どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ   作:はないちもんめ

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シャーリーさんの口調が分からない…こんな感じで良いのだろうか…?


22 保護者というのは子供を見ていないようでちゃんと見ている。

ピリリ、ピリリ。

 

レインは無言で鳴り続ける電話を見つめる。ティアナから逃げ切った後、何十回とかかってきていて全て無視している宛先からだ。

 

登録されていない電話番号だが、誰だかは分かっている。というか暗記している。だからこそ絶対に出たくない。色々面倒臭いことになるのは目に見えている。だからこそ、電話番号の変更などを試みたが全ては無駄だった。電話番号を変更した直後に連絡が来た際は流石に恐怖を覚えた。

 

ピリリ、ピリリ。

 

優しい音に聞こえるがレインにとってはダースベーダーの登場曲と大差ない。滅ぼされるのが世界か自分かの違いだけだ。

今すぐ携帯電話を破壊してしまいたかった。しかし、そうなると仕事の方にも支障が出るし、何よりそんなことをすれば本人が直接乗り込んでくる気しかしない。一日毎に居場所を変更しているが今にも扉が蹴破られそうで全く落ち着かなかった。何故、こんなことになってしまったのだろうか。

 

完全に自業自得である。

 

ピリリ、ピリリ。

 

鳴り止まない電話に嫌な想像が膨れ上がっていく。このままでは身体よりも精神的に問題が生じる可能性が高い。そう考えたレインは震える手で携帯を手に取った。

 

『やっと出た!今まで何やってたの!』

 

「な、何だシャーリーか。先に言ってくれよ…ビビっちゃったじゃないか」

 

『言っときますけど、さっきまではフェイトさんがかけてたからね。もうカンカンだよ』

 

「仕方ないだろ。不可抗力だったんだよ。わざとじゃない」

 

『何処の世界にわざとじゃないのにパンツを奪う奴がいるの!』

 

気持ちは非常に良く分かるがそんなこと言ってもわざとじゃないから仕方ない。

 

「奇跡的な偶然が重なったんだよ。わざとじゃないから一応礼儀は守ってる。匂いは嗅いでない」

 

『嗅いでたら知り合い止めてるよ!』

 

「テメェ俺がどんな鉄の意志で我慢してると思ってんだ!好みの女のパンツが手に入ったらどんな男でも嗅ぐからな!自然の摂理だからな!」

 

『また意味の分からないことを…とにかく大人しくパンツを返しなさい』

 

「返したいのは山々なんだが、それだけじゃ許しくてくれない気がしてな」

 

『許してもらえると思ってることが驚愕だよ…』

 

何故、この男は自分が許してもらえると考えられるのだろうか。

 

「だろう?だから俺なりに考えてみた」

 

『怖いから聞きたくないけど、聞かないともっと怖いことになりそうだから聞くよ。何する気なの?』

 

「とりあえず、オークションにかけようかと」

 

『駄目だからね!?絶対に駄目だからね!?フリじゃないからね!?』

 

案の定とんでもないことを言い出したレインにシャーリーは戦慄する。経験から分かる。冗談ではない。この男は女の子から奪ったパンツを本気で競売にかける気だ。

 

「だけど原価から考えるとすげーぞ。多分、百倍以上になってる」

 

『もう値段まで出ちゃってるよ!早く止まないと取り返しがつかないことになるよ!今度こそ本気でフェイトさんに有無を言わさずに捕まって管理局に入れられるよ!!』

 

素行の問題から数年前に本気でフェイトがレインを捕まえて管理局に入れようとしていたのはシャーリーとレインの間では公然の事実だ。確かに犯罪者なのは間違いないが、生まれの問題から情状酌量の余地はあるし、フェイトを後見人とすれば罪を償う代わりに管理局で働かせることは十分に可能だった。仮に捕まっていれば間違いなくレインは六課に行くことになっていただろう。

 

原作に関わりたくないレインはだからこそありとあらゆる手段を用いて全力で逃げていた。シャーリーとしてもフォローが大変なのは目に見えていたのでそんなことにならずに済んで良かったと心から思っている。

 

「金で解決しようと思ったんだがそれはまずいのか」

 

『発想がクズだよ!そもそも、そのお金ってレインが出したんじゃないじゃん!ティアナがティアナのパンツから等価交換された金を手に入れただけじゃん!』

 

「でもさ、良く考えたらランスターって執務官やる必要なくね?パンツを履いて脱いで売ってを繰り返してたら一生遊んで暮らせそうだぞ。オークション上でも興奮してるファンの声で溢れてる」

 

『世界で最も汚いファンの声だよ!下心と欲望に塗れてる終わりの世界だよ!ティアナはそんなことしません!お金のために働いてる訳じゃないんだよ!』

 

「理解できんが、しゃーねぇな。分かったよ、大人しくパンツを返せば良いんだろ。言うこと聞くからランスターとフェイトにはフォローしといてくれ」

 

『何をどうやってフォローするの!?私のフォロー力にも限界あるんだからね!?って切っちゃうし!』

 

話途中で切られた電話に半ギレしながら折り返すが、既に電源は切られていた。盛大にため息を吐きながら何とかフォローできないかとりあえず考えてみたが無理だった。当然である。

 

(とりあえず、他の仕事しよう…)

 

色々諦めたシャーリーはフェイトが来るまで現実逃避という名の仕事を始めた。諦めたともいえる。とりあえず、パンツを返すという最低限の仕事は終えた安堵の気持ちもあった。

 

 

 

 

三日後

 

 

『どうして素直にパンツを返すだけで済ませられないかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

珍しく声を荒げて怒るシャーリーは電話先の相手にキレていた。当然レインである。

 

「うっせーなー。朝っぱらどうしたよ?」

 

寝起きのようで向こうも少し不機嫌だがそんなこと知ったことではない。

 

『どうしたもこうしたもないよ!何で余計なことする訳!?余計なことしないと死ぬ呪いでもかかってんの!?』

 

「あん?…ああ、パンツの話か。いや、ランスターって確か良い年だろ?それなのにいちごパンツはまずいだろと思って助言をだな」

 

『余計なお世話以外の何物でもないよ!しかも、送付状にティアナ・ランスターのいちごパンツ在中って書いたでしょ!?馬鹿なの、死ぬの!?』

 

「嘘は書いてないだろ。中身に問題があるかと思われたら困るだろと思って書いたんだよ』

 

『逆に怪しさ満点だよ!意味がわからなくて届いた荷物の中身をティアナ確認されてたんだからね!?このいちごパンツはティアナ・ランスター執務官の物ですか?って担当者に真剣に質問させられて答えざるを得なくなったティアナの気持ちが分かる!?』

 

「お、おう、そうか…でも嘘をつけば良いんじゃ…」

 

『そんなことすればこのパンツの意味は何だって話になって色んなところにそのパンツが晒されるよ!!謎のパンツってことで公衆の前に晒されるなんて地獄以外の何なのさ!』

 

それはキツいだろうなと流石のレインでも思った。思ったが、しかし、やってしまったことは変えようがない。ティアナはそのパンツを胸に抱いて生きていくしかないのだ。

 

「人は忘れる生き物だ。こうなってしまっては仕方ない。ランスターには前を向いて生きて貰おう」

 

『今、ものすっごい後ろ向いてるよ!過去にばかり目を向けて自分をこんな目に合わせた変態を必死で探してるよ!フェイトさんはフェイトさんで保護者として償い方が分からないって半泣きだよ!』

 

聞いているだけでカオスの状況だ。フェイトが俺の保護者に何時なったのか不明だが側にいなくて良かったと心から思った。

 

しかし、同時にこれはティアナにとってチャンスなのかもしれないと感じた。勝手に自分の実力を不足だと感じて自分で自分を追い詰めてミスをすることはあったかもしれないが恐らくこんな変化球な追い詰められ方は初体験だろう。

 

初体験は知らない自分の扉を開けることができる素晴らしいものだ。その初体験を致命傷を負うことなく体験できたのだからむしろ感謝されて然るべきなのではないだろうか。この経験を活かして、今後ティアナにはこのようなことがあっても慌てることなく対処できるようにしてもらいたい。

 

そう考えたレインはその旨を伝えたが激昂された。理解できなかった。確かにこの件には自分の非しかないかもしれないが、今更そんなことを言った所で仕方ないというのに何故それが分からないというのか。

 

…いや、その考え自体が誤っているのではないのか?

 

レインの頭に稲妻が走った。考えてみれば俺はティアナ・ランスターが好きなのだ。そんな人にそんな酷いことができる人間がいるだろうか?いや、いるはずがない。

 

だとすれば、自分の行動はティアナのためを思っての行動ということになる。将来のティアナのことを考えて自分の評判を犠牲にしてまで行動した俺に対して怒るなど逆ギレも甚だしいのではないのか?管理局の劣化が進んでいるのは知っていたがここまでとは思わなかった。

 

レインは責任転嫁と自己弁護は止まることを知らなかった。自分が悪いことは何もないのだから、正義を気取っている電話越しのメカオタクに舌打ちをしてから自身の正しさを一方的に伝えると迷うことなく電話を切った。

 

「くくく…くはは…」

 

切れた電話を目にして笑い声を漏らす。自身が悪いことなどカケラもない上にあの頭のネジが狂った天然執務官と顔を合わせることさえ避ければ文句を言われることなどあり得ないのだ。

 

最初からこうしていれば良かった。こんな電話など相手にしないで自身の正しさだけを信じて行動していれば良かったのだ。

 

1人静かに笑っているレインの頭上、というより屋根の上から

 

「サンダースマッシャーァァァァァァァァァァァ!!!」

 

雷の咆哮が降り注ぐ。

 

レインの隠れ家は当然のことながら、その一撃で見事なまでにガラクタと化した。そのガラクタの中からレインは何とか抜け出したがその顔は絶望に塗りつぶされていた。それは家を壊されたことによるものではない。

 

「な・に・を・や・っ・て・い・る・の・か・な?」

 

この状況で最も会いたくない女の声を聞いたからに他ならない。

 

「フ、フェイト…お前なんでここが…」

 

「そんなことより…何をやっているのかな?レイン」

 

フェイトは男であれば誰でも見惚れるような素晴らしい笑顔をレインに向けるが、レインはその顔を見ても青ざめることしか無い。

 

これはフェイトがこの上なく怒っている時の顔だ。

 

「話したいことは色々あるけど…とりあえず反省しなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

 

レインにフェイトの雷魔法が炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




例によって続きは不明です…

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