リヴェリアに弟がいるのは間違いない事実だ   作:神木 いすず

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ミスがあったので修正しました、申し訳ありません。《ナナシング》様、ご指摘ありがとうございます( ̄^ ̄)ゞ
コメント付きで評価を下さった《大城蒼空》様、ありがとうございます!
拙い文ですが、読んでくれたりお気に入り登録してくれている方々、これからも宜しくお願いします。


2話 覇王の帰還

 ゼウス・ファミリア。そのファミリアは迷宮都市オラリオの二大派閥の片割れである。そんなファミリアの豪邸とも呼べるホームの主神の部屋を夕食時に訪ねる者がいた。

 

「ゼウス様。リヴェルーク・リヨス・アールヴ、只今帰りました」

「おーっ!ルークたん、ようやく帰って来おったか!神の恩恵(ファルナ)の大半を()()して一人でダンジョンに潜っておるのに、()()()も帰って来んから心配したのだぞ!元々一週間の予定だったというのに、また忘れておったな⁉︎」

「申し訳ありません。ですが、俺はもっともっと力を付けたいのです。⋯それと、俺は男なのでルーク()()はやめて欲しいのですが」

「そう怖い顔をするでない!仕方無いであろう、ルークたんはオラリオの()()()()に名を連ねているのだからな!」

 

 ──オラリオ三大美人。それはオラリオで名声を博している三人の冒険者の美貌から付けられた称号だ。

 ヘラ・ファミリアのLv.7。好戦的で燃えるような赤い髪に黒い瞳の《麗剣》アルトリア・ヴァンハイム。

 ロキ・ファミリアのLv.5。知性的で綺麗な緑の髪と瞳の《九魔姫(ナイン・ヘル)》リヴェリア・リヨス・アールヴ。

 そして──ゼウス・ファミリアのLv.8。幻想的で美しい金の髪に赤い瞳の《覇王》リヴェルーク・リヨス・アールヴ。これが三大美人の正体である。

 当然この呼び名が出回り始めた時は噂の根源を断とうとしたがそれよりも速くこの称号が広まってしまい、今では完璧にオラリオどころか世界中で定着してしまった。もう噂を断つことは諦めた。俺は男なのに⋯。

 しかし、それは仕方の無いことだ。迷宮都市オラリオを《世界の中心》と呼ばれる大都市にまで発展させた冒険者。その中でも第一級冒険者は世界中に名を轟かせている。

 ()()()のLv.8である《覇王》に関する情報が圧倒的な速さで世に広まってしまったのもその為だ。今ではこの通り、その情報について弄られることが非常に増えた。──何度も言うが俺は男だ。

 それより話は変わるが、名前からも分かる通り三大美人の一人であるロキ・ファミリアの《九魔姫(ナイン・ヘル)》は俺の姉だ。リアねぇは元々、俺を自分と同じロキ・ファミリアに入れるつもりだったそうだ。

 リアねぇは非常にお節介なので俺はそれをうざったく思い、勝手にゼウス・ファミリアの入団試験を受けた。リアねぇからは死ぬほど怒られたが今となっては良い思い出だ。

 まぁ今回そのネタ(三大美人)で弄られるのは一週間という約束を破って主神に心配をかけた罰として甘んじて受け入れよう。

 

「それよりもゼウス様、ステイタスの更新をお願いしたいのですが」

「任せるが良い!すぐに更新してやるぞ!」

 

 俺は上半身を晒した状態でベッドにうつ伏せに寝転がってゼウス様がステイタスを更新してくれるのを待った──のだが何故かゼウス様は俺を見たまま固まってしまった。

 

「⋯ゼウス様、どうされました?」

「ルークたん──色っぽいのぉ」

「さっさと更新して下さい、この色ボケじじい!」

「分かっておるわい、冗談だと分かれバカ者!──ほれ、出来たぞ」

 

リヴェルーク・リヨス・アールヴ

 

 Lv.8

 

 力:SS 1075→SSS 1208

 耐久:S 994→SS 1103

 器用:SSS 1451→SSS 1627

 敏捷:SSS 1283→SSS 1472

 魔力:SSS 1442→SSS 1611

 狩人:E

 剣士:A

 魔導:S

 業師:A

 孤立:B

 精癒:D

 耐異常:G

 

魔法

【アヴァロン】

 ・攻撃魔法

 ・脳内イメージの具現化

 ・使用精神力(マインド)の量により威力増幅

 《我は望む、万難の排除を。我は望む、万敵の殲滅を。今宵、破壊と殺戮の宴は開かれる。立ち塞がる愚者に威光(ぜつぼう)を示せ──我が名はアールヴ》

【エデン】

 ・回復魔法

 ・対象の傷の回復や部位欠損の再生

 ・損傷具合により、使用精神力(マインド)の量が変動

 《万民を救う神業を体現し、傷の悉くを癒そう。全ての者に理想郷(きぼう)を示そう──我が名はアールヴ》

 

スキル

【剣聖】

 ・弱点察知

 ・近接攻撃の先読み

 ・剣技の模倣と最適化

【魔聖】

 ・魔法効果の増幅

 ・魔力回復速度の上昇

 ・魔法攻撃の最大射程拡大

限界破壊(リミット・ブレイク)

 ・早熟する

 ・限界を超える

 ・《限壊》使用可能。使用時、全ステイタス超高補正

 ・力への渇望が続く限り効果継続

 ・渇望の強さにより効果向上

 

「⋯相変わらず滅茶苦茶な上昇の仕方じゃな、それだけスキルの効果がデカすぎるということじゃのう。まぁ、見ていて楽しいし飽きないから別にいいがな!」

「そろそろランクアップ出来るとは思いますが、その為の強敵が中々見つかりません」

「それならば安心するが良い。しばらくすれば()()()()()の相手との闘いの場を用意してやるぞ」

 

 ゼウス様の今の表情は何か企んでる時の()()と同じものだ。それならば、どんな奴が次の相手になるかを楽しみにしておこうかな。故に今は分からないことよりもするべきことを済ませてしまおう。

 

「ゼウス様、これからギルドに行って担当に帰還報告と、序でに換金を済ませてきます」

「換金が序でとは、お主は本当お金に執着せんな。⋯もうすぐ飯の時間だからのぅ、寄り道せずに真っ直ぐ帰って来るのだぞ」

 

 俺は手のかかる子供か。──まぁ、心配してくれていることには感謝だが。

 

 

 

 

 夕食時にも関わらずギルド内部には数多くの冒険者達がいたが、いつもは大きな声で騒いでいる冒険者達も何故か誰一人として喋っている者はいなかった。何故なら──。

 

「お〜、弟クンじゃないか!今回の一人遠征も無事に終わったみたいだね!」

「三週間ぶりです、アイナさん。まぁ遠征とはいえ、何度も行った階層までですけれどね」

「それでも万が一のことがあったら大変でしょ!それと、何度も言ってるけど私のことは呼び捨てで構わないよ!」

「俺も何度も言いましたが、それは出来ません。アイナさんは俺のもう一人の姉のような存在ですから。それよりも逆に、俺のことをいい加減名前で呼んで下さいよ」

「あはは、昔からコレだったから癖になっちゃったみたいでさ。今から変えると違和感がね〜」

 

 世界で唯一のLv.8。《覇王》リヴェルークの存在感に気おされ、その美しさに魅了されてしまっているからだ。

 優男のような丁寧口調であるにも関わらず発している存在感は圧倒的だ。それでいて一度視界に入れれば目が無意識に彼を追いかけてしまうほどの容姿。それらが合わさり、まるで世紀の天才が描き上げた歴史的な絵画のように見る者全てを引き付ける。その結果、ギルド内にいた冒険者達が会話を忘れて彼に魅入ってしまっている。

 普段なら冒険者ギルドの癒しであるアイナ・チュールと談笑している冒険者に対して嫉妬の宿った瞳を向けたり、絡んだりしてもおかしくない彼らが大人しいのがその証拠だ。

 流石に《覇王》リヴェルークに喧嘩を売るような真似は出来ない為に静かに眺めているしかないという理由もあるが。

 

「⋯何年経っても、俺に向けられる視線の多さには慣れることが出来ないです。どうにかなりませんかね、コレ」

「それはもう、諦めてとしか言いようが無いかな〜。弟クンは全てのランクアップの世界記録保持者(レコードホルダー)にして世界唯一のLv.8だからね」

 

 それは分かってはいるのだが俺はこう見えて少し人見知りなのだ。故に、知らない奴らの注目を一身に浴びるのには未だに慣れることが出来ない。

 なんとか視線の多さを頭の隅に追いやってアイナさんと軽い談笑に花を咲かていたが、ゼウス様から『すぐに帰るように』と言われていたのを思い出した。

 

「それじゃあ、報告と換金も終わったのでそろそろ帰ります。夕食までに帰らないとゼウス様が騒ぎ出してしまうので」

「ゼウス様は眷族(ファミリア)の皆でご飯を食べることがお好きなようだから、お気に入りの弟クンがいないだけで()()面倒事を起こしてしまいそうだよね」

 

『ギルド的には困ったことだよ』なんて言いつつ少し疲れたように微笑むアイナさんを見て、不謹慎にも綺麗だと思ってしまった。

 

「本当に申し訳ありません」

「お気になさらず〜。それらの面倒事の後始末も含めて、私達ギルドの仕事だからね!まぁ、申し訳ないって思うなら、今度また娘のエイナと遊んであげてね?」

 

 やはり俺の姉が癒しなのは間違っていない。⋯今度何か日頃の感謝を表すプレゼントでも送ることにしよう、と俺は心に留めておいた。

 

 

 

 

 北西のメインストリート、通称《冒険者通り》。オラリオの中でも冒険者の往来が非常に激しい道だ。そんな道を多くの冒険者達のみに留まらず、一般の人々からも憧れと尊敬の眼差しを向けられながら確かな歩調で歩く者達がいた。

 

「やっぱり、こういう視線は少しこそばゆい感じがするね」

「ガッハッハ、フィンは気にし過ぎじゃ!ワシのように普通に振る舞えば良いのだ!」

「声が大きいぞ、ガレス。それと、もう少し落ち着きを持て」

「ぬぅ、すまんなリヴェリア」

 

 《勇者(ブレイバー)》フィン・ディムナ。《重傑(エルガルム)》ガレス・ランドロック。《九魔姫(ナイン・ヘル)》リヴェリア・リヨス・アールヴ。

 彼らはロキ・ファミリアが誇る最古参にしてLv.5の第一級冒険者達だ。そんな三人がこの時間帯にこの道を歩いているのには当然理由がある。それは──。

 

「私のバカ弟(リヴェルーク)が帰還したようだからな。大半の恩恵を封印しての一人遠征(アホなこと)をまたしでかしたことを説教してやろう」

「⋯そう言いつつ、ただ単に心配なだけだよね。ガレスもそう思うだろう?」

「⋯そうじゃな。大きな声では言えんが、説教を口実にして無事を確かめに行くだけじゃな」

「お前達、小声で何を話し合っているんだ?」

『いいえ、何でもないです』

 

 ゼウス・ファミリアの《覇王》と言えば辺境の地に住んでいない限り誰もが知っている今代の英雄だ。そんな人物がダンジョン(一人遠征)から久しぶりに帰って来たとなれば、当然その情報はオラリオ全土にあっという間に広まる。現に彼ら三人も『ギルドに向かう覇王を発見』という情報を頼りにギルドに向かっている。

 三人は話しながらもギルドに通ずる道を歩いていたのだが──ギルドまであと僅かという所でソレは起こった。前方にいた人々が道の端っこに寄り、たった()()を通す為に道を開けたのだ。その人物とは当然。

 

「あれ、フィンにガレスにリアねぇじゃないですか。こんな所で会うとは奇遇ですね」

 

 今代の英雄にしてリヴェリアの弟、《覇王》リヴェルーク・リヨス・アールヴだ。

 ──後にリヴェルークはこの時のことを振り返ってこう語る。『もしあの時さっさとホームに帰っていれば面倒事にならずに済んだ』と。




少しだけ変更しました。

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