転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強?   作:lerum

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無限の龍神 帝国の貴族を瞬殺する

アイラにこの世界のことを尋ねた次の日、そういえば世界のことに関してばかり聞いていてアイラのことを何も聞いていなかったことを思い出した。

 

「なあ、アイラってこの世界ではどのくらいの強さなんだ?」

 

 思い切って尋ねてみたところ、今更それを聞くのか、とこちらをジト目で見ながらも渋々といった感じで教えてくれた。曰く、”ウロボロスオンライン”を初めて数か月の初心者であったらしく、この世界に来たときはレベル40程度だったそうだ。

 元々上げにくかったレベルがこの世界に来てから余計に上げにくくなり、一年たった現在でも46なのだそうだ。

 それでも、この世界の住民がとってはかなり腕の立つアイラを周囲が放っておくはずがないと思うのだが、その辺りは何か事情があるのだろう。

 

「ところで、今日あたりこの森をでて冒険者になりたいんだが」

 

「この森を南に抜けた先に人間の城塞都市があるわ。そこに、大きな冒険者ギルドの支部があるはずよ」

 

 俺が聞きたいことを素早く教えてくれる辺り頭の回転も速いのだろう。それよりも、城塞都市とはどういうことなのだろう。この付近の国はすべて人間の国で同盟を組んでいると聞いたのだが、アイラ曰く、この森のせいらしい。この森は通称”深淵の森”。かなり強い魔物が多く生息する森らしく奥に行けば行くほど強い魔物がいるらしい。特に最深部に低位のドラゴンがいるため、この付近の国は常にこの森に注意を払っているらしい。

 

「なるほど。それで城塞都市ってわけか。でも、俺は未だあの”オーガ”以外魔物に遭遇していないんだが」

 

 俺がそういうと、呆れたような理不尽なものを見るような目で俺を指さしながら「アンタのせいだ!」と言われた。一体どういうことだ、と聞くと「まさか、無意識でやってたの!?」と驚愕しつつも説明してくれた。

 何でも俺はずっと強大な覇気のようなものを垂れ流しているらしく、それに魔物達が怯えて近づいて来ないらしい。俺はいつの間にそんなことをしていたのか。

 

「これって、どうやって制御するんだ?」

 

「集中してみれば感覚でわかると思うわ。私の時もそうだったから」

 

 最後にボソッと「私の場合こんなに出鱈目な強さの覇気ではなかったけど」と言ったようだが、残念ながら聞こえている。龍神を舐めるな、ということだ。

 

 取り合えず、俺が垂れ流している覇気に集中してみる。すると、何となくオーラのようなものが俺の体からあふれ出しているのが分かる。なるほど、覇気とはこれか。試しに俺の体の外に漏れている覇気を抑え込むイメージをすると自然と覇気が収まった。

 あまりに呆気なかったので何だか納得いかないが、イメージである程度操作ができることが分かった。

 

「言ったでしょ?やってみればわかるって。ちなみに、魔法やスキルも同じように制御できるから時間があったらやってみなさい」

 

 それだけ言うとアイラは南に向かって歩き出した。魔法が使えるという言葉に感動していた俺は、どんな魔法を試そうかなと考えながら慌ててアイラの後を追うのだった。

 

 

 

 丁度街道が見えてきたところで、何やら慌ただしく騎士団のような集団が俺達いや、アイラに向かってきた。騎士団を見つけたアイラはしまった、といった顔をしている。どうやら原因はアイラにあるらしい。

 取り合えず、事情を聞こうとしたときにはアイラはすでに騎士に向かって歩き出していた。

 

「ふんっ。やっと見つけたぞ小娘が。手間取らせおって、さっさと観念してその力を我らのために使うがいい。」

 

「そんなのお断りよ。私の力は私のもの。なんでアンタ達なんかのために使わなきゃならないのよ」

 

 やってきて開口一番に罵声と従属しろという命令をした騎士の言葉をアイラは真っ向から拒否した。あの騎士の鎧の紋章には見覚えがある。昨日、アイラに教えてもらったアルファーリア帝国の紋章だったはずだ。

 おそらく、これがアイラがあの森に一人できたわけだったのだろう。やはり、アイラのような力の持ち主を欲深い人間が放っておくはずがないのだ。さっきの言葉から考えるにアイラは従うのは嫌だが相手が国家であるために逃亡という選択肢を取っているのだろう。

 

「だが、いつまでもそうやって逃亡を続けるのも無理があるぞ? まあ、どのみち貴様はここで終わるのだからなっ!」

 

 何やら自身満々にそう言い切った隊長らしき男が後方へ「来るがいい!」と指示?を出した。騎士団の中から進み出てきたのは如何にも戦士といった風貌の男が二人。

 

「彼らこそ、我らが帝国が誇る最強の傭兵達だ。もはや貴様はここまでだ!」

 

 静かに剣を構える彼らを鑑定してみた結果、レベルは38。確かにこの世界では強いのかもしれないが、それでも最強と呼ばれるほど強いとは思えない。

 ということは、この貴族らしき隊長は騙された、もしくは乗せられたのだろう。この男のレベルが5の時点で前者の可能性が高いが……。というよりも、何故誰も俺について触れないのだろうか。先程からアイラの右後ろに待機しているにも関わらず俺に声をかける輩が見当たらない。

 おそらく、一般人の十人や二十人程度は犠牲にしても構わないと思っているのだろう。アイラを下種な目で、俺を蔑んだ目で見ている時点で想像に難くない。

 

 一方で流石のアイラも感覚で相手が自分に対し脅威となりえる実力者であることを感じているのだろう。わかりにくいが少し焦っている。流石に46レベルのアイラといえど38レベルが二人というのは厳しいのだろう。

 

 本当なら俺はこの戦いを傍観するつもりでいた。恐らく厳しい戦いになるだろうが、負けることはないだろうと思っているのとアイラの実力を測るいい機会だと思ったのだ。そう、隊長らしき男がアイラに対して好き勝手に言い始めるまでは。

 

「はははっっ!! もう貴様はおしまいだ。貴様が動けなくなった後、ズタズタにしてその上で我らが帝国の民の前で辱めを与えてから処刑してやる。上層部からの決定だ。おめでとう! とうとう貴様は帝国から指名手配を受けたのだよ!! 絶望しながら死ねっっ!!」

 

 見守るつもりだった。けど、泣きそうな顔をしているアイラを見て考えが変わった。こいつらには一度思い知らせてやらなければならない。誰の友人を馬鹿にしたのかを。誰を怒らせたのかを。

 

「さっきから聞いていれば好き勝手言いやがって。」

 

 アイラが驚いたような顔で、騎士たちが侮蔑を浮かべた顔でこちらに視線を向ける。

 

「なんだ、貴様は! 私は偉大なるアルファーリア帝国、ルベルド伯爵家の次期当主ヘルガ・ルベルドであるぞ! 平民風情が私に口出しするでない!」

 

 よほどどう見ても平民にしか見えない男に馬鹿にされたのが気に食わないのだろう。怒りを露わにしながら怒鳴り散らしている。だけど、怒っているのはこちらも同じだ。

 

「貴族風情が何を偉そうに。右も左もわからない場所で必死に生きようとしてるこの子を勝手に利用しようとした挙句、従わないから辱めて処刑だと? 舐めてるのか貴様ら。一応警告だけしておこう。この件から手を引き二度とこの子にかかわるな。さもなくば地獄を見ることになるぞ?『”あまり俺を怒らせるな”』」

 

 言いたいことは言った。最後に威圧を込めて警告もした。これで引かないのであれば、あるいは逆上するのであれば、心を折って撃退する。殺すのは無しだ。覚悟はできている。いつかはしなければならないと理解している。

 しかし、今彼らを殺すのは悪手だ。誰かに俺の恐怖を上層部に伝えてもらわなければならない。アイラを追えば地獄を見ると報告してもらわなければ、また新しい追手が来るだけだ。それには人数は多ければ多いほどいいのだ。

 

「ふ、ふざけるな!! へ、平民風情がっっっ! 殺せッッ!!」

 

 ヘルガが選んだのは考えうる中で最悪の選択肢だ。貴様らがそう来るのであれば俺も容赦はしない。本気で絶望を与えよう。二度とアイラに関わろう等と思わなくなるように。「どうして……」とこちらに視線を向けるアイラの頭に軽く手を置いて「任せておけ」と言って、俺は騎士達に向かって歩き始める。後ろから、小さく「ありがとう」という言葉が聞こえた。

 

 まず、真正面にいるヘルガに手をデコピンの形にして添え、最大限手加減をして放つ。それだけでヘルガは後方の騎士達を巻き込んで吹っ飛んでいく。頑張って手加減したので死んでいないはずだ。ルガルが吹っ飛ぶのを横に飛んで回避した傭兵二人が左右から挟み込むように迫ってくる。俺は軽く両手を突き出して振り下ろされた武器を掴み取りそのまま握り砕く。唖然としている二人の首に手刀を落とし気絶させる。残りは……と騎士達の方を見てみれば、先程ヘルガの服に設置した《下位魔法》電磁拡散(ボルトディスチャージ)が発動。電磁波がすべての騎士を巻き込んで荒れ狂い、やがて収まった時には全ての騎士が気絶していた。ここまで大体7秒だ。

 

「すごい……」

 

 アイラが目を丸くして驚いている。そこまで純粋に驚かれるとむず痒い気分になるが、ともあれアイラを狙って帝国騎士との戦い、いやこの世界初の戦いは戦いですらない一方的な蹂躙という形で幕を閉じた。後は、起き上がった彼らを脅は――説得してアイラから手を引いてもらうだけだ。

 

 俺は一体いつになったら冒険者になれるのだろうか……。




ようやく戦闘シーンを入れることが出来ました。
主人公最強の本領発揮です。今回は、殺さないことが主人公の中での条件だったので手間取っていますが、次からは恐らく開幕速攻魔法で全滅なんてのを予定しています。

次回、深淵の森から城塞都市に向かって魔物達の大暴走が……。


アイラのセリフがほとんどないですが許してください。

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