誤字の指摘があったので直しました。ご指摘、ありがとうございました!
オラリオ三大美人の一人にして冒険者の頂点、《覇王》リヴェルーク・リヨス・アールヴ。金の髪と赤い瞳を持つ幻想的な少年は美男美女の神々にも負けぬ美しい顔をゲンナリと疲れ切ったモノにしていた。何故なら今現在少年がいるのはゼウス・ファミリアのホームではなく──。
「やぁやぁ待っていたよ、ルーク君!約束の時間五分前にホームに来るなんて、相変わらずの真面目っぷりだね!」
「そんなことないですよ。それよりも、何で俺がこんな朝早くにアストレア・ファミリアのホームに呼び出しなんて食らわなきゃいけないんでしょうか」
アストレア・ファミリア団長の《正弓》アリシア・ティルフィからアストレア・ファミリアのホームに呼び出されたのだ。
ゼウス様とアストレア様のファミリアは同盟関係を結んでいるので何度も協力してダンジョンに潜ったりもしたことはある。しかし、一ヶ月後に控えた三大
「ルーク君に依頼があるんだ。私達のファミリアの期待の新人二人組に指導をしてあげて欲しいんだよね」
「期待の新人二人というと、リューともう一人誰かってことですか?」
「そうそう、その通り!最近入団して
「へぇ、リューの妹ですか。以前リューから妹がいることは聞いていましたが、まさかオラリオに来ているとは」
「本当に最近のことだからね。知らないのも無理はないかな」
『まぁ、詳しいことはいいからいいから』と言われて中庭に誘導された俺は、仕方無く依頼を受けることにした。⋯別に報酬のアリシアさんの手料理に釣られたわけでは決して無い。そんなことあるわけが無い。ただ単にリューの妹がどんな子か気になっただけだ。
☆
「⋯というわけで、二人の指導をすることになりました。名前はリヴェルーク・リヨス・アールヴと申します、好きなように呼んで下さいね」
「宜しくお願いします、ルークさん」
「よ、よよよ宜しくお願いします、リヴェルーク様!妹のリュノ・リオンと申します!」
リューを含むアストレア・ファミリアの冒険者とは結構一緒にダンジョンに潜ったりもしたので、リューも最初にダンジョンで会った時より砕けた感じで接してくれるようになった。
しかしもう一人のエルフ、リュノ・リオンの方とは今日初めて会う為にそういうわけにもいかないみたいだ。リューを若干幼くしたような見た目で、クールな姉と対照的な明るく元気な感じの娘だな。
「もっと気軽に接してよ。お姉ちゃんみたいにルークって呼んで下さい」
「いえいえ、そんな無礼なこと出来ませんよ!」
「──まぁ、そこはこれから徐々にって感じでいいかな。それじゃあ訓練を始めるけど、まず最初にやるのは⋯」
☆
一週間。アストレア・ファミリアに通いつめてみっちり特訓した。姉のリューが優秀なこともあって妹のリュノも中々の素質を持っている。ただ向いている
この一週間は本当にただただ訓練をしまくっただけなので詳細は省略でいいだろう。まぁ後日番外話として投稿するかもしれない。──番外話とか投稿とか自分で思ったことだがどういうことだ?
「ルーク君!難しい顔してどうしたのかな?お姉さんが聞いてあげるよ!」
自分でさえ分からないことを思ったとか言ったら変人扱いされて弄られるのでここは誤魔化しておこう。
「アリシアさん、こんにちは。今度挑む《遠征》について考えていたんですよ」
「あ〜、三大
「五分五分って感じです。《古代》の情報はありますが、あれから千年経っているのであまり当てに出来ないでしょうし」
「千年で強くなっていることは間違い無いだろうね。ただでさえ、恐ろしく強いって逸話がいっぱいある怪物なのにさ」
そこなのだ。三体の怪物について様々な逸話が存在しているが、どの逸話を聞いてもその怪物っぷりが伺えるモノばかり。特に《隻眼の竜》は三体の中でも飛び抜けてヤバイ。『尾の一振りで大地を割く』だとか『どんな攻撃も通さない鱗を持つ』などといった盛りまくってると思いたくなるようなモノばかりだ。
当然その逸話は《
「まぁ、ルーク君がその程度で止めるわけが無い事は分かってるんだけどね。⋯必ず無事に帰って来て、またリュー達の面倒を見てあげてね」
「分かっていますよ。俺も死ぬつもりなんて更々無いですし」
普段は小悪魔っぽい人なのに、こう言う時だけ真面目になるのはずるいと思う。普段とのギャップもあってどうしてもこの友人の真剣なお願いは叶えたくなってしまう。──俺もかなり毒されたのかな。まだ十二歳なのに。
その後も談笑した後に『リュー達がお礼を渡したいみたい』という旨をアリシアさんから聞かされ、二人が待っている中庭へと足を運んだ。
☆
俺の目の前には殆どの部分が黒く炭化してしまっているクッキー?が皿に盛られている。盛り方はとても綺麗なのだがクッキーの黒々しくて禍々しい様がそれを打ち消してしまっていた。──これは食べても大丈夫な代物なのだろうか?
「ルークさん、すいません」
「えとえと、アリシアさんに教わりながら頑張って作ったんですけど、上手く出来ませんでした」
そう言って二人はかなり落ち込んでしまった。──確かに見た目はヤバいが、食べてみれば案外美味しいってことがあるかもしれない。それによくよく見ると二人の綺麗な手には切り傷などが多々見られる。リューは回復魔法を使えるはずなのに傷が残っているということは、そんなことにも意識がいかないほど集中して作ってくれたのだろう。
自分の為に作ってくれたモノを受け取らないなんて心が痛むし、何より二人の頑張りを無に出来ない。可愛らしい
「ありがとうございます、二人とも。それじゃあ早速頂きましょうか」
俺がそう言ってクッキーを口に運べば、二人は目に見えて不安そうな表情になった。口に入れた瞬間に強烈な苦味が俺を襲う。ハッキリ言うと──コレは苦過ぎる。なんとか食べられないほどではないがかなり苦い。しかし何故だかとても──。
「心が温まる味です。コレが『真心』というモノの力なのでしょうかね」
「ほ、本当ですかっ⁉︎それなら良かったです。ね、お姉ちゃん!」
「はい。そう言ってもらえると、とても嬉しい」
俺の言葉を聞き、二人は本当に嬉しそうに微笑んだ。その表情はとても純粋で可憐なモノだった。こんな純粋な少女達の手にいつまでも傷を残しておくわけにもいかないので俺はソレを癒してあげることにした。
「【万民を救う神業を体現し、傷の悉くを癒そう。全ての者に
俺が急に詠唱を始めたせいで初めは二人とも目を見開いて驚いていたが、俺の詠唱している魔法がどんなモノか悟ったようで俺に期待の視線を投げかけてきた。
「【エデン】」
俺は魔法名を唱えて二人の手の傷を綺麗さっぱり治癒する。魔法の対象である当の二人は俺の魔法が目の前で見れたことにテンションが上がっているようだ。──俺の魔法なんかで喜んでもらえるなら何回でも使っちゃうわ。
「ルークさん、ありがとう」
「あ、ありがとうございます、リヴェルーク様!」
しっかりお礼を述べる
「とぉりゃーーっ!」
「はいはい、バレバレですからね」
「ふぐぉーっ⁉︎」
背後から背中に飛びついてこようとしていた人物のおでこにデコピンを喰らわせた。⋯今のは決して
「おたくの期待の新人二人が驚くので止めて下さいよ、アリーゼさん」
「許してくれ、君の背中を見てついつい悪戯をしたくなってしまった」
この人はアストレア・ファミリア副団長にして
「それで、俺に何か用事ですか?」
「ああ、その通り。門の前に君のファミリアの団長が迎えにきているから、それを知らせに来た」
「うえ、マジですか?⋯団長自らとか、何かありそうだなぁ」
アリーゼさんから団長の訪問を聞かされた俺は、流石に待たせるのは申し訳無く感じるのでアストレア・ファミリアのホームから帰ることにした。
帰り際にリュー達とまた指導することを約束したり、アストレア様から直々にお礼を述べられたり、報酬だったアリシアさんの手料理を
☆
「団長自ら俺の迎えなんて、珍しいですね」
「⋯リヴェルークに用事があったからな」
俺の知り合いの中で一、二を争うほどの寡黙な男性。リューをもうふた回りくらいクールにすれば団長のような人物になるだろう。
しかし、彼ほど団長に向いている人を俺は知らない。寡黙故に《未知》に立ち向かう時も下す号令は静かなモノ。それでも決して弱音を吐かず仲間を見捨てず、敵に背を向けないこの人に団員は全幅の信頼を寄せている。
日常生活では無駄を嫌う人なので、そんな人が次に発した言葉に呆けてしまった俺は悪くない。
「⋯今から、ダンジョンに行くぞ」
──え?防具もアイテムも碌に揃っていないこのタイミングでですか?それなんて無理ゲ⋯⋯でも無いか。
リヴェルーク・リヨス・アールヴ、12歳。育ち盛りなので、美味しいものには目がありません笑
それと本編とは関係無いのですが、29日に『ここさけ』が地上波でやる事を知りました。映画館で見ましたが、もう一度見たかったのでありがたい。
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