どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ 作:はないちもんめ
「大丈夫何ですか、フェイトさん?親子水入らずの所に邪魔しちゃって」
「全然大丈夫だよ、スバル。ヴィヴィオも人数が多い方が楽しいよね?」
「うん!」
それなら良かったですと笑って答えるスバル。三人は車で仲良く移動中だ。
今日は久し振りの休日。残念ながら、なのはは、仕事だけど折角の休日だから、ヴィヴィオと一緒に遊びに出ようとしていたところスバルから連絡があったので良ければ一緒に出かけようと誘ったのだ。
「本当はティアと出かける予定だったんですけど、何か仕事が入っちゃったせいで来れなくなっちゃったんですよ。やっぱり、執務官って特に忙しいんですねー」
「‥ソウダネ」
「え?どうしたんですか?フェイトさん」
「ベツニナンデモナイヨ」
「そ、そうですか?」
首をかしげるスバルを見ながら心の中でティアナに全力で謝罪する。
別にアレが原因と決まった訳ではないが、アレが原因としか思えないのが不思議なところだ。
ごめんねティアナ。私の教育が間違っていたばかりに苦労をかけちゃって!でも、私も頑張ったんだよ!?
だけど、アレのアレは天然なんだもん!他人が教育で、どうこうできるものじゃないんだもん!
それに、私はティアナにアレとあまり関わらない方が良いって一回忠告したし?だから、私が悪い訳じゃないよね?うん、きっと、そうだ。
そう考えたフェイトは全力で思考を別の方向に飛ばす。ティアナ涙目である。
「ねえ、ヴィヴィオ?何処か行きたい所ある?」
「え?えーとねー」
「ここなんてどう?ヴィヴィオ?安くて美味しい店だって評判だよ?」
何処に行くか、模索する三人。そんな三人の車の上に何かが落ちた音がした。
「あれ?」
「何か音が」
「しなかった?」
何となしに上を見る三人。そして
ガシャンと音を立てて後部座席の窓ガラスがぶち破られる音がした。急な出来事に三人とも驚きの声をあげるが、それを無視して乱入者は何食わぬ顔をして座る。その乱入者は全員の顔見知りだった。
「いやー、悪いね三人とも。パンピーの車だと思ったんだけど、まあ、良いや。金なら出すから急いで適当な場所まで連れて行ってくれ」
「「レイン(さん)!?」」
スバルとヴィヴィオは全力で最近の知り合いの名前をあける。
昔馴染みのフェイトは、その姿を見て見てため息をはく。
「たまには普通の登場の仕方をしたらどうかな?それに、これはタクシーじゃないんだから窓の修理代を置いてさっさと帰って」
「小さいことを気にすんなよ。金なら出すって言ってるだろ?」
「あいにくとお金には困ってません。それに、そんなお金ないでしょ?」
ジト目でレインをチラと見るフェイト。その顔を見てレインは、ふふんと自慢気な顔になる。
「問題ねーよ。少しばかり金を下ろして来たんでな。今日の俺は少しばかりリッチだぜ」
そう言って、背負っていたリュックサックをバンバンと叩く。
「金を下ろす?銀行に貯金なんてするタイプだったっけ?」
疑問に思うフェイト。見ない間に成長でもしたのだろうか。
「あん?俺がそんなのする訳ねーだろ。さっき銀行に向かう現金郵送車を襲ったんだよ。皆の貯金は俺のもの、俺の貯金は俺のものって言うだろ?」
フェイトの運転する車が急停車したのは、そのすぐ後だった。
「いやー、ありがとうございます!フェイト執務官!」
「いや、その‥ごめんなさい」
「何を謝る必要がありますか!本当に感謝します!いやー、相手は相当腕の立つ賞金首ということで半ば諦めていたのですが、こんなに早く解決してしまうとは‥流石はフェイト執務官としか言いようがありませんな!」
「いえ、本当にその‥そんなに感謝をされるようなことは‥」
「いやいや、フェイト執務官は謙虚ですなー」
被害にあったお金を届けた私に関係者の方々は半分泣きながらお礼を言う。
良心に攻撃を受けるのは久しぶりだ。本当にすいません!私の弟分がすいません!
一方、その付近では
「ぐぉぉ‥あの馬鹿思いっきり殴りやがってぇ‥」
「いやあ‥連行されないだけ感謝した方が良いと思うよ?」
「てか、普通は連行されますからね。それだけで済んで幸運ですよ」
頭を抱えて蹲っている男と、それを呆れながら見る女性と女の子の姿があった。
「一体何考えてるの!何時も、何時も録でもないことばっかりして!」
「痛い、痛い!?止めろ、馬鹿、耳が取れるだろうが!」
「何回言っても聞こえない耳なんて取れても良いよ!」
「馬鹿野郎聞こえてるわ!聞こえた上で無視してんだよ!」
「ねぇ、アレは怒らせようとしてるのかな?」
「さあ?だとしたら、かなり的確な発言だと思いますけど」
被害にあった店にお金を返したフェイトは怒りながらレインたちのいる所に戻り、レインの耳を引っ張りながら歩き出した。
それに対してレインは抗議をしているのだが、一向に聞き届けられない。
そんな様子をスバルとヴィヴィオは呆れながら見ていた。
そんな事を続けながら歩いているとスバルは、この間来たばかりの所に向かっていることに気付いた。
「あれ?ここってタジルさんの所?」
「スバルはタジルのこと知ってるの?」
少し驚いた様子を見せながらフェイトはスバルの方を振り向く。当然、レインの耳を引っ張りながら。
「はい。この間ティアと一緒に」
「そっか。じゃあ、ヴィヴィオだけ初対面だね。タジルー。いるー?」
「いらっしゃ‥ゲッ!?」
「ゲッって何かな?まさかヤバイことに手を出してるのかな?捕まえた方が良いのかな?」
のれんの中から出てきたタジルはフェイトの姿を見て顔をしかめる。
その様子を見て、フェイトはニコリと笑いながらヴァルティッシュを構えるが、慌ててタジルは言い訳をする。
「おい、落ち着け!アレだ、慌てたのは今までにお前から受けた仕打ちを思い出したからだ。今はヤバイことはしてねぇよ。軽い違反くらいだ」
「レインもだけど、タジルも完全に私のこと甘く見てるよね?一応私執務官だからね?軽い違反だって捕まえるからね?」
まあ、今日は休みだし良いけどと言いながら、一応ヴィヴィオに挨拶をさせた。
「ヴィヴィオー。このおじさんはタジルっていう犯罪者だからねー。見つけても近寄っちゃダメだよ?話しかけるのもダメ」
「おい、扱いが酷すぎるだろ」
「妥当な扱いだと思うけど。と・こ・ろ・で、コレの扱いは一体どうなってるの?」
「コレって一体何の話だ?」
疑問符を浮かべるタジルの前に掴んでいたモノを引きずりだす。
「決まってるでしょ?コレのことだよ‥って、変わり身の術!?」
「相変わらず逃げ足が速えな」
「え!?何時の間に!?」
「ステルス機能高すぎませんか!?」
しかし、フェイトが掴んでいたモノは何時のまにか人体模型に変わっていた。
どうやら、タジルと話している隙をついて逃げ出したらしい。
「あー‥もう!タジルのせいだからね!」
「おい、流石に理不尽過ぎるだろ!」
「監督不行き届きだよ!」
「監督になった覚えがねぇよ!」
「あー、ちょっと二人とも落ち着いて!」
どうどうどうと、スバルが宥めたことでフェイトとタジルも少し落ち着く。
その隙にヴィヴィオが疑問に思った事を聞く。
「随分親しそうですけど、フェイトママとタジルさんは付き合い長いんですか?」
「「親しくない」」
否定しながらも声がハモったことにスバルとヴィヴィオは吹き出す。当事者のフェイトとタジルは苦い顔をしていたが。
「まあ‥付き合いだけは長いかな。レインも含めて10年くらいの付き合いだよ」
「もう、そんなになるか。月日が経つのは速い‥訳でもないな。むしろ、まだ10年しか経ってないのか。体感的には100年くらいの付き合いの気がするんだが」
「それ私のセリフなんだけど」
ジト目でタジルを見るフェイト。しかし、その話を聞いてスバルがあることに気がつく。
「あれ、そうするとティアは?ティアは何時タジルさんやレインと知り合ったんですか?」
スバルの疑問にフェイトとタジルは顔を見合わせて考える。
「確かティアナが執務官に合格した後だから‥2年は経ってないかな?」
「多分そのくらいだな。間違いなく六課が解散した後のことだしな」
「へぇ〜、ところで、ティアとはどうやって知り合ったんですか?」
「確か‥あいつが嬢ちゃんを担いで来たんだったな。あいつが何時嬢ちゃんと出会ったのかは知らんが。おい、フェイト。お前さんは知らんの‥か?」
「そうですよ!フェイトさんは知らないんです‥か?」
フェイトに聞こうとするタジルとスバルの時が止まる。何故なら、尋ねられたフェイトが怖いほどの笑顔で周囲に殺気を放ち出したからだ。
「ふふ‥聞いちゃうの?それ聞いちゃうの?私たちが物凄く思い出したくないことを聞いちゃうの?そんなに聞きたいなら‥教えてあげるよ。私たちがどれだけ大変だったか」
それを聞いたタジルとスバルとヴィヴィオは思った。
(((あ、これ地雷踏んだ)))
次回からは過去編突入!