リヴェリアに弟がいるのは間違いない事実だ   作:神木 いすず

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15年前の時点でのオリジナル年齢設定
・リヴェルーク→12歳
・リュー→10歳
オリ主は8歳の頃に恩恵を授かっており、冒険者歴は5年目です。この歳でLv.8なので、マジモンの化け物ですが経験不足なところもまだまだあります。
若い割りに喋り方が落ち着いてるのは、王族故だと思って下さい。


3話 重き沈黙

 ゼウス・ファミリアとロキ・ファミリアの突然の接触。コレが互いのファミリアの主神同士の接触なら付近にいる人々に不安を抱かせるには充分な突発的イベントだ。

 現二大派閥の片割れの主神であるゼウスはロキとは仲が良くないことで有名である。何故なら日頃から顔を合わせればゼウスがロキの無乳っぷりを馬鹿にして、その度にロキが暴れ出すという事件が何度も起きているからだ。余りにもその数が多過ぎるせいでギルドからも厳重注意を受けるほどである。

 それなのにゼウスがロキを馬鹿にするのはひとえにゼウスが巨乳好きな為だ。聞いた者は口を揃えてたったそれだけ?と言うが、ゼウスにはロキの存在が許せないのである。

 女神であるはずなのに男のように何もない胸。そんな貧相な体型の女神の存在は『巨乳こそが女神の必須条件』と思っているゼウスにとって許せるはずが無い。──要するに男としては最低な人物、いや神物だ。

 ヘラという妻がいるにも関わらず口を開けば男のロマンはハーレム云々と声高らかに語り出す駄神だ。人間どころか他の神から見ても最低な駄神だろう。

 それだけ?としか思えない《ロキの胸何も無い問題》を何度もほじくり返すという行動も『ゼウス様だからしょうがない』で済むようになってしまった。

 話がかなり逸れてしまったが、つまり何が言いたいのかというと──。

 

「奇遇だね、リヴェルーク。僕達、君に用事があったんだよ」

「ガッハッハ、そういうわけだから少しワシ達に時間を割いてもらうぞ」

「なに、時間は取らせん。すぐに終わる」

 

 主神同士が仲が悪くともその団員まで仲が悪いわけでは無いということだ。寧ろ巨乳好き(ゼウス)の暴走と乳無し(ロキ)の怒りを収める時に協力し合ったりするのもあり、こんな風に気軽に誘えるほど結構仲が良い。

 

「これから夕飯なんですよ、そういうことで失礼します」

「⋯ルーク、どうしてもダメか?」

 

 そう言って三人に背を向けた俺に掛けられたのはリアねぇの寂しげな声だった。──いやいや、リアねぇはそんな声を出せば俺が付いて来ることが分かっているから出しているだけで、要するにただの演技だ。

 滅茶苦茶気になるのだが振り返ったら俺の負け確定だぞ?絶対に騙されるなよ、リヴェルーク・リヨス・アールヴ。

 

「⋯リヴェリア、僕のハンカチで良ければ使ってくれ。その()を拭う為に」

「⋯リヴェルークよ、お主は非道な男じゃな。姉であっても、女性を泣かせるのは流石のワシでも庇えんぞ」

 

 ⋯演技、だよね?あれ、もしかして違うのかな?なんか俺の背中に刺さっている男二人の視線がガチで咎める感じなんだけど。

 このまま去るわけにもいかず、滅茶苦茶気になった俺が振り返ってリアねぇを見れば目尻に溜まった涙をハンカチで拭う姿が目に入った。──あ。これ、もしかしてガチなやつ?かなりヤバくね。

 

「分かった!行くよ、行けば良いんでしょ⁉︎だからリアねぇ、泣かないでよ!」

「良し。それならサッサと付いて来い、このバカ弟め」

 

 ⋯あれれ?リアねぇの立ち直り、明らかに早くない?早くない⁉︎しかもナチュラルに罵倒された!

 

 

 

 

「⋯要するに、俺に用があるのはリアねぇだけで、残りはただリアねぇに話を合わせただけってことですか?」

「そうなんだ。嘘をついたことは謝るよ、すまないね」

「すまんな!ワシの顔に免じて許してくれ!」

「いや別に、怒っているわけでは無いので良いですけどね」

 

 怒ってないというのは本当だ。大方リアねぇが怖い顔で脅迫、もといお願いでもしたんだろう。──まぁ、ガレスの言い分には全く納得出来ないが。

 それよりも気になるのは俺への用事についてだ。

 

「それで、俺に何の用ですか?睨んでないで教えて下さい、リアねぇ」

「⋯弟が一人遠征などというアホなことをしているんだ、睨みたくもなるだろう」

「はぁ、またそれについてですか」

「何故お前がため息をつく!またか、とため息をつきたいのは私の方だ!」

 

 今回でリアねぇにお小言を言われるのは何度目だろうか。頻繁に言われ過ぎて日常の一部になってすらいる。

 リアねぇが俺を心配してくれるのは素直に嬉しいが、こちらもソレを止めるわけにはいかない。俺が強くなる為には必要不可欠なのだから。

 

「リアねぇは別なファミリアなんだし、俺のやり方に口出しなんて出来ないでしょう」

「そんなことは分かっている!それでも私は、お前の姉であり家族だ!⋯心配してはいけないか」

「心配してくれるのは勿論嬉しいです。しかし、俺は止めるつもりはないですよ」

 

 この会話の流れは一体何度繰り返しただろうか。結局、この会話の行き着く先はいつも同じだ。

 

「自分の仲間をもっと頼れ。お前のファミリアは、オラリオ最大のゼウス・ファミリアなのだぞ」

「確かに、ファミリアの皆は強くて優しい。それは分かっていますし、別に頼っていないわけではありません。ですが、理不尽な敵が現れた時に誰も喪わずに勝ちたい。だから俺は、どんな理不尽な敵にも打ち勝てる絶対的な強さが欲しい。⋯それが()()()に決意したことです」

「⋯その考え方は、今も全く変わらないのか」

「はい。恐らく一生、変わることはありません」

 

 俺がそう宣言すると、リアねぇは悲しげであり悔しげでもあるような表情を浮かべて黙り込んでしまった。俺の返答なんて毎回分かりきっているくせに何度も何度も尋ねてくる。その度にリアねぇは同じ顔をするからこの話はあまりしたくない。

 でもリアねぇは優しいから、俺の返答なんて分かっているのに何度も同じことを俺に尋ねる。まるで『考え直せ』と言外に告げるかのように。

 いや、実際にリアねぇはそう言っているつもりなのだろう。だけど、この考えだけはもう変えられない。()に身をもって教わったことである為、既に《俺》という人格の一部になってしまっているから。

 

「あ、リヴェルーク様!ようやく見つけました!」

「⋯ん?ああ、ハリスじゃないですか。そんなに慌ててどうしました?」

 

 体感的には何十分も経過したと思えるくらいの長い時間、重い沈黙が続いた。──が、それを破る大きな声が入口の方から聞こえてきた。

 俺達四人が話しをするために利用していた店に入って来たのは、ゼウス・ファミリアの第三級冒険者ハリス・リミウッドであった。どうやらオラリオ中を駆け回り、俺のことを他人に聞きながら探していたそうだ。

 

「『どうしました?』じゃないですよ!夕飯の時間になってもリヴェルーク様が帰ってこないので、ゼウス様が暴れちゃってるんです!ですから自分以外にも、ゼウス・ファミリアのLv.4以下の冒険者総出でリヴェルーク様を探していたんです!」

「うん。そんなに長い言葉を良く息継ぎ無しで一気に言えましたね、凄いですよ」

「そこはどうでもいいんです!」

 

 うわー。ゼウス様との約束なんてすっかり忘れていたわ。つか、俺一人の捜索に第二級冒険者まで動かすことになるとかあの駄神はどれだけ暴れてんだ?あんな紳士然な見た目のくせにやること成すことが幼いな。

 ──でもまぁ、この場から離脱する為の良い口実が出来たな。正直この重苦しい雰囲気が漂う場には長居したくない。

 

「そういうわけで、俺はもう行きますね。リアねぇ、心配しないで下さい。俺は決して死にませんから」

 

 そう告げて全員分のお代をテーブルの上に置き、彼ら三人の返答を聞かずに席を立った。──リアねぇの表情をなるべく見ないようにして。




オリ主は焦ると、年相応の喋り方になります。
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