学校の試験や資格取得の為の勉強などが主な原因です。
野営地を構えた一枚岩の頂上にて防衛を行う冒険者集団とその岩に取り付いている巨大な芋虫の群れ。モンスター達はその多脚を一枚岩に貼り付けよじ登り、頂上の集団に腐食液をあびせかけてくる。
「前衛はモンスターの消化液に気をつけつつ足止めをするだけでいい!後衛は詠唱に集中し、一撃で吹き飛ばすように心がけろ!」
『はい!』
リヴェリアの指揮の下に彼らはモンスターの攻撃を無傷で防ぎきっていた。──そう。
確かに彼らは歴戦の冒険者ではあるのだが、しかしながらこの状況で皆が無傷なのにはそれ以外の要因がある。
それはこの場における最高の切り札であるリヴェルークによって先ほど行使された魔法の効果が大きい。彼の三つ目の魔法とは味方
しかし、そんな大魔法をデメリット無しで使うことはいかにリヴェルークといえども不可能である。
そのデメリットが原因で彼は現在、前衛によって守られながら魔法詠唱を行なっているリヴェリア含む後衛の
「前衛はモンスターの攻撃を盾で防ぐことに専念し、使用した盾はすぐさま破棄して新しい物に交換するように!」
「姉上、何故だか嫌な予感がするので、モンスターへの近接戦による直接的な攻撃は控えた方が良いと思います」
「やはりルークもそう思うか。──よし、それを頭に入れつつ指揮を執ることにしよう」
「御二人とも、こんな状況でゆっくり会話なんて冷静過ぎませんか⁉︎」
リヴェリアとリヴェルークのやり取りを傍らで聞いていた後衛部隊の冒険者の一人がこの切羽詰まった状況でも冷静な二人に対してツッコミを入れる。
周りを見れば彼以外も同意見なのか各々が魔法詠唱をしつつも首を縦に振ることでツッコミに対する同意を示していた。
その動作のシンクロ率の高さは──いやいや。貴方達もわりと余裕そうじゃないですかね?とリヴェルークが感じてしまうほどのモノだった。
「そう言われましても、冒険者なら常に冷静に物事を把握するのは大切ですよ?慌てふためく様ほど滑稽なものはありませんから」
「だが確かに、ルークの冷静さは凄まじいがな。姉の私ですら怖くなるレベルだ」
「と、言いながらモンスターを爆散させてる姉上も流石です」
「⋯この状況で平然と会話とか。ヤベェよ、このハイエルフ姉弟様マジでヤベェよ」
「当然でしょう、何せ御二方は私達エルフの誇りなんですから!」
などと口ではふざけたことを言っている彼にも、逆に言えばこの状況でさえ軽口を叩く余裕があるということだ。
何故なら自分達には迷宮都市どころか世界を見渡しても並ぶ者のいない最強の冒険者──《
この二人がいる限り自分達が眼前の醜悪な怪物に負けるはずがないという圧倒的なまでの信頼。更にはそんな最強からの祝福──魔法による強化──を受けているのだ。ここまでされていながら心が折れていたらロキ・ファミリアのメンツに泥を塗ることになりかねない。
「お前達、恐らくもう暫くすればフィン達が異変を察知して駆けつけるだろう。それまで何としてでも辛抱するんだ!」
「俺としては一人で
「──ということらしい!今から魔法強化抜きで、ルークが詠唱を終えるまで何としてでも耐えろ!」
『はい!』
そんな感じで姉上からの許可も出たので彼らにかけている俺の魔力と集中力の大半を占めていた強化魔法を解除した。
本当この魔法は魔力の燃費が悪過ぎる上に集中力もクソみたいに必要だし、しかも自分のステータスが極端に下がるのが痛いんだよなぁ。
さっきはわりと余裕そうに振舞ってたけど強化魔法と攻撃魔法を同時にこなしつつ会話も出来るようになるまで練度を上げるのにかなりの時間を費やしたんだよ。
まぁそんな過去のことはどうでもいいかね、なんて思いつつ残りの魔力のほぼ全てを注ぎ込みながら──。
「全員、ルークの後ろまで全速力で戻って来い!」
『急げぇーっ!』
「【我が名はアールヴ──アヴァロン】」
眼前の醜い芋虫を残らず消し飛ばす為に広範囲殲滅魔法を行使した。
☆
「うわっ、あっぶなー!丸焦げになるところだったぁ!」
「間一髪でしたね、ティオナ。今のは恐らくルークの攻撃魔法でしょう」
「あ、やっぱりリューもそう思う〜?それならキャンプの方も大丈夫そうかな!」
「あそこにはルーク達が居ますからね、きっと大丈夫でしょう」
ティオナの言葉へのリューの返答は確かに正しいものだった。
フィン達とアイズ達の二班とリューが道中で合流して共にキャンプ場を目指していたのだが、森を抜けた彼らの視界に飛び込んできたのは数多いた芋虫が無数の火の柱に呑まれて消滅する光景だった。
ティオナが巻き込まれそうになるというプチアクシデントはあったものの、その魔法の強大さを見て一先ず焦る気持ちを抑えてキャンプ場にいる隊員達の無事を確信する。
しかしそうは思っても、やはり自分の目で団員達の安全を確認する為に野営地を目指して走ることだけは止められなかった。
「おや、リューはフィン達と一緒にいたのですね。少しばかりイレギュラーなことがありまして、リューが心配で今から探しに行くところでした」
「心配ですか⋯。それは私の実力が信用出来ないということですか?」
「信用はしています。しかし、何が起こるか分からないのがダンジョンですからね」
俺の言葉を聞いたリューは少しキツイ口調でこちらを問い詰めるかのように質問してきた。
整った顔立ちのリューだからこそムッとした表情ですら見惚れてしまうほどに美しい。──が、今は誤解を解くことが最優先事項なので言葉を尽くして説得する。
そんな美男美女のやり取りを二人から少し離れた位置より眺めている人物達がいた。
「やっぱりあの二人はそろって並んでいるだけで絵になるっスね」
「あの、ラウルさんはもうお怪我は平気なんですか?」
「リヴェルークさんに治してもらったのでもう大丈夫っスよ!本当、あの治癒魔法は規格外っスよね⁉︎」
野営地に向かう道中にてモンスターの腐食液をモロに浴びてしまったラウル。そんな彼に気遣う言葉をかけるレフィーヤのなんと優しいことか。
彼女の言葉を聞いたラウルはなるべく明るく振る舞うがその内心は自己嫌悪に満ち満ちていた。彼の脳裏に浮かぶのは『諦めて弱音を吐いてるなら私が息の根を止めるわよ⁉︎』と自身を怒鳴りつけて鼓舞してくれたティオネの姿だ。
彼女はあろうことか腐食液に身を晒されながらも止まること無く敵を蹂躙してみせた。
それについては『ティオネの方が自分よりランクが高いから』、『自分が負傷したのは油断していただけ』などと言い訳して自身を納得させることは出来る。しかし自分の隣にいるこの少女は──。
「あ、あのっ、ラウルさん!私の顔に何か付いていますか?」
「⋯あ。いやー、何でもないっスよ!少し考え事をしてただけっス!」
──ランクが下ながらもしっかりと魔法を用いて戦ってみせた。
それに比べて自分はどうだったかと言えばただ無様な醜態を晒して足を引っ張っただけ。しかもそのことに対し何かと理由をつけて自分を納得させようとする始末。我が身のことではあるのだがなんと情けない──。
「──とでも思っているのですか?」
「うわぁぁぁああっ⁉︎リヴェルークさん、驚かさないで下さいっス!」
「いやぁ、ラウルがあまりにも辛気臭い顔をしていたのでつい」
この人はエスパーか何かなんじゃないっスかね。なんでこうも容易く他人の考えてることをピタリと言い当てられるんスか。
にしても、よりにもよって
「⋯きっと、リヴェルークさんには分からないっスよ」
これが理不尽な八つ当たりだってことは彼だって理解しているし、言ってすぐに後悔したが口から出たモノは今更引っ込められない。
「そうですね、俺は自分が足を引っ張ったなんて思ったことはありませんから。きっとその感情は一生理解出来ないでしょう」
「やっぱそうっスよね⋯」
「しかし、自分が情けないと思ったことはありますよ?」
「はっ?」
──今この人はなんて言ったっスか?世界最強の冒険者が。《
「あ、その表情は信じていませんね?まぁ、今は俺の話は置いておきましょう」
「いやいや、メチャクチャ気になるんスけど⁉︎」
「いいから、置いておきましょう!ラウル、貴方は確かに臆病で情けないです」
「うわっ、分かっててもストレートに言われるとダメージが半端じゃないっスね⋯」
「ですが、よく言えばそれは慎重だということです。ロキ・ファミリアは頭脳派が少ないのが痛いですから、ラウルはとても貴重な人材ですよ」
俺がそう告げると、ラウルは半信半疑といった表情を浮かべた。まぁ嘘は言ってないけど本音も言っていないからな。何となくそれを感じ取っているのだろう。
ラウルは言わば原石のようなものだ。磨き方一つでこれから先マジで宝石に化ける。故に──。
「そうは言ってもやはり、ラウルはまだまだ未熟ですから。帰還したら、そんな悩みが吹き飛ぶレベルの修行をつけてあげましょう」
「あ、コレ、自分死亡確定したっスね」
──
リヴェルークはそう思いながらも遠い目をしているラウルを優しげに見つめるのだった。
「あ、レフィーヤもついでに修行受けます?」
「えっ⁉︎ハ、
「まぁまぁ。同じファミリアなのですし、遠慮しなくていいですよ?」
「で、でしたら!ぜ、是非お願いします!」
レフィーヤのことは途中から完全に忘れていたとは言えないから無理矢理誤魔化す事にした。忘れてて本当ゴメンね。
本当、原作主人公そろそろ出したい( ̄▽ ̄)
これからも更新自体は続けていく予定ですので、宜しくお願いします!