転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強? 作:lerum
鳴り響く思わず耳を塞いでしまいたくなるような耳障りな音。突き刺さる視線と殺気。グラつく大地。そして――俺の中で何かがキレる音がした。
「いいぜ、いいぜ。そんなに死にたけりゃ全員ぶち殺してやる! テメェらそこになおりやがれぇっ!!」
堪忍袋の緒が切れた俺は怒声を上げながら周囲を包囲しているエルフたちに殴りかかるのだった。
そもそも、どうしてこうなったのか。
あれは、照り付ける太陽、吹き付ける風が心地いい馬車での移動中の事だった。俺たちは馬車に取り付けられた『錬成』の魔法陣で地面を平らに均しながら、木々が立ち並ぶ道を馬車で通っていた。
ところが、突如進行方向の地面が隆起。はっ? と俺達が唖然としている間に気が付けば周囲を何者かに囲まれていた。何があった! と周囲に視線を巡らせれば木々の間から見える長い耳。流石にここまで早くやってくるとは思っていたかった俺は暫し硬直。その間にエルフたちが五感を惑わせる魔法を行使。口々に「姫様っ!」と言いながらセナを奪還しようと迫ってくる。事情も聞かずに、だの、この馬車には無関係な人が、だの言いたいことは色々あったが、その前に俺の堪忍袋の緒がぶち切れた。その結果が、冒頭での惨状である。
数分後、体のあちこちを痛々しく腫らしたエルフたちが泣きながら縮こまっていた。
あの後、ブチ切れた俺はエルフたちに殴りかかり、泣いて謝るまでボコボコにした。そのため、そこかしこから鬼だの悪魔だの魔王様だのと聞こえてくる。取り合えず、事情を聞かないことには始まらないので、話を聞こうと近づけば情けない声を上げながら大声で泣きじゃくるエルフたち。あれ? 少しやりすぎたかな? と思いつつも俺は一時間ほどかけて事態を収拾するのだった。
俺は、泣き止んだエルフの中でも一際豪華な装備を身に着けた金髪のエルフの少女に話を聞くことにした。
「で、なんで襲ってきたわけ? いくらセナがいるといっても、あんまりじゃないか? ただの旅仲間だった可能性もあるわけだし、何よりセナの新しくできた友達かもしれないし……」
「申し訳ありません、魔王様。セナ様は少々あれなところがありますから、大勢の女性を馬車に乗せた馬車に搭乗していたのを見て、奴隷商にでも騙されているのだと勘違いしてしまいました」
魔王様って何だ? まさか、俺の事か? いやいや、そんなはずは……。
「あぁ、それはすまない。ちょっと盗賊団を壊滅させた後でな、街まで送っていくところだったんだよ。そうかぁ、それなら仕方がない……のか?」
うん? 何か流されそうになってる気がするぞ。そうだよ、奴隷商襲ったとして奴隷をどうするつもりだったんだ? こいつら。
「一応聞いておくけどさ。もし、俺が奴隷商だったとしてあの女の人たちはどうするつもりだったんだ?」
すると、なぜかドヤ顔をしながら自慢げにこう語った。
「我らは誇り高きエルフ。人間の奴隷などに興味はありません」
「なるほど。ギルティだお前ら。大体、俺にボコされて泣きじゃくってたくせに何が誇り高いだ。つまらん冗談を言う暇があるのなら撤収の準備をしろ。そして、今から俺が言うことをしっかりと国に伝えろ。『セナに弟子入りを志願されたので、弟子にした。セナは俺が責任をもって面倒を見るので、セナが自分から会いに行くまで、今後一切関わるな』だ。いいな? しっかり伝えろよ?」
「な、なにをっ! 姫様は我らと共にっ!」
「ハッ! 本人の意思も聞かずに何を勝手なことを。とにかく、こいつは俺が預かる。ちゃんと伝えろよ? わかったな? わかったらさっさと帰れ」
威圧と怒気、そして少しの殺気を放ってやれば、途端ガクブルしながら撤退し始めるエルフたち。残念ながら相手の話を聞いてやる必要はない。本人の意思を尊重することすらしない者たちの言葉など俺には響いて来ないからだ。まあ、これで逆上して襲ってくるならば、一度国ごと負かしてやろう。そんなことを考えながら、俺は馬車にいる女性たちの様子を見に行く。
そこには、既にアイラにによって落ち着かされた女性たちが。さすが、アイラは仕事が早い。何があったのか聞かれて「エルフがな……」と言うと静かに手を合わせていたアイラ。あれは俺にドンマイって意味でやったんだよな? そうだよな? 何で「エルフの人たちご愁傷様」とかいってるわけ? 俺ってそんなに悪人に見えるのか? アイラに尋ねてみたら「アンタの普段の行いが悪い」と一蹴されてしまった。何だか悪人扱いされた俺は、馬車を動かすためにトボトボと御者席に向かうのだった。
これ以上絡まれるのは御免だと、俺が馬車の速度を上げ始めてから数時間。ようやく街が見えてきた。高く分厚い、どちらかというと閉じ込めるために作られたような壁に囲まれた街。ここが迷宮都市”アリン”。
以前、あの壁についてアイラに聞いてみたところ、ダンジョンのモンスターが地上に出てきたとしても対処できるように、と作られたそうだ。現実になったダンジョンならそんなこともあり得るのか、と思いながら聞いていたものだ。
さて、ここに来た目的はダンジョンの探索ではあるが、その前に盗賊のアジトから連れてきた女性たちを衛兵か何かに引き渡すのが先だろう。というわけで、取り合えず、街に入る人たちの横を通り抜けて衛兵の元へ。
すると、列を無視している俺たちを見つけた衛兵たちが向こうから寄ってくる。そう、これが狙いだ。いつまでもこの馬車の中にいてもらうのは可哀そうだからな。
まずは、俺たちを止めに来た衛兵に二つの馬車の中を見せ、事情を説明する。事情を聞いた衛兵は上司を呼ぶためにすっ飛んで行った。後はアイラの仕事だ。俺はというと新しい魔法の使い方を考えて遊んでいたりする。
先程の衛兵が上司を連れて戻ってきて、アイラと会話を始めてから数分。事情を確認したその衛兵は俺たちを街へ入れ女性たちを素早く保護し、俺たちは事情を聞くために別の場所に通されることになった。なかなか判断の早い男だ。衛兵とは素行が悪いのがテンプレ(俺の中では)なので意外だった。
しかし、どうも宿らしきところに通された俺たちに言い放った衛兵の言葉に、俺たちは暫し硬直することとなった。
「まずは、ようこそ迷宮都市”アリン”へ。本当ならば盗賊に掛けられていた懸賞金を渡すのだが、たまたまこの国に来ていた”メセル王国”の国王陛下が、君たちに直接お礼を言いたいと仰せだ。すまないが少しつきあってもらうぞ」
何故、一国の王がアルファーリア帝国がダンジョンを管理しているこの街に来ているのだとか、どうして俺たちにお礼などするのか、と色々思うところはあるが。
「やっぱ、俺って呪われてるんじゃないですかねぇ……」
そんな俺の呟きは、街の喧騒にかき消されるのだった。
情景描写や心理描写を使おうと頑張ってみた結果、あまりうまく書けていません(元から)。
次回、国王様と対談?