転生したら無限の龍神。 あれ?もしかして俺って最強?   作:lerum

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無限の龍神 漸く旅に出る

俺は、俺の冒険者ランクがSSSになったという話をアイラから聞き、事情を知るためにギルドマスターに会いに来た。俺がギルドに入った途端、あちこちからザワザワと声が聞こえ始める。曰く、賢者様だの魔王様だの、後者は強ち間違いでもないが……。ホント、どうしてこうなった。ちなみに、アイラは置いてきている。俺自身が一対一であのギルドマスターと話し合ってみたいと思ったからだ。

 

「オフィスだ。ギルドマスターに話を聞きに来たんだが……」

 

「ああっ! オフィス様ですね。既に、お聞きになっていたんですね。どうぞ此方へ、奥の方に進むとギルドマスターの部屋となっています」

 

 カウンターにいた受付嬢に声をかけると、待ってましたとばかりに奥に通される。恐らく、俺が来たら通すようにギルドマスターから言われていたんだろう。それにしても、ああいった尊敬の眼差しを向けられた場合、どういう対応をしたらいいのか……。考え事をしながら歩いていると、正面に扉が見えてきた。これがギルドマスターの部屋なのだろう。散々やられたのでここらで軽く悪戯でもしてみよう。

 

《ドンッッ!!》

 

 え? 何をしたのかって? 何、大したことはない。軽く扉を吹っ飛ばしただけだ。ちゃんと人の気配がないことも確認済みだ。今までの仕返しなのだ。これくらいは許されてもいいだろう。

 

「よう、来たぞ。って少しぐらい驚いとけよ。何のために扉吹っ飛ばしたのかわからないだろうが」

 

 ギルドマスターの驚いた顔を盛大に笑ってやろうと、意気揚々と部屋に入った俺だが、ギルドマスターの予想通りといった顔を見てこの事態が想定されていたことを悟った。流石に出会って数分で人の性格を見抜くだけはある。この程度の予測は容易いということか。

 

「ほっほっほ。待って居ったぞ、オフィスよ。聞きたいこともあるじゃろうが、まずは報告じゃな。先日、ギルドマスターの会議でおぬしの冒険者ランクが決定した。と言っても、新しく作られた、と言った方がいいじゃろうな。おぬしの実力はSSランクなど足元にも及ばん。それをSSランクにしてしまうと、少々面倒なのでな。折角じゃし新しくランクを作ることにしたのじゃ。それがSSS。おぬしのために作られたランクじゃ。」

 

聞きたいことも一緒に応えられてしまった。確かに、明らかに実力に差がある者を同じランクにしてしまうと、俺の実力をSSランクの基準にしてしまう者も出てくるだろう。それに対処するのが面倒なため、いっそのこともう一つ上のランクを作ってしまおうということなのだろうが。

 

「よくそんな無茶な話が通ったな。自分で言うのも何だが、俺は怪しいところだらけの不審者だぞ?」

 

 そう、俺は怪しすぎるのだ。突然現れた謎の実力者。普通、ある程度の実力者は前もってある程度名が知られているものだ。にも拘わらず、何も情報のない得体の知れない男にsssランクを与えるなんて・・・。と、俺は思っていたのだが。

 

「確かに、怪しいところはある。しかし、そういった前例がないわけではないのじゃよ。何十年に一度はおぬしのようなものが突然現れることがあるんじゃよ。原因は分かっておらんが、ともかく、突然現れたということに関してはあまり気にされていない。それに、信用の話じゃがな。おぬし、この街を救っとるじゃろう。おまけに、アイラ嬢を帝国の兵達から庇ったと聞いておる。おぬしの知らないところで既に信用は積み重なっていた、ということじゃな。」

 

 俺は何もしていない。等と思っていたのはどうやら俺だけだったようだ。アイラの一件の情報源は恐らく、あの商人さんだろう。馬車で話し込んだ時に、あの話もしたのだ。それ以外でこの話を知るものは外にいた護衛の冒険者くらいなものだろう。

 

 アイラは確かに庇った。だが、あれは俺が帝国兵にイラついて、つい手が出てしまったようなものだ。もとより救うつもりではあったので結果的には良かったものの、後になって「他に色々やりようはあったはずだろっ」と頭を抱えたものだ。街に至っては完全に偶然だ。アイラを狙っている奴がいたからそれを消しただけなのだ。魔物達は放っておくと冒険者として参加しているアイラが危険なため、《神級魔法》を使って減らした。

 だが、全滅させたわけでない。何より、俺はギルドマスターに門を守ってくれと頼まれたのを拒否し、強引に前に出たのだ。だからこそ、信用などないと思っていたのだが。

 

「俺は、アンタの頼みを拒否して前に出た。それに、俺が加減してたこと気が付いてるんだろう?そのせいで魔物が生き残った。結果、戦うことになった冒険者達が何人も怪我をした。俺はアンタが思っているような男じゃないよ」

 

 そう、これ程観察眼が優れている男が気づいていないはずがないのだ。俺が”全力”を出していないことくらいとっくにお見通しのはずだ。だからこそ、俺が信用に足らないと、赤の他人より自分を大切にする臆病者だと知っているはずなのだ。

 

「それは仕方がない事じゃ。元より冒険者ランクEであったおぬしは戦闘に参加する義務などなかった。首謀者を倒したのはそれ自体がおぬしの目的じゃったようじゃが、しかしじゃ。魔物を減らす必要も、ましてや、首謀者を倒した後、援護する必要など何処にもなかった。故に、誰が認めずとも、わしが認めよう。おぬしは信用にたる最強の冒険者じゃ」

 

 ホント、何でもお見通しなのかね。この爺さん。何でこんなところでギルドマスターやってんだか。

 

「誰が認めずとも、わしが認めよう……か。そうだな、俺が、誰が、何て関係ないんだよな。自分が信用できる思ったらそれで良かったんだな。ホント、俺って力を持ってるだけのガキだな。……ありがとう。爺さん、そこまで言うなら期待に答えて見せよう。少なくとも、アンタにとっては信用がある冒険者で居続けよう。冒険者ランク、それと、今日色々学ばせてもらった礼だ。ああ、それと。何かあったらその宝玉に魔力を込めてくれ。俺の持つもう一つの宝玉と通信出来るようになっている。じゃあな、色々世話になった」

 

 こういう大人を見ると、改めて自分が力を手に入れてはしゃいでいるガキだっていうのを思い知らされる。きっと、あの爺さんは俺に、いや、恐らく孤立するであろう一人の青年に大人として教えたかっただけなのだろう。誰もが俺を否定しても、きっと認めてくれる人がいるのだと、そう伝えようとしてくれたのだろう。

 だからこそ、俺は感謝の印として爺さんに宝玉を渡した。この宝玉は、俺の職業《錬金術師》のスキルで作ったものだ。

 

―――《青竜の宝玉》

 

 四神を元にして作った宝玉だ。他にも

 

―――《朱雀の宝玉》

 

―――《白虎の宝玉》

 

―――《玄武の宝玉》

 

 そして、これらの接続先となっている全ての取りまとめようの中央に位置する宝玉

 

―――《黄龍の宝玉》

 

 これらは俺が通信用に作った、いわば携帯電話だ。《黄龍の宝玉》を親機として残りは子機となっている。子機から親機、親機から子機、と通信できるようになっているが子機間の通信は現在封印している。これは緊急事態が起こった時に素早く情報を共有するためにつけた機能だ。何故、ゲーム時代にそんなものを作ったかって? 何か、通信用の宝玉ってカッコよくね? ということだ。

 

 実は、俺に来ていた貴族からの勧誘や裏の人間をさりげなく近づけないようにしてくれていた爺さんに対する俺からのささやかな礼の意味も含めて大盤振る舞いだ。ちなみに、持ち主に危機が迫ると自動で転移してきて《神級魔法》レベルの結界を張ってくれる優れものだ。

 

 さて、これで漸く旅に出ることが出来る。最初は旅をしながら冒険者ランクを上げる予定だったのに、どうしてこうなったのやら。いつの間にか英雄と尊敬され、感謝されるようになっていた。でも、悪くはない。良いことをすると自分も良い気分になる。というのは強ち間違いでもないらしい。城壁の門の前でこちらに手を振っているアイラを見ながら俺はそう思ったのだった。

 




ギリギリ旅立ちまで書くことが出来ました。通信用の宝玉ですが、よくこんな展開の物があったな、と思いついたので書いてみました。
何故、四神にしたのか? 実は最初は《竜王の宝玉》とかにしようと思っていたんですが、名前を考えている内にネットで《黄龍》を見つけたので、折角ならということで四神にしました。

テンプレの盗賊が未だに出てきていないので、次回辺りに登場させたいなぁ。

次回、盗賊とひと悶着?

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