リヴェリアに弟がいるのは間違いない事実だ   作:神木 いすず

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6話 罰と報せ

 俺はリヴェルーク・リヨス・アールヴ、ハイエルフの十二歳だ。いきなり自己紹介なんてどうした?って思うだろうが現実逃避したいが為におかしくなっているだけだと思ってくれ。俺がこうなっている理由は──。

 

「ルークたん、ワシはとっても悲しいぞ。すぐに帰ると言っておったのに、まさかその約束を忘れて乳無し(ロキ)のファミリアの者と話をしていたとはのう。⋯まぁそれはよいわ。何せ相手は、ルークたんの姉のリーアたんのようじゃからな。しかしな、ルークたん。ワシとの約束を破ったのは良くないぞ。ワシは、ルークたんと話しながら夕食を食べるのを楽しみにしておったのに。大体ルークたんは最近⋯」

 

 ゼウス様にメッチャ絡まれてる。説教が死ぬほど長いのだ。──本当にこの駄神は良く二時間もぶっ通しで喋れるな。ここまでくるとある意味尊敬する。

 そろそろ聞くのも面倒になってきたし何より正座して聞いているので足が痺れてきた。故に俺は、強引に会話に割り込んで終わらせることにする。

 

「遅くなったのは謝ります。しかし、勧誘を受けていたわけでは無いので、そこだけは()()()()()()誤解しないで下さいね」

「分かっておるわ!以前のように誤解して、《()()()()》を起こそうとしたりはせんわい!」

「あの時は本当に驚きましたよ。フレイヤ・ファミリアの知り合いと談笑していただけで、戦争遊戯(ウォーゲーム)を起こそうとするんですから」

 

 日常生活で、あの時ほど焦ったことは余り無いだろう。俺がフレイヤ・ファミリアの人間と話しているところを目撃したゼウス様(駄神)が、俺のことをフレイヤの眷族(ファミリア)が勧誘していると勘違いして戦争遊戯を仕掛けようとしやがった。

 あの時はなんとか誤解を解くことが出来たが、誤解を解くまでに数時間を要した。本当にこの駄神は俺を大事にし過ぎだろ。

 

「⋯まぁ良いわ、許す。だがな、主神たるワシとの約束を破った罰を受けてもらおうかの」

 

 楽しそうな表情をしつつ、我らが主神はそんなことを言い出した。──こういう表情してる時のゼウス様の考えてる内容って絶対碌なことじゃないんだよな。

 

「良いか?ルークたんに与える罰は──」

 

 

 

 

 ゼウス・ファミリアのホームの中にある大きな食堂。普段は団員達の楽しげな声が響き渡るこの騒がしい場所は現在別な意味で騒がしくなっていた。

 

「おい、何で()()()が一人で厨房で料理なんてしてるんだよ」

「聞いた話だと、昨日の騒ぎの件の罰だそうよ。ゼウス様から、『全団員の朝飯を一人で作ること』って言われたみたい」

「ハ、ハイエルフ(王族)たるリヴェルーク様にそのような雑事をさせるとは!こ、ここはエルフ(同胞)一同、何か手伝いをするべきではないかっ⁉︎」

「ルークは、自分の仕事や罰はキッチリしなければ気が済まないタイプだ。だから、手伝うのは止めておけ」

「それより、命令したゼウス様本人がこの場にいないっていうのはどうなのよ」

 

 騒がしい理由は《覇王》リヴェルークがたった一人で厨房に立ち、かなりの量の料理を作っているからだ。

 ゼウス・ファミリアの中で最も強くて最も幼い年齢のリヴェルークのそんな姿への反応は様々である。

 ハイエルフのリヴェルークがそのような雑事をしていることに他のエルフの団員達はいてもたってもいられない様子だ。エルフ以外の団員の反応も大きく分けて二種類である。

 女性陣は頑張って料理をする幼いリヴェルークの姿を見て『可愛いーっ!』と連呼している。男性陣はその様子を見て血の涙を流しつつも、息子を見守る父のような厳かな雰囲気を滲ませている。

 この一場面を見るだけで最年少のリヴェルークがどれほどエルフから尊敬され、他の団員達から愛されているかを何となく伺うことが出来る。

 

「それよりリヴェルーク様ってさ、料理とか出来るのかな?」

「ルークが料理出来るなんて話、聞いたことが無いんだけどねぇ」

「⋯それってよぉ、もしかしなくてもまずい事態になるパターンじゃねぇか?」

 

 副団長のそんな呟き。ソレが盛大にフラグを立てることになってしまった。

 

 ──ドゴォォオオオオオッ──

 

「な、なんだっ⁉︎厨房が急に爆発したぞっ⁉︎」

「うわぁ、副団長があんなに分かりやすくフラグなんか立てちゃうから」

「リ、リヴェルーク様っ!ご無事ですか⁉︎」

 

 そんな叫び声が上がるのを尻目に燃え盛る厨房が急に凍りついた。食堂にいる者全てがその寒さに体を震わせる中、爆発の発生源である厨房からボロボロな姿のリヴェルークが出てきた。

 

「はぁ、失敗してしまいました。やはり料理は難しいですね」

「リヴェルーク様、お怪我はありませんかっ⁉︎」

「俺は大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます」

 

 俺は滅茶苦茶焦った表情をしているエルフの団員達に笑いながら手をヒラヒラと振ることで『大丈夫』というアピールをしておいた。消火などが一通り終わり、騒ぎもひと段落ついたところで副団長であるドワーフの男性が話しかけてくる。

 

「リヴェルーク。お前⋯一体何しやがったんだよ?」

「何をした、と言われましても⋯。食材を焼こうとしただけなんですけれど」

「焼こうとした()()、なぁ?お前、どうやって焼こうとしたのか言ってみろ」

 

 クティノス・フラウ(副団長)から疑わしい者を見る目を向けられつつそんなことを聞かれたので、あるがままのことを話した。するとアホを見る目を向けられた。──というか思いっきりアホって言われた。

 

「いやいや、『自分で焼いた方が早いと思ったから姉の魔法である【レア・ラーヴァテイン】の小規模版を使った』とか、アホだろお前。油も大量にかけてたっぽいのにそんなことすりゃあ爆発すんのは当然だぞ」

「うーん、思い描いていたのと全く違う結果になりました。フランベのような感じにするつもりでしたのに」

「⋯フランベってお前、そんな言葉どこで覚えてきやがった。一つ助言をするなら、料理下手は余計なアレンジはしねぇ方が良いんだよ」

「ミアさんに教わったんです。話を聞いて、滅茶苦茶カッコいいと思ったのでやってみたのですが。すいませんでした」

「⋯まぁ、気にすんな。少しお金が飛ぶだけだからな。ったく、うちのバカ神はこうなることくらい予想出来ただろうに」

 

『これ、修復すんのに幾らかかるんだ』とボヤきながらクティノスは苦笑いを浮かべた。好奇心でやってみたのだがやはり出来ないことはするべきでは無いな。

 哀愁を漂わせながら遠い目をする副団長にもう一度謝罪してから俺は気になったことを尋ねた。

 

「そういえば、ゼウス様と団長は?この騒ぎになっても飛んで来ないということは、何処かに出かけているのでしょうか?」

「ヘラ・ファミリアのホームだ。なんでも、話しておきたいことがあるらしいぞ。ゼウス様も珍しく真面目な顔だったしなぁ」

 

 それって──ただ単に浮気がバレて弁明しに行っただけなんじゃないか?以前も似たようなことがあり、団長を護衛として引き連れたゼウス様が謝りにホームまで訪ねてたし。つーか『何度も謝るくらいなら二度とするな』と声を大にして言いたい。

 そんな俺の考えを読み取ったのかクティノスから訂正が入った。

 

「お前の考えていることは多分違ぇだろうよ。副団長の俺も詳しくは知らねぇが、恐らくは《遠征》についての話し合いだと思うぞ」

「遠征、ですか?そういえば以前、ゼウス様と俺のランクアップについて話した時に、『とっておきの相手と闘わせてやる』と言われました。もしかしなくてもそれ関係でしょうかね?」

「もしかしなくても、それ関係で確定だろ。はぁ〜、今度の相手はかなり面倒な奴になりそうだな。ゼウス様のその言い方からすると、Lv.8のお前がランクアップすることが確実な相手みてぇだしよ。そんな相手はかなり絞られてくんぞ」

 

 絞られているどころか殆ど確定と言えるだろう。生き残れば俺のランクアップが確定している相手、それはつまり──。

 

「全員、今すぐ食堂に集合じゃー!早く来ないとワシのゴッドパンチを喰らわすぞっ⁉︎」

 

 そんな俺の考えを吹き飛ばしたのは、いつの間にか帰って来ていたゼウス様の叫び声だった。素直に従っておかないと騒ぎ出してしまうので俺とクティノスは互いに苦笑いを浮かべて食堂へと向かった。

 

 

 

 

 食堂に集められたゼウスの眷族(ファミリア)一同は自分達の主神から告げられた言葉を飲み込めず呆気にとられていた。その中でも最初に正気に戻ったのは好戦的なドワーフの副団長、ではなく──。

 

「へぇ、ようやく()()()()()()()に挑戦するんですか。まぁ、そんなことだろうと思いましたが。その三体なら相手にとって不足無しですね」

『いやいや、冷静過ぎだろっ⁉︎』

『流石はハイエルフ(王族)のリヴェルーク様ですっ!』

「わっはっは、ワシのファミリア最強のルークたんはそうでなければなっ!他の皆も、ルークたんの切り替えの早さを見習うのじゃぞ!」

 

 他の団員やゼウス様が何か叫んでいるが俺の耳には入らなかった。何故なら──まだ見ぬ死地に想いを馳せていたから。自身が更なる高みへと至る機会を与えられたことに超が付くほど気合が入っていたから。

 そんな少年から発せられる純粋な力への渇望に当てられたのか、他の団員も自分達が《未知》へ挑戦することを理解して拳を力強く握り締めるのだった。




オリ主は基本的に、戦闘以外は年相応かそれ以下です。ですのでアホみたいな行動もたまにとりますが、『まだ十二歳の子供だ』と思って下さいm(_ _)m

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