天邪鬼が斬る!   作:黒鉛

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選んだ答え

 タツミ、イエヤス、サヨの三人を引き連れ帝都を探索する正邪。

 というのも、昨夜に今まで戦ったのは妖怪ではなく危険種という存在だと判明した。

 三人の知っている危険種の情報を得たが、それでも情報が足りない。

 

 危険種のことばかりではなく、これからの活動拠点となるであろう帝都に関してもより詳しく知るために今朝から探索に出ているのだ。

 

「……ん?」

 

 そこで、正邪はとある手配書を見つける。

 かつては正邪もお尋ね者だったが、現在では普通の人間となんら変わりなく過ごしている。

 

「……ナイトレイド」

 

「え? ……手配書、か」

 

 やはりどこにでも世界を騒がせる困った奴らはいるものだと他人事のように見ていた。

 

「万が一出会った時の為に覚えておくか」

 

 それは決して警戒の意味ではなかった。

 この帝都という場所を理解した時、自分はどうするべきかを決めるために。

 

 

 

 

 

「……はぁ、やっぱ一兵卒から地道にやるしかないか」

 

「そうね。時間はかかるけどそれが確実だと思う」

 

 タツミとイエヤスは乗り気ではなかったが、サヨの言う通りそれが普通なのだろう。

 正邪自身もこの場所は幻想郷のように安定した場所ではなく、程よく不安定だと考えていたため、今はそれに賛同しようと思っていた。

 

 しかし、帝都を歩き回っている間に何度も聞いたナイトレイドの噂。

 聞く限り帝都でも権力を持つものばかりが狙われているという話だ。

 その真意をどうしても確かめたいとは思っていた。

 

 

「とりあえず、今日は野宿して……!」

 

 明日もう一度軍のところに向かおうと言う直前だった。

 四人は異常な殺気を感じ取る。

 

「な、なんだ今の殺気……」

 

「……! もしかして、手配書にあったナイトレイド……?」

 

 三人は即座に身を隠そうと動こうとする。

 しかし、一人だけ三人とは真逆の道に進もうとしていた。

 

「――最終確認といこうか」

 

 鬼人正邪だ。

 だが、その顔は先程までの少し大人っぽいものではなく、一種の狂気なようなものを感じ取っていた。

 

 タツミは急いで正邪の後を追った。

 正邪が危ない、仲間を助けないと、という気持ちでただ走っていた。

 

 

 

「――葬る」

 

 正邪が辿りついた頃には既に殺し合い……一方的な殺戮ショーが始まっていた。

 

 上空から確認すると一人の少女とその護衛を除けば殆どは殺されていた。

 問題は、何故彼女たちが殺されているのかということだ。

 

「……あれは」

 

 後ろからは正邪を追ってきたのであろうタツミたちが走ってきている。

 

「ったく、わざわざ追ってきたのか」

 

 正邪にとってはいらぬ心配だが、邪険にするつもりもない。

 

 まだ使える道具と三人の駒。

 これがあれば戦える

 

「……そこのお前ら、ナイトレイドだな?」

 

 正邪は立った。

 腕を組み、真剣な眼差しで彼らを見つめる。

 

「……三人来たのは分かってたけど、クローステールにかからないってどんな視力してやがんだ」

 

 緑髪が相当警戒していたのが分かる。

 だが、どれ程警戒しようと正邪は一つ目の反則アイテムである亡霊の送り提灯を使用しているため、罠にかからなかったのだ。

 

 しかし、暫くは送り提灯が使えない。

 緑髪もかなり警戒しているため、今度は慎重に動かなければならない。

 

「安心しな。私は確かめに来たんだ」

 

「……確かめに?」

 

 緑髪がこちらの動きを観察しながら返答する。

 

「ナイトレイド、お前たちが権力者ばかりを狙う意味はなんだ。なんの意味もなく殺して回ってる愉快犯ではないだろ?」

 

 と、そこで先程逃げていた少女が黒髪に殺されようとしているのを目撃する。

 その場所を向き、陰陽玉を握りしめる。

 

 その瞬間、正邪は目の前から消えた。

 

「消えた!? まさか帝具使い……!!」

 

「移動系の帝具……。でも、敵意はなかったし攻撃してくるまでは様子見か」

 

 

 

「葬る」

 

 黒髪の刀が少女を切りつける。

 

「……まあ待てよ」

 

 しかし、刀は少女を斬らずに人形を斬っていた。

 

「!? ……帝具使いか」

 

「帝具使い?」

 

 ここにきて新たな単語が出てくるが、ここは一度無視することにした。

 

「……まあいい。何故お前たちはは少女を

狙った?」

 

「お前には関係ない。邪魔をするならお前も斬る」

 

 黒髪の殺気はとてつもなく、幻想郷でもここまで殺気を向けられたことはなかった。

 

「別に、理由だけ聞けばあとはお前たちの勝手だ。逃がすとか思ってるならこいつを縛ってから話してもいい」

 

 

「……嘘じゃないようだな」

 

 後ろから声が聞こえ、少女が拘束される。

 そいつは、少し雰囲気が違ったが、知っている顔だった。

 

「……はっ、盗人と思いきやナイトレイドだったか」

 

「はは、てことは少年も来ているのかな?」

 

「……いや、そこに二人追加だ」

 

 振り返ると後から三人が走ってやってくる。

 全員剣を手に取り警戒していることから正邪が襲われていると勘違いしてると分かった。

 

「安心しな少年。少女には何もしないさ」

 

「え? ……あ!! あの時のおっぱい!」

 

 タツミも金髪を思い出したように叫ぶ。

 しかし、今はそんな茶番をしている時ではない。

 

「何故殺そうとするか。その答えたはこれだ」

 

 後ろにあった倉庫の扉を破壊し、中がはっきりと見える。

 

 死体、まだ生きている人間、肉を剥がれされた死体。

 人間から見れば地獄絵図のような光景だ。

 

「……ぅ……な、なんだこれ……」

 

「こんなの……酷すぎる……!」

 

 タツミとイエヤスは呆然とし、サヨはあまりのショックで吐いていた。

 そして、正邪は……。

 

「……そういうことか」

 

 怒っていた。

 そして、少女を睨みつけると……。

 

「私は弱者の癖に生まれが強者ってだけで弱者を食い物にしてる奴らが嫌いなんだ」

 

 金髪を退かし、小槌で両腕を潰す。

 

「なるほど、これが帝都の闇か」

 

 次に両脚を潰す。

 

「――なら私は、この帝都をひっくり返す」

 

 最後に頭を潰した。

 

 

「……我が名は正邪。私をナイトレイドに入れろ」

 

 動かなくなった少女を踏みつけ、正邪は頼んだ。


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