転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強?   作:lerum

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無限の龍神 あれ? 俺の出番は?

 レベル上げ。これを嫌がる人は多いと思う。何故なら、レベル上げというものは総じてワンパターンだからだ。経験値効率のいいダンジョンを周回する、経験値が多くもらえる魔物を狩る、などがいい例だ。

 どちらをとったとしてもい、同じことを延々と繰り返す、という一点において変わりはないだろう。そして、それは目標が高くなれば高くなるほど顕著になる。

 これは、龍といえど中身は人間のつもりでいる俺にも当てはまるわけである。

 

「飽きたな」

「ハァッ!? アンタは何もしてないでしょうがああ!!」

 

 つい思ったことを口に出してしまった。まあ、それも仕方だないだろう。なにせ、黒い奴を狩り始めてから既に3時間。俺は、ただでさえ飽きやすいのだ。それが、好きでもない黒い奴を狩り続ければこうなるというもの。そう、俺は悪くない。アイラが何か言っているようだが、俺は知らん!

 

「はぁ、もういいわよ」

「ん? それは困るな。レベルに関しては、割と本気で上げないとまずいんだが」

「そっちじゃないわよ! はぁ……。で、どうするつもり?」

 

 投げやりに言って肩を落とすレイラ。一体どうしたのやら……。

 それにしても、どうするかといわれても困るというのが本音だ。正直、この世界での情報が圧倒的に足りていない現時点において、この黒い奴が一番経験値効率がいいのだが……。

 

「ん? そういえば、ダンジョンって最下層になにかいなかったっけ?」

「言われてみれば何かいたような」

 

 現在のアイラ達のレベルは80。元々、アイラが40程度、セナが20程度だったことを考えると、かなり上昇している。正直、相手が並みの相手ならこれで十分だ。だが、今回の相手の推定レベルは130オーバーだ。レベル80では心もとない。

 しかし、このまま黒い奴を狩り続けるわけにもいかない。レベル80からは、レベルがかなり上がりにくくなってくる。このまま狩り続けていたら一体何日かかることやら。

 となってくると、他の方法を探さなければならないのだが……。ダンジョンの最下層にいるもの。定番通りだとするならば、ボス、宝物、転移魔法陣、などがあると思うのだが。

 

「ま、行ってみりゃわかるか」

「そうね、そうしましょ。もうあいつら狩るのは御免よ」

「決まりだな。ところで、セナはどうした?」

 

 おい、何故微妙な顔をして目を逸らす。

 

「お、いたいた。おーい、セ……。なぁんだあれ?」

「黒い奴がよほど衝撃的だったみたいね、白目剥いて気を失っちゃったわ」

 

 え……。いやいや、待て待て。いくら何でもメンタル弱すぎるだろう。パニックになって魔道具を暴発させるとかなら予想してたが、まさか白目剥いて気絶するなんて思わなかった。

 

「取り合えず抱えて移動するか」

「そ、そうね」

 

 誰か、この微妙な空気を払拭してくれないだろうか。

 

 

 

 

 

 道中、セナが目を覚まして発狂、なんてトラブルがあったりしたものの、俺たちは無事に百層に到達した。100層へと通じる階段を進み、ダンジョンの終着点。そこは、巨大なホールのような形状をしていた。

 

「なんか、如何にもって感じだな」

「ボスが出てきて、ハイさよならってパターンよね」

「小さい……黒い……すばしっこい……うぅ」

 

 アイラと俺は互いに疑問符を浮かべる。なんかお互いのイメージが違う。俺は、ボスが出てきてイベント発生っていうのを想定しているのだが、アイラは一体何を思い浮かべたのやら。

 

「セナ、大丈夫か?」

「うぅ……だ、大丈夫です――ヒッ」

 

 どうみても大丈夫ではなさそうだ。未だにちらつく黒い奴の幻覚に怯えているようだし。まあ、俺にはどうしようもないし、仮にも俺の弟子であるならば、その程度は自分でどうにかしてもらわねば。

 

「ん……? 地震か? 揺れているような気がするが」

「地震でもないし、気のせいでもなさそうね。あそこに魔法陣があるわ」

 

 ホールの中心に表れた魔法陣。どうやら、あれの起動の余波で揺れているようだ。余波で揺れるほどの何かが召喚されようとしている。

 

「って、ヤバくね?」

「今更過ぎるわよ。それに――退路は閉ざされたわ」

 

 アイラに言われて振り返ってみれば、そこにあるのは壁。先程までは、確かに存在した階段が跡形もない。そうこうしている内に、魔法陣の輝きは強くなるばかり。揺れもそれに応じて強さを増していく。すでに、天井から落石があるレベルだ。

 

「これ、普通ならボスが出る前に落石で死ぬよな」

「まあ、アンタは普通じゃないんだし気にする必要ないんじゃない?」

「ナチュラルにディスるな。俺だって気にしてるんだ」

「師匠ぉ」

 

 一応、アイラ達のことは結界で囲ってあるが、落ちてくる岩の迫力までがなくなるわけではない。アイラは動じていないようだが、セナは岩が結界に当たって砕けるたびに悲鳴を上げている。ボスが出てくるのはこれからだというのに、こんな状況で大丈夫なのだろうか。下手をすると、ボスが出てくる前にダンジョンが崩れそうだ。

 

「っと、ようやくお出ましか」

「戦闘はアンタに任せるわよ。私達じゃ足手まといになる」

「分かってるよ。そこで待っててくれればいい。一瞬で終わらせる」

「し、師匠。頑張ってくださ――ヒッ」

 

 悲鳴を上げながら応援されてもなんだかな。返答に困った俺は苦笑いを浮かべる。俺が前に進み出るのと、魔法陣から何かが召喚されるのは同時だった。魔法陣が一際強く光り輝き、空間を光で染め上げる。

 思わず閉じた目を開けてみれば、そこにいたのは黒。

 

「あれ……どっかで見たことあるような気がするな」

 

 激しい既視感に見舞われながらも、きっと違うものであるはずだ、と淡い希望を抱いてよく見てみる。

 

「…………。え、なにあれ。デカすぎだろ、おい。流石に引くわ」

 

 何度見ても、どんな角度から見ても、どう見ても、そこにいるのは空間を埋め尽くすほどバカでかいだけの例の黒い奴。ここまで大きいとむしろ凄い。キモイを通り越して凄い。

 

「あれ? 今悲鳴が聞こえたような。ってアイラ達は大丈夫か?」

 

 俺は全く問題ないが、アイラ達にとってはトラウマにも等しいはずだ。特に、セナは気を失うほどだ。思わず心配になって、振り向いた俺の顔の横をかすめる二本の極光。

 

「え?」

 

 背後から凄まじい爆音と風圧を受けた俺は、再び振り返って唖然とした。地面には巨大なクレーターができ、あれだけ巨大な存在感があった黒い奴が跡形もなくなっていた。倒した、撃破した、勝利した、なんてものじゃない。文字通り、跡形もなく消し飛んでいた。

 あれは、俺が渡した魔道具のリミッターを解除した状態で、魔道具を犠牲に放つ使い捨ての極光。つまり、あれを放ったのはアイラとセナであるわけであって、リミッターを解除したということは、その極光によって生じる衝撃も凄まじい物なのであって。

 

「見事に気絶してるな、アイラ達。相打ちとか、俺が前に出た意味は……」

 

 片方が消し飛び、片方が気絶で済んでいるので、相打ちとは少し違うが。ともかく、俺が前にでた意味はなかったわけであって。

 

「なんか、カッコ付かないよなぁ」

 

 以前にも感じたことがあるような静寂の中、俺の呟きが響き渡るのであった。




最後のパターン。あれ? 何か見たことあるような……。

締めくくり方が思いつきませんでした。許してください。

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