クリス先輩がこんなに可愛いわけがない! 作:TearDrop
今回も短いんだ。すまない……本当にすまない……。
少しでも楽しんで頂けるとありがたいです。
リディアンに来てから三日目。
切歌や調、クリスのお陰で少しはリディアンに慣れてきた律は、早めに昼食を食べ終え、昼休みに校舎を見て回る事にした。
食堂や図書室などへの行き方など、粗方覚えた律はそろそろ教室へ戻ろうとした時だった。
何やら多くの資料を抱える一人の女子生徒が律の向こうからやって来た。
律は女子生徒に駆け寄り、声を掛ける。
「あの、手伝いましょうか?」
「えっ……きゃっ!」
律が声を掛けたことによって、バランスが崩れた女子生徒の手から資料が床に散らばる。女子生徒と律は急いで資料を拾い上げていく。
「ご、ごめんなさい、僕が急に声を掛けちゃったから……」
「ううん、気にしないで。君、他校からの交換留学生の子だよね?」
「はい、佐倉律って言います。三ヶ月の間だけ、リディアンにお世話になる事になりました」
「そっか。リディアンにはもう慣れた?」
「まだ慣れない部分とかありますけど、少しずつ慣れては来てると思います」
律と女子生徒が資料を拾い終わり、半分ずつになった資料を持つ二人。
「私は小日向未来、よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします」
律は未来と共に資料を持って、未来の教室へと歩みを進める。そこから世間話などをしつつ、教室へたどり着いた律達。
「手伝ってくれてありがとう。後は私一人でやれるから大丈夫だよ」
「はい、それじゃあ僕はこの辺で。失礼します、小日向先輩」
「うん、じゃあね」
未来が律に手を振ると、律も同じように未来に手を振り返す。そのまま自分の教室へ向かいながら、先ほど出会った小日向未来の事を思い出していた。
(小日向先輩、優しそうな人だったなぁ。悩みとか相談したら、親身になってくれそうだし……雪音先輩の好きな物とか知ってるかな?)
「雪音先輩の好きな食べ物って何だろう……一緒に食べた時はあんパンと牛乳だけだったけど……」
初めて会った時、クリスはあんパンと牛乳だけだったのを思い出す。それからも時々、切歌と調と共に昼食を食べるようになってからも、クリスはあんパンと牛乳だけだった。
そんな事を思いながら、教室へ辿り着いた律。物思いにふけながら、席に着く律。それを見ていた切歌と調は律に話しかけた。
「律、どうかしたの?」
「何か悩み事デスか?」
「えっ……うん。あのさ、雪音先輩が好きな物って分かる?」
「クリス先輩の好きな物、デスか?」
「うん。最近、クリス先輩にはお世話になりっぱなしだから、何かお礼をしたくて……」
「う〜ん、クリス先輩の好きな物デスか……」
「クリス先輩って言ったら、あんパンと牛乳とかだけど……後は、仏壇?」
「やっぱりあんパンと牛乳だよねぇ……えっ、ちょっと待って、仏壇って……?」
律のツッコミがスルーされ、考える事数分。
次の授業の予鈴が鳴り響き、切歌と調は自分の席に戻る。律は授業の合間も、クリスに何をプレゼントしたら喜んでくれるか考えていた。
◇◇◇◇
「それじゃあ、クリス先輩が貰って嬉しいものを探していこうデース!」
「おぉ〜」
「お、おぉ〜……」
「なんであたしまで……」
放課後、律は切歌と調と共にショッピングモールにやって来た。ーーークリスを連れて。
本来なら律と切歌、調の三人でクリスが貰って嬉しいものを探そうとした。
しかし幾ら考えても検討がつかない為、それならクリスを連れていこうと切歌が言い出し、今に至る。
切歌と調が何が良いか、女の子向けの雑貨店でプレゼント選びをしているのを見て溜息を吐くクリス。
律は申し訳なさそうな表情を浮かべながらクリスに話しかける。
「ご、ごめんなさい……どうしても雪音先輩にお礼したくて。雪音先輩にはお世話になりっぱなしだったので、何かお礼をしたくて……」
「別に気にしちゃいねぇよ。ていうか、お礼なんて別にいいってのに……」
呆れながらも、頰を赤く染めているクリスの顔を見た律は心の中で悶絶していた。
(やっぱり雪音先輩可愛いなぁ……こんなところを他の友達に見られたら何て言われるか……あっ)
ふと、視線を遠くの方へ向けた方だった。
遠くの方から見知った顔の人物達がいた。其処に居たのは、律が通っていた高校の友人達だった。
今にも律のいる方向へ向かっていた。しかし、友人達は律に気付いていない。
律は急いで店の奥へ逃げ、友人達が雑貨店を通り過ぎるのを待つ。待つ事数分。友人達は通り過ぎて行き、一安心する律はクリス達がいる店の外へと戻る。
「急にどうしたんだよ、何かあったのか?」
「いやぁ……僕が通ってる高校の友人が居たのでつい……」
「それがどうして隠れる必要があるんだ?」
「えっと……その……」
言えるわけもない。友人達はリディアンに交換留学生として行っている律を羨ましがっている。
リディアンに向かう際も、可愛い子が居たら連絡先を聞いてこいとまで言われていた。勿論、聞いた所で教える筈もなく。
そんなヤましい気持ちでリディアンに来た訳ではないのだから。言葉に詰まらせていると、切歌達が律達の下に戻って来た。
「お待たせしたデース!……あれ、どうしたデスか?」
「何かあったの?」
「う、ううん!なんでもないよ!所で、良いものはあった?」
「あるのはあったんデスが、どれも可愛くて選べなかったデス」
「それに値段も高かったり……」
「そこまで高いヤツじゃなくてもいいっての。あたしはどんな物を貰っても……う、嬉しいしな」
頰を染めながらも、どこか嬉しそうにするクリス。
その可愛さに再び悶絶する律。それから、色んな雑貨店を見て回った律達。何とかクリスが喜びそうな物を買い、フードコートでお披露目会となった。
「じゃじゃーん!私が選んだプレゼントは……これデース!」
「私はこれを……」
そう言って、切歌と調が出したのは如何にも女子が好きそうなキーホルダーとストラップ。どれもクリスのイメージカラーである赤に統一されていた。
そして、次は律の番であった。しかし、中々鞄からプレゼントを出さない。
「どうしたの?次は律のプレゼントだよ?」
「いやぁ、なんか恥ずかしくて……一応、僕はこれを買ったんですけど……」
そう言って、律は鞄から袋を取り出すとそのままクリスに渡す。
クリスは袋を開け、中身を取り出す。取り出したのはウサギのぬいぐるみだった。
「おぉ、中々可愛いデスね〜」
「うん。いいと思う」
「な、なぁ、ぬいぐるみはまだしも、なんでウサギなんだ?」
「雪音先輩、鞄にウサギのキーホルダーを付けてたのを見てて、もしかしてウサギが好きなのかなぁって……ち、違ってたらごめんなさい!」
「ち、ちがわねぇけどよ……あ、ありがとな」
クリスはウサギのぬいぐるみを見つめ、少しばかり笑みを浮かべる。感謝の言葉を告げられた切歌と調は照れているのか、頰を掻く。
ふと、律に視線を移した時だった。クリスに感謝の言葉を告げられた律は急に恥ずかしくなり、顔を両手で隠していた。
(照れた雪音先輩可愛いすぎです……!ウサギを選んで良かったぁ……!)
心の中で喜びながら、涙を流す律であった。
如何でしたでしょうか。
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