転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強? 作:lerum
アイラと共に街を出発してからはや数時間、俺たちは現在森にいた。そういえば、アイラについてきている俺だが、まだ目的地を聞いていなかったことを思い出した。
「それで? 何処に向かって歩いてるんだ?」
アイラが心底呆れた顔でこちらに顔を向けた。一体何だというのだろうか。たかが目的地を聞くことを忘れていただけだというのに。
「今更聞くのね。ホント、相変わらず何処か抜けてるわよね。」
「失敬な。あれだ、俺の中では旅というのはだな……」
「はいはい、言い訳は結構」
ぐぬぬ、何だかアイラが俺の扱いを心得始めている。これは良くない傾向だ。そのうち何を言っても「はいはい」と流されるようになってしまう。どうしたものか……。
「何ブツブツ言ってるのよ。って話が脱線しすぎよ」
「おっと、そうだった。それで、目的地は?」
「ここから南東に行くと迷宮都市があるのよ。そこに向かってるわ。異存はない?」
「今更異存があるかないかを聞かれても仕方がないんだが……。それより、迷宮都市ってなんだ?どっかのラノベで聞いたことがあるが似たような感じか?」
確か、ダンジョンの上に街が作られていてそこに住む冒険者達が毎日ダンジョンに潜って金銭を稼いでいるんだったか。
「まあ、間違ってはいないわね。ダンジョンはそもそもゲームと同じく地下に作られるから、その上に作られた街が迷宮都市ね。一応、今見つかっている迷宮はすべて何処かの国が管理下に置いてるわね。もっとも、恐らく100層はあるだろうと言われている内の30階層が最高到達地点だから、形だけの管理になっているわね。ゲームと同じく下に潜れば潜るほど難易度が上がっていって、魔物も強いものが出てくるわ。その分、ドロップする魔石やドロップアイテムもレアになっていくみたいね。因みに、宝箱も似たような仕組みになっているらしいけど」
なるほど。概ねゲーム通りというわけだ。しかし、30階層までしかクリア出来ていないとは……。そういえば、国の管理下に置かれていると言っていたが、そのダンジョンはどこの管理下にあるのだろうか。
「そのダンジョンってどこの国の管理下に置かれてるんだ?」
「……残念ながらアルファーリア帝国よ。手に入れた魔石やドロップアイテムから税金として何割かを徴収してるみたいね。質のいいものは優先的に取られるみたい。ホント、質が悪いわ」
なんと、アルファーリア帝国だったか。流石は人間族最大の国、やることが狡い。主な収入源はその管理下に置いている幾つかのダンジョンの出土品を売り払って得ているのかもな。
「まあ、直接介入してくるわけじゃないんだしそこまで気にすることないんじゃないか?」
「私が憂鬱になってるの半分はアンタのせいよ。行商人の人に話を聞いてみたら、アンタの話が世界中に広まってるらしいじゃない。おまけに、顔や服装。挙句の果てには、旅仲間として私まで広められている始末。絶対に騒ぎになるわ。どう落とし前をつける気?」
「そんなに怖い顔で睨まれると折角の可愛い顔が台無しだぞ……? いや、冗談だからっ。だからその振り上げた手を下ろせッ! 危ないから。大体俺が広めたわけじゃないんだから俺は関係ないだろ!」
「自覚無しかこのヤロー! 自分がしたことを思い返してみなさいッ!!」
結局手を下ろさせることに失敗した一撃くらう羽目になった。まあ
「痛くも痒くもないんだがな。ハッハッハ」
ついでにもう一発殴られた。俺がしたことを思い出してみろと言われても……。帝国の貴族をボコして国に送り返したこと、可哀そうな悪魔くんを塵にしたこと、”元プレイヤー”を倒すついでに”
さて、目的地ことを教えてもらったことだし、魔法で一気に街まで行こう、とアイラに声を掛けようとした時。
「ギャッハッハ。丸腰のカモ発見ッ! 女の方は結構上玉じゃねぇか!! ギャッハッハハ! こりゃついてるぜ!!」
「死にたくなけりゃ荷物と女を置いていけ!」
「ヘッヘヘ! さっきよりも美味い獲物だぜッ!」
どっからどう見てもテンプレな盗賊らしき男達が俺たちを囲むように現れた。うん、俺のいないところで誰を襲おうと知ったことではないが、アイラにその気色悪い目を向けるなど万死に値する。というわけで、開幕速攻。
「テンプレご苦労様。《下位魔法》
頭上に魔法陣を展開。同時に俺とアイラを結界で覆う。一拍後、魔法陣が激しく放電を開始。全方位に向けて電磁波が拡散し放電が終わった時には、盗賊たちは一人残らず黒焦げになって気絶していた。これこそが俺が検証していた魔法のイメージだ。にしても、これ途轍もなく便利だな。時間があればもっとイメージの練習をしておこう。
「アンタ、容赦ないわね。見てるこっちが可哀そうになってくるわ」
「知らんな。俺の邪魔をするからこうなるのだ。――運が悪かったと思って諦めてもらおう」
俺がそういうと、アイラは小さくため息をついてやはりこちらに呆れたような目を向けてくる。
「ところで、こいつらどうするのよ?放置でもするの?」
「いや、街まで持っていこう。お金には困ってないがここに置いておいても邪魔になるだけだろう。」
「確かに、お金には困ってないわね。例の”
そう、実は、俺達金持ちになっている。魔物達を討伐した後、成功報酬として一生遊んで暮らせるくらいの金を貰ったのだ。まあ、低位のドラゴンやらがわんさかいたから当然と言えば当然だ。
「さて、取り合えずアジトの場所を調べるとするか」
「調べるってどうするのよ?」
「こうするんだよ」
盗賊の頭に手をかざし魔法を行使。
―――《最上位魔法》
「えっと……何? その魔法……」
アイラが顔引き攣らせながら尋ねてきた。何と言われても。
「そうだな……。簡単に言うとすると記憶を覗ける魔法かな?」
「それ、私に使ったら許さないから」
「分かってるって。当たり前だろ? 何をそんなに警戒してるんだ? もしかして、フリだった?」
「フンッッ!!」
痛いなぁ。ちょっとした冗談だったのに、何も本気で殴ることはない俺は思う。
「で、結局何のために記憶を覗いたわけ?」
「ん? ああ、あいつらの拠点の場所を突き止めようと思ってな。これだけの数がいればアジトくらいあるだろうし。それに、あいつらさっきよりとか言ってたからな。俺達より前に通りかかった人が捕まったんじゃないかと思ってな。」
「意外ね。アンタなら関係ないって言いそうだけど」
アイラにまでそう思われているのか。だが、これから少しずつ変わっていかないといけないのだ。
「ここで見捨てたらあれだしなぁ。それに、約束したからな」
「約束?」
「何でもない。ほら、早くいくぞ」
「あ、ちょっと。待ちなさいよ!」
俺は誤魔化すために覗き見た盗賊達の拠点に早足で向かうのだった。
「ぐあぁッ!」
「よし、これで最後っと。そっちはどうだ?」
「こっちも終わったわよ。ただ――」
「ああ、ここから街まで遠いからな。せめて迷宮都市までは送っていくさ」
あの後、盗賊達の拠点に乗り込んだ俺たちは速攻で制圧を開始。途中で捕まっている女の人達を見つけたので、その人たちの開放をアイラに任せて、俺は先程まで拠点を制圧するために動いていたのだった。丁度、先程倒した敵が最後だったというわけだ。
肝心の女の人達だが、幸いまだ誰も手を付けられていなかったようで、全員無傷だ。ただ、捕まった時のことを思い出しては震えているのを見る限り、どうやらトラウマになってしまったようだ。俺にトラウマを解消するカウンセリング術などはないため、せめて街まで送ろうと思ったわけだ。方法については簡単だ。職業《錬金術師》の基礎にして最強のスキル。
―――《錬成》
これによって、岩でゴーレムを作り、樹を錬成して作った馬車を引かせるのだ。その場で作れる簡易的な馬車というわけだ。得体の知れない者が作った得体の知れない物に乗る恐怖などはあるだろうが、それはアイラに任せるとする。カウンセリングなど専門外もいいところだ。
さて、ほとんどの女性を馬車に乗せて最後にこのフードを被った女の子を乗せれば全員だ。アイラには既に乗ってもらってカウンセリングを開始してもらっている。流石はアイラ、優秀である。いつまでもここにいるわけにはいかないので、そろそろ乗るように促そうとしたところで予想外の言葉に俺は固まってしまった。
「あ、あのッ! 弟子にしてくださいッ!!」
そういって頭を下げる少女の取れてしまったフードから見えたものはエルフの特徴でもある長い耳だった。
「エルフ? え? 何故に弟子?」
困惑している俺の疑問に答えてくれるものは存在しなかった。
助けてもらった主人公に惚れるというのは、ありきたりだと思ったので、弟子にしてみました。(大して変わらない気がする)
会話するシーンを書くのが難しいです
次回、迷宮都市に到着したいなぁ