どうも、ふぁもにかです。今回で第1章は終了です。まだ確定ではないですが、この物語は第1章、第2章、第3章、終章(+エピローグ)の4章構成の予定です。早く前半のほのぼのパートを終わらせて、執筆したい展開の数多い後半へと移行したいものです。
☆ミラクルシャイン
「で、全員の自己紹介が終わったが、これからどうするのだ?」
「そのことだけど、さっきユウキが言ってたように単独行動は危ないと思うんだ。だから、グループを作りたいな。問題は何人で1組にするかなんだけど――」
「パーティーを組むなら4人こそが至高だよ!」
「いやいや、3人パーティーッス! これは譲れないッス!」
「待った! 6人パーティーこそがバランス的に最上や! 異論は絶対認めへん!」
30分弱を掛けて12人の魔法少女が自己紹介を済ませた後。女盗賊姿のなのだ先輩の問いかけに、ミラクルシャインはグループ作りを提案する。と、ここで。ボサボサの紫髪にセーラー服姿のメタ☆モンと、紺色を基調とした修道女服姿のサンタマリアと、占い師姿のフォーチュンテラーが、各々が信奉するグループの構成メンバーの数を主張し始める。
「ハハッ、6人とかないない! 戦闘の時に一々『お前はこうしてくれ』って指示出すの面倒じゃん! 3人もあり得ないって! 戦闘が単調な作業になるのが目に見えてるっしょ!」
「4人や6人パーティーこそ邪道ッス! 4人以上だとパーティー内から裏切り者が出て、パーティー離脱展開が発生しかねないッス! 亀裂の入っちゃうパーティーなんてパーティーじゃないッス! パーティーの面汚しッス!」
「3人も4人も論外や! それ、結局1人1人が戦士魔導士ヒーラーを兼任できちゃう万能キャラで構成されるんやろ? 魔法剣士なんてお呼びじゃないんや! 1人1人が剣士、魔導士と役割分担してこそのパーティーに決まっとるやんか!」
「……えっと、グループを作ること自体には賛成ってことでいいのかな?」
「僕はミラクルさんに賛成なのです。せっかくこんなに魔法少女がいるのですから、複数人で行動した方が楽しいのです」
「わたくしに反対する理由はありませんわね。わたくしは戦える魔法少女ではありませんので、グループで行動する流れになった方が助かりますもの」
「ミクもそれでいいと思うの。この世界の情報がまだまだ全然足りないし、うかつな単独行動でHPがゼロになってテスターがもうできない、なんてあっけなさすぎるの」
メタ☆モン、サンタマリア、フォーチュンテラーが己の意見を押し通そうと熱弁を振るう。完全に蚊帳の外となったミラクルシャインがポツリと疑問を口にすると、黒い羽織姿のコットン、音符がいっぱいプリントされたワンピース姿のファソラ、露出の多いへそ出し宇宙服姿のミクがミラクルシャインに賛同する。他の魔法少女たちも反対を表明しない以上、満場一致でミラクルシャインの提案は受け入れられているようだ。
(でも、白熱してる3人をどうやって止めればいいのかなぁ?)
「まぁまぁ3人とも落ち着いてぇ。ムイムイは6人2組にした方がいいと思うよぉ」
「おお、さすがはムイムイ! わかっとるやん!」
「ええ、なんで!? 6人パーティーとか絶対多すぎるって!」
「そうッスよ! 納得できないッス!」
「話を最後まで聞いてよぉ。敵の強さがチュートリアルの骸骨レベルだったら少人数のパーティーでもいいかもだよぉ? でも、敵がどれくらい強いかまだわからないよねぇ? だからまずは6人パーティーぐらいが妥当じゃないのぉ? 実際に6人単位で動いて、余裕で攻略できるようなら、そこからさらに3人パーティーや4人パーティーの小グループを作ればいいんじゃないかなぁ」
ミラクルシャインがどう声をかけたものか迷っていると。猫の着ぐるみパジャマ姿のムイムイがフォーチュンテラーの意見に賛同する。フォーチュンテラーがムイムイの援護射撃に至極嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね、メタ☆モンとサンタマリアが不服を示す中。ムイムイは2人に配慮しつつも、6人パーティーがより安全性を担保できるといった旨を主張した。
「……いいアイディアかと……」
「わ、わわわわ私もムイムイさんに賛成です! ググググループの人数が少ないと、せ、責任重大になっちゃいましゅし!」
「…………ちぇー、しょうがないなぁ」
「今回は妥協するしかなさそうッスね。やれやれ」
一定のペースで色が赤と黒に切り替わるジャケットとジーンズ姿のラストエンゲージや黒のゴスロリ服姿のメトロノームがムイムイの案に賛意を表すと、場の空気から、現状のままで頑強に己の案を押し通すのは難しそうだと判断したメタ☆モンとサンタマリアはしぶしぶながらも引き下がることにした。
「さて。今から6人パーティーを2組作るわけだけど、どう分かれよっか。バランスが偏らないように気をつけた方がいいよね?」
「いや、バランスなど考えていてはパーティー作りが難航しかねないのだ。まずは『この子と組みたい』『この人と一緒にいたい』って気持ちに正直になって、各々好きに分かれればいいのだ。その結果、パーティーのバランスが悪そうなら、その時に改めて調整すればいいのだ」
「それがよさそうだね。じゃ、早速始めようか」
至る所にハートマークのついた燕尾服姿のユウキの発言をなのだ先輩は否定し、まずは難しいことを考えずにパーティーを作ることを提示する。なのだ先輩の案で何も問題ないだろう。ミラクルシャインが同意したことを契機に、パーティー作りが始まった。
(さて、誰と組もうかな?)
ここにいる魔法少女は誰もが善良的な性格をしている。自分から心を開きさえすれば、新たな友達を作るのは、そう難しいことではないはずだ。誰とならより友達になりやすいだろうか。
ミラクルシャインは、VRMMOな魔法少女育成計画を攻略しやすい編成のことを一切考慮せずにキョロキョロと魔法少女たちに目を配る。すると、コットンがミラクルシャインのドレスの裾をキュッと掴んできた。
「ん、組む? コットンちゃん?」
「はい。よろしくお願いするのです」
いくら善良な魔法少女しかいないとはいえ初対面の魔法少女しかいないパーティーは避けたかったのだろうコットンに、ミラクルシャインが同じパーティーになるかの提案を行うと、コクコクと素早く首肯する。ミラクルシャインとしても前々から友達のコットンと同じパーティーなのは精神面での安心感が段違いなため、大歓迎だ。
「ミ、ミミミミラクルシャインさぁん! 私と組んでくださぁい!」
「オッケー。よろしくね、メトロノームちゃん」
「はい! ……よよよかった、拒絶されなかった」
と、ここで。意を決したのだろう。メトロノームが盛大にどもりながらもミラクルシャインのパーティーへの加入を要請する。ミラクルシャインが即答でメトロノームのお願いに応じると、メトロノームはボソリと安堵の言葉を漏らした。
「ミラクルシャイン、私とも一緒に攻略しないッスか?」
「もちろん。よろしく、サンタマリア」
「うぃ。これで楽しくなりそうッス!」
続いて。サンタマリアがメトロノームの背中からひょいと顔を出し、ミラクルシャインに許可を求めてくる。ミラクルシャインが快諾すると、サンタマリアはビシッと親指を立てて今の己のワクワク感を表現した。
(さて、これで4人までは決まったけど。思いっきり火力不足だよねぇ)
ミラクルシャインは体を発光させる魔法。コットンはウソをホントと思い込ませる魔法。メトロノームは願い事が凄く低確率で叶う魔法。サンタマリアは他人に力を貸し与える魔法。先頭に立って前衛をしにくい魔法少女が集まってしまった形だ。
「ミラクル! そっちダメージディーラーいないっぽいね! てことで、わたしたちが入っていいかな? てか、ここで断る選択肢なんてまずないっしょ!」
「あはは。ちょっとメタ☆モンが騒がしくしちゃうけど、わたしたちと一緒に組まない?」
「いいよ。ちょうど困ってたからね」
と、ここで。ミラクルシャインたちのグループの戦力を不安視したメタ☆モンがユウキを引き連れてパーティーへの参入を申し出る。ミラクルシャインにとって願ってもない申し出だったため、ミラクルシャインは2人をパーティーに招き入れることにした。結果。ミラクルシャイン、コットン、メトロノーム、サンタマリア、メタ☆モン、ユウキの6人パーティーが出来上がった。メタ☆モンがユウキ辺りに変身して戦ってくれれば火力不足にはならなそうだ。
「これで6人、そろったね」
「おお。そっちも決まったんやな」
「案外スムーズにパーティーを作れましたわね」
ミラクルシャインの呟きに、フォーチュンテラーとファソラが言葉を返す。ミラクルシャインが2人の方へと視線を向けると、フォーチュンテラー、ファソラ、星井ミク、なのだ先輩、ムイムイ、ラストエンゲージの6名で構成されたもう1つのパーティーが視界に入った。きっと、色んなものを召喚できるムイムイや流れ星を落とせる星井ミク辺りが火力担当となるのだろう。
「そっちもバランスは良さそうだね」
「そのようだ。これならグループの再編成は不要なのだ。……そろそろテスト開始から40分が経つし、早速この世界を楽しもうじゃないか」
「うん。何かあったらマジカルフォンで連絡を取り合おう」
「了解なのだ」
ミラクルシャインの発言に返事をしたなのだ先輩は決めるべきことは決めたとして、バーチャルなこの世界に本格的に身を乗り出すことを宣言する。どうやらあっちのパーティーはなのだ先輩が仕切っているようだ。ミラクルシャインとしても異存はなかったので、適宜マジカルフォンで連絡を取ることだけ主張し、なのだ先輩のパーティーと別れた。
「さぁ! いよいよ冒険の始まりだぁ! 魔王倒すよ、魔王! 魔王はどこじゃぁああ!」
レンガ街から草原地帯へと足を踏み入れる中。メタ☆モンがぴょんぴょん飛び跳ね、時にはバク宙も織り交ぜながら盛大にはっちゃける。
「α版の世界に魔王なんてラスボスっぽいのはまだ実装されてないんじゃないかなぁ?」
「いや、わからないッスよ! 何せ、魔法の力でこんな素晴らしいゲーム空間を生み出せるってことは開発スタッフは相当の腕ッス! てことは、α版だろうとクオリティには期待できるッス!」
そんなメタ☆モンの期待が失望にならないよう今の内にユウキが予防線を張るも、メタ☆モンほどではないがテンションの高いサンタマリアが期待に胸を膨らませながらユウキに反論する。
「ひぅ! ま、まままま魔王、いるの? た、たたた戦いたくにゃいよぉ……」
「本当にヤバそうなら、僕の魔法を解禁して魔王に自力で汚い花火になってもらうのです。何も心配ないのです」
すっかり魔王の存在が前提な空気になり、メトロノームが怯えるも、コットンが己のウソをホントと思い込ませる魔法があるから大丈夫だとメトロノームを元気づけにかかる。
「何も爆滅させなくても。ただ私たちとの戦闘を回避するよう言いくるめてくれればいいからさ」
しかし、コットンの物言いが物騒だったため、ミラクルシャインがコットンの思想をそれとなく修正にかかる。かくして、即席で誕生した6人パーティー2組はVRMMOな魔法少女育成計画の攻略を開始した。
第1章 テスターの皆さんへ END
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絶望「 (゚д゚) 」
ふぁもにか「こっちみんな」
次回【6.1日目 ミラクルシャイン班(1)】
※次回更新は8月4日です。