八幡と艦娘達の平和な鎮守府生活   作:38ノット

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あんまりにも長くなってしまったので分けました。
お待たせしたわりに少なくて申し訳ない。



2.比企谷さんちの今日のごはん(鳳翔&間宮さん作)

 

 美味え。カレー美味え。定番かつシンプルなのに飽きが来ない美味さだ。

 どうしたらガツガツこんなモグモグに美味く作れムグムグるんだろう。

 

「ふふっ、まだまだありますから、沢山食べてくださいね?」

 

「んぐっ……ふぅ。おかわりお願いします」

 

「は〜い」

 

 鳳翔さんによそってもらう間に水をちびちびと口にする。

 

「はわわ……もう4杯目なのです……」

 

「大丈夫なのかなぁ……アタシ的にはちょっぴり心配なんだけどぉ……」

 

「お〜、いい食べっぷりだねぇ〜。日本男児はそうでなくっちゃだめだよね〜」

 

「あんまり適当な事言っちゃダメですよ、北上さん。提督、無理はなさらないでくださいね?」

 

「……がっつきすぎよ。犬みたいではしたないわ」

 

 順に電、阿武隈、北上、大井、山城、だな。……よし、ちゃんと覚えてる。ぼっちは記憶力がいいのだ。伊達に1回も話した事の無い永原さんに「え……なんであたしの名前知ってんの……キモ……」と引かれてはいない。

 いかん、目から塩水が……。

 

「ばっかお前、これは世界狙えるよ。食わなきゃ損だろ」

 

「……変な人」

 

 はい、そうです。私が変な人です。いや違うそうじゃない。

 

「聞こえてんぞ」

 

「……ちっ」

 

 ちょっと? この子いま舌打ちしましたよね? 俺一応上司なんですけど……。

 

「提督とすっかり仲良くなったみたいだね、山城」

 

「……馬鹿言わないでちょうだい」

 

 そう言って山城はそっぽを向いた。時雨は山城のささやかな抗議を聞き流すようにくすくすと笑い、今度はこちらに話しかけてきた。

 

「ところで、提督は誰を秘書艦にするんだい?」

 

 秘書艦。提督業の補佐をしてくれる艦娘のこと……だったはずだ。

 

「あん? あー……どうすっかな……」

 

 俺はぐるりと彼女達の顔を見回した。期待、興味、不安。それぞれの目がこちらを見返してくる。なんだか品定めをしているような気分になる。それが嫌ですぐに目を逸らした。

 誰にするか、だなんて。俺がそんな事を聞かれるとは皮肉なことだ。

 ただ、そう聞かれても現状判断材料がろくにない。俺は気恥しさを覚えながら口を開いた。

 

「あー……俺はお前達の事をまだ何も知らんから、今すぐ決めるって事は出来ない。だからその……少しずつ教えてもらってもいいか?」

 

「「「……はい!!」」」

 

 みんな笑ってこちらを見ている。なんか顔がすげー熱い。ちょっとこの部屋暖房効きすぎじゃないの? まじ暑いわー……。

 

「ふふっ、お若いですねぇ。お待たせしました、おかわりです」

 

 カレーを持ってきてくれた鳳翔さんにまで笑われる始末だ。いやほんとに恥ずかしいからやめてください……。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 本当に変わったと、自分でも思う。人と関わる事を、昔ほど恐れなくなった。誰かの事をもっと知りたいと、思えるようになった。きっとそれは、あいつら(奉仕部)のおかげなのだろう。そういう意味では、俺の(勝手に出された)最初の依頼は達成されたと言えるのかもしれない。

 

「では、1度づつ皆が秘書艦をやってみてはいかがですか? 私と明石、夕張、それから鳳翔さんと間宮さんはそれぞれ担当があるので出来ませんが……」

 

「いいと思うな」

 

「さんせー!」

 

「いいねぇ〜」

 

「……まあ、いいんじゃないの」

 

 大淀の提案に皆口々に賛成しだす。それなら1人1人の事が分かるし、慣れていくにはうってつけだろう。

 

「じゃあ、そういう事で」

 

 そういう事になった。

 

――――――――――

 

 

「うあー……ねむ……腹きつ……」

 

 カレーが美味すぎてついつい食べすぎてしまった。船旅の疲れが意外にあるのですぐにでも寝たいが昼間潮風に当たり続けたから流石に風呂は入らないといかん。

 

 軽く身体を洗って風呂を出る。俺の風呂シーンなんて誰得もいい所だからカットじゃカット。

 着替え、歯磨きを済ませ、寝る準備が整った所で、魔王からの贈り物を確認する。明日に持ち越すと面倒だ。朝も早いしな。

 

 ダンボールの中を漁ると、白い軍服、着替えが数セット、目覚まし時計、その他諸々が詰め込まれていた。いくら詫びとは言えこんなに貰ってしまうのはいささか気が引ける。いやまあ今更返せるはずも無いし、ありがたく使わせて頂くけど。

 軍服を壁に取り付けてあった突起に掛け、着替えはタンスにしまっておいた。

 

「ダーイブ……うお、すげえ沈む」

 

 綺麗に整えられていたベッドに飛び込む。罪悪感と背徳感が同時に俺を襲った。

 

「眠い……寝よ……」

 

 が、睡魔には勝てなかったよ……。

 

 俺は明日への少しの期待と大きな不安を抱きかかえて深い眠りについた。




山城「……」

山城(執務室、掃除し残した所とか無いかしら……。大丈夫よね……)

時雨「山城? そろそろ電気消すよー?」

山城「え、ええ」

時雨「また考え事してたの? ……さては提督の事だね?」

山城「……そんなんじゃないわ。……もう寝るわよ」

時雨「はーい」クスクス

――――――――――

部屋を掃除したのは山城さんだと思う(希望的観測)
次回はまた一万字超えるかもです。

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