どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ   作:はないちもんめ

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もう今クールのアニメも終わりですね


0.4 起きたくないことに限って起こりやすい

突然だが、ティアナ・ランスターは不幸という言葉が嫌いだ。

 

不幸と言ってしまえば自分にとって不利な状態を、それだけで正当化できてしまうからだ。自分でその状況を打破しようとする気概を挫いてしまうからだ。

 

しかし、そうは言っても確かに生きていれば自らの力では、どうしようもない出来事に遭遇することもある。

 

ティアナ・ランスターもその一人だ。

 

幼いころに最愛の兄であるティーダ・ランスターを亡くしてしまった。それは、ティアナ・ランスターが如何に努力してもどうしようもない出来事であった。

 

だが、ティアナ・ランスターは悲しみに沈むだけの少女ではなかった。その兄の死を受けて、執務官になるという夢を抱くようになった。立ち止まるのではなく、前に進むことを選んだのだ。

 

もちろん、その夢を叶えるのは簡単なことではなかった。多くの苦難があった。多くの挫折があった。多くの悩みがあった。

 

それでも、ティアナ・ランスターは自分の夢を叶えた。その過程には、スバル・ナカジマや高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン等の多くの人々との出会いがあった。

 

彼らは、ティアナ・ランスターが自らの夢を叶えるのを助けてくれた。今でも彼らはティアナ・ランスターにとってかけがえのない人たちだ。彼らが自分を呼ぶならば、例えどんな状況でも助けに行くし、自分が助けを呼べば、どんな状況でも助けてくれるだろう。

 

最愛の兄の死が、最高の仲間たちに出会わせてくれたのだ。

 

だからこそ、ティアナ・ランスターは不幸という言葉が嫌いだ。不幸という言葉に囚われていては、彼らとの出会いはなかったからだ。

 

しかし、敢えてティアナ・ランスターは断言する。

 

「あのー、ティアナさん?俺が悪かったですから、そろそろこの縄を解いて貰えませんでしょうか?」

 

この目の前で逆さ吊りにあってる男に出会ったのは、ティアナ・ランスターにとって人生最大の不幸だったということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に嫌な予感がしたのは何時だったか。

 

フェイトさんからカイルという星の名前を聞いた時だったかもしれない。

 

しかし、その時はまだ気のせいだと思うことができた。

 

次に嫌な予感がしたのは、町のチンピラに話を聞いた時だ。

 

この星に着いた私は、この星の裏の状況について知るために、その手の状況について詳しそうなチンピラに話を聞くことにした。

 

そして暫く捜索していると、丁度良さそうな人たちを見つけた。

 

・・・なぜか全員ボロボロで、周りの建物も酷い状況になっていたけど。

 

内心疑問には思ったが、気にしないフリをしてその人達に情報が欲しいと声をかけた。そうしたら案の定、条件があると言ってきた。一緒に来ていた、この星担当の執務官であるロイドさんは、このチンピラの態度に不満そうだったが、私が押し留めた。

 

こういう奴らが最初からタダで情報をくれる訳がないと思っていたからだ。なので、いくら欲しいのか聞いてみたところ金は要らないと言ってきた。ならば、何が欲しいのだろうと思い、聞いてみた。

 

 

捕まえて欲しいと言ってきた。

 

 

意味が分からなかった。執務官をやっていて、こんな人たちに会ったのは初めてだ。後ろではロイド執務官も困惑していたが私はそれ以上だった。

 

流石に何もやっていないのに捕まえる訳にはいかないので話を聞いてみると、悪魔から逃げたいからだとチンピラ全員が口を揃えて言った。全く分からないので詳しく話すように言うと、全員が泣きながら一斉に話だした。気持ち悪い光景だった。

 

話を纏めると、私たちが来る一時間ほど前にアイテムを横流ししてるグループの情報を知りたがっている男が現れチンピラたちをボコボコにしたということだ。だが、チンピラたちは男が知りたがっている情報は知らなかったので、知らないというと男は悪魔のように笑い出した。このままでは、殺されると思ったチンピラたちは有り金全部を渡して許して欲しいと頼んだ。

 

しかし、男は金は受けとったが「それはそれ。これはこれ」と言い、情報を渡すように言ってきた。しかし、知らない情報を言えるわけがない。

 

追い詰められたチンピラたちは、とりあえずこの町で一番怪しい奴らが出入りする場所を教えた。情報を受け取った男は去って行ったが、その場所になかった場合、その男に何をされるかわからないチンピラたちは恐怖に震えた。

 

あんな化け物がいるような世界に関わるのは、もうごめんだと考えたチンピラたちは真っ当に生きることを決心した。しかし、暫くはあの化け物がこの辺りにいる可能性が高いので管理局で匿って欲しいということだった。捕まえたということで良いからと土下座して頼んできた。

 

ロイドさんは「外道な」と憤慨していたが、私はそれ所ではなかった。こんなことをする外道に心当たりがあったのだ。しかし、あいつがこんな所にいるはずがない。それに、似たような行動をするような男なんていくらでもいるだろう。そうだ、そうに違いない。

 

そう考えた私は別のチンピラに話を聞くことにして、その場から離れようとした。こんな人達に私は会わなかったのだ。しかし、そのチンピラ達は見捨てないでくれと縋り付いてきた。ロイドさんも、これは事件ですよと言ってくる。ええい、うるさい。そんなに捕まりたいのなら強盗でもしてきなさいよ。事件だって言って関わりたいのなら自分だけで関わりなさいよ。私は逃げるから。

 

そうこうしてる内にチンピラの一人が男の似顔絵を描いて渡してきた。疑惑は深まるばかりだった。その似顔絵は私が良く知るクソ野郎にそっくりだったのだ。胃が痛くなってきた。

 

とりあえず、あまりにうるさいので、そのチンピラ達を公務執行妨害の容疑で捕まえた。捕まえて、あんなに感謝されたのは初めてだ。鳥肌が立った。

 

意識的に私は、この出来事を頭から消去し、この国で残った唯一の貴族であるというハウザーさんに会いに行った。唯一残っている貴族ということは相当の天才か、はたまた権力に取り入るのが上手い寄生虫かどちらかだろう。私としては前者が望ましかったのだが、会った印象からすると残念ながら後者のようだ。管理局の掴んだ証拠を見てもこの男が疑わしいことを示していた。

 

こうなると賄賂を渡していたのは、この男で決まりだろう。賄賂を受け取っていた管理局の人間は、まだ分からないが。

 

ハウザー家を出た私は初日の成果としては充分だと判断し、ロイドさんと別れて宿を探すことにした。管理局の施設で寝ても良かったのだが、誰が敵かも分からない場所で寝る気にはならない。

 

しかし、内乱の後ということで治安はあまり良くはないが皆活気に満ちている。しばらくすれば、此処は良い場所になるだろう。こんな場所にあのクソ野郎がいるはずがない。そうだ、別に騒ぎが起きてもいないし、やはりあれは他人の空似だったのだ。

 

そりゃ宇宙も広いんだから似たような行動を取る人くらいいるわよ。顔だって猪〇みたいな特徴ある顔じゃないし良くある顔よ。男なんて皆一本の刀は持ってるんだし、刀みたいなデバイスを持つ人だって沢山いるわよ。

 

心が軽くなった感じを覚えた私は、軽くなった足取りで前に進むと

 

クソ野郎がそこにはいた。

 

即座に進路を変更し、関わり合いを避けるために全力でその場を離れようとしたが思い留まる。

 

あの何時爆発するか分からない時限爆弾のような男を野放しにしておいて良いのだろうか。

 

先程のチンピラ達を思い出す。

 

彼らは始まりだ。このまま放っておけば被害は拡大し、逃げたところでいずれ私の所に届くだろう。

 

そうであるならば私の手元で管理し、爆発しないように細心の注意を払った方が良いのではないだろうか。

 

これは究極の二者択一だ。正解はない。どちらを選んでも不幸にしかならない。泣きたくなってきた。此処まで来て何故あいつのことで悩まなければいけないのか。

 

私が行動を躊躇していると、そのクソ野郎は自分で付けた自分のハナクソのことで弁当屋のオヤジさんにクレームをつけだした。

 

最低だと思った。

 

しかし、そんな倫理を地平線の彼方に放り投げてるクソ野郎は全く悪びれず、自らのデバイスに手をかけて交渉しようとしだした。

 

最早、恐喝である。

 

その光景を見て全てを諦めた私はクロス・ミラージュを手に取り、そのクソ野郎に近づいて行くのだった。その時の私に感情はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

どうしたものだろうか。このクソ野郎は間違いなく殺したほうが全人類のためだろうが、残念ながら今の私の任務はこいつを捕まえることではないし、こいつを殺すとなったら間違いなく簡単には終わらず、この星の人たちに迷惑をかけた上に、私の任務の妨げになるだろう。

 

先程の件についても、周りの人に確認をしたところ先に手を出したのはチンピラの方だという証言も出ている(まあ、どう考えてもコイツが誘ったんだろうが)ので、こいつをその件で捕まえても無駄だろう。そもそも素直に捕まるわけもないし。

 

「・・・」

 

「あのー、何時まで黙ってるんでしょうか?そろそろ、頭に血が溜まり過ぎてヤバいんですけど。俺の優秀な頭脳がピンチなんですけど」

 

バカが何か言っているが無視する。

 

しかし考えても仕方ない。関わってしまった以上、一緒に行動するしかない。ここで、こいつに自由を与えたら何をするか分からない。

 

私はため息を吐きながら、こいつを下へと降ろす。私は、もう選んでしまったのだ。ならば進むしかない。

 

「お?お前にしては素直じゃねえの。いやー、実は前からお前は良いやつだと思ってたよ。ネズミを退治してくれる猫の次くらいに良いやつだと思ってたよ」

 

こいつは自殺志願者なのだろうか。一瞬全てを忘れて殺してしまおうかと考えたが、鋼の精神で何とか自重する。このくらいのことで殺していては、この先こいつを何回殺すか分からない。

 

「馬鹿言ってないで私の話を聞きなさい。何であんたがこんな所にいるのか知らないけど、少なくてもあんたがこの星にいる間は私と一緒に行動してもらうわ」

 

「は?何言ってんの?嫌に決まってんじゃん。俺にだって選ぶ権利くらいあるよ?確かに俺は格好良いからお前が一緒にいたいと思うのは当然だけど、残念ながら俺は忙しいからお前の気持ちに応えてやることが、うお!?」

 

あまりにも見当違いの発言をしているバカの声を聞くのに堪え切れず発砲してしまった。後悔はしていない。しかし、運よく当たらずに済んだようだ。当たれば良かったのに。

 

「て、てめえ、何執務官が無抵抗の奴にいきなり発砲してんだこの野郎!?お前そんなキャラじゃなかったはずだろうが。ルールをしっかり守る執務官だったはずだろうが」

 

「わたしの中であんただけは例外なのよ。それと私がこうなったのは、あんたのせいだから。後、一緒に行動して貰うのは決定事項よ。あんたの意見は聞いてないわ」

 

「たく、分かったよ。んじゃ、明日の朝に此処で待ち合わせにしよう。それで良いだろ?もう夜だし」

 

「良いわけないでしょ。何言ってんのあんた。私があんたのそんな口約束を信じるとでも思ってんの?」

 

クソ野郎は舌打ちしながら目を逸らす。というより、こいつは図々しいにも程がある。私が何回こいつの口約束に騙されてきたと思ってるのかしら。

 

「んじゃ、お前はどうすれば納得するんだよ」

 

「一緒の宿に泊まることに決まってんでしょ。あんたがさっきしてた行動からすると、その宿屋には晩ご飯は付いてないみたいだし、ご飯食べたらさっさと宿に向かうわよ。明日は朝が早いんだから」

 

私のその言葉に顔を引き攣らせたこいつは、言い訳を必死に考えていたようだが何も思いつかなかったのか諦めたようにゆっくりと歩き出した。私もその後について歩き出す。

 

ため息を吐いているが吐きたいのはこっちの方だ。

 

全く、何でこんなことになったのかしら。

 

 

 

 

 

 

 




何だかんだで主人公に甘いティアナです。

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