【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今の進み具合だと、前半のほのぼのパートが思ったよりも話数が膨れ上がるかもしれません。当初の予定では20話ぐらいで完結させるつもりでしたが、場合によっては30話ほどかかるかもしれませぬ。



3.自己紹介(1)

 

 

 ☆ミラクルシャイン

 

「ねぇ。せっかくこうして顔を合わせたわけだし、自己紹介しない?」

 

 VRMMO版の魔法少女育成計画のレンガ街にて。説明役のマスコットキャラクターがいなくなって早々にミラクルシャインは自己紹介を提案した。こんなに多くの魔法少女と一堂に会する機会は滅多にないため、親睦を深めるチャンスをものにしたかったのだ。それに、提案を少しでも躊躇しようものなら、VRMMOを早く楽しもうといち早くレンガ街から飛び出す魔法少女がいてもおかしくないと思ったからだ。主に、さっきVRMMOについて熱く語っていたメタ☆モンとか。

 

 

「えー、そんなの後でいいじゃん! それより早く探検しようよ!」

「待って、メタ☆モン。あのマスコットが12人もテスターを集めたのは、皆で連携しないといけない場面があるからだと思う。きっと単独行動は危ないよ。だから、ここはあの金ぴかの人の言う通り、自己紹介をして皆のことを知っておこうよ」

「…………ま、ユウキが言うなら仕方ないか。そんじゃ、ちゃっちゃとやって、終わらせよう! 50時間なんかあっという間に過ぎちゃうしさ!」

 

 案の定、ボサボサの紫髪にセーラー服が特徴的なメタ☆モンがミラクルシャインの提案に反対する。が、至る所にハートマークのついた燕尾服に赤と白の髪をしたユウキがメタ☆モンを理性的に説得すると、メタ☆モンは今すぐにでもこの場を飛びだしてVRMMOを遊び尽くしたいと疼く体を意思の力でどうにか押しとどめつつ、自己紹介の迅速な開始を促した。

 

 

(き、金ぴかの人って、いや確かに金色のドレスを着てるけど、何かお金にがめつい人って言われてる感じがするなぁ……)

「お、自己紹介する流れッスか? なら私が一番乗りッス! サンタマリアッス! 他人に私の力を貸与する魔法を使えるッス! よろしくッス!」

「へぇ、バフ系の魔法ね。ええやん」

「おお、話がわかるッス!」

 

 ユウキの発言にミラクルシャインがこっそり落ち込む中。真っ先に自己紹介を始めたのは、紺色を基調とした修道女服姿の魔法少女――サンタマリア――。彼女の魔法に対し、黒を基調とした占い師コスチュームで素肌をほぼ完全に隠している魔法少女が穏やかに共感すると、サンタマリアは大層嬉しそうに言葉を紡ぐ。

 

 

「サンタマリア、君はどんな力を貸せるのだ?」

「まだ完全にはわかってないッス! でも幼なじみに力を貸してみたらみるみるうちに足が速くなって、今じゃあバリバリの陸上部のエースになったッス! 多分、私の力は貸し与えた相手の潜在能力を開花できると思うッス! 魔法少女に力を貸したことはないけど、もし貸したら、きっと既存の魔法が強化されるんじゃって予想してるッス!」

「ほう、凄いのだ。して、君の魔法は範囲魔法なのかな?」

「やや、さすがにそこまでチートじゃないッス! 誰か1人にしか力は貸せないし、力を貸すのをやめたら、力を貸した相手のパワーアップは終わるッス! やっぱりバフ系統の技は一筋縄じゃいかないのが悩ましくもあり、愛おしくもありッスよねぇ」

 

 茶色のネコミミ帽子に金色の色付きゴーグル、サラシに赤の短パンという女盗賊な衣装の魔法少女が純粋な疑問を尋ねると、サンタマリアはつらつらと返答する。彼女のテンションの高さはバフをこよなく愛していることを如実に主張していた。

 

 

(へぇー、人に力を与えるような魔法もあるんだ。って、何普通に聞き手に回ってるの、私! 魔法少女の友達を作りたいなら、もっと積極的に会話に参加しないと!)

「えーと。12人もいるし、自己紹介は手早くだよね。じゃあ、次は私がやるね。私はミラクルシャイン。体をぴかぴかに輝かせる魔法を使えるよ。こんな感じ」

 

 サンタマリアの説明に聞き入っていたミラクルシャインはいつの間にか受けの姿勢に入っていた己を正すと、二番手として自己紹介を始める。その際、ミラクルシャインは己の体をボォッと仄かに光らせてみた。サンタマリアの魔法と違って魔法の実演がしやすいためだ。

 

 

「あらあら。幻想的で美しいですわね」

「……きれい……」

「んー、でもちょっとしょぼくないぃ? もっと光って、相手を『目がぁああ、目がぁああああああああああ!』ってできないのぉ?」

「できるよ。ついでに体の一部分だけ光らせることもできる。さっきの骸骨にも光で目潰しできたから、モンスターの妨害役って所かな。よろしくね」

 

 仄かな光を纏ったミラクルシャインの姿に、音符がいっぱいプリントされたワンピース姿の魔法少女や一定のペースで色が赤と黒に切り替わるジャケットとジーンズ姿の魔法少女が素の褒め言葉を漏らす。そんな中、猫の着ぐるみパジャマがよく似合う魔法少女ことムイムイが魔法に関して尋ねると、その手の質問をあらかじめ予期していたミラクルシャインは、今度は指先だけを光らせて、魔法の詳細について触れた。

 

 

「骨だけの骸骨に目潰しが効くなんて、意外なの」

「うん、私も驚いた。あれに怯んでくれたおかげで楽々倒せたんだよね」

「それにしても、何だか人間閃光弾みたいな魔法なの」

「閃光弾とか言わないで。ちゃんとミラクルフラッシュって名前があるんだから」

 

 ミラクルシャインの話を受けて、露出の多いへそ出し宇宙服や目に映る金平糖のような形の星が目立つ魔法少女ことミクの感想に、ミラクルシャインも同意する。その後、ミクの魔法少女のメルヘンさの欠片もない発言にミラクルシャインは突っ込んだ。魔法の世界に閃光弾なんて堅苦しい武器名は似つかわしくないのだ。

 

 

「そんじゃ、次はあたしがいくのだ。あたしは『なのだ先輩』なのだ」

「え」

 

 ミラクルシャインの話の切れ目を伺いつつ、三番手として女盗賊な衣装の魔法少女が己の魔法少女名を名乗る。その時、ミラクルシャインを始め、何名かの魔法少女が困惑の声を思わず漏らした。魔法少女は基本、己の可憐な姿に似合うようなゆるふわな名前をつけることが多い。各魔法少女のセンスによりゆるふわな名前のはずが厨二病っぽくなったり、ヘンテコになったりすることはある。しかし、センスを考慮してもなお、『なのだ先輩』という魔法少女名はぶっちぎりで異質だった。それゆえのミラクルシャインたちの困惑だ。

 

 

「あたしは別に魔法少女に憧れて魔法少女育成計画のアプリゲームを始めたわけではないのだ。熱心なプレイヤーをやっている友達から勧誘されたから、テキトーな名前でとりあえず会員登録したのだ。こうして実際に変身できるようになってから名前をそれっぽいものに変更したいと魔法の国に頼み込んだけど、よほどの事情がなければダメだと突き返されてしまったのだ。……あれはキラキラネームで苦しむ人たちの気持ちがよくわかった瞬間だったのだ、ははは」

「ありゃりゃ」

「えっと、ドンマイ?」

 

 ミラクルシャインたちの反応を予測していたのだろう。なのだ先輩は己の魔法少女名の経緯を語る。その際、話が進むにつれて段々と声の勢いがなくなり、目が徐々に濁っていく。なのだ先輩のやるせない様子を見かねたメタ☆モンとユウキはどう励ませばいいかわからないながらもなのだ先輩の背中をぽんぽんと優しく撫でた。

 

 

「2人とも、慰めてくれてありがとうなのだ。話を戻すけど、あたしの魔法はこれなのだ」

 

 メタ☆モンとユウキのおかげで幾分か気を持ち直したなのだ先輩の姿が次の瞬間、ミラクルシャインの視界から消え去った。

 

 

「な、なのだ先輩が消えた!?」

「下なのだ」

 

 不意打ちでなのだ先輩がいなくなったことにミラクルシャインがひときわ驚愕していると、ミラクルシャインの下から軽やかな声が聞こえた。魔法少女たちが声に従って下に視線を向けると、10センチほどの身長に縮んだなのだ先輩の姿があった。

 

 

「ち、ちちッちち小さくなったぁ!?」

「きゃわわわッス! お人形として部屋に飾りたいレベルの可愛さッス!」

「……何か照れるのだ」

 

 さっきこのVR空間について説明していた小人と同じくらいのサイズとなったなのだ先輩に、黒のゴスロリ服姿の黒髪ポニーテールな魔法少女がミラクルシャインを超える動揺っぷりを顕わにし、サンタマリアはチビなのだ先輩を褒め称える。一方、なのだ先輩は正面から褒められたことへの照れを隠すようにプイッと顔を背けつつ、元のサイズに戻った。

 

 

「今見せたように、あたしは任意のタイミングで小さくなれる魔法を使えるのだ。避けられそうにない敵の攻撃を緊急回避したり、小さい体でしか通れない所を探索したりで活躍できると思うのだ。……なのだ先輩って名前だけど、中身はあたしの方が年下かもだから、律儀にフルネームで呼ばないでいいのだ。『なの』とか『なのさん』って感じで気軽に呼んでほしいのだ」

(……じゃあ、私はなのさんって呼ぼうかな)

 

 なのだ先輩が自己紹介を締めくくる中、ミラクルシャインはなのだ先輩をさん付けで呼ぶことに決める。当の本人は自分は年下かもと言っていたが、なのだ先輩の落ち着いた雰囲気が、どうもミラクルシャインより何歳も年上のように思えてならなかったのだ。

 

 

「次はウチのターンや。野球的に4番手は特別やからね」

「野球、好きなの?」

「甲子園は毎日録画しとるで」

 

 なのだ先輩に続き、占い師コスチュームの魔法少女が自己紹介を行うべく声を上げる。ミラクルシャインがほんの興味から尋ねた結果、占い師姿の魔法少女が割とどっぷり野球の魅力に染まっていることが判明した。

 

 

(んー。私は野球はそこまで好きじゃないんだよね。観戦するなら点がバンバン入るスポーツの方がワクワクするしなぁ)

「ウチはフォーチュンテラー。未来予知ができる最強の魔法少女や。といっても自分の未来しか予知できんし、3秒くらい先の未来までしかわからんしで使い勝手は悪いからあんま期待したらあかんよ?」

「なるほど。最強の魔法少女(笑)なのですね」

「そこ、笑うの禁止や! ま、未来予知の程度がしょぼいのは事実やけど、それでも敵の攻撃を予知して備えらえるから、危機感知の面で活躍できると思うわ。あと、ウチは名前が無駄に長いから気軽に『フォー』って呼んでや」

 

 フォーチュンテラーの魔法の説明に対し、黒い羽織に身を包んだ青髪碧眼の魔法少女ことコットンが茶々を入れると、フォーチュンテラーはノリノリで突っ込む。その後、フォーチュンテラーはニコニコと人当たりの良い笑みを携えて自己紹介を進めた。

 

 

「……終わった? なら、次はわたし。そろそろ自己紹介しないと、プレッシャーが凄くなるし……」

 

 5番目に自己紹介に動いたのは、一定のペースで色が赤と黒に切り替わるジャケットとジーンズ姿の、グレーのセミロングな髪型の魔法少女。右目が黒、左目が赤のオッドアイも相まって、どことなく魔族的な雰囲気を醸し出しているような印象をミラクルシャインは抱いた。

 

 

「……わたしはラストエンゲージ。魔法で第二形態になれる……」

(第二形態?)

「第二形態!?」

 

 ラストエンゲージは言葉少なに己の魔法を皆に伝える。その内容にミラクルシャインが内心で首を傾げる一方、メタ☆モンがキラキラと瞳を輝かせた。VRMMOに詳しかったことからして、ゲーム性を感じる魔法に興奮する傾向にあるのだろう。

 

 

「第二形態ってあれだよね!? ラスボスとか強敵とかが『まだだ、まだ終わらんよ!』とか『くくく、我の力を抑える枷を取り払わせてもらった。さぁ、我の真の力を見よ!』とかいって全く別の姿にフォルムチェンジしちゃうあれだよね!? あれができるの!? マジでマジで!? ちょっとやってみてよ!」

「……あの、えっと……」

「あ、もしかしてそれっぽいシーンじゃないと魔法使うの恥ずかしい? だよねぇ、シチュエーションって大事だよねぇ。よし、それならこのメタ☆モン様に任せなさい。ここのメンバーでちょちょっと役割分担してうってつけのテンプレ展開を用意してみせ――」

「――そこまでだよ、メタ☆モン。ラストエンゲージさんが困ってる」

「ちょッ、ユウキ!? 魔法はやめてぇ!」

 

 メタ☆モンはラストエンゲージの両腕をガシッと掴んで興奮のままに言葉をまくし立てる。ラストエンゲージが申し訳なさそうに眉を寄せていようと関係なしに、メタ☆モンが全力で暴走を続けていると、ユウキが燕尾服のポケットに手を入れながらメタ☆モンに自制を求める。すると、メタ☆モンはビクリと肩を震わせ、ラストエンゲージから離れた。メタ☆モンにとって、ユウキの魔法はとても恐ろしいものらしい。

 

 

「……ごめん。わたしの魔法は条件が凄くシビアだから、今は見せられない。今までこの魔法を使ったことないから、第二形態になったらどうなるかはわたしでもわからない。だから、いつか魔法を使えた時が楽しみでもあり、怖くもある……」

「一度も使った経験がないとなると、相当厳しい条件なの。第二形態が見れないのはちょっと残念だけど、諦めるしかないの」

「……わたしの名前も長いから、『ラスト』って区切ってもいい。皆に任せる……」

 

 ラストエンゲージは第二形態に期待を口にしたメタ☆モンやミクにペコリと律儀に頭を下げつつ、自己紹介を終える。期待を裏切ることをかなり気にしている様子から、見た目の魔族っぽさとは裏腹に、素直な性格なのだろう。

 

 

「では、次はわたくしが行いますわ。皆さんの大体の性格がわかったおかげで、どう自己紹介をすればいいかの方向性を固められましたし」

 

 6番目に自己紹介を始めたのは、音符がいっぱいプリントされたワンピース姿の魔法少女。クリーム色のカジュアルショートの髪も合わさり、ミラクルシャインの脳裏に深窓の令嬢との言葉が想起させられた。

 

 

「わたくしはファソラですわ。名前の由来は『ドレミファソラシド』の『ファソラ』の部分を抜き取った所から来てますわ。ただ『レミファ』の方も捨てがたくて3日3晩頭を悩ませ続けたのはいい思い出ですわ」

「……あたしもそれぐらい真剣に考えればよかったのだ」

「わたくしはなのさんの名前、センスにあふれていて素敵だと思いますわ。私の魔法はどのような音楽も自在に奏でられるというものですわ。そうですわね――」

 

 魔法少女名をしっかり考えたファソラに対し、なのだ先輩が過去の己の失態への後悔と、ファソラへの羨望を込めて呟くと、ファソラはニコリとなのだ先輩に微笑みかけてフォローを入れる。その後、ファソラは背中からフルートを取り出し、音楽を奏で始めた。

 

 

「わぁ……!」

 

 あらゆる人間から悪意をはぎ取り、浄化するかのような澄み切ったフルートの音色にミラクルシャインは思わず感嘆の声を漏らす。ファソラの演奏に感動したのはミラクルシャインだけではないらしく、誰もがうっとりとファソラの最上級の調べに聞き惚れている。

 

 

「ふぅ。こんな所ですわね」

「凄い、凄いよファソラさん! 私、音楽でこんなに感動したの初めてだよ!」

「うっかりタダで聞いてしまったことに罪悪感を感じるのです」

「いやぁ、ええもん聞かせてもらったわ。ありがとな」

「どういたしまして。このようにわたくしは魔法で色んな演奏をすることができますわ。今の音楽は皆さんを感動させる音楽で戦闘では何の役にも立たないでしょうが、戦闘前に皆さんの士気を鼓舞する音楽や皆さんがパニックになった時に落ち着かせる音楽などで皆さんをサポートできると思いますわ」

 

 ファソラが演奏を終え、フルートを仕舞うと。ミラクルシャインは己の内から湧き上がる感動を抑えきれないままにファソラに思いの丈をぶつける。ミラクルシャインに追随するように、コットンやフォーチュンテラーもそれぞれの表現でファソラの音楽を称賛する。ミラクルシャインたちの反応には慣れているのか、ファソラは顔色を変えずに勝算を受け止め、己がどのような場面で役立つかについて触れる。

 

 

「なるなる、要は狩猟笛役みたいなわけだね」

「狩猟笛? まぁとにかく、よろしくお願いいたします」

 

 メタ☆モンが己のゲーム知識からファソラの役割に似たものを引っ張り出すも、その手の方面の造詣の深くないファソラには全く通じなかったようだ。かくして、魔法少女たちは自己紹介を続けていく。未だ自己紹介を終えていない魔法少女は、残り6名だ。

 

 




絶望「婆さんや、わしの出番はまだかいの? (´盆`〟)」
ふぁもにか「お爺さん、出番はまだだって言ったでしょ? あと、誰が婆さんだ」

次回【4.自己紹介(2)】
※次回更新は7月21日です。

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