【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回からは第2章です。起承転結の『承』に入りましたが、まだまだほのぼのターンです。この章でオリジナル魔法少女たちの戦闘スタンスや性格などへの理解を深めてもらえたら幸いです。また、第2章からは基本的に魔法少女たちの見た目の描写は省いていきます。見た目の描写って結構地の文がかさむんですよね。



第2章 楽しい楽しいVRMMO
6.1日目 ミラクルシャイン班(1)


 

 

 ☆ミラクルシャイン

 

 VRMMOな魔法少女育成計画の、α版の世界にて。ミラクルシャイン、コットン、メトロノーム、サンタマリア、メタ☆モン、ユウキの6人パーティーが、草原地帯にたまに出没する骸骨をユウキの持つハートのトランプから放たれる青白いビームで軽く撃破しながら探索をすること1時間。ミラクルシャインたちの眼前にジャングルが現れた。

 

 しかし、ジャングルを構成する木々はどれも現実的ではない。木の色は紫や青、オレンジで占められている。さらに巨大なゼンマイのような形をした木が大半を占め、森一帯を薄い紫の霧が覆っているため、自然豊かというよりは、心霊スポットといった第一印象だった。

 

 

「おおー、ジャングル!」

「いかにも鬱蒼とした森って感じッス! 雰囲気出てるッス!」

「幽霊とか出てきそうだね」

「恨めしやー、なのです?」

「ひぃぃぃ! ゆ、ゆゆゆゆ幽霊!?」

 

 どこか冒涜的な雰囲気を放つジャングルにメタ☆モン、サンタマリア、ユウキ、コットンが何ともなさそうに各々感想を口にしていると、ユウキの幽霊発言や、コットンのテンプレの幽霊っぽい言葉にビクッと肩を震わせたメトロノームがミラクルシャインの背中に隠れてガクガクと震え始める。メトロノームは幽霊が大の苦手らしい。ミラクルシャインもホラーなシチュエーションはあまり好きではない。

 

 

「ここに入るの、やめとく?」

「い、いいいいえ。ままままだ幽霊がいるとは限らないし、そそそそれに皆がいれば多分、耐えられるから……」

 

 ミラクルシャインはメトロノームの援護を得る形で森林地帯に入らないで済むように誘導を画策する。が、メトロノームはガクブルしながらも森林地帯に入る意思を示した。その両眼は、私のわがままで皆の楽しみを奪っちゃダメだダメだと声高に語っている。

 

 

(あ、これは森を避けられなさそうだね。腹を括らないと)

「よし、じゃあ行こうか。ここからモンスターが一気に強くなってるかもだから、気をつけようね」

「おー!」

「おーなのです」

 

 ミラクルシャインは皆の推薦でこのパーティーのリーダーを担当している。とはいえ、リーダーの強権で森に入りたがっている多数派をねじ伏せては、リーダーへの不信が生まれてパーティーが瓦解しかねないし、何より友達作りの難易度が跳ね上がる。ミラクルシャインは内心は嫌々ながらも、森林への突入を宣言した。メタ☆モンとコットンが拳を突き上げたのを契機に、ミラクルシャイン班は森林地帯へと歩を進める。

 

 

(この霧も特に毒性はないみたい)

「シャー!」

 

 リーダーとして、ミラクルシャインが人一倍森林地帯の環境に意識を向けながら先へと進んでいると。密度の高い森の影から飛び出す形で2メートルほどの体躯のリザードマンが飛び出した。血の色な皮膚に全身を覆われ、切れ味の良さそうな曲刀を装備し、目をぎらつかせる様子は、今まで戦った骸骨よりは何倍も格上のように感じられた。

 

 

「メタ☆モン!」

「よしきた!」

 

 ユウキの掛け声でメタ☆モンがユウキの姿に変身し、2人がかりでトランプのハートマークからビームを放つ。リザードマンは曲刀でビームを防ごうとするも、ユウキとメタ☆モンのビームは曲刀ごとリザードマンの胴体を貫き、リザードマンはさらさらと粉となって消え果てた。が、リザードマンは次々と姿を現し、パーティーの前衛を務めるメタ☆モンとユウキに襲いかかる。どうやらこのリザードマンは集団で襲撃を仕掛けてきたようだ。

 

 

「ミラクルシャインさん! そっちにも来てるよ!」

「わかってる! コットンちゃん、大丈夫?」

「もちろんなのです」

 

 ここで。己の背後からの複数のリザードマンの接近を視界にとらえたユウキが、殿を務めるミラクルシャインに注意喚起をする。が、ユウキが声をかけるよりも早くリザードマンの気配を察知していたミラクルシャインは、同じく殿のコットンと呼吸を合わせ、迫りくるリザードマンに対処し始めた。

 

 

「ミラクルフラッシュ!」

 

 ミラクルシャインはコットンよりも一歩前に出て、己の体の前面だけを光らせる。結果、強烈な光に目をやられたリザードマンたちが悲鳴を上げてたたらを踏む中、ミラクルシャインは杖を、コットンは木刀をリザードマンの首目がけて振り抜き、リザードマンの首の骨を折る形で絶命させる。ミラクルシャインもコットンも攻撃力に特化した魔法を持っていない。しかし、常日頃から交流し、ついでに魔法使用禁止の下でお互いを相手に模擬戦を日々積んできたミラクルシャインとコットンは異形相手でもある程度は戦えるのだ。

 

 

「み、みみみ皆、凄い!」

「前も後ろも頼もしいッスねぇ」

 

 前衛のメタ☆モンとユウキ、後衛のミラクルシャインとコットンが無双ゲームのようにリザードマンの集団をバッタバッタと倒す様にメトロノームとサンタマリアが称賛する中。前衛と後衛の隙をついてパーティーの陣形の中心に入り込んだリザードマンが、見た感じ一番弱そうなメトロノームに狙いをつけて曲刀を振り押さんとする。

 

 

「ショア!」

「きゃあ!?」

「――っと、メトロノームに手を出そうなんて甘いッス!」

 

 メトロノームが尻餅をつき、自力でリザードマンの攻撃の回避が困難になるも、サンタマリアが盾でリザードマンの曲刀をガードした。見た目だけでは、とてもサンタマリアの細い腕ではリザードマンの力任せの剣撃を防げるわけがないのだが、そういった常識を一々覆すのが魔法少女の身体スペックである。ゆえに、サンタマリアは悠々とリザードマンの曲刀を防ぎきり、お返しとばかりに盾を突き出し、リザードマンをノックバックさせた。

 

 

「シャァア!」

 

 リザードマンはヘイトをサンタマリアに向け、一息に距離を詰めようとする。が、直後。リザードマンの頭が消失し、粉末となって消え去った。前方から迫るリザードマンの一隊を殺し終えたユウキがリザードマンの横顔目がけてビームを放射した結果だ。

 

 

「ふぅ、これで片付いたっぽいね」

「サ、サササササンタマリアさぁん! ささささっきはありがとうございました!」

「どういたしましてッス! 盾持ってるんだし、これぐらいはしないと示しがつかないッス!」

 

 リザードマンの集団の襲撃を無傷で乗り切ったことにユウキは安堵のため息をつく。曲刀の脅威が己のすぐ目の前に迫ったためか、メトロノームはざめざめと涙を流しながらサンタマリアにありったけの感謝の念を告げる。が、当のサンタマリアは同じパーティーの仲間を守るのは当然のことといった態度で、メトロノームの感謝を軽く流した。

 

 その後。ミラクルシャインたちは森を奥へ奥へと進んでいく。その際、先ほどのリザードマンの他にも、頭から触手を生やした植物型の敵や2メートルサイズの巨大カマキリがミラクルシャインたちに頻繁に襲いかかる。その頻度は草原地帯にいた頃よりも明らかに跳ね上がっている。結果、ミラクルシャインたちは森の中で少なくとも100体はモンスターを倒し、マジカルキャンディはパーティー全体で計900個に到達せんとしていた。

 

 

「森に入ってから一気にエンカウントが増えたね」

「草原に敵が少なすぎただけっしょ、あの辺3分おきに1体って頻度だったしさ! 今の5歩歩いて敵が出るくらいがちょうどいいって!」

「ちょうどよくないよ。どこから敵がくるか、ずっと警戒しなきゃだから疲れてきちゃったよ」

 

 ミラクルシャインが己の実感を口にすると、探索開始からずっと元気を保ったままのメタ☆モンが生き生きとしながら、もっと敵出てこいと言わんばかりに言葉を紡ぐ。一方、ユウキは能天気なメタ☆モンの分も前衛として敵の気配を探ってきた影響か、精神的な疲れを感じているようだ。

 

 

「あ、宝箱なのです」

 

 一方。あまり疲れを見せていないコットンが木の上を指差し、木の枝上に飛び乗る。ミラクルシャインたちがコットンを見上げると、コットンは木の色にしっかり擬態していた木製の宝箱を抱え、木から飛び降りてきた。

 

 

「よく見つけたね、コットンちゃん」

「わ、わわわ私、全然わからなかったよ!」

「お手柄ッス! コットン!」

「偶然なのです」

「でで、何が入ってるの? 早く見ようよ!」

 

 ミラクルシャイン、メトロノーム、サンタマリアが口々にコットンを褒めるも、コットンは涼しげな表情を崩さない。その後、メタ☆モンに急かされたコットンが宝箱を開くと、マジカルフォンにマジカルキャンディが300個加算されたことを確認できた。

 

 

「えっと……マジカルキャンディが300個入ってたのです」

「300個!? 3万円じゃないか! やりぃ、儲かったね!」

「円に直すと何だかファンタジー感がぶち壊しだなぁ」

「にしても、結構巧妙に宝箱が隠されてたけど……今までの道のりにも見逃してきた宝箱があったのかな?」

「とにかく、早速分配しま――伏せるのです!」

「え?」

 

 コットンの報告を受けて、メタ☆モンが円換算して全力で喜び、ユウキが苦笑いをする。宝箱が保護色だったことにミラクルシャインが今までの探索不足の可能性に言及するのをよそに、コットンがマジカルフォンを操作して入手したマジカルキャンディを分配しようとした時。何かを発見したらしいコットンが突如、足元の草に身を隠す。ミラクルシャインたちは困惑しつつも、コットンの指示に従い、同じく身を隠す。

 

 

「うげッ」

 

 ミラクルシャインがコットンの視線を追うと、思わず魔法少女らしからぬ声を漏らした。巨大な木のモンスターがいたのだ。全長50メートルはありそうな木のモンスターは、15はある幹の空洞部分から目をギョロリと覗かせて獲物を捜しながら、無数に広がる根をわさわさと動かして移動していた。

 

 

「ひ、ひぃぃぃ」

「凄い迫力ッス」

「あれがこの森のボスかな?」

「だと思うのです。どうします?」

「当然、戦うっしょ!」

 

 メトロノームが口元に手を当てて小さい声で怯え、サンタマリアが想定以上の迫力にゴクリと唾を呑む中。ミラクルシャインとコットンが現状の認識と今後の方針を話していると、メタ☆モンがギュッと拳を握ってやる気のほどを顕わにした。

 

 

「待って、メタ☆モン。もしもあの木が普通のボスじゃなくてレイドボスだったら、6人だけだと荷が重いよ。なのさんのパーティーを呼んだ方がいいんじゃないの?」

「いや、せっかくのゲームバランスのテストなんだし、まずはわたしたちだけで挑戦しよう! ダメそうならなのさんパーティーの協力を仰ぐってことで!」

「……まぁ、仮にHPがゼロになってもリタイアするだけって話だし、いいのかな」

 

 ユウキは乗り気のメタ☆モンに懸念を表明する。ここはVRMMO版の魔法少女育成計画の世界なため、大人数での攻略を前提としたボスである可能性が捨てきれないからだ。しかし、メタ☆モンのやる気は衰えを見せない。すっかり木のボスとの戦闘にワクテカしているメタ☆モンの気持ちを削ぐのをためらったユウキは結局折れることとなった。

 

 

「メタ☆モンとユウキは戦いたいみたいだけど、皆はどうしたい?」

「僕は戦いたいのです。せっかく魔法少女らしく強大な敵と戦えるのです。この機会を逃したくないのです」

「私も腕試ししたいッス! 今までの戦いで連携も形になってきたし、いけるッスよ!」

「わ、わわわ私は役立たずだけど、それでもいいなら」

「よし。じゃあ戦おう! とはいえ、無策で突っ込むのはさすがに危ないから、作戦を決めよう」

 

 ミラクルシャインが他のパーティーメンバーの意見を募ると、コットンもサンタマリアもメトロノームも戦う道を選択した。皆、大なり小なり、未知との遭遇にワクワクしているようだ。ミラクルシャインは木のボスに見つかっていない今の内に作戦会議を開いた。

 

 

「作戦といっても、何を決めるのです?」

「まずはサンタマリアの魔法を誰に使うかだね」

「あ、そのことならもう考えてるッスよ! 私、メトロノームに力を貸し与えるつもりッス!」

「わ、わわわ私に!?」

 

 コットンの真正面の問いを契機に、ミラクルシャインは第1の議題を提示する。すると、サンタマリアはメトロノームに力を貸与する魔法を行使するつもりだと主張した。

 

 

「うん! メトロノームの魔法はどんな願いも叶えられる代わりに願いが叶う頻度がメッチャ低い魔法ッス! そこで私が力を貸して魔法を強化すれば、願いが叶う確率を跳ね上げられるはずッス! 例えあのボスが凄く強くても、メトロノームの願いが叶えやすくなったら上手く立ち回れるかなって思ってるッス! これ、どうッスか?」

「ナイスアイディアじゃん! サンタマリア!」

「わたしも賛成だよ。でも、わたしのビームがあの木に全然効かなかったらわたしに力を貸してほしいな」

「了解ッス!」

 

 サンタマリアの考えにメタ☆モンが手放しで称賛し、ユウキは木のボスの防御力次第で自分に魔法を行使してほしいと要請する。サンタマリアがユウキのお願いに快諾した所で、作戦会議は次の段階へと移行した。

 

 

「後はどんな陣形で戦うかだね」

「今までの前衛2人、中衛2人、後衛2人じゃダメなのです?」

「わからない。でもあの木のボスのいる所はかなりフィールドが開けてるからね。2-2-2のフォーメーションのままで本当にいいのかは再考した方がいいよ」

「え、えっとえっと、ボスはHPが多いから、戦える人はなるべく全員前に行った方がいいんじゃにゃい、かな?」

「ふむ、前のめりスタイルか」

「ダ、ダダダダメ?」

「んにゃ、賛成賛成大賛成! メトロノーム、わかってるじゃん!」

「あ、ああありがとぉ?」

 

 ミラクルシャインがコットンの問いを踏まえた上で陣形の再考を提示すると、おずおずとメトロノームが前衛により人員を増やすことを立言する。指を顎に添えて神妙な顔つきをするメタ☆モンに、己の意見が拒否されるかもとメトロノームが怯えていると、メタ☆モンはバシバシとメトロノームの背中を叩きながらメトロノームの提案に乗っかった。

 

 

「んー。それ、背後から奇襲されたら危ないんじゃない?」

「私が後衛にいれば大丈夫じゃないッスか? 盾で攻撃を防いでいる内に助けを呼べるッスよ?」

「サンタマリア、本当にそれでいいの?」

「どんとこいッス!」

 

 ボスが背後から奇襲する手段を持っていないかユウキが心配すると、サンタマリアが単独での後衛を申し出る。状況次第ではサンタマリアに負担が集中するため、ミラクルシャインが念のためにサンタマリアにもう一度意思確認をすると、サンタマリアはポンと胸に手を当てて胸を張った。

 

 

「それじゃ、前衛は私、コットンちゃん、メタ☆モン、ユウキ。中衛はメトロノームちゃん。後衛はサンタマリア。サンタマリアの魔法はメトロノームちゃんに使う。もしも敵が堅かったらユウキに使う。これでいいね? 他に決めたいこと、ある? …………ないね。なら、行こう! このパーティーで初めての総力戦になりそうだけど、絶対に勝とう!」

 

 ミラクルシャインは作戦会議の決定事項をもう一度おさらいし、認識を皆と共有する。追加の議題がないことを確認した後、ミラクルシャインはリーダーとして、多くは語らず、皆を鼓舞する。ミラクルシャインは拳を天に突き上げ、皆が「おー!」と追随し。ミラクルシャインたちは巨大な木のボスに勝負を挑むのだった。

 

 




絶望「オレナンカドーセ、オレナンカドーセ……」
ふぁもにか「ふてくされて同情を誘っても出番は近づきませんよ?」

次回【7.1日目 ミラクルシャイン班(2)】
※次回更新は8月11日です。

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