俺が一番可愛い   作: マイ天使GXⅢ

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私は帰ってきた!


クール系中学生燕たん

「ぐへへ、今日も美人さんだね。普段の無表情から一変、とろけ顔のだらしない顔も素敵だよ燕たん。ペロペロしたいよ燕たん。――あかん、ヨダレ垂れてきた。いや、でもヨダレでテラテラな燕たんも可愛い(かわゆい)マジ天使。燕たんマジ燕」

 

 鏡に写るのはヨダレを垂らして鏡にかじりつく燕の姿。うへっ、でへへ、ぐへへ、などという気持ちの悪い笑いを可愛い声で溢すその姿はもはや妖怪の類である。それでも美少女なのだから素体のスペックは凄まじいものだ。それをマイナスにしかねない彼にはある意味才能があるのだろう。

 一通り満足したのか彼はキャラ崩壊とも言える自分の観賞を終えた。男であったときならば袖で拭き取っていたであろうヨダレを"燕たんの服が汚れるだろう、馬鹿め"と誰に言うでもなく叫びタオルで拭き取る。

 そしてキリッと顔をつくると今度はキャラコンセプト通りのクールキャラの顔で自己観賞を始めた。因みにこれは本日二度目である。クールキャラからキャラ崩壊、そしてクールキャラの流れだ。

 

「燕ー、鈴ちゃん来たわよー」

 

「今行く」

 

 毎日行われる自己観賞は、朝の八時になる少し前に迎えに来る鈴を合図に終了する。

 鞄を持ち燕は、母の呼び声に応えて二階の自室から玄関に向かう。

 

「おはよっ、燕」

 

「おはよう」

 

 ドアを開くとそこには揺れるスカートとツインテール、八重歯輝くニパッと笑顔、制服姿の鈴である。

 制服、そう彼女らは中学生になっていたのだ。燕は自身の制服姿で一週間、鈴の制服姿で五日ほどデレデレしていた。

 

(やべぇな、絶対領域やべぇな。なんでこの娘ニーソなんだ。やべぇな可愛いなぁ、可愛いなぁ、鈴ちゃんマジで鈴ちゃん! ま、勿論燕たんも負けてないけどね! むしろ燕たんの黒タイツの方が圧倒的だけどね! 姿鏡じゃないと見れないのが残念です。帰ったら堪能するから良いけどな! ああ、でもニーソも良いよね。明日はそうしよう。絶対領域燕たん、やべぇな、負ける気がしない。さすが燕さんだぜ)

 

 訂正、今でもデレデレしていた。そんな風に内心でデレデレしていると自然と歩く早さが遅くなる。それに気が付き、鈴は"何してるのよ早く行くわよ"と手を取り、時には腕を組み歩く。全て中の人の策略である。中身男が少女と腕を組み歩くのはギリギリアウトというかアウトな気がするが、少女と腕を組めて嬉しいと言うよりは美少女と腕を組む燕の姿が嬉しいのでギリギリセーフだ。いや、やっぱりアウトである。

 

「はは、相変わらず仲良いよな鈴と燕は」

 

 織斑の声。中の人、激おこである。あれからどうにか織斑を遠ざけようとしたが彼は鈴の思い人であるため不可能であった。彼にならば上手いこと引き裂くこともできないことはなかったが、一応彼も人の子である。そんなことはできなかった。非人道的なことはできないヘタレである。それに絵面的に織斑が邪魔なだけで織斑自身のことはさほど嫌ってはいないのだ。性格も良く顔も良い、料理も上手いし、美味い。加えて、最近では意識すれば織斑を一時的にシャットアウトできる能力にも目覚めたので彼的には問題はない。能力名、織斑ガン無視である。

 

「いやぁ、本当眼福眼福」

 

「毎日ごちそうさまです」

 

 故に彼は叫ぶ。

 

 ――増えんな美男子どもがッ!

 

 気が付けば五反田と御手洗という男が側にいる。なんと男女比率が逆転した。これには燕の中の人も激おこプンプンである。何故女子が増えないのかと、彼は泣いた。しかしそれでも鈴の思い人でもない彼らを切らないのかは理由がある。

 

(まぁ、織斑は千冬さんいるし、五反田は蘭ちゃんいるから良いけど。御手洗はマジで早く美少女連れてこないと大人気ない方法で距離とるからな。美少女舐めんなよ)

 

 彼ら繋がりの美少女、美女がいるからである。織斑の姉の千冬。彼女のビシッと決めたスーツ姿は燕の脳裏に焼き付いている。むしろ焼き付けた。仕事のできる格好良い系美女だ。燕の周りにはいないタイプなので初めて会ったその日、彼は狂喜乱舞した。無論、心の中でである。そして踊っている最中に彼女があのブリュンヒルデであることに気が付きさらに激しく踊った。その時ばかりは織斑に感謝し、織斑の手を握り"ありがとう"と微笑んだ。悲しいことに、これがあんなことになることを燕は知らない。いや、引き延ばす必要もないだろう。織斑、美少女飛鳥燕にポッとなった。いつも無表情な美少女、意識せずいつも隣にいた美少女の見たことのない笑顔。ギャップ萌えにやられた織斑であった。南無。

 そして五反田関係の美少女、蘭に関しても中の人、デレンデレンである。クール系美少女の優しい年上の美少女である燕は蘭にとっては理想のお姉さんであり、ものの数秒でお姉ちゃん呼びになった。結果、彼は妹ポジションゲット、と喜んだ。そしてお姉ちゃん呼ばわりされて少し嫌がりながらも実は嬉し恥ずかしで耳は赤いという上級テクニックを使用し、部屋の鏡でそれをチラ見して"これだよ、これ"と彼は悶えた。

 それ故に五反田はこのグループにいることを許可していたが、御手洗は千冬と蘭でプラスになった分情けで許可しているだけである。急げ御手洗。

 

 

 ところ変わって昼休みの屋上。燕一行は昼食をとっていた。

 

「はい、燕、あーん」

 

「いい、自分で食べれる」

 

 とか言いつつ、きちんと"あーん"をする燕。勿論私はしたくないけど鈴がどうしてもって言うから仕方なくよ、仕方なく、的な演技はバッチリである。

 

 

 ――うん、幸せ。美少女に生まれ変われてよかった

 

 

 美少女にあーんなど前世では考えられなかった。やはり美少女は最強である。と彼はまだ見ぬ神様に感謝をした。

 

 

 しかし、幸せというのは続かない訳で。

 

 

 

「――俺と付き合ってくれ、燕!」

 

 

 放課後、屋上。覚悟を決めた顔の織斑と立ち尽くす燕。そう言うまでもなく告白である。

 なるほど、そういうこともあるだろう。中の人は頷いた。というより今までなかったのがおかしいのだ。そう理解はしたがこれを受けるつもりはなかった。なにせ中身は男、そして織斑は鈴の思い人。受け入れる要素がひとつもない。しかしこのままだと振ったとすれば今の関係が崩れる可能性がある。織斑は振られた女と一緒にいるのはあれだし、鈴としても微妙な感じになるのだ。織斑はどうでも良いが鈴と離れるのは有り得ない。

 受け入れることも断ることもできないこの状況、しかし我らが中の人は転生者である。変態ではあるが転生なのだ。この状況を引っくり返すことなど容易いのだ。

 

「――? 風の音で聞こえなかった」

 

 秘技"え、なんだって?"である。

 

「え、あ、いや、やっぱり何でもない」

 

 織斑、イケメンといえど思春期である。二度告白する勇気はなかった。中の人勝利である。ずるい。

 

「……ふぅ」

 

 燕は"また明日"と立ち去る織斑を見送りため息をついた。

 

「あれほどの高スペックイケメンを落とすか……ふっ、さすが燕たんだぜっ」

 

 

 全力のドヤ顔であった。

 

 

 




ぶっちゃけエタッてた。久々に小説情報を見たら真っ赤だった。テンションが上がった。書いた←今ココ

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