【完結】オリジナル魔法少女育成計画 罠罠罠   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は3人目の視点が待っています。しっかし、魔法少女育成計画の二次創作なのに、11話にもなってまだ3人にしかスポットライトを当ててないのって割と問題な気がするのは私だけですかねぇ。



11.最終日 ラスボス戦

 

 

 ☆なのだ先輩

 

 前世。それは己が過去で、今と全く違う姿で、環境で生き抜いた人生のことだ。

 死んであの世に還った魂が再びこの世に生まれ変わる輪廻転生の考え方は科学が進化した今もなお、割と人々に受け入られている。だが、前世を本気で信じる人は数少ない。

 簡単だ、誰も前世の記憶をはっきりと持ち合わせていないからだ。

 転生の際に前世の記憶が消されるのか。そもそも前世なんてものがないのか。

 現代科学で完全に前世を証明できない現状、前世を信じ込む者は少数派と言える。

 

 が、小森菜乃(なの)は前世を信じていた。前世の記憶が鮮明に残っているからだ。

 菜乃の前世は悪人だった。徹底的に自分を優先し。自分さえ良ければ、それこそが最良だと、あらゆる犯罪を走った。窃盗、強盗、強姦、殺人、薬物、数え上げればキリがない。

 どこまでも自分の幸せ重視なため、前世の時に同志はいなかった。いつも一匹狼だった。

 恨みを買うようなことばかりしていたため、敵は多かった。が、前世の時には非常に巧みに立ち回り、最期は寿命で死ぬこととなった。

 享年68歳。やりたい放題に犯罪に手を染めたくせに、奇跡的な長命に終わった。

 

 いよいよ最期が訪れ。意識が闇に葬り去られようといった時。

 前世の心が感じたのは、ただ1つ。虚しさだけだった。

 欲望のままに生きた以上、楽しかったはずだ。充実していたはずだ。

 悔いのない幸せな人生だと豪語できる。そのことに何も偽りはない。

 なのに。それなのに。確実に足りない何かが心にぽっかりと穴を開けていた。

 

 本能のままにやりたいことをやりたいようにやったはずなのに幸せじゃない。

 無駄に回る頭を酷使すれど、その理由はわからなかった。

 わからないまま、前世の心は老衰した体から解き放たれた。

 そして。次の瞬間には、融通の利かない赤ちゃんの体に心が定着していた。

 

 人生に何が足りなかったのか。何があれば満足で幸福な人生に手が届いたのか。

 菜の花のように身近な幸せを大事にして、快活に生きてほしいと菜乃の名前をもらってからも、菜乃はとにかく己の心と向き合い、自己分析を続けていた。

 

 いくら考えても最上に幸せな人生に必要な要素はわからなかった。だが。前世とは真逆の生き方をすれば、足りなかったもののヒントを得られるのではないかとの着想を菜乃は得た。

 そのため、菜乃は前世では悪人を貫いた分、今世では善人を貫こうと決めた。

 徹底的に利他優先。家族に笑顔を振りまき、いじめられっ子に進んで手を差し伸べ救世主となり、先生の期待にきちんと応じてみせた。

 

 スマホアプリの魔法少女育成計画に熱中していた友達から勧められ、会員登録をしたことを機に本物の魔法少女となってからは、菜乃はより善行を積みまくった。

 迷子を保護者に届ける。ゴミ拾いをする。怪我人が生まれない形で喧嘩を治める。なくした物を探す手伝いをする。災害時の救助活動をする。魔法少女の人間離れした身体能力を大いに用いて、菜乃はひたすら良い事を行ってきた。

 

 これらの善行は人の為ならず。あくまで自分のためだ。

 前世では終ぞ味わえなかった最高の幸せを掴み取るために必要な労力だ。

 ゆえに、己の柄じゃないことの継続も菜乃にとって苦痛ではなかった。

 

 そして、今。VRMMO版の魔法少女育成計画の世界で。

 菜乃はなのだ先輩として、11人の魔法少女を率いるリーダーに推薦された。

 なのだ先輩の判断1つで、ラスボスたるサンダードラゴンに無傷で勝利することも、サンダードラゴンの力に屈して全員リタイアに終わることもあり得るのだ。

 

 

(肉体年齢ならあたしは12歳。この場の魔法少女たちの中で最年少の可能性すらあるのに満場一致であたしをリーダーに据える辺り、前世の経験を元にした貫録的なモノが外に漏れてるっぽいかな。ま、精神年齢は前世の68年を合わせて80歳だし、隠しきれないのも当然といえば当然か)

 

 魔法少女12名が5メートルサイズの巨大な木製扉の前に立ち並ぶ中。サンダードラゴンとなのだ先輩たちとを隔てる扉を見つめるなのだ先輩の心境は非常に落ち着いている。

 これがただの小森菜乃・12歳であれば、重責に耐え切れなかっただろう。

 だが、数々の生命の危機を幾度も切り抜けてきた前世の記憶を引き継いでいるなのだ先輩の心は、この程度で折れるほど柔ではない。

 

 

(あたしの利他主義執行で、悲劇が起きてはならない。失敗は許されない。このあたしがリーダーを務める以上、皆が笑顔になれるようなハッピーエンドを)

「作戦開始なのだ!」

「景気よくいっちゃうの!」

 

 軽く息を吸って、なのだ先輩は皆にサンダードラゴンとの戦闘開始の号令をかける。直後、星井ミクの足元から直径2メートルの金平糖型の流れ星が現れ、勢いよく木製の扉をぶち破った。

 

 直後、なのだ先輩たちはまだ扉の奥に入っていないにもかかわらず、一瞬にして扉の奥に瞬間移動していた。なのだ先輩が後方に目を向けると、扉は跡形もなく、代わりに破壊できなさそうな堅牢な壁が設置されていた。なのだ先輩たちはサンダードラゴンと同じ空間に閉じ込められたのだ。

 

 が、魔法少女たちは誰1人として動揺しなかった。小人の『問答無用でボス戦が開始される』との言葉を受けて、なのだ先輩が作戦会議の時に、フォーチュンテラーのすぐ先の未来が見える魔法を使用させ、扉を破壊した際に何が起こるかを事前に皆で共有したからだ。

 

 

「グォオオオオ!」

 

 サンダードラゴンは不機嫌そうに咆哮を轟かせ、雄々しい尻尾を振るってなのだ先輩たちを薙ぎ払おうとする。全長50メートルを軽く超えるサンダードラゴンの尻尾はとても長く、何も対処しなければなのだ先輩たち全員に重い攻撃が刻まれることが確実だ。

 

 

「させないッス!」

「早速出番なのです」

「……だね……」

 

 そのため。盾装備のサンタマリアが、木刀装備のコットンが、槍装備のラストエンゲージがサンダードラゴンの尻尾を止めるべく、各々の武器を一斉に尻尾に突きつける。普通なら、この時点でサンダードラゴンの纏う黄緑色の雷が3名の体を焼き焦がし、あっという間にHPをゼロに持ち込んだだろう。だが、3名に雷は通じない。3名の武器は、ムイムイが雷無効の属性を加えて召喚したモノに切り替えているからだ。

 

 

「「「せーの!」」」

 

 サンタマリア、コットン、ラストエンゲージは声でタイミングを計り、グッと武器に力を込める。結果、3名の魔法少女な力に競り負けたサンダードラゴンの尻尾は押し返された。

 

 

(想定通り、尻尾は魔法少女3人分の物理で何とかなるみたいなのだ。さて、次は――)

 

 サンダードラゴンの尻尾による範囲攻撃を防げることを把握したなのだ先輩は先ほど扉をぶち破り、そのままサンダードラゴンの元へと風を切って突き進む流れ星を見やる。流れ星はサンダードラゴンの右目を貫かんと勢いを跳ね上げたが、サンダードラゴンが常時纏う雷により粉々に砕けちった。が、その直前。流れ星からパッと魔法少女が手を放す。

 

 そう、星井ミクが飛ばした金平糖型の流れ星。その角の部分にひっつかまり、流れ星とともにサンダードラゴンのすぐ目の前まで高速移動をした魔法少女がいるのだ。

 

 

「いくよ! これが本気のミラクルフラッシュ!」

 

 当の魔法少女、ミラクルシャインは間近に見たサンダードラゴンの迫力に呑まれることなく、皆に合図を出した上で体の前面を全力で輝かせる。ミラクルシャインの言葉に他の魔法少女たちは一斉に目を閉じ、ミラクルシャインの暴力的な光が周囲一帯を襲った。なのだ先輩がギュッと目を閉じてもなお、まぶたの裏を真っ白に染め上げるほどの、強力な光。これほど強烈な光をすぐ目の前で浴びたサンダードラゴンがどうなるかは言うまでもない。

 

 

「ギュオオオ!?」

「もう目ぇ開けていいよ!」

 

 無事地面に着地したミラクルシャインの合図になのだ先輩がゆっくりと目を開けると。ミラクルシャインの不意打ちな目潰しが成功を収め、サンダードラゴンが痛みに耐えきれずに後ずさり、目を深く深く閉じる様子が克明に映し出されていた。

 

 

「ここですわね」

 

 ファソラがフルートを口に添え、サンダードラゴンの平衡感覚を狂わせる、おどろおどろしい音楽を奏で始める。視界を塞がれ、さらに体の向きや傾きなどの把握に重要な平衡感覚まで惑わされたサンダードラゴンは、体のバランスを崩して倒れそうになったり、誰もいない所に尻尾を叩きつけたりと、攻撃の精度が大幅に減衰した。

 

 

「よし、今なのだ!」

「流星群を味わえなの!」

「文明の利器も味わえぇ!」

 

 サンダードラゴンがミラクルシャインの目潰しやファソラの妨害音楽から立ち直る前に一気に勝負を決めるべく、なのだ先輩が攻撃指示を出す。すると、星井ミクの生成したとにかく硬くて大きい流れ星の雨がサンダードラゴンに降り注ぎ、ムイムイが生成したロケットランチャーのロケット弾がサンダードラゴンに次々と着弾した。サンダードラゴンが常に纏う雷の影響で流れ星もロケット弾も直撃とはならないが、それでも流れ星の残骸やロケット弾の爆風は着実にサンダードラゴンのHPを削っていく。

 

 

「その厄介な尻尾、壊させてもらうから!」

「部位破壊は基本っしょ!」

 

 同時にユウキと、ユウキに変身したメタ☆モンがトランプ、ではなくムイムイが召喚した、ハートマークがでかでかと描かれた戦旗をたなびかせ、サンダードラゴンの尻尾の根元一転狙いで太いビームを射出する。ビームをサンダードラゴンの雷で弾くことはできず、サンダードラゴンはビームの直撃を甘受するしかない。

 

 

(現状、サンダードラゴンを完封できている。……あたしも攻撃に回るか?)

「あかん! 雷のブレスや! 逃げ場がない!」

 

 ユウキとメタ☆モンがサンダードラゴンの尻尾切断に成功する中。なのだ先輩が己の魔法を応用してサンダードラゴンの前足でも消滅させようかと画策していると、常に3秒先の未来を監視しているフォーチュンテラーが顔を青ざめつつ皆に警告を放つ。逃げ場がないということは全体攻撃。ブレスということは口から雷撃が放たれるということ。ならば。

 

 

「ユウキ!」

「わかってる! サンタマリアさん、力を貸して!」

「うぃッス!」

 

 なのだ先輩が指示を出すまでもなく、ユウキは今現在、願いを叶える可能性を高めるためにメトロノームに貸与されている力を自分に貸すようサンタマリアに頼みつつ、サンダードラゴンの口を正面に捉えるように移動する。そして、「ゴアアアアア!」とサンダードラゴンが大口を開けてバチバチ震える黄緑色の雷のブレスを解き放つと同時に、ユウキもまた戦旗からビームを放った。

 

 サンタマリアの力により魔法の強化されたユウキのビームは、戦旗に描かれたハートマークよりも何倍も大きく、密度も濃く、また雷を素通ししない程度には物理属性も備えており、結果ユウキのビームとサンダードラゴンの雷のブレスは互いに激しく衝突を始めた。

 

 

「どうなのだ?」

「ちょっとヤバいかも。押し負けそう」

「む、となると打開策は――ほう、もう動いてるのだ」

 

 なのだ先輩の問いかけに対するユウキの表情は芳しくない。ユウキの強化されたビームでもサンダードラゴンの雷のブレスを口内に押し戻すことは期待できないようだ。その上でなのだ先輩はリーダーとして、次なる一手を講じるべくコットンに声をかけようとする。が、コットンは既に動いていた。なのだ先輩の意図をとっくに汲み取っているようだ。

 

 

「ムイムイさん! トランポリンをサンダードラゴンの前足付近に召喚なのです!」

「ん? まぁ了解ぃ」

「ミラクルさん!」

「――なるほど、一緒にやろっか!」

 

 ムイムイはコットンの指示に疑問を抱きつつも指示通りにサンダードラゴンの足元に大きめのトランポリンを召喚する。その後、コットンは近くに控えていたミラクルシャインに声をかける。名前を呼ばれ、コットンの瞳を見ただけで、コットンの意図を察したミラクルシャインはコットンにうなずき、2人同時にトランポリンへと跳躍した。

 

 

「せいッ!」

「ここなのです!」

 

 トランポリンの反発力を活かし、ミラクルシャインとコットンは高速でサンダードラゴンの顎へと迫る。そして、サンダードラゴンの下顎骨をミラクルシャインの杖で、コットンの木刀で突き、サンダードラゴンの口を無理やり閉じさせた。なお、ミラクルシャインの金色の杖もムイムイ特製の雷属性無効の杖である。

 

 

「ゴ、ォ……!?」

 

 結果、サンダードラゴンの口内で雷のブレスが暴発。自分で自分の口の中を焼き焦がしたサンダードラゴンは枯れた声で小さく呻いた。未だ視力の回復していないサンダードラゴンの両目は今、白目を剥いている。

 

 

「集中攻撃、再開なのだ!」

 

 サンダードラゴンが無防備を晒している内に、なのだ先輩の合図とともに魔法少女たちが攻撃の手をさらに強めていく。ミラクルシャイン、コットン、ラストエンゲージが各々杖と木刀と槍でサンダードラゴンの足元を中心に傷つけていく。一方、サンダードラゴンの上半身には星井ミクの流れ星が、ムイムイのロケット弾が、ユウキとユウキに変身したままのメタ☆モンのビームが絶え間なく注ぎ込まれ、サンダードラゴンのHPは順調に減っていく。

 

 

「なのさん、そこ潰される! はよ離れて!」

 

 と、ここで。未来視続行中のフォーチュンテラーが切羽詰まった口調でなのだ先輩に要請する。が、なのだ先輩は動かない。フォーチュンテラーの未来視は3秒先が限界だ。ゆえに、未来を見たフォーチュンテラーが警告を飛ばす時点で危ない未来は1~2秒まで迫っている。その状況でサンダードラゴンの足、あるいは胴体による踏み潰しから直接逃げることによる回避はベターな選択肢とは言えないのだ。

 

 ゆえに、なのだ先輩は短剣で素早く己の足元の床を数度切り裂き、小さな穴を生成する。そして、多くの攻撃を受けたサンダードラゴンがなのだ先輩の立つ方向へと倒れる寸前になのだ先輩は己の手乗りサイズにできる魔法で10センチサイズにまで縮み、穴の中に隠れた。

 

 

「ウソやろ、なのさん! なのさん!」

「心配無用なのだ、フォー!」

「そ、そか。良かったぁ」

(しかし、面倒なことになったな。穴の中に閉じ込まれてしまった。これでは的確に指示を出せない)

 

 サンダードラゴンが倒れたことで戦闘エリアに激しい地響きが発生する中。おろおろとした声色のフォーチュンテラーを安心させるべく、なのだ先輩は穴の中から声を張り上げる。結果、なのだ先輩がサンダードラゴンに潰されてリタイアしていないと知ったフォーチュンテラーはホッと安堵の息を漏らすも、なのだ先輩の内心は一転して穏やかではなかった。

 

 

「ギャォオオオオオ!」

 

 一方、サンダードラゴンは両翼を目一杯羽ばたかせ、積極的に攻撃していたミラクルシャインたちを纏めて吹き飛ばす。その場で踏ん張るという選択肢を根こそぎ奪うほどの暴風に抗えず、ミラクルシャインたちは次々と戦闘エリアを仕切る壁に叩きつけられた。

 

 

「う、ぐッ。――って、マズい!」

 

 各々が悲鳴や苦悶の声を漏らす中。ミラクルシャインが気づいた。サンダードラゴンと距離を取っていたがためにどうにか風に吹き飛ばされなかったメトロノーム、サンタマリア、ファソラへとサンダードラゴンが雷を纏った体で突進しようとしていると。サンダードラゴンの両眼はしかとメトロノームたちを捉えており、ミラクルシャインの強烈な光での一時的な失明が解消されている様子が読み取れた。

 

 

「こ、ここは私の踏ん張り所ッス! 絶対に譲らないッス!」

 

 サンダードラゴンの突進を回避しようにも、サンダードラゴンの全長50メートルを超える巨躯がそれを許さない。メトロノーム、ファソラを庇うべく、2名の前に立ったサンタマリアは盾をしっかり握って前傾姿勢を取る。尻尾の攻撃ですら3人がかりでようやく止められたのに、胴体を駆使した突撃を1人で止められるわけがない。そうわかっていても、サンタマリアは2名を庇うことをやめない。

 

 

「サンタマリア!」

 

 サンダードラゴンが動いたことで穴から抜け出せたなのだ先輩は元のサイズに戻りつつ、サンタマリアの名を呼ぶ。なのだ先輩には策があったが、サンタマリアとサンダードラゴンとの距離は既に詰められており、策を間に合わせることはできない。このままサンダードラゴンがサンタマリアを、メトロノーム、ファソラもろともリタイアに追い込む。そのような未来をなのだ先輩は幻視した。

 

 が、その時。サンダードラゴンの動きがぴったりと止まった。サンタマリアの目と鼻の先で、サンダードラゴンはまるで石像にでもなったかのように停止している。

 

 

(ここで発動したか!)

「や、ややややった! ややややっと願い事が叶った! ししし死ぬかと思ったよぉ!」

「あらあら。九死に一生を得ましたわね」

「ふ、ふぃー! 心臓バクバク言ってるッスぅ!」

 

 サンダードラゴンとの戦闘開始からずっと作戦通りにサンダードラゴンだけの時間を止めることを一心に願い続けていたメトロノームは思い出したかのようにサンダードラゴンの迫力を思い出してブルブル震え始める。ずっとサンダードラゴンの平衡感覚を狂わせる演奏を続けていたファソラはフルートから口を離して安堵する。サンタマリアは思わずその場に尻もちをつき、胸に手を当てて荒い呼吸を繰り返す。

 

 

「メトロノームの願い事でようやくサンダードラゴンの時間が止まったのだ! 後はさっさとサンダードラゴンを倒すだけなのだ!」

 

 サンダードラゴンはもう動かない。攻撃しない。時間ごと止めたので、強烈な雷を身に纏うこともない。そのため、なのだ先輩の指示の元、魔法少女たちは全員で一斉にサンダードラゴンに攻撃する。普段は戦闘に参加しないメトロノームやファソラ、フォーチュンテラーさえも素手でサンダードラゴンにわずかながらもダメージを加えていく。

 

 そして、1分後。12名の魔法少女の共同作業なボコ殴りにより、いよいよHPがゼロを迎えたサンダードラゴンは固まったまま、体がバラバラに砕ける。そして、さらさらと全身が粉末化し、戦闘エリアから完全に消滅した。かくして。なのだ先輩がリーダーを務めた上でのラスボス戦は、全員無傷とはいかなかったが誰もリタイアさせることなく終結したのだった。

 

 




絶望「殺してでも出番を奪い取る! うりゃー! (o゚Д゚)=◯)`3゜)∵」
ふぁもにか「バカめ、それは残像だ!」

次回【12.最終日 バーベキュー(1)】
※次回更新は9月9日です。

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