リヴェリアに弟がいるのは間違いない事実だ   作:神木 いすず

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いよいよvs黒竜です!
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話は変わりますが、日刊ランキングに昨日38位、今日35位に入りました。これからも応援よろしくです!


13話 絶望の降臨

「⋯ここ、は⋯⋯⋯?」

 

 気がつくと俺は寝心地が良いとはお世辞でも言えないベッドの上で眠っていた。意識が覚醒すると同時に俺の手を誰かが握ってくれている感触や温もりを感じる。

 

「リヴェルーク君、ようやく目が覚めましたか!」

「⋯なんで、ヘラ・ファミリアの副団長が俺の看病係になってるんですか」

 

 俺の側に座って俺の手を握っていたのは──ヘラ・ファミリアの副団長でありオラリオ三大美人の最後の一人でもある《麗剣》アルトリア・ヴァンハイムさんだった。こうしてお淑やかに振舞っている分にはとても清くて美しい人なのだが性格がかなりぶっ飛んでいる為に何かと振り回されたりした。──まぁ、その話もまた今度することにしよう。

 

「俺は⋯勝てたんですよね?」

「ええ。リヴェルーク君は古代より生きる怪物のうちの一体を一人で討伐しました、それは間違いありません」

「いやぁ、マジで死ぬかと思いましたよ!つか正直な話、闘ってる間に走馬灯的なものが見えましたし」

 

 本当にかなりギリギリの闘いだった。海の覇王(リヴァイアサン)──自分を成長させてくれた相手に敬意を払う意味で海蛇呼びはヤメた──の内部に侵入する為に動きを止めた際も相手が慢心せずに俺の行動の意図を考えて動いていたら結果はまた違っていた。

 

「まぁ、そんな終わったことよりも重要で最優先すべきことがあります」

「リヴェルーク君の最優先事項は何ですか?」

 

 現在の俺にとっての最優先事項。それは──。

 

「⋯腹減って死にそうなので、何か食べる物を下さいな」

「──ふふっ。分かりました、それは私の手料理が食べたいというアピールですね?」

「アルトリアさんの手料理は美味しいですから、作ってくれるのなら是非食べたいですね」

 

 勿論、俺に()()()()アピールをしたつもりは更々無い。しかしこの人は何故か俺を好いてくれている為にこういった前向き──どちらかと言うと自分にとっての──な解釈に基づいて何かと世話を焼いてくれるのだ。

 アルトリアさんがご飯を作りに行ってしまったので一人でボーっとしていると団長が訪ねてきた。

 

「⋯リヴェルーク、目が覚めたみたいだな」

「はい。団長は傷とか無いんですか?」

「⋯俺も他の皆も回復魔法で癒したから無傷だ。ただ疲労度が激しく、皆はまだ寝ている」

 

 それほどまでに疲労度が激しいのは当たり前だろう。なにせ相手は千年以上の時を生きた怪物。ソレを相手に圧倒など出来るはずが無い。瞬殺を避ける為にも相当気を使いながら立ち回る必要があるからな。

 しかしそれよりも気になったことが今の会話の中にあるのだが──。

 

「じゃあ、アルトリアさんは何故起きていたんですかね」

「⋯お前が気絶していた二日間、寝食を忘れてお前の看病に当たっていたからな」

「あの人、健気過ぎでしょう。性格がぶっ飛んでること以外はマジで完璧ですよね」

「⋯ぶっ飛ぶのは、お前に対してだけだがな」

 

 ──ソコが問題なんだよなぁ。何故か彼女に対してだけはゼウス様ですらお手上げ状態になっちゃうし。マジであの女たらしクソダメアホ神はアルトリアさんに関しては使い物にならねぇから。

 そんな感じで団長と話していると、ルンルンッという擬音語が似合うほど浮かれているアルトリアさんが戻って来た。

 

「リヴェルークく〜ん、ご飯の支度が出来ましたよっ!──あっ、ゼウス・ファミリアのイアロスさんもご一緒でしたか」

「⋯俺は別な場所に行こうか?」

「いえ、もし良ければイアロスさんも私の料理を召し上がって下さい。陸の王者(ベヒーモス)討伐の立役者の一人を追い返すなんて、流石に出来ませんよ」

 

 この人の良いところは『二人きりになりたい』というような目先の我欲に囚われずに行動出来るところだな。

 

「それにここでイアロスさんを追い返したりなんてしたら、リヴェルーク君に嫌われちゃいそうですし!」

「⋯ヴァンハイムは、相変わらずの素直さだな」

 

 ⋯本音もスパッと言えちゃう人だからある意味裏表が無いのも美点だとは思う。

 

 

 

 

「⋯ようやく全員が目を覚ましたようだ。皆がリヴェルークの無事な姿を見たがっていたが、先に移動などの準備をやらせている」

「遂に最後の一体、黒竜との戦闘ですもんね。準備はしっかりしとくに越したことはありませんから」

 

 あの後、俺と団長は美味しい手料理を頂いた。正直なところ味は今すぐ店を開けるレベルだろう。

 食後も談話したりして時間を潰したのだが、いよいよ最後の闘いに向けて出発するみたいだ。

 

「いよいよですね。正直な話──俺は少しだけ怖いです。きっと全員無事ってわけにはいきません、身近な誰かが死ぬでしょう」

「⋯何度立ち会っても慣れないのは、仲間が殺される瞬間だ。()()に慣れてしまった者は、きっと何処かが壊れてしまう」

 

 その言葉には重みがあった。きっと、かつての仲間が──。

 

「イアロス団長っ!全員の出発準備が整いました!」

「⋯そうか。リヴェルーク、そろそろ行くぞ」

「了解しました、団長」

 

 団長の後に続いて天幕から出ると既に武装している両ファミリアのメンツが並んでいた。殆ど全員の表情はいつもより若干硬いがそれも仕方無いだろう。なにせ、これから挑むのは三大冒険者依頼(クエスト)の中で最難関と謳われている怪物殺しだ。

 

「⋯ほぼ全員が力んでいるな、緊張しているのか」

「そりゃあ、力みもするでしょうね。相手は最強の竜ですから」

 

 見た限りいつも通りリラックスしつつも周囲に注意を払っているのは第一級冒険者くらい。──そんな彼らですら一切感じ取ることが出来なかった()()

 

「全員、頭上に警戒しろっ!」

「⋯【妨げろ──ウロボロス・シールド】」

 

 感じ取れたのは世界唯一のLv.8である《覇王》リヴェルークと優れた第六感を持つ《神域の盾(アイギス)》イアロス団長の二人のみ。

 天より降ってくる氷群の半分をリヴェルーク(最鋭の剣)が木っ端微塵にし、もう半分の防ぎきれない部分をイアロス(最硬の盾)が魔法でカバーする。感じ取ってから一切言葉のやり取りもせずに実行出来るあたり彼らの積み上げてきた絆の深さが伺える。

 

「な、なんだっ⁉︎」

「頭上からの攻撃に注意しろっ!恐らくこれは──」

「⋯黒竜からの奇襲攻撃だな」

 

 そんな言葉を肯定するかのように雲の中から一体の巨大な竜が飛び出してきた。

 

『グォオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 ──はは。冗談キツイだろ。こんなにも威圧感を放つ怪物を、姿を現わすまで認識出来なかったとか。それほどまでにコイツが気配を消すのが上手かっただけか。

 でもよ、こんなの相手にしたら笑うしかねぇだろ?海の覇王(リヴァイアサン)ですら()()()()じゃ無かったのにコイツ一体だけ明らかに格が違い過ぎる。

 

『オォォオオオオオオオオッ!』

「⋯【妨げろ──ウロボロス・シールド】」

 

 黒竜のブレス攻撃を団長が持つ唯一の魔法で完璧に防ぐ。あのレベルの強度の魔法盾が超短文の詠唱で使えるとか正直チートってレベルじゃないと思う。──はいそこ、お前が言うなとか言わないでね?

 

「団長にばっかりいいカッコはさせらんねぇな。⋯【我は望む、万難の排除を。我は望む、万敵の殲滅を。今宵、破壊と殺戮の宴は開かれる。立ち塞がる愚者に威光(ぜつぼう)を示せ──我が名はアールヴ】」

『グォオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 俺が詠唱を完了すると同時に黒竜は再びブレス攻撃を放ってきた。

 

「【アヴァロン】っ!」

 

 イメージするのはリュー・リオンの魔法。緑風を纏った大光玉で相手を穿つ星屑の魔法。天高く舞い上がるように放たれた散りばめられし光玉の群れは黒竜のブレス攻撃を無力化して黒竜自身にも届く──はずだった。

 

「──っ⁉︎全員、下がれぇぇぇえええっ!」

 

 黒竜の身体に当たった光玉がそのままの勢いで()()()()に向かってくる。

 

「⋯【妨げろ──ウロボロス・シールド】」

 

 何とか団長の魔法で防いだものの状況は全く良くなっていない。まさか──魔法を反射出来るのとはな。かつての逸話の中ではそんな話は出てこないが千年という時の長さで進化しないわけはないか。

 怪物の進化という悪魔のような現状が両ファミリアのメンツの闘志を折りかけていたその時──。

 

「諦めるなっ!この場にいるのは誰だっ⁉︎覇王()がいる。神域の盾(イアロス)がいる。そんでもって世界最強の精鋭部隊がいるだろ!やることはたった一つ、()()()()()()ようにジャイアント・キリングをなすだけだっ!」

「⋯リヴェルークに全部言われてしまったな。お前達、ココがプライドの見せ場だぞ」

『おぉーーーっ!やってやるわっ!』

 

 俺の叱咤激励に答えるかのように団員達の雄叫びが響き渡る。──さぁいくぞ、最難関の怪物(黒竜)。ここががお前の墓場だ。




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