ホグワーツの冷徹管理人   作:零崎妖識

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忿怒よりも怖いのは微笑

第二の山、『極深無底山』。どれだけキツイのか、と覚悟を決めていた三人だったが、意外にも普焼山よりも楽に越えることができた。穴に落ちないようにして、ついでに頭上にも注意すればいいだけだったので。

 

「それでも、十分キツかったけどね……」

 

「問題は次の山よ。炎は防火魔法で防げるけど、毒はどうしようもないわ。前に読んだ本に、〈泡頭呪文〉って言う酸素ボンベみたいなのがあったんだけど、一年生には不可能な難易度の呪文なの」

 

「てことは、また駆け抜けることになるのかぁ……」

 

防火魔法を使い、第三の山『闇火聚觸山』を駆け抜ける三人。毒が体を蝕み、先ほどよりもさらに熱い炎が皮膚を舐める。フラフラになりながらも、無事、突破することができた。ロンの髪の毛が煤で黒くなって来たが。

 

「日本のテレビに、こんな番組なかったっけ……?」

 

「……『S○SUKE』……かしら?」

 

「わお、ニンジャみたいな名前だね!ところでテレビって面白いのかい?」

 

あまりマグルに関わることのなかったロンには、一般人出身のハリーとハーマイオニーの会話についていくことができなかったようだ。

休憩を終え、四つ目の山『割截山』に突入する三人。小細工なしに、反射神経だけで抜けなくてはならない。

 

「きゃあ!」

 

「ハーマイオニー、危ない!」

 

割れ目に落ちかけるハーマイオニーをハリーがすぐに引っ張り上げる。この山はハリーにとっては楽勝だったようだ。最年少シーカーの名は伊達ではない。

 

「さすが。ハリー、その反射神経を僕に分けてくれないかい?」

 

「やだね。ロンのお兄さんもシーカーだったんだろう?なら、ロンも持ってるんじゃないかい?」

 

「……私、この山だと役立たずね……」

 

五つ目の山『業証山』に辿り着いた三人。此処から入れと言うように、鏡張りの道が口を開いている。

中に入ると、すぐに分かれ道が。道の先を見ると、更に分かれ道が。

 

「…………迷路?」

 

 

〜試練設置の時の話〜

 

「さて、業証山はどうするか……浄玻璃の鏡を地獄から借りてくるわけにもいかないし……精神を削るようにはしたい」

 

「鬼灯様、悩み事?」

 

「私達でよければ手伝います」

 

「ありがとうございます、座敷童子さん。では、鏡張りの道で精神に来るようにしたいのですが……」

 

「迷路とかいいと思う」

 

「怖い話もいいと思う」

 

「あと、突き当たりで、なるべく怖い演出でイラッとくる言葉を」

 

「ホラー系のフリーゲームみたいな感じで」

 

「……なるほど、その手があったか」

 

 

〜そんな感じのやり取りがあり、今に至る〜

 

「……迷路の必勝法って、何かある?」

 

「日本の漫画に出て来たのだと、無意識に左を選びやすいから、右を選んだ方が安全って理論があったわ」

 

某鎖使い理論を元に、右へと進む三人。曲がり道の先には……行き止まり。

 

「……ほら、確率的には二分の一だから」

 

ハーマイオニーが苦笑いし、くるりと後ろを向く。その時、ベシャッという音が行き止まりの鏡から聴こえた。

ゆっくりと、ハーマイオニーが鏡を振り向く。行き止まりの鏡が映っている目の前の鏡には、何の変化もないが、確実に、何かが起こっていると直感が告げていた。

 

『ねぇねぇ、私達が某鎖使い理論を逆手に取らないと思った?あはははは』

 

真っ赤な絵の具で、イラッとくる言葉が書かれていた。

ハーマイオニーの周りの気温が急激に下がっていく。恐怖、そしておちょくられた怒りで。

 

(あー、赤絵の具の言葉ってゲームにあったなー。ダドリーが前にやってたフリーゲームに。結局、ダドリーは怖いって理由で最後までやらなかったけど)

 

ハリーは現実逃避した。

そして、ゆっくりと、ハーマイオニーが振り返る。もしもスタンド的な何かが見えるとしたら、ハーマイオニーの背後には般若、もしくは死神か何かが見えていたことだろう。

 

「さぁ、やるわよ二人とも。この迷路最速でクリアしなくちゃ。そんであの座敷童子にドヤ顔しなくちゃね?」

 

 

その時のハーマイオニーの顔を、十年以上後にロン・ウィーズリーはこう語る。

 

「いや、ハーマイオニーはいつも、怒ると怖いんですけどね。夫婦喧嘩の時のハーマイオニーが(デーモン)だとしたら、あの時のハーマイオニーは更にその上を行きますよ。魔王(ルシファー)と言っても過言じゃありません。あれは、本気でキレた時の顔でした。人って、あんなに怖い微笑を浮かべることができるんですね……」




参考:クラピカ理論、Ib

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