転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強? 作:lerum
森の中を少女が駆けていた。まるで何かから逃げるように、いや、実際に逃げているのだろう。その証拠に体のあちこちに大小様々な傷を負い息も絶え絶えな様子だ。何かから逃げるため、必死で走っていた少女だがとうとう限界が訪れる。足をもつれさせ体を投げ出すように転倒した。必死に立ち上がろうとしているのだが、足に力が入らないことに気が付いた少女は顔に絶望を浮かべた。
やがて、何かが少女に追いついた。それは、人間のような形をしているが人の2、3倍の大きさがある。それは、一般的には”オーガ”と呼ばれる魔物だ。魔物とは、体内に魔石を持つ異形の化け物達の総称だ。この世界には龍なども存在するが、魔石の有無で魔物かそうでないかが判断される。
少女は、どうしてこうなったんだろう、と昨日のことを思い出していた。昨日、少女は偶然立ち寄った村で村人たちが”オーガ”が出たと話していたのを小耳にはさんだのだ。近頃、レベルが上がりにくくなってきた少女にとってそれは降ってわいた幸運であった。
現在、少女のレベルは丁度上がりにくいレベルになっていた。勝てる魔物を狙うと弱すぎ、かといって上を狙うと強すぎる。要は中途半端なレベルになってしまったのだ。
そんな中”オーガ”という魔物は少女がギリギリ勝てるだろうという相手であり、また経験値も割と美味しいのだ。
いつもの少女なら、情報収集をして対策を立ててから討伐に向かうのだが、この時は誰かに取られてしまう前に倒さなければ、と焦っていた。
そう、村人たちが通常の”オーガ”とは少し違ったと言っていたのを聞き逃してしまったのだ。その結果、情報収集を怠り絶体絶命の状況に陥ってしまったのだ。
理不尽な目に合い、それでも懸命に生きてきた自分に与えられるものがこれなのか、と少女は世界に怒りを覚えずにはいられなかった。
ある日の朝、目が覚めた時知らない場所でゲームのキャラになっていた絶望を少女は忘れていない。突然家族から引き離されて、知らない場所に放り出され、それでも帰る方法を探そうと必死に足掻いてきたのだ。だから――
「誰か、助けてよぉ」
死を目前にして思わずこぼしてしまった弱音を誰が責められようか。迫りくる恐怖に目を閉じて必死に耐える。もうダメだと思ったその時
「助けてって言ってる女の子を見捨てるのは目覚めが悪いからな。感謝しろよ」
ふと聞こえた声に何故か、あぁ、助かったんだ、と安堵した。保っていた緊張が途切れ、意識を保っていられなくなり視界が暗転した。意識を失う直前、吹っ飛んでいく”オーガ”が見えた気がした。
「さて、この女の子どうしようかな」
この女の子、とは先程俺が助けた少女のことだ。森の出口を探索中、何やら”オーガ”のような生物に襲われていたところに偶然にも遭遇した。
この世界のことがわからない内はどちらに正当性があるかわからないため見捨てるつもりだったのだが、この”オフィス”のハイスペックな五感が少女の”助けて”という言葉を拾ってしまったのだ。流石に見捨てるのが忍びなくなってしまったため、取り合えず”オーガ”を追い払うという妥協案をとることにした。
それにしてもこの女の子見たところ14、5歳ほどに見える。そんな女の子が武器やら鎧やらを身に纏って戦っているとなると、この世界の文化はやはりテンプレの”中世ヨーロッパ”あたりなのだろうか。
先程の”オーガ”も見る限り魔石をドロップする”ウロボロスオンライン”の”オーガ”と同じに見えたが……。まあ、詳しいことは目を覚ましたこの少女に聞くとしよう。
取り合えず、傷の治療はしたのだが、失った血液までは戻すことができない。
いや、できるのかもしれないがこの世界に来たばかりの俺には出来ないのだ。かなりの出血だったので、命に別状はないだろうが、目を覚ますのには時間がかかるだろう。今のうちにそこらへんでとれた植物を使って軽い食事でも作っておこう。ん? その辺の植物を使って大丈夫なのかって? しっかり”鑑定”を使って選別しているため問題はない。
―”鑑定”『鑑定したものをデータ化して詳細を表示する』
なんともありきたりな効果だ。ゲーム時代あまり役に立ったことがなかったスキルではあるが、この世界では重宝しそうである。ちなみに、生産系の方々はゲーム時代、かなりこのスキルを重宝していたそうだ。
何故か使えたアイテムボックスに、これまた何故か入っていた卵と小麦粉で作った衣をつけて、油で揚げて簡易的な天ぷらを作っていく。”アイテムボックス”とは”ウロボロスオンライン”において《神級魔法》とされている無駄にレアな魔法である。
そもそも、この魔法は異空間に倉庫を作ることができるだけにも関わらず、入手難易度が途轍もなく高いのだ。
それこそ、イベントボスをソロで討伐することが条件となっているほどだ。その上、レアドロップ扱いされている。そのため、この魔法を持っているものは、俺を除けば両手の指の数もいないだろう。
ちなみに、《神級魔法》とは、魔法のランクのようなものである。魔法には、《神級魔法》のように幾つかにランク分けがされている。下から順に、《下位魔法》、《中位魔法》、《上位魔法》、《最上位魔法》、《神級魔法》、《世界級魔法》となっている。《世界級魔法》の習得には”アジ・ダハーカ”並みのイベントボスを倒さなければならないと言えば《神級魔法》のすごさが伝わりやすいのではないだろうか。ともかく、無駄にレアなのである。
この魔法を習得するためだけにイベントボスの仕事を放棄して、運営から特別に参加を許可された無限リポップのイベントボスを一日100体、一週間ほど狩り続けていたものだ。思い出しただけで思わず遠い目をしてしまった。と、懐かしい事を思い出している間に天ぷらが完成したようだ。
それと、同時に隣の少女が起きる気配がした。そちらに目を向けると戸惑った様子で周囲を見回していた少女が、警戒心たっぷりの目でこちらを睨んでくる。どうやって、警戒を解こうかな、と考え取り合えず挨拶と共に天ぷらを差し出してみる。
「初めまして。いきなりで何だけど、天ぷら食べる?」
「そんな怪しいもの誰が……って”
何故、俺のことを知っているのかとか、その不名誉な名前で呼ばれるのは……等言いたいことはあるが、会話のきっかけがつかめそうで何よりである。
3人称視点に挑戦してみました。かなり拙い文章ではあると思いますがご容赦ください。
次回、この世界についての説明・・・になるといいなぁ
今更ですが、見切り発車なので設定がかなり曖昧になっています。
こんな設定はどうだろうか、等の感想を頂ければ幸いです