、多少無茶なことを言ってしまったのではないか? と思うような要求すらも彼女は笑顔で応じてくれて、そのたびに俺を喜ばせてくれた。
俺が驚きや喜びの声を上げるたびに、彼女も俺に自分の体が褒められていることに輝かんばかりの嬉しそうな笑顔を見せ、俺に自分の体をもっと見て欲しい。もっといっぱい体を使わせて欲しいと逆にせがまれてしまうくらいだった。
「本当にすごいよっ。ひなたちゃん! まさかここまで体が柔らかいなんて想像以上だったよっ」
「わーい。おにーちゃんにほめられたー」
俺の驚き混じりの心からの賞賛に両手を上げて無邪気な笑顔を浮かべながら喜んでいる。
そんな可愛らしい天使の姿に、思わず手を出してしまったが、撫でられるのが大好きな彼女にとっては俺からのご褒美だと思い喜んでくれているようだ。
正直、あまりにも無防備すぎる少女の身体を男がベタベタと触れ回ってしまうのもどうかと思うところもあるのだが……イノセントチャームに抗うにはまだまだ俺のレベルが足りないようだ。
さて、そんなわけで彼女には左右や前後開脚からの前屈等と色々なストレッチを行ってみてもらったわけだが、この高い柔軟性は間違いなくひなたちゃんの才能の一つだと確信する。
しかも、彼女はただ体が柔らかいだけではない。
ブリッジやY字開脚など柔軟性だけではなく、高度なバランス感覚も要求されるような体位を見せてもらった時も、彼女の体幹が決してぶれることがなかった。
初めて彼女と出会った頃は、自分は足が遅かったり、シュートが届かないなどと自身を卑下するようなことを話していたが、彼女自身は決して運動に不向きな体ではないのだ。
みんなと楽しそうにバスケをしている姿から見ても別に運動嫌いというわけでもなさそうだし、ただ純粋にスポーツと触れ合う機会が少なかったのであろう。
真帆にバスケに誘われたことがきっかけとなり、少しずつだけど彼女は確実に成長している。
……ヤバい。ほんの少し触れただけで、増々ひなたちゃんの体に興味が湧いてきてしまったぞ。
誰も見たことがないような、ひなたちゃんの隠された部分が見たい。
もっともっとこの小さな体に秘められている隠れた素質を知り尽くしたい。
もしかしたら、ひなたちゃんの体を知ってしまったこの瞬間から俺は『ひなたちゃんマスター』を志すようになったのかもしれない。
こういうと少々語弊があるかもしれないので、はっきり断言しておくが、別に俺はひなたちゃんの体だけが目的ではない。
当然、『ひなたちゃんマスター』を志す者として、ひなたちゃんの魅力的な体に興味深々なのは認めるが、ひなたちゃんのその優しくも強い心に惹かれてもいるのだ。
ひなたちゃんは庇護欲を掻き立てられる愛くるしい天使というだけではないのだ。
どんな時でもごく自然体で周囲を幸せにする笑顔を振りまいてくれているが、悲しいことに彼女だって天使である前に一人の小さな天使なのだ。――ん? なんだやっぱり天使じゃないか。それなら何の問題もないな。
……いやいやいやいや、ひなたちゃんが天使なのは紛うことなき事実だが、彼女は自分自身のことに対して危うさを感じてしまうくらい、あまりにも無自覚すぎる。
耐え切れないほどの負荷に体が必死に悲鳴を上げて脳に本能が休息を求めているにも関わらず「ちょっと疲れてきたけど、もっとみんなといたいからがんばろう」くらいにしか考えていないのかもしれない。
俺以上に彼女を理解している大切な友人たちでさえ気づけないくらいの笑顔のポーカーフェイスで無理をしてしまうことがあるのだ。
おそらく彼女自身も自分が無理をしている。といった自覚がほとんどないのかもしれない。
智花たちが気づくことができない時点で、まだまだ付き合いの浅い俺なんかじゃ、もの役にも立てないかもしれないが、それでも俺だって彼女たちのコーチなんだ。
彼女たちの身も心も全てを知り尽くして、絶対に護ってやる。
みんなの大切な場所を護るためなら、なんだってやる。あの時の覚悟が偽物じゃないってこと、証明してみせるんだ。
「ひなたちゃん。まだ頑張れるかな? もう少しだけひなたちゃんのことをよく知りたいんだ」
「おー。ひな、おにーちゃんのためにいっぱいがんばるよー。だから、ひなにいっぱいバスケ教えてくださいー」
――この時、俺の中で彼女のプレイスタイルの一つが沸々と浮かび上がりつつあった。
汗を流しながらも俺の要求した動きを繰り返しては、こちらの反応を窺い、大丈夫だよと頷くと嬉しそうに満面の笑顔を向けてくれる。
何も知らない無垢な少女を自分の理想通りの姿に成長できるように育成する。
……改めて考えてみるとすごく責任重大なことしてるんだよな、俺。
みんなのこと大切に育ててあげないと――
変わらず純粋無垢な笑顔をこちらに向け続けてくれる少女にこちらからも微笑み返しながら、決意を新たに自分の責任を全うすることを強く心に誓うのだった。
「ひなたちゃん……もう少しだけ早く、それに大きく動けるかな? も、もう少しで、良い感じのものが出そうなんだ」
「おー? こう?」
「あっ! いいよ。今のすごく良かった。他にもやってみてくれる?」
「おー。がってんー。いっぱい動くよー」
基本的な動きは大切にしつつ、彼女の個性を活かしたスタイルを創り上げていく。
あえて具体的な細かい動きは指示せずに、ひなたちゃんの感性の赴くままに自由に動いてみてもらい、ありのままの彼女の姿をじっくりと眺めさせてもらう。
あまりにもフォームが乱れてしまいそうになったら、そこだけはしっかりと矯正してあげないと。と思ったのだが、独特で不規則ながらも基本的な体の使い方を大きく逸脱した動きをすることはなかった。
ほんの少しだけ体の使い方を教えてあげる程度にとどめて、あとはひなたちゃんの本能のままに動いてもらった方が、きっと俺なんかじゃ、想像がつかないくらいのすごい成長を遂げてしまいそうだな。
「……ふぅ。少し休憩しよっか。ひなたちゃんがいっぱいがんばってくれたおかげで、俺もたくさん色んなイメージを出すことができたよ」
「おー。ひなもけっこう疲れてきてたかもー」
「あはは。あんまり無理しちゃダメだよ。ひなたちゃんが頑張り屋さんなのは良く知ってるから、休むときはしっかり休まないとね」
「おー。しっかり休んだら、またがんばるー」
体育館の床に腰を下ろし、思い浮かんだイメージを少しずつ整理していく。
隣にひなたちゃんがちょこんと座って来たかと思うと、俺の膝に小さな頭を乗せてきてくれた。
俺の膝に淡い重みと温かな体温と柔らかな感触が伝わってくる。
「おー。おにーちゃんのひざまくらもゼッピンですなー。ひな、とっても気に入りましたー」
すりすりと柔らかな頬が俺の膝に摺り寄せられ、その感触がむず痒さを感じさせる。
思わず空いているもう片方のほっぺたを触りたい衝動に駆られてしまい、手を伸ばしてしまったが、彼女の頬に触れる直前で背筋に悪寒が走る。
触れてしまったら、きっと取り返しのつかない何かが起きてしまう予感がする。
そんな気がするだけで、はっきりと何が起きるかはわからないが、俺の生存本能が全力で訴えかけてくるのだ。
「おー? ひなのお顔になにかついてたー?」
「あぁ、ごめんね。ちょっと考え事をしてただけだよ」
自分の顔の前でぴたりと止まっている俺の手と顔を交互に見比べて不思議そうにしている。
「そういえば、ひなたちゃんと愛莉って、よく一緒にいる気がするけど、二人って特に仲良しだったりするのかな?」
「おー。ひな、あいりのことだいすきー。おっぱいおっきいよねー。うらやましいですなー」
咄嗟に誤魔化す感じに話題を振ってしまったが、俺の膝の上でにこやかに質問に答えてくれた。おっぱいに関しては俺からのコメントは差し控えさせて頂く。
「ちょっとだけ不思議かな? って思ったことがあってね」
「おー?」
「こういったら二人に悪いとは思うんだけど、愛莉とひなたちゃんって結構身長差があるよね」
自分の背を気にしている愛莉からしたら、一番小さいひなたちゃんが隣に並んでしまうと、いっそう自分の背を引き立てられてしまうとは考えないのだろうか?
いや、心優しい愛莉がこんなにかわいいひなたちゃんをぞんざいに扱えるわけないのはよくわかるし、誰だってこんなにかわいい子が自分に近寄ってきてくれるのを嫌がるわけがないだろう。
「ぶー。おにーちゃんもあいりをいじめる?」
いかん。ひなたちゃんが、俺の上で頬をふくらませてご機嫌を損なわれてしまっている。
こんな無垢な子に嫌われてしまうなんてことがあったら、今後の俺の人生は間違いなくどん底どころか、さらにその奥の地獄まで一直線だ。
「ご、ごめんっ。本当にただちょっと気になっただけなんだ。気に障ったんなら謝るよっ」
「おー。おにーちゃん、あいりにもきょうみしんしんー?」
必死の弁明の甲斐あってか、すぐに相好を崩し機嫌を直してくれた様子に心の底から安堵する。
やはりまだ愛莉自身を含めて、彼女たちに身長の話題を出すのはNGなのだろう。
いずれは切り出さなくてはならないことかもしれないが、ようやく少しずつでも向き合うことを考え始めてくれたんだから、急かすようなことしちゃいけないよな。
「できればもっとみんなのことを知りたいとは思ったんだけど……さすがに失礼だったよね。ごめんね。変なこと聞いちゃって」
「んーんー。ひな、お話するのヘタだけど、あいりとトモダチになった時のお話するー?」
「うん。もしよかったら、聞かせて欲しいかな」
「おー。ひなとあいりはおなかまなの。――んしょ……と」
そう言いながら、ひなたちゃんは俺の膝を枕にしていた小さな顔を起こすと、今度は俺の膝の上に座り直す。一度だけ小首を傾げながら「ごめいわく?」と振り返り俺に確認を求めてくる。
全然そんなことはない。むしろ大歓迎だよ。と、にこやかに返してあげると、すぐに俺の膝の上で小さな体を左右に揺すり出し、ベストポジションを探し始める。
その動きや、ひなたちゃんのほとんど重さを感じさせない、小さな体の感触になんとも言えない心地良さとくすぐったさを感じさせる。
今この瞬間、俺はひなたちゃん専用の椅子となった。
この最高の特等席で俺は彼女の話を聞けるという無上の喜びを味わうことができる権利を独占できたのだ。
さぁ、ひなたちゃん、俺の上でいっぱい色んな話を聞かせて俺を喜ばせてくれ。
昔話を語っている間もひなたちゃんは、楽しそうに俺の上で小刻みに左右にゆらゆらと揺れて、俺に心地よい刺激を与えてくれる。
小柄な少女が俺の上で動くたびに、俺は彼女との繋がりを強く意識させられた。
当然、ひなたちゃんの体にばかり夢中になって、彼女の口から楽しそうに歌を歌うように発せられる甘く優しい声を一音たりとも聞き逃がすような愚を冒すことは絶対にしない。
しばしの間、身も心も俺に許してくれている少女と幸せな時間を過ごさせてもらうとしよう。
「あいりもだけど、ともかも初めてひなが、ごあいさつしたとき少しビックリしてた。さきには誰にでも近づきすぎ。って少しおこられちゃったけど、すぐにトモダチになってくれたー」
自分よりも小さな子があまりにも無防備に近寄ってくるのだ、愛莉じゃなくても困惑するに決まってる――ってか、紗季さんさすがだな。イノセントチャームに惑わされることなく、ひなたちゃんを制御するなんて。
昔を懐かしみ、そして今を楽しむように少女は話を続けてくれる。
「あいり、ひなにあいりのことこわくないの? 聞いてきたんだよ。あいり、とってもやさしいのにへんだよねー」
大きすぎる自分と違って、とても小さく可愛らしい少女。まさに愛莉にとって理想の姿だったんだろうな。
人より大きい身体を疎ましく思っている自分に、どこまでも純粋に無邪気に懐いてくれる少女に愛莉は何を思ったのだろうか?
おそらくは当人にしかわからないことを漠然と考えていると、愛莉とひなたちゃんの関係だからこそ言える魔法の言葉で、あっさりと愛莉と友達になってしまったことを知る。
「ひな、あいりもまほにお助けしてもらった仲間同士だから、ひなとあいりは同じだよね。って言ったら、うん。って言ってひなのことぎゅーっってしてくれた」
「あはは。確かにそれならひなたちゃんと愛莉は同じ仲間同士だね」
愛莉には悪いと感じつつも、その時の光景――はっとした瞬間、ひなたちゃんにしがみつくように抱き着く愛莉の姿が思い浮かび笑みが零れてしまった。
背の高さを気にしている愛莉が、一番小さなひなたちゃんに、同じと言われてしまえば、嬉しくて仕方ないだろう。
確かにきっかけは思い込みからかもしれない。でも、この二人も間違いなく最高の友達と巡り合うことができた関係なんだと思う。
あっさりと愛莉の心の中にするりと入りこんでしまい、もしかしたら誰よりも愛莉を理解しているのかもしれないし、愛莉の方もきっと自分の心を護ってくれたひなたちゃんを護ろうとしてくれているのだろう。
「ひなたちゃんはすごいな」
「んーんー。ひなはまだまだだよ? もっともっとバスケうまくならないと、みんなに追いつけない。だから、おにーちゃん。ひなにいっぱい教えてください」
思ったことをそのまま呟いてしまっていた言葉に、今の自分の想いと目標を乗せてはっきりと答えてくれた。
彼女は甘え上手だけど、決して甘えるだけの子ではないことは、付き合いの浅い俺でももう知っている。
よし、ここはひなたちゃんにあやかって俺も自分の直感を信じてみよう。
「よしきた。練習、大変だと思うけど、ひなたちゃんなら必ず習得できるから、本当に辛い時は絶対に無理しちゃダメだよ」
「おー。りょうかいー。ひながムリしちゃったら、みんな悲しいお顔になっちゃうから、絶対にムリしないけど、いっぱいがんばるねー」
ひなたちゃんの強い決意が込められた答えを聞いた時、俺の中で遂に一つのイメージがはっきりとした形となったのを感じる。
それと同時に体育館のドアが開け放たれ、四人の少女が額から流れる汗を輝かせながら、とても活き活きとした表情で入ってきた
「すばるーんっ。走り込み終わったよー。次は何をすればいい?」
「あれ? ひなたちゃん、疲れちゃったの? 大丈夫?」
「ふふ。あんまり長谷川さんに甘えてると、トモに怒られるわよ?」
「怒りませんっ! ――ひなた。あんまり無理しちゃダメだよっ」
「おー。へいきー。おにーちゃんにひなの体のこといっぱい調べてもらったー」
「――!? ひ、ひなたちゃんって、想像以上に体が柔らかくてびっくりしたよっ。これは絶対にバスケに活かせるよ。うんっ」
確かに事実ではあるんだけど、ひなたちゃんの口からみんなにそのまま伝えられてしまうと、何かとんでもない誤解が生み出されてしまいそうな予感がし、すぐさま補足をさせてもらう。
「ひなたって、すっごく体が柔らかいもんね。羨ましいな」
「おー。おにーちゃんもいっぱいほめてくれたー」
なんとかあらぬ誤解を掛けられることなく、軌道修正できたことに安堵する。
「私も柔軟がんばってるのに、なかなか柔らかくなんないのよねー」
「サキはカラダだけじゃなくてアタマもかてーだろ」
「あんただってガチガチのくせに何言ってんのよっ」
「あたしの方がやわらかいもんねーっ」
「二人ともケンカしちゃダメだよぉ」
「はいはい。そこまでだ。これから大事な話があるんだから」
軽口をたたき合いながら、前屈を始め競い合う二人と、それを宥めようとする愛莉に俺も加わると、仲裁をするために出た俺の言葉に、真帆と紗季だけでなく、他の三人の視線も向けられる。
「そろそろ基礎練習だけじゃなくて、みんなの個性に合わせた個人練習も初めてみようかな? って思うんだけど、どうかな?」
その分だけ、今までの練習よりも少しきつくなっちゃうけど。と付け加えたが、少女たちは怯むことなく、大喜びで俺の考えに賛同してくれた。
嬉しそうにはしゃぎ回っている四人を、俺と同じくほんの少しだけ離れた場所で温かく見つめている少女と目が合う。
「智花はもう満足してるかもしれないけどさ。もう少しだけ本格的なバスケを、みんなに教えてあげたいから、いつも頼らせてもらって悪いんだけど協力してくれるかな?」
「はいっ。私たちのこと、いっぱい鍛えてくださいっ。もっともっと昴さんのバスケ教えて欲しいですっ」
数日後、まるで狙ったかのようなタイミングで、みほ姉から硯谷女学院との合同合宿の話が持ちかけれたのだった。
時系列としては原作3巻ラスト~4巻の愛莉の水泳克服後~硯谷との初試合の間の話です。
イメージとしてはひなたがボスハンドのリバースショットの練習を始めたり、スモールフォワードとして起用するきっかけとなった、ひなたの魅力的な体に昴が気づき興味を持つ話。