【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回も視点はミラクルシャインのままです。少なくとも第1章の間はずっとミラクルシャイン視点の物語となりそうです。物語後半になれば視点がコロコロ変わるのは確実なんですが、現状だと『視点がコロコロ変わる』のタグが完全に詐欺ですなぁ。



4.自己紹介(2)

 

 

 ☆ミラクルシャイン

 

 VRMMOな魔法少女育成計画の、α版の世界にて。

 

 

「つ、つつつ次は私がやるね、自己紹介!」

「大丈夫? 凄く噛んでるけど?」

「うううう生まれつきだから、だいじょうびゅ!」

(……本当に大丈夫かなぁ?)

 

 音符がいっぱいプリントされたワンピースを着たファソラの自己紹介の後。7番手として自己紹介の場に躍り出たのは、黒のゴスロリ服姿の、気弱そうな黒髪ポニーテールの魔法少女。つつがなく自己紹介ができるか心配してミラクルシャインが声をかけると、当のポニーテールの魔法少女は息を吸うように噛みつつ、自分がいかに大丈夫かを主張した。が、説得力は皆無である。

 

 

「わ、わわわ私はメトロノーム。願い事を叶える魔法を使えるよ」

「ほう、そりゃまたスケールが大きいのだ」

「……凄いね。具体的にどんな願いを叶えられるの?」

「たたッたた多分、どんな願いも叶えられる、はず。ででででも、滅多に願い事は叶わないんだ。わわわ私の体感だと、100回祈って1回叶うって感じかな。けけけど、例え願い事が叶っても、すぐに願い事が叶うとは限らないんだよね。前に願い事が叶った時は1時間後だったかな」

 

 メトロノームの魔法の内容に、茶色のネコミミ帽子に金色の色付きゴーグル、サラシに赤の短パンという女盗賊な衣装の魔法少女ことなのだ先輩と、至る所にハートマークのついた燕尾服に赤と白の髪をした魔法少女ことユウキが食いつく。メトロノームはそんな2名の方へと視線を向けて、魔法の詳細を語っていく。

 

 

「……わたしの魔法と似てる……?」

「そそそうだね。めめめ滅多に使えない魔法だもんね。せせせ戦闘もできないし、魔法も使えないし、さっきは勢いでテスターやりたいって言ったけど、私、皆の足を引っ張るだけかも。ごごごごめんなさぁああああい!」

 

 メトロノームの魔法の概要を知った、一定のペースで色が赤と黒に切り替わるジャケットとジーンズ姿の魔法少女ことラストエンゲージが、メトロノームの魔法が自分の魔法と同じで凄まじく使い勝手が悪いという部分で共通点を見出す。すると、メトロノームはラストエンゲージの意見に共感しつつも、己の卑下しまくり、しまいには涙目で謝罪し始めた。

 

 

「お、落ち着いて。メトロノームちゃんは自分がダメダメだって思ってるみたいだけど、私たちからしたらメトロノームちゃんがすっごく頼りになるかもしれないしさ。せっかくテスターをやるって決めたんだから、そう悲観的にならないで、一緒に頑張ろう? ね?」

「ミ、ミラクルシャインさぁん……!」

 

 卑屈な姿勢のメトロノームから現実世界のダメダメな後藤光希の姿を幻視したミラクルシャインは率先してメトロノームを宥める。すると、メトロノームは素直にミラクルシャインの発言を受け入れ、まるで神様を見るかのような尊敬の眼差しをミラクルシャインに注いできた、メトロノームの態度はあたかも、インプリンティングされたヒナ鳥のようだ。

 

 

(あれ、ちょっと早まったかな?)

「次は僕がいくのです。僕はコットン。特にこれといった名前の由来はないです。ただ何となく、語感がふんわりしていて好みだったので、この名前にしました。僕の魔法は……そうですね。実演した方がわかりやすいのです。では、サンタマリアさん」

「? 私ッスか?」

「実は僕、魔法少女じゃなくて、魔法少年なのです! だから僕、変身すると性別が男になっちゃうんです! 美少女な見た目をしているけど、おっぱいはただの胸板だし、ちゃんとおちんちんもついてるのです!」

 

 ミラクルシャインが己の行為が軽率だったかと少々疑いを抱く中。8番手として黒い羽織姿の青髪碧眼の魔法少女ことコットンが自己紹介を開始する。その際、己の魔法の実演のために紺色を基調とした修道女服姿の魔法少女ことサンタマリアを指名し、爆弾発言に踏み切った。

 

 

「「「え?」」」

「にゃ、にゃにゃにゃにぃぃいいいいいいいい!?」

 

 ミラクルシャイン以外の魔法少女たちが「何言ってんだ、この子」と言わんばかりの視線をコットンに集中させる一方。コットンの爆弾発言を正面から喰らったサンタマリアは奇声染みた驚愕ボイスを高らかに上げる。

 

 

「え、ぇえ? 変身前が男の魔法少女がいるって風のうわさで聞いたことはあるッスけど、変身後が男って、魔法少女の定義が根本から崩壊してるッスよ? え、本当にコットンって男? 確かに僕って言ってるし……ちょッ、確認していいッスか? ぴらっと」

 

 サンタマリアはふらふらとした足取りでコットンの元へ向かい、これといった躊躇なしに羽織をめくり、サラシで守られたコットンの胸を両手でにぎにぎと揉みしだいた。

 

 

「サ、サンタマリア!? いきなり何してんねん!?」

「サンタマリアは変態なの? レズなの? ミク、ドン引きなの」

「ちゃんとコットンにはBカップぐらいのおっぱいがあるッス。でも男? どゆことッス? 魔法でおっぱい作ったッスか? おっぱいミサイルを射出できる魔法ってことッスか? それともこれが最新技術のふんだんに施された新時代のPAD――」

 

 占い師コスチュームの魔法少女ことフォーチュンテラーと露出の多いへそ出し宇宙服や目に映る金平糖のような形の星が目立つ魔法少女ことミクが慌ててサンタマリアをコットンから引き剥がしつつ、サンタマリアを非難する中。サンタマリアは魔法少女たちから白い目を向けられていることを一切気に留めず、ただひたすら盲信的にコットンの体の神秘について考察を深めていく。

 

 

「ごめんなさい、サンタマリアさん。今の僕のカミングアウト、真っ赤なウソなのです」

「ふぇ、ウソ?」

 

 だが、ここで。コットンに先ほどの衝撃告白がウソだと言われたサンタマリアは最初こそコテンと首を傾けるのみだったが、すぐに両眼に理性の光を取り戻した。

 

 

「って、そうッス! 魔法少女なコットンが男の子じゃないのは当たり前ッス! ごめん、コットン! 私、コットンに酷いことしちゃったッス!」

「いえ、気にしないでください。サンタマリアさんは僕の魔法に惑わされただけなのですから」

「え、そうなの?」

「はい。僕の魔法はウソをホントと思い込ませる魔法なのです。多少無茶なウソを吐いても、さっきのサンタマリアさんのように相手は信じてくれます。僕がウソを吐くのをやめようと思ったら、思い込みがなくなる、そんな魔法なのです」

「おおおお、超便利ぃ」

 

 今にも土下座しそうな勢いのサンタマリアを止めつつ、コットンは己の魔法の説明を行う。先ほどのサンタマリアの言動が深く印象に刻まれている魔法少女たちの感想は、猫の着ぐるみパジャマがよく似合う魔法少女ことムイムイの一言に集約されていた。

 

 

(私もこれ、やられたなぁ。懐かしい。コットンちゃんって意外とお茶目な所があるんだよね)

 

 一方。友達ゆえにコットンの魔法を以前から知っているミラクルシャインは初めてコットンと出会った時に同じウソを言われたことを思い出していた。サンタマリアのように胸を揉みこそしなかったが、あの時はコットンの髪のさらさら具合を確かめるために髪に指を突っ込んだり、頬をぷにぷにと触ったりと暴走したものだ。

 

 

「モンスターにもウソが通じるかは試してないからわかりませんが、緊急時以外は魔法を使わないつもりです」

「あらあら、どうして? とても頼りになる魔法ですのに」

「僕たちはVRMMO版の魔法少女育成計画のゲームバランスを開発スタッフが見極めるためのテスターなのです。そんな僕たちが正面からモンスターと戦わず、僕の魔法でモンスターに『君は今すぐ自殺することこそが正義だという思想を持っている、イイネ?』とウソを信じ込ませて自殺させまくっていては、ゲームバランスの参考にならないですから」

「なるほど、その通りなのだ」

 

 コットンはテスターをやっている間、己の魔法を使わない方針を示す。ファソラがコットンに疑問を投げかけると、コットンは仮に己の魔法が敵にも通じた時にチートになりかねないことへの懸念を理由にした。そんなコットンの意見になのだ先輩も全面的に同調する。それぐらい、コットンの魔法は強力なのだ。

 

 

「それじゃ、次はミクの番」

 

 コットンの自己紹介の後。9番手として、自己紹介に進んだのはミク。露出多めに改造された宇宙服や金平糖のような形の星を宿した両目が、メルヘンっぽさを際立たせている。

 

 

「ミクは星井ミクなの。流れ星を落とせる魔法を使えるの。皆、手のひらを上に向けるの」

「え?」

「いいからやるの」

 

 ミク、もとい星井ミクは簡単に己の魔法について話すと、皆に指示を出す。有無を言わせない星井ミクの物言いに、ミラクルシャインたちはひとまず星井ミクの言う通りにする。すると、キランとの擬音を引き連れて、虚空から突如として現れた、所々にとんがりのついた球体のようなものがミラクルシャインたちの手のひらに何粒か、落っこちてきた。色も赤、オレンジ、ピンク、黄緑、水色、紫と非常にカラフルだ。

 

 

「えっと、何これ? アメちゃん?」

「……もやっとボール……?」

「ここ、こここ金平糖?」

「違うの、流れ星なの。ミクの魔法はこういうかわいい流れ星をどこからでも好きに落とせる魔法なの。流れ星の大きさや重さなんかの性質を自由に決められるけど、あんまり大きいのを落とすと隕石が衝突したみたくなって被害が凄くなっちゃうから、自重してるの。敵に直接落とすこともできるから、ダメージディーラーをできると思うの。よろしくなの」

 

 ミラクルシャインやラストエンゲージ、メトロノームが各々抱いた印象をそのまま言語化する中。星井ミクは己の魔法の詳細を語る。話を聞く限りだと、その気になれば世界滅亡級の隕石を落とすこともできそうだ。

 

 

「ねね、これ食べられへんの? ウチ、食べてみたいなぁ?」

「わたしも食べたい! いいよね、もちろんいいよね?」

「そのつもりで皆の手に流れ星を落としたの。その流れ星は小さくて甘くて唾液で段々と溶ける性質にしてるから、おいしく食べられるの」

「「わーい」」

 

 星井ミクの魔法の強力さよりも手のひらの上の流れ星を食べられるか否かにフォーチュンテラーと、ボサボサの紫髪にセーラー服姿の魔法少女ことメタ☆モンがひときわ興味を抱き、星井ミクに詰め寄る。その展開を想定済みだったらしい星井ミクの許可により、フォーチュンテラーとメタ☆モンを筆頭に、ミラクルシャインたちは流れ星を食べた。

 

 

(ま、まさか流れ星を食べる経験ができるなんて……魔法少女ライフはダテじゃないね)

「ごちそうさまぁ、ミクちゃん。流れ星ってこんなにおいしかったんだねぇ。あ、次はムイムイがやるねぇ」

 

 ミラクルシャインが現実世界ではまず体験できない貴重な出来事に巡り合えたことにこっそり感動していると。いち早く流れ星を堪能し終えたムイムイが自己紹介の10番手として名乗り出る。

 

 

「ムイムイのはぁ、頭の中に思い描いたものをポンッと出せる魔法だよぉ。えっとねぇ」

 

 ムイムイはスッと目を閉じると、むむむと唸り始める。直後、ムイムイの目の前の空間に、地球儀と抱き枕とけん玉がポポポンと出現した。

 

 

「脈絡のない物が次々と出てきましたね。見た所、ムイムイさんのイメージを現実世界に生み出せる魔法、なのです?」

「召喚したいって思ったものを何でも召喚できる魔法ってことでいいのかな?」

「そんな感じぃ。生き物は出せないしぃ、イメージが固まってないとダメだけどぉ。その日の気分で武器とかコスチュームとか色々出せて楽しいよぉ」

 

 ムイムイの曖昧な表現からコットンやユウキがムイムイの魔法を自分なりに解釈する中。ムイムイは己の魔法における制限を軽く話し、にんまりと笑って自己紹介を締めくくった。

 

 

「じゃ、次はわたしがするね。最後に自己紹介はちょっと怖いし」

 

 その後。11番目に自己紹介に走ったのはユウキ。赤と白を基調とした燕尾服にシルクハットといったマジシャンな服装をしているだけに、燕尾服の至る所にプリントされているハートマークが異質さを放っている。

 

 

「わたしはユウキ。ハートからビームを出せる魔法の使い手だよ。だから、コスチュームをハート柄にして全方位に対応できるようにしてるし、武器もこれを選んだんだ」

 

 ユウキはクルリと回転して己の服を皆に見せつけた後、燕尾服のポケットから武器を取り出す。ユウキの武器は、ハートマークがプリントされた1から10までのトランプだった。

 

 

「トランプッスか! 汎用性高そうッス!」

「実際、使いやすいよ。軽いし、敵に破かれてもすぐに補充できるしね。で、出せるビームはこんなものだよ」

 

 サンタマリアがユウキの武器選択を素晴らしいと褒めると、ユウキは嬉々とした口調でトランプの利点を上げる。同時に、ユウキはトランプの中からハートのエースを取り出し、ハートマークを真上に向けた後、ビームを射出した。青白いハート型のビームは勢いよく突き進み、10メートルほど先で消滅した。

 

 

(おお、威力高そう。メタ☆モンが怖がるわけだ)

「思ったよりリーチが長いのだ」

「そう? ま、とにかく一撃必殺って程じゃないけどビームの威力は強力だから、前衛で活躍できるはずだよ。皆、よろしくね」

 

 前に魔法を使おうとしたユウキにメタ☆モンが必死にストップをかけていた光景をミラクルシャインが思い出す中。ユウキはなのだ先輩の感想にコテンと首を傾げつつ、自己紹介を終えた。これで11名の魔法少女が簡単な自己紹介を行った。まだ自己紹介をやっていないのはメタ☆モンだ。

 

 

(あれ。性格からして、さっさと自己紹介を済ませる派だと思ってた)

「よし! それじゃあトリはわたしだね! 本当は最初の方で自己紹介をやりたかったんだけど、わたしの魔法は皆の自己紹介を聞いてからの方がインパクト強いから、ずっと我慢してたんだよね! てことで早速、推して参るっしょ!」

 

 メタ☆モンがトリとしての自己紹介を選んだことにミラクルシャインが内心で意外がる中。12番手としてメタ☆モンが元気いっぱいに自己開示を始める。

 

 

「わたしはメタ☆モン! 一度見たことのある人なら誰にでも変身できるよ! ほら! ほら! ほら!」

 

 直後。メタ☆モンの姿が滲み、ラストエンゲージの姿に切り替わった。その後、サンタマリア、メトロノーム、ムイムイへと次々と変身していく。その度に変身先の声色で、メタ☆モンは己の紹介を続けていく。

 

 

「これだけじゃないよ! 何と、魔法少女に変身すると、変身先の魔法少女の魔法まで使えちゃうのさ! あ、さすがに変身先の記憶とかは覗けないよ!」

 

 メタ☆モンは得意げに変身しながら変身先の魔法少女たちの魔法を当然のように行使し始める。ミラクルシャインに変身して全身をキラキラと発光させ、ユウキに変身して燕尾服のハートマークからビームを放ち、星井ミクに変身して小さく軽い流れ星を落としてみせる。

 

 

「人間以外に変身できないのが欠点かな。戦闘じゃ状況を見て火力が足りなさそうならユウキやミク辺りに変身して、支援をたっぷりした方が良さそうならサンタマリアやファソラ辺りに変身すればいいかなって考えてるよ。よっろしくぅ!」

 

 メタ☆モンのドッキリ染みた自己紹介に驚愕するミラクルシャインたちを敢えて置いてきぼりにするようにして、メタ☆モンは自己紹介を終えた。まるで人間たちの事情など一切顧みずに駆け抜ける一陣の自由奔放な風のようだった。

 

 ミラクルシャインと同様にして集められた魔法少女たちは、賑やかで、皆が各々の個性の輝きを持っている。楽しくなりそうだ。少なくともテスターに飽きずに済みそうだ。ミラクルシャインは個性的な魔法少女たちと過ごすこれからの50時間を想像して、頬を緩ませた。

 

 




絶望「我、出番、所望す(´゜ω゜`)」
ふぁもにか「出番、まだ先、カエレ」

次回【5.パーティー編成】
※次回更新は7月28日です。

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