転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強?   作:lerum

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ちょっと短めです。


無限の龍神 巻き込まれる?

 突然の弟子入りに唖然としていた俺だったが、だんだん涙目になってきている少女を見て慌てて再起動した。

 

「いや、ちょっと驚いて固まってただけだからっ! 無視とかそんなんじゃないから! ほら、涙目になるなッ、頼むから!」

 

 女の子の弟子入りを無視して泣かせたなどという話がアイラに知られでもしたら大変だ。とにかく、速攻でこの女の子をどうにかしなければ。

 

「と、取り合えず名前を教えてほしいなぁって思ったり?」

 

 俺がそういうと、未だに涙目ではあるもののしっかりと自己紹介をしてくれる少女。

 

「わ、私はセナ・ファースティスです。……グスッッ」

 

「ん? ファースティスってどっかで聞いたことがあるような……。俺はオフィスだ。よろしく、って何で涙目っ!? えっ、もしかしてさっきの間が悪かったの!? いやっ、ごめんって! ちょっと考え事してただけだからっ! すいませんでしたッ!!!」

 

 聞き覚えのある名前があったので、思い出そうとしていたらセナが涙目になっていた。いや、ホント頼むからッ! メンタル弱すぎだろっ!? 頼むから泣かないでください! そんな俺の願いは届かず、結局泣き出してしまったセナの声を聞いて駆け付けたアイラから事情も聞かれずにぶっ叩かれる俺であった。最近、俺の扱い酷くねェ? 

 

 

 

 

 暫してんわやんわに陥った俺達であったが、このままでは埒が明かないということで、馬車を操るために御者席に座る俺の隣にセナを座らせ、移動しながら詳しい話を聞くことになった。

 

 さあ、気を取り直して出発だ! という時に、他の人たちよりも早い段階で落ち着いていた女性から「あ、あの……。盗賊達はどうするのですか?」と聞かれるまで盗賊達のことをすっかり忘れていた俺は、慌ててもう一台馬車ゴーレムを作り、そこに盗賊達を押し込めて遠隔で操作することになったのだった。……次こそ出発だ! 三度目の正直というわけで、俺たちは漸く出発することが出来るのであった。

 

 

 

 

 さて、俺は先程言った通りセナの話を聞くことになったのだが、事が大きすぎて、正直俺には何が何やら、という有様である。

 

 何があったかというと、俺がセナの”ファースティス”という聞き覚えのある名前について尋ねたところ、返ってきた答えに俺は頭を抱える羽目になったのだ。なんと、セナはエルフの国”ファースティス”の王族であることが判明した。なんじゃそりゃッ! と心の中で絶叫した俺はきっと悪くない。

 

 エルフの国の王族に人間の盗賊が手を出した。

 

 どう考えてもまずい状況である。当時、エルフの迫害を行ってきた人間たちであったが、エルフたちが結束し、国を作り対抗し始めてきたことによって戦況が不利になりつつあった。だが、エルフたちもこれ以上犠牲が出るのは望んでいない。両国の利害が一致したことによって、一応、不可侵条約が人間とエルフの間で結ばれている。表向きは……ではあるが。

 

 ともかく、そんな状態でエルフの王族に手を出したなどということが明るみに出た場合、人間の過激派が動き始めるだろう。同様に、エルフたちの中でも敵討ちや復讐、そして報復を望む者たちが動き出しかねない。エルフとは仲間意識が強い種族と聞いている。家ではなく国単位で家族なのだとか。故に、彼らが怒り狂うことが容易に想像できる。

 

 そもそも、どうして盗賊に捕まったのか。更に、詳しい話を聞いてみたところ、セナは昔から人間の文化に多大な興味を持っていたそうだ。それを学ぶため、何度も両親に人間の街を見てみたいと頼み込んでいたのだが、人間に迫害された経験を持つ彼らは、娘に危険が及ぶことを考えてそれを許さなかった。

 

 しかし、セナがどうしても行きたい、と子供の頃から言い続けた結果、彼女の両親がとうとう折れたのだ。護衛をつけ、正体を隠して、危険なことがあれば即座に帰ってくることを条件に、人間の街に行くことを許可した。

 

 だが、このお転婆姫は里を抜けて、人間の街に向かう途中でいきなりやらかしたらしいのだ。一刻も早く街が見たいから、と言って単身で飛び出した。子供といえど、エルフの王族。魔法までもを使用したセナに追いつける者は護衛の中にいなかった。

 

 その結果、魔力が無くなり、足が止まったセナは、たまたまその周囲を歩いていた盗賊達に捕まったらしい。本当に、なんじゃそりゃッ! である。テヘッ、と可愛く舌を出して笑うお転婆姫に、俺はチョップを落としつつ、セナをどうするのかを本格的に考え始めるのだった。因みに、弟子入りした理由については「運命を感じたからです!」などとふざけたことを抜かしていたので、もう一発チョップを落としておいた。

 

 ホント、どうするよコレェ。

 

 

 

 

 俺一人では判断することが出来なかったので、アイラに相談することに。すると、驚くべき答えが返ってきた。

 

「悩むくらいなら、弟子にしちゃえばいいじゃない」

 

 あまりにあっけらかんと言い放つアイラに怪訝そうな顔を向けたのだが、続く言葉で納得してしまった。

 

「その子を放っておいたら、その子が人間の街を見れなくなる。人間たちにとっては、負け戦が始まる。エルフにとっては、その子が心配。なら、アンタの傍にいた方が都合がいいじゃない。アンタならエルフを止められるし、その子も人間の街を見られる。人間だって、冒険者最強の”賢者”様には手出ししないだろうし、Win-Win-Winよ」

 

「いや、待て。確かにそうだが、待て。Win-win-winって何だ! いや、想像は出来るが……。ってそうじゃないッ! それ以上に、その”賢者”って何だ!?」

 

 アイラの口ぶりからして、”賢者”というのは俺のことのようだが、身に覚えがないぞ。確かに、街では賢者と呼ばれたりしていたが……。まさか、あのギルドマスターが何かしたのか?

 

「有名な冒険者には大抵二つ名が付くものよ。アンタの場合は”賢者”。街の連中がそう呼んでいたことが広まって、そのまま定着したみたいね」

 

「なんてはた迷惑な……。それより、それでいいのか? 確かに、都合がいいのは事実だが、そこにお前の事情が含まれていないだろう?」

 

 アイラは確かに最善に近い答えを提示した。だが、最善ではない。俺にとっての最善はアイラが満足することだ。ん? 普段の言動を見ていると信じられないって? 日本にはいい言葉がある。是非、覚えておくと言い。『それはそれ、これはこれ』

 

「私にとっても得はあるわよ。旅の仲間が増えるだけで十分だわ。男と二人、ましてはアンタと二人だと色々と疲れるのよ……。」

 

 思い当たる節がないなぁ。ハッハッハ! まあ、とにかくアイラがそれでいいなら良いというわけで。

 

「というわけで、セナ。お前は今日から俺の弟子だ。自分から言ったんだし、まさか拒否はしないよな?」

 

 先程から黙り込んでいるセナに、俺は確認の意味で言ったのだが。何故、ガクブルしながら凄い勢いで頷きだすのか。あれか? 拒否しないよな?(脅迫)に聞こえたのかな? おかしいなぁ、笑顔を心掛けたはずなのに。

 

 セナの様子をみて、アイラにボソッと「ホント、相変わらずね」と言われてしまった。失敬な。反応が面白いから弄ってみただけだ。決してさっきの仕返しではない。ないったらないのだっ! 

 

 アイラから呆れた目を向けられる俺は、きっとイイ笑顔をしていたのだろう。




更新が一日開いてしまい、申し訳ありません。


次回:オフィス、ブチ切れる

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