タイトル付けが難しいと感じる今日この頃。若干ズレていると感じても笑ってスルーして頂ければ幸いです(°▽°)
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ぽつぽつと天幕が完成しつつある野営地を進むのは先ほどの戦闘で《剣姫》という二つ名に恥じぬ無双っぷりをまざまざと見せつけた美しき少女。
そんな彼女の目的地は視線の先にある一際大きな幕屋。その側には派閥のエンブレムである滑稽な
「⋯フィン」
「ああ。来たかい、アイズ」
足の短い卓に座り、幕屋の中に入ったアイズの呼び掛けに微笑みながらも応えたのは先ほどの戦闘で一団の指揮を執っていた人物。温和そうな見た目とは裏腹に闘いとは無縁の人物でも思わず息を呑んでしまいそうなほどの存在感は、成る程確かに冒険者達を纏める長だけのことはある。
「ガハハッ!今ちょうどお主の話をしとったところだぞ、アイズ!」
「ガレス⋯頼むから今は静かにしていろ」
団長である男性──フィン・ディムナと同じ卓を囲んでいるのは二人の
因みにロキ・ファミリア内でランクが最も高いリヴェルークが含まれていないのは後からファミリアに合流したことを気にしたリヴェルーク自身が古参メンバーの気持ちを考慮して辞退したからだ。──まぁぶっちゃけ『幹部よりも更に自由に動きにくい役職に就きたくないが為』という理由もあるのだが。
「さて、前置きは無しで良いだろう。何故呼び出されたか分かるかい、アイズ」
「⋯⋯うん」
「なら話は早い。どうして前線維持の命令に背いたんだい?」
それは決して責めるような口調では無く。喩えるのならば幼い子供がソッポを向かないように優しく問いかけるみたいに。そんな問い掛けにアイズが明確な答えを出せないのを見るやフィンはすかさず切り込み方を変える。
「アイズ、君はこの組織の幹部だ。君の行動は内容の是非を問わず下の者に多大な影響を与える。それだけは覚えてもらわないと困るよ」
「⋯うん」
「今のファミリアには
「⋯本当に、ごめんなさい」
そう言うフィンの表情が余りにも疲れたモノに見えたのでアイズは素直に謝罪を述べる。しかし、どうやらリヴェルークのお陰でこれくらいの注意で済んでいるようなので心の中ではリヴェルークに対してお礼を述べておく。
「まぁ、アイズのことをそう責めてやるな、フィン。
「それを言うなら、詠唱に手間取った私にも落ち度があるか」
シュンとしてしまったアイズに対して助け舟を出したのはガレスとリヴェリア。ガレスは単純に『アイズが可哀想だから』であるのだがリヴェリアの方は『アイズの無茶をする姿がアホ弟の昔の姿』に重なってしまったから。
二人の擁護を受けた当の本人は、しかしながら更に申し訳無さそうに眉を下げるとガレスとリヴェリアは何も言わずに瞑目する。
「アイズ、ここは何が起こるか分からないダンジョンだ。そして団員の全てが君のようには闘えない。それだけは肝に命じていておくれ」
ガレス、リヴェリアの二人の沈黙が『お前に任せる』というニュアンスを含んでいることを感じ取ったフィンがアイズに対して言葉を発する。
「⋯⋯分かり、ました」
「その顔を見れば、どうやら分かってくれたのは伝わるからね。もう行って構わないよ」
三人に対してぺこりと頭を下げてから幕屋を出たアイズはおもむろに頭上を仰ぐ。視界に入るのは空の見えない岩壁に塞がれたドーム状の天井。
現在地は迷宮都市オラリオの地中に存在する広大な地下迷宮──ダンジョンの50層。多くの冒険者や《ファミリア》が存在する現在のオラリオにおいて攻略最前線と言えるほどの場所。
これから目指すことになる、ここより更に下層の風景を思い浮かべながらアイズは一人目を閉ざしてその場に立ち尽くすのであった。
☆
「ねぇ⋯。アレって、もしかしなくても落ち込んでるよね?」
「──ハッ。んなことも分かんねぇなんて、流石バカゾネスじゃねぇか」
「う、うるさいなー⁉︎分かった上で確認の意味を含めて聞いたんじゃん!」
「ふ、二人とも落ち着いて下さい!」
『アイズが心配だから』とティオナに誘われてテント付近まで来たは良いものの、当の本人は何故かついて来たベートとまた言い合いを始めてしまった。間に入って仲裁をしようとしているレフィーヤには悪いのだが恐らく彼女では二人をなだめることはほぼ無理だろうな。
「そう思うのなら、ルークがあの場を収めてあげれば良いのでは?」
「⋯いやいや、『喧嘩するほど仲が良い』と言いますし放置でいいでしょう。それよりも、当然のように俺の考えを読むのはやめて下さい」
「二人は仲が良くてとても羨ましいわね。私もゆくゆくは団長と⋯」
俺とリューの会話を聞いてティオネが妄想の世界へと旅立ってしまった。表情も段々と緩み始め⋯いや、完全に誰かに見せたらいけないほどに緩んでやがる。
「まぁ、これもこれで面白そうですし放置ってことで」
「駄目に決まっているでしょう。こういう場合は──」
俺の隣から一瞬で消えてしまったリューは次の瞬間にはティオネの背後に回り込んで彼女の首に手刀を落としていた。⋯いやいや、なんで?
「──こうするのが最も効率が良い」
「⋯忘れていました、リュー
「ルークとお揃いならば、その評価も甘んじて受け入れましょう」
そう言って俺の右腕にピタッとくっついてきた。──うん、可愛い。途轍も無く可愛いのだが。
「仲間にガチの手刀は流石にマズくないですか?」
「いいえ、あのまま緩みきった表情を晒す方がよっぽどでしょう。それに、あの状態のティオネに私達の声など届きませんから」
「う〜ん⋯反論が特に浮かばないですね」
それよりも色々と状況が変化し過ぎたせいで誰もアイズに声をかけることが未だに出来ていない。ティオナとベートはいつの間にか組み手を行なっているし、何故かレフィーヤはうつ伏せに倒れたまま動かない。アイズの様子を見に来た六人中四人が無力化されるというまさかの展開となってしまった。
「よし、こうなったら俺だけでアイズの元に向かうことにしましょうか」
「では、私は気絶している二人を天幕に運び込んでおきましょう。ついでに組み手も止めておきます」
「あの四人のことは宜しくお願いしますね」
リューは責任感の強い女性だ。そんな彼女が『任せろ』と言うのならその案件は任せても安心が出来る。
☆
「アイズ、その顔を見るとフィンからこってりしぼられたようですね」
「⋯あ、リヴェルーク。その、ありがとう」
「えっと、俺っていつアイズからお礼を言われるようなことをしましたか?」
リヴェルークは先程の会話を聞いていない為、当然ながら何のことか理解していないがアイズは幕屋内で感じた感謝をそのまま口にした。
「まぁ、その謝意は受け取っておきましょうか。それよりもアイズ、近頃の貴女からは
「⋯うん」
「その原因を当ててあげましょう。ずばり──ステイタスの上がり具合の悪さですね?」
「⋯良く、分かったね」
ああ、やっぱりか。道理で彼女の焦る姿に何故か
「焦ったところでどうしようもないですよ。ステータスの伸び悩みは、あらゆる冒険者が通る道ですから」
「⋯でも」
まぁ昔の俺だったら『焦るな』なんて言われたら恐らく『邪魔するな』って感じでキレてただろうし、その点で言えばアイズの方がまだマシって感じかな。でも昔あんなに無茶ばっかしてた俺だからこそ焦燥を感じるのも分かるから正直注意とかはする気にならないんだよな。だから俺は──。
「思い悩んだ時のモヤモヤ解消法でも教えてあげましょうか?」
「⋯そんな方法、あるの?」
「ええ、ありますよ。ある意味ではベートとティオナを見習うことになりますが体を動かす為に模擬戦でも──」
「遠征中にそんなことをやらせると思うか?」
ガシッと俺の頭を掴みつつも俺の言葉に台詞を被せてきたのは怒りと疲れを足して二で割ったような何とも言えない表情をした姉上だった。
「少しくらいならばいいではないですか。それに、ベートとティオナも先程していましたよ?」
「アレは例外中の例外だ!全く、分かっていながら言うのは止めろ」
「⋯リヴェルーク、また怒られてる」
「アイズの為に提案したことなのに、まさかのアイズ本人にまで突き放されてしまった件」
アイズならノッてくれると思っていたのだが、どうやら姉上の登場で話の流れが完璧に変わってしまったようだ。アイズとの模擬戦は
「それじゃあ俺は食事の準備でも手伝ってきますか。⋯アイズ。焦るなとは言いませんが、焦っても転ぶだけだということを忘れてはいけませんよ」
「⋯分かった」
「あっ、姉上はアイズと雑談でもして待っていて下さいね。
「いや、それはお前も──」
姉上が何か言っていたが、俺はそれを意図的に無視して歩を進める。アイズ関係のこういったことを収めるのは姉上が適任だからな。俺だと正直火に油を注ぐだけになりそうだから。
「そういうわけで手伝いに来ました、俺にも仕事を下さいな」
「えっ、流石にそれは申し訳無いっスよ!しかもリヴェルークさんって料理苦手じゃあ⋯」
「──よし。ラウル、遠征が終わったら《ぶっ倒れるまで永遠模擬戦》の刑に処します」
「そんなの酷すぎじゃないっスか⁉︎」
泣きそうなラウルを放置して強引に調理に混ざることにした。俺をバカにした罪を悔いるといい!
──しかしこの後、結局役に立たずに膝を抱えて落ち込むリヴェルークの姿が目撃されたそうな。
リヴェルークが料理が駄目駄目なのはゼウス・ファミリア編(6話)から変わらずです。苦手なものはしょうがない(^O^)
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