【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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Q.どのキャラを生存させて、どのキャラを殺してって方針はもう決まってますか?
A.この子は殺そうって心に決めている魔法少女は何名かいます。それ以外は展開に合わせて決定します。魔法少女育成計画はフラグの有無に振り回されずに生死が分かれてこそだと思いますので。ゆえに、私自身も誰が生き残るかわかっていません。

 どうも、ふぁもにかです。ミラクルシャインって書こうとしても10%ぐらいの確率でマジカルシャインと書き間違ってしまう症状に悩まされる今日この頃。こんな形でポケモンの呪いが降りかかろうとは……ポケモンの影響力は本当に侮れませんな。



7.1日目 ミラクルシャイン班(2)

 

 

 ☆ミラクルシャイン

 

 VRMMOな魔法少女育成計画の、α版の世界にて。ミラクルシャイン、コットン、メトロノーム、サンタマリア、メタ☆モン、ユウキの6人パーティーは、鬱蒼とした森林地帯の奥の開けた領域に存在する、50メートル規模の巨大な木のボスの下に姿を現した。木のボスは木の幹の15ほどの空洞部分からギョロリと目を覗かせ、ミラクルシャインたちの姿を捉えると、無数の根をムチのようにしならせて攻撃を開始した。

 

 巨木のボスだ、根もまた太く、まともに喰らっては相当なダメージを受けるだろう。前衛のミラクルシャイン、コットン、メタ☆モン、ユウキは前に駆け、中衛と後衛のメトロノームとサンタマリアは後方へ跳び、上段からの根の叩き落としを回避する。

 

 

「まずは様子見だね」

「そして追撃ドーン!」

 

 ユウキがトランプのハートマークを木の幹に向けて蒼白に輝くビームを放ち、ユウキに変身したメタ☆モンがユウキが攻撃した所と同じ場所にビームを放つ。ビームは木の幹を貫いた。が、すぐにビームの貫通箇所はシュゥウウと音を立てて修復された。

 

 

(ビームが効いてない?)

「グギャアアア!」

 

 ミラクルシャインが木のボスとビームとの相性が悪いのではと考えていると。木の幹の内、ひときわ横長い空洞からドスの利いた苦悶の声が轟く。どうやらビームは効果的な攻撃のようだ。

 

 

(杞憂だったみたいだね、よし)

「私たちも続くよ、コットンちゃん!」

「はいなのです!」

 

 杖や木刀でボスを直接殴ることが主な攻撃となるミラクルシャインとコットンが木のボスへと距離を詰めようとする。

 

 

「みみみみ、皆! 上、上ぇ!」

「え?」

 

 が、ここで。メトロノームの切羽詰まった声が反響する。ミラクルシャインたちが釣られて上を向くと、木のボスがわさわさと揺らし落とした葉っぱの1つ1つが槍の雨のごとく直下に勢いよく降り注がんとする光景が眼前にあった。

 

 

「全体攻撃!?」

 

 ミラクルシャインとコットンは葉っぱがなるべく落ちてこない位置を把握して移動しながら、どうしても避けられない葉っぱだけ杖や木刀で弾き飛ばす。その際、ガキンと金属音がする以上、所詮葉っぱと見くびっていると思わぬ大ダメージを被ることは容易に想像できた。

 

 

「え?」

「ユウキ!」

 

 速やかに対応できたミラクルシャイン、コットンとは対照的に。ユウキは降り注ぐ葉っぱの雨に反応が遅れる。そのまま立ち尽くしていればユウキの全身を葉っぱが切り刻んでいた頃だろう。だが、ユウキを突き飛ばす形で彼女に迫る危険を回避させたメタ☆モンは、自身に迫る葉っぱをハートのトランプから放出されるビームで消し飛ばし、難を逃れた。

 

 

「わわッ」

「危ないッス!」

 

 一方。いち早く葉っぱの攻撃に気づいたものの、安全地帯がわからずわたわたしていたメトロノームにサンタマリアが駆け寄り、盾を上にかざしてメトロノームを庇う。葉っぱは次々と盾に突き刺さり、硬度を得た葉っぱの威力のほどをうかがえる。

 

 

「皆、怪我してない!?」

「上手く回避できたのです!」

「こっちは平気だよ!」

「大丈夫ッス!」

「そっか。ありがとう、メトロノームちゃん! 助かったよ!」

「どどどどういたしまして!」

 

 ミラクルシャインは周囲を一瞥しつつ、パーティーメンバーの安否を尋ねる。結果、コットン、メタ☆モン、サンタマリアから返事をもらい、皆さっきの全体攻撃を乗り切ったと知ったミラクルシャインはメトロノームに感謝の意を示した。

 

 

(相手はボスなんだから気持ちを引き締めないとね)

 

 今までの戦闘は無傷で無双できた。そのため、眼前の木のボスも余裕で攻略できるとの甘い考えがミラクルシャインの脳裏にいつの間にかはびこっていたようだ。慢心は危険だ。ミラクルシャインは鋭く木のボスを見据えた、瞬間。

 

 

「ええッ?」

 

 当惑の声を上げた。木のボスの太い根のあちこちが引き裂かれ、中から大量のリザードマンが現れたからだ。それも数体なんてレベルじゃない。軽く、100体はいるかもしれない。

 

 

「増援なのです!?」

「なんて数……!」

 

 コットンとユウキは増援の規模に戦慄しつつもリザードマンを速やかに処理し始める。コットンの木刀での撲殺も、ユウキのビームでの射殺も一撃で事足りるが、リザードマンの数の多さのせいでさばききれない。その上、木のボスはさらにリザードマンの増援を木の根から増やし始める。

 

 

「これ、さっさとボスを倒すのが正解っしょ!」

「ギャオオオ!」

 

 リザードマンの排出される木の根の空洞部分にビームを放っていたメタ☆モンはビームの射出先を木の幹に変更する。が、木のボスは苦しそうに悲鳴を上げはするものの、リザードマンの大量排出行為をやめる気配はない。それどころか、リザードマンを排出していない木の根でミラクルシャインたちを叩きつけにかかるなど、木のボス自身も攻撃を始める。

 

 

「くッ、ミラクルフラッシュ……!」

 

 ミラクルシャインはわらわらと数の暴力で物理的にパーティーを飲み込もうとするリザードマンたちを前に、体の前面を盛大に光らせ、眩しさでリザードマンを後ずさりさせつつ、杖で1体1体倒していく。が、ミラクルシャインの魔法はリザードマンをほんの少しだけ足止めするのが精いっぱいだ。

 

 

「ミラクルさん! 危ないのです!」

「え?」

 

 と、ここで。コットンから危険を知らせる声がかかる。ミラクルシャインに危機が迫っている。が、ミラクルシャインの視界に攻撃が差し迫る様子はない。ミラクルシャインがコットンの声に対応できずにいると、左からガキャと重い衝撃音が響いた。見ると、サンタマリアがリザードマンの曲刀を防いでいた。

 

 

「間一髪ッス!」

「あ、ありがとう!」

 

 ミラクルシャインはサンタマリアにお礼を告げる中、内心ではマズいマズいと連呼していた。大量の増援というイレギュラーに焦っているせいか、視野が狭まっている。どうにか平常心を取り戻さないとパーティー全滅もあり得るかもしれない。

 

 

「やぁああ!」

 

 リザードマンを倒す手は一切止めずに、いつもの自分を取り戻すことにミラクルシャインが務めていると。ここで、木のボスが再びわさわさと意図的に頭を揺らし、たくさんの葉っぱを落とし始める。例の葉っぱの雨による全体攻撃だ。

 

 

「皆、上から来るよ!」

「ウソでしょ!?」

「あ、あわわわわ――」

 

 いち早く葉っぱの全体攻撃に気づいたミラクルシャインがパーティーに周知させると、ユウキとメトロノームが特に蒼白の表情を浮かべる。当然だ、前衛4人は押し寄せるリザードマンをさばきながら降り注ぐ葉っぱを迎撃あるいは回避しないといけないが、そんなものは非常に困難だ。また、ミラクルシャインを守るためにサンタマリアが前に出たため、先ほど自力で葉っぱの雨を回避できなかったメトロノームを庇える者がいないのだ。

 

 葉っぱの雨を防ぎきれたのは、一時はメトロノームを庇うために後方へダッシュしたものの間に合わないと判断し、せめて自分だけはと盾を上にかざしたサンタマリアのみ。メタ☆モンやユウキはハートマークのプリントされた燕尾服の内、ハートマークが真上に向いている両肩からビームを放ち、いくつか葉っぱを消滅させるも、消しきれなかった葉っぱの雨が次々と2人の体に突き刺さる。リザードマンの相手が精一杯のミラクルシャイン、コットン、そして葉っぱの落ちるスピードに対応できなかったメトロノームの3人は己の頭上から襲来する葉っぱの雨をことごとく喰らうこととなった。

 

 

「ぁあッ!」

 

 ミラクルシャインの頭から、肩から、腕から、お腹から、太ももから、ふくらはぎから。葉っぱの突き刺さった部分にビリリと電気が走るような痛覚が生じると同時にダクダクと流れ出る血が金ぴかなドレスを赤のアクセントを加えていく。チラッと懐のマジカルフォンに表示されているHPを見ると、半分以上減っていた。しかも、止まらない流血のせいか、じわじわとHPが減少し続けている。

 

 

(これは、どう考えても退くべきだ。私たちに勝てる相手じゃない。でも、逃げられそうにもないんだよね)

 

 状況は悪化し続けている。ミラクルシャインよりも重傷らしいコットンは頭からの流血がしきりに目にかかるせいか、必ずしも一撃でリザードマンを仕留められなくなっている。そこまで怪我の深くないユウキがなるべく多くのリザードマンを巻き込めるように意識しながらビームを放ち、唯一無傷のサンタマリアが前線に戻って積極的にリザードマンを盾で押し潰すが、リザードマンの数は一向に減らない。完全にジリ貧だ。

 

 

「あ、ぅぅう。い、いい痛いよぉ」

「これじゃ埒が明かないじゃん、もう!」

 

 同じくミラクルシャインよりも葉っぱが体に突き刺さっているメトロノームはあまりの痛みにすっかり戦意を消失している。比較的軽傷のメタ☆モンが星井ミクに変身し、周囲に流星群を落としてリザードマンを一気に倒し始めるが、相変わらず木のボスがリザードマンを生み出し続けるせいで、焼け石に水にしかなっていない。

 

 

(どうしよう? どうすれば――)

 

 どう見ても負けパターン。敗戦濃厚だ。なのに、逃げることは困難だ。ミラクルシャインは現状打開の手段を必死に考えるも、何も頭に浮かばない。もう、リタイアしかないのかな。正義を全うすることはできないのかな。ミラクルシャインの心が段々と諦めに向かい始めた、その時。唐突にミラクルシャインたちの体が仄かな緑色の光に包まれた。

 

 

「え?」

 

 己の体に何が起こったのか。ミラクルシャインが視線を移すと、血にまみれていたはずのドレスが元通りになっていた。さらに、葉っぱに切り刻まれた肌も元の柔肌っぷりを取り戻していた。慌ててマジカルフォンを見ると、HPが完全に回復していた。

 

 

「おろ? 怪我が治った!」

「なんでなのです?」

 

 周囲に目を配ると、ミラクルシャイン以外にもコットン、メタ☆モン、ユウキの怪我が完治されていた。メタ☆モンとコットンが困惑の声を上げる中。敵にも不可解な現象が発生した。

 

 

「ゴギャアアアア!?」

 

 何と、数の暴力で攻めまくっていたはずのリザードマンたちが硬直し、直後には1体も残らず粉々に爆散したのだ。それだけじゃない。木のボスの幹にも次々と風穴が生まれ、木のボスが何度も悲鳴を轟かせているのだ。

 

 

「え、何これ? 助っ人参戦イベントッスか?」

「わたしたち、助かったの?」

「一体何が起こって……あ、まさか!?」

 

 ついさっきまで苦境に立たされていたのに一転してミラクルシャインたちに都合のいい展開が広がっている。わけがわからずサンタマリアとユウキが首をコテンと傾げる中、ミラクルシャインはとある可能性に思い至る。どう考えても覆しようもない絶体絶命な状況からご都合主義への転換。それはもはや奇跡と言っていい。そして、メトロノームの願い事が叶う魔法なら奇跡を実現させることだってできるはずだ。

 

 

「わ、わわ私の願いが、叶った?」

「やっぱりそうなんだね――って、え、なんでメトロノームちゃんは血まみれのままなの!?」

「ひぅ。た、たたた多分、私が『皆を助けて』って願ったから?」

 

 ちょうどメトロノームもミラクルシャインと同じことを考えていたようだ。ミラクルシャインがメトロノームの方へ向き、目を見開いた。メトロノームだけ、黒のゴスロリ服を血に染めたままの痛々しい姿だったからだ。ミラクルシャインの大声にメトロノームは身を縮ませつつ、願い事の内容を口にする。

 

 

「……理解したのです。『皆』、つまり僕たちを助けてほしいとのメトロノームさんの願いが叶ったから、圧倒的の力で増援が一掃され、ボス自体にも大ダメージが与えられたのですね。そして『皆』の中にメトロノームさんが入ってなかったから、怪我がそのままと」

「何にせよ、今がチャンスじゃん! 木がまた増援を吐かない内に速攻で決めるよ!」

「そうッスね!」

 

 願い事の内容を踏まえ、現状をいち早く理解したコットンが皆に端的に説明する。が、木のボスを一刻も早く倒さないことには落ち着けないとメタ☆モンが木のボスのフルボッコを提案し、サンタマリアが即座に賛同したのを機に、HPが全快のミラクルシャイン、コットン、メタ☆モン、ユウキ、サンタマリアの5名は木のボスに一斉に攻撃を加える。

 

 

「キョアアアア!」

 

 メトロノームの願い事により9割ものHPを失っていた木のボスに反撃の機会は終ぞ訪れなかった。木のボスは弱々しいかすれ声の断末魔を上げたのを最後に、今までの敵と同様に粉末状となり砕け散った。木のボスが討伐されて十数秒は誰も動かなかった。誰もが沈黙していた。とてつもなく強かった木のボスを倒せた実感がしなかったからだ。

 

 

「か、勝った! 勝てた!」

「やったのです!」

「きゃっほぉぉおおおおお! 逆転大勝利ぃ!」

「良かった、もうダメだと思った……」

「いやはや、燃える展開だったッス。あっちのパーティーに自慢したいッス!」

 

 だが、ミラクルシャインが勝利宣言を行ったのを機に、コットン、メタ☆モン、ユウキ、サンタマリアもまた強敵に勝利した喜びに打ち震える。誰もがジャイアントキリングを成し遂げた高揚感に満ち満ちている。

 

 

「よ、よよよかった……」

 

 そんな5人をメトロノームは安堵の眼差しで眺めている。相変わらず葉っぱに深く傷つけられた体からは血がダクダクとあふれており、何もしないで放っておけばリタイアしかねないようにミラクルシャインには映った。

 

 

「そ、そうだ! メトロノームちゃんの治療をしないと!」

「あ! でも、どうするの? 回復アイテムなんてないよね?」

「アイテムがなくても止血ぐらいはできるよ。魔法少女の自然治癒能力ならそう完治までそう長くはかからないはず」

 

 ミラクルシャインは慌てて此度の戦闘のMVPであるメトロノームの元へ駆け寄る。ミラクルシャインの後を追いつつのユウキの問いに返答しつつ、ミラクルシャインは己が身につけている金色のひらひらドレスの裾を手で破き、メトロノームの傷口にあてがう。応急処置の方法なんて詳しく知らないが、強すぎず弱すぎずで圧迫すれば止血に効果的なはずだ。

 

 

「メトロノームちゃんは自分の怪我を治すようにお願いしてて」

「は、ははははひ!」

「ここはもう安全のようなのです。メトロノームさんの回復を兼ねて休憩しましょう」

「賛成ッス。私の精神はボロボロッス。お昼寝したいッス」

 

 ミラクルシャインが早急な治療のためにメトロノームにも指示を飛ばすと、メトロノームはお馴染みのどもった返事をする。メトロノームの治療にはある程度時間がかかることを見越し、コットンが休憩を提案すると、サンタマリアがその場で大の字に寝転がった。いくらHPがゼロになってもリタイアで済むとはいえ、生命の危機を経験した魔法少女たちに、ボス討伐後もテンションを維持して探索を続けられる気力はもはや存在しなかった。

 

 かくして、ミラクルシャインたちは森林地帯でゆったりと英気を養った。その後、探索を再開したミラクルシャインたちは湿原地帯や山岳地帯も探索しきる形でVRMMO版の魔法少女育成計画の世界での1日目を過ごすのだった。

 

 




絶望「(∪^ω^)わんわんお! わんわんお!」
ふぁもにか「ステイ! 出番までステイ!」

次回【8.1日目 なのだ先輩班(1)】
※次回更新は8月18日です。

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