クリス先輩がこんなに可愛いわけがない! 作:TearDrop
シンフォギアXDで3.5バージョンのクリスちゃんが当たらなくて絶唱顔になっているTearDropです。
今回は少し体調が優れない中書いたので少々話がごっちゃになっていると思います。
それではご覧ください。
律ママがクリスを半端無理矢理に自宅に連れて帰っているとは知らずに、自室で寛ぐ律。
ラフな格好に身を包んだ律は先ほどシャワーを浴びたのか、髪が少しばかり濡れていた。
暑い日に外に出るものではないと思いながら、冷房がガンガン効いた自室でスマホをいじる。
某白い鳥が描かれているアプリを開き、ニュースを見たり、誰かの呟きを見たり等……。
余りにも暇である律は、一度リビングに降りてジュースでも持ってこようと思い、自室を出る。
ふと、玄関の扉が開く音がし、買い物に出ていた母親が帰ってきたのか確認する為に玄関へ視線を向けた時だった。
つい先ほど会ったばかりの想い人である雪音クリスがそこに居たのだ。余りの衝撃に足を踏み外し、階段から転げ落ちる。
「お、おい!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です……!それよりも母さん、なんで雪音先輩が家に!?」
律は段差でぶつけた箇所を摩りながら立ち上がると何故クリスが此処にいるのか律ママに問いかける。
「偶々スーパーで会ってね、同じ物を買おうとしたから譲ったんだけど、クリスちゃんが中々引かなくてねぇ。もういっそ、家に連れて来ようと思って」
「イヤイヤイヤ!それがどうしてこうなるのさ……すいません、雪音先輩。うちの母、こうなると止められなくて……」
「別に気にしちゃいねぇよ……少し驚いたけどな。お前の母親、意外と大胆なんだな?」
「大胆だなんてまぁ……大胆なのはパパの前だけよ!さて、ご飯にしましょうか」
律ママは買い物袋を持って、リビングへと入っていった。律は母の大胆発言に頰を染め、溜息を吐く。
「ハァ……あの、どうぞ、上がってください」
「あ、あぁ……お邪魔します……」
クリスは律から差し出されたスリッパに履き替え、リビングに入ると律パパが笑顔で出迎えた。
「おや、いらっしゃい。律の友達かい?」
「えっと、リディアンでお世話になってる先輩の雪音クリスさんだよ」
「は、はじめまして……雪音クリス、です。」
「はじめまして、律の父です。律がいつもお世話になってます。ほらほら、ゆっくりしてて。律、お茶を出してあげなさい」
「う、うん」
律は父の言う通りに、麦茶をソファに座るクリスの前のテーブルに置く。
「どうぞ、麦茶です」
「お、おう……」
麦茶を口にするクリスに見惚れる律だったが、いつの間にか律ママが隣に立って、ニヤニヤしていた。
律ママはボソッと律の耳元で囁く。
「律、クリスちゃんの事が好きなんでしょ?」
「なっーーーーそ、そんな事……」
「隠さなくてもいいわよ。階段から落ちるくらい動揺してたじゃない。好きなんでしょ?」
「………うん」
「あははは、青春ねぇ」
律ママは笑いながら、キッチンへと戻っていく。
息子を冷やかす為に来たのだろうかと、律は再び溜息を吐く事しか出来ず、クリスの横に座る。すると、クリスが麦茶を置き、律に話しかけて来た。
「なぁ、お前の母親っていつもあぁなのか?」
「ま、まぁ。母さんって、すぐ他人と仲良くなる特技があるって言うか……今回は無理矢理、雪音先輩を連れて帰って来ましたけど……」
「ふ〜ん……」
「律、少し手伝って〜」
「は〜い」
律が律ママがいるキッチンに行くのを見届けるクリスは、律と両親に視線を向ける。そこに広がるのはごく普通の家庭。幸せな日常を過ごす、何の変哲も無い家族達。
それは、かつてクリスが失った幸せの形。あの日、テロで命を失った父と母。
テロリストに囚われてからの地獄の日々。二度と帰ってこない両親を思い出しながら、クリスは思う。
もし両親が生きていたら、こんな風な光景が広がっていたのだろうか、と。
「ーーーー。雪音先輩?」
「えっ……?」
「ご飯、出来ましたよ?」
「あ、あぁ……分かった……」
席を立ち、テーブルに置かれた椅子に座るクリス。
そして律達も席に座り、手を合わせると律ママが口火を切る。
「それじゃあ、クリスちゃんの歓迎を祝って……いただきます」
「いただきます」
「い、いただきます」
「いただきます。ほら、クリスちゃんもじゃんじゃん食べてね。うちの母さんの手料理、本当に美味しいんだから」
「もう、パパったら!そんなに褒めてもデザートしか出ないぞコノヤロー!」
律パパの肩を軽く叩く律ママを見ながら、クリスは笑みを浮かべ、食卓に並ぶ手料理に視線を向ける。
母親の手料理を食べたのは何年振りだろうか。
そんな思い出に浸りながら、食卓に並ぶ手料理に手をつけ、口にしていく。
「どう、美味しい?」
「……はい、美味しいです」
「そう、良かったわ。おかわりもあるから、いっぱい食べていいからね」
「は、はい」
そう言って、クリスは手料理を口にしていく。
律達も手料理を口にし、箸を進めていきながら、なんてこともない日常会話が行われる。
クリスは久しぶりだった。切歌や調達と共に食事をする事はあるもののこうやって〝家族〟という存在に触れながら、食事をしたのは。
ほんのひと時かもしれないこの時間が、クリスにとっての〝家族の時間〟になっていた。
「ごちそうさまでした」
律達が食事を終え、時計を見ると既に七時過ぎ。律ママから今日は泊まったらと言われたクリスだったが、丁重にお断りし、今日は帰る事にした。
玄関まで見送ろうと律が席を立った時だった。
「律、クリスちゃんを送っていきなさい」
「えっ、でも……」
「いいからいいから。夜道に女の子一人歩かせる訳にはいかないじゃない」
「そ、それもそっか」
律とクリスが玄関に向かい、靴に履き替えると律ママと律パパがクリスを見送る為、玄関にやって来た。
「今日は楽しかったよ。また遊びにおいで」
「は、はい、ありがとうございます」
「クリスちゃん、いっその事、うちの子にならない?クリスちゃんが律のお姉ちゃんになってくれれば何時でも一緒に居られるわよね?」
「ちょ、ちょっと母さん!?」
「冗談よ冗談。クリスちゃん、またおいで。何時でも歓迎するわよ」
「ありがとう、ございます」
「それじゃあ、先輩送ってくるから」
律は玄関を出て、クリスを自宅まで歩み始める。
それを見届けた律ママは笑みを浮かべながら、リビングに入る。
「クリスちゃんが律の奥さんになれば、家族になれるのにねぇ。ねぇ、お父さん?」
「あはは。でも、それは律とクリスちゃんの問題だからねぇ。親の私達が口出す事じゃないよ」
「ふふ、それもそうね」
◇◇◇◇
「…………」
「…………」
佐倉家を出てから、会話が一つも起きなかった。
何を話していいのか分からず、律は頭の中であれやこれや考えながら、話の内容を考える。
何時もは学校でクリスが話しかけて来たり、切歌や調を交えての会話ばかりだった。しかし、夜道を二人っきりで歩きながらは今までなかった為、どうしたらいいのか、そんな事ばかり考えていた時だった。
後方から自転車が走って来ていた。自転車の進路にはクリスが歩いており、自転車の邪魔になると思った律はクリスを引き寄せ、自転車に道を譲る。
突然の事に、クリスは目をパチクリさせ、律を見つめていた。
「後ろから自転車が来てたので……あっ、ご、ごめんなさいっ!」
動揺する律はクリスから手を離し、頭を下げる。
まさか引き寄せるとは思ってなかっただろう。普通に話しかけて注意すればよかったと、今更ながら後悔するが、しかしちょっぴり役得だと思う律。
「べ、別にいいって。少しびっくりしたけどよ……でも、まぁ……ありがとな」
「い、いいえ……どういたしまして……」
そこから再び、沈黙が流れる。
どうしたらいいのかと考える律だったが、クリスが口火を切る。
「……なぁ、お前は幸せか?」
「えっ……?」
「だからぁ、幸せかって聞いてんだよ」
「え、えっと……し、幸せです!」
「……そっか。なら、親を大切にしろよ。死んだら二度と会えないんだからよ」
「は、はい……!」
「約束だからな?……それじゃあ、ここら辺で大丈夫だ」
そう言って、クリスは立ち止まる。どうやら、クリスの自宅の近くまで来たらしい。見れば、高級そうなマンションが其処に立ち並んでいた。
もしかして先輩ってお金持ちなのかなと思っている律は、あまり家をジロジロ見るのは失礼だと気付き、クリスに挨拶をしようとした時だった。
「それじゃあ雪音先輩……」
「……クリスでいい」
「はい?」
「クリスでいいって言ったんだよ。何時までも雪音先輩だと、お前も言い辛いと思ってたからな。今度からはクリスでいいぜ」
「わ、分かりました、雪音先ぱーーーえっと……クリス先輩」
「おう、また学校でな」
「はい、また学校で」
クリスは律に手を振り、マンションの中へと入っていく。それを見届けた律は帰路へ向かいながら、小さくガッツポーズをした。
如何でしたでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
ようやく、苗字から名前呼びする事になった律。
少しは進展したのかなぁと思います。次回も楽しみにしてくれるとありがたいです。
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