どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ   作:はないちもんめ

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久し振りの投稿です。仕事が忙しいとやっぱり作る暇ないですね。


1.4 晴れ時々爆発

「ギン姉!どういう状況!?」

 

「スバル!それにティアナ!二人とも来てくれたのね!!」

 

心底良かったという顔をするギンガさん。しかしギンガさんに助けを求められて自分が行かないはずがないではないか。

 

しかも、それがこんな大事件ならば尚更だ。

 

「当たり前じゃないですか!被害はどのくらいの規模になっているんですか?」

 

私の目の前には大破した飛行機が放置されている。

 

しかし見た限り原型は留めている。飛行機が墜落したというのにこのくらいの損傷で済んだのは正に神業と言って良いだろう。

 

かなり状況判断能力に優れた人が同乗していたのかもしれない。

 

だが、落ち着いて状況を見てみると少しおかしなことに気がついた。

 

「ギンガさん。何で学園に入って飛行機の撤去作業を進めないんですか?」

 

集まった管理局員は何故か飛行機がある学園を囲うように配置され、少し離れた場所で怪我人の手当てなどをしている。

 

何故こんなことをする必要があるのだろうか?

 

すると私の問いにギンガさんは真顔になって答える。

 

「それが…飛行機の乗客が学園の生徒を人質に立て籠っちゃったのよ」

 

「「ええ!!??」」

 

私とスバルは揃って驚愕の表情を浮かべる。まさか、そんな事態になっていたとは予想外だ。話を聞くと、どうやら立て籠り犯は墜落した飛行機をハイジャックしていた犯人らしい。何があったのかは知らないが、落ちたのなら諦めれば良いものを。

 

「犯人からの連絡はないの?ギン姉」

 

スバルの問いにギンガさんは首を振る。

 

「それがまだないのよ。一応あれば私が交渉官になる用意はできてるんだけど、相手から何も連絡がないから何もできないのよ…いったい何を考えているのかしら」

 

そう話すギンガさんは悔しい思いをしているだろう。危ないハイジャック犯に人質にされた子供たちが目の前にいながら何もできないのだから。

 

すると突然慌てた様子の管理局員が走ってきた。

 

「ギンガさん!大変です!」

 

「何!?一体どうしたの?」

 

「誘拐犯から電話がかかってきてます!」

 

「何ですって!?」

 

慌てて電話を受け取ったギンガさんは落ち着いて喋り出す。

 

私たちに聞こえるようにすることも忘れない。

 

「私はザキュニナ。この世を変革するために来たものだ」

 

言っていることが良く分からない。恐らくイカれた誘拐犯なのだろう。

 

考えられる限り最悪のケースだ。

 

こういう犯人は具体的に何かをして欲しいと思っていない。おちょくるだけおちょくって人質全員皆殺しにする愉快犯の可能性が高い。

 

当然ギンガさんもそれが分かっており、顔つきに焦りが伺える。

 

「ザキュニナさんですか。私はこの場の指揮を一任されている管理局のギンガという者です。あなたが求めるものはこちらとしてもできるだけ用意する予定はあります。だから、子供たちを解放しては貰えませんか?」

 

「はい、分かりましたとでも言うと思ってるのかい?そんなことをしたら、そこにいる管理局員が乗り込んでくるんだろう?」

 

「そんなことはしません。約束します」

 

「そんな約束ほど信じられないものはない。信じられるのは言葉ではなく金だ。今すぐ用意して貰おうか。そうすれば、人質は解放する」

 

「分かりました……しかし、大金の場合すぐに用意できない場合もあります」

 

「できるかどうかは聞いていない。やれと言っているんだよ。人質が大切ならの話だけどね」

 

ギンガさんは何とか譲歩を引き出そうとしているが、私は少し安心した。

 

金が目的なら直ぐに子供たちが殺されることはない。

 

「分かりました。金は用意します。ですが、その前に子供たちの声を聞かせて下さい。それができなければ取引をすることはできません」

 

「良いだろう。ちょっとそこの子。こっちに来て。え?嫌だって?そんなこと言わないでよ。ちょっとだけ!ちょっとだけだからこっちに来て電話で喋って!」

 

何か会話がおかしい気がする。どう聞いても人質と犯人がする会話ではないような…

 

「こほん。待たせたね。良いよ。良く聞きたま「ねぇ、ねぇ。ここで喋れば良いの?」えって、ちょ、私が喋っている時に割り込まないでくれるかな!威厳とか、そういうのが台無しになるから。そうだよ。ここで喋れば良い」

 

一体向こうはどういう状況なのだろうか。スバルとギンガさんも戸惑った顔をしている。

 

というか、この声って。ギンガさんも気付いてたのか必死に声をかける。

 

「ヴィヴィオ!?ヴィヴィオなの!?大丈夫!?」

 

「あれ?この声ってもしかしてギンガさん?久し振りですね。元気でしたか?」

 

「確実に今する会話じゃないよねヴィヴィオ!?むしろ元気じゃないのはあなたのはずなんだけど!?」

 

「私ですか?うーん、まあ、最近なのはママの料理の味が健康志向で薄くなってるから少し不満ですけど、元気ですよ」

 

「だから、そんな話をする時じゃないでしょ!?」

 

どう考えてもおかしい。ヴィヴィオの様子に恐怖が全く伺えない。それ所か、キャラが変わってる気がする。

 

「もう良いだろう?さあ、電話をよこし、ぐふっ!?痛い!ちょ、腹パンは止めて、腹パンは!ボス!やっぱ無理なんすよぉ!俺にこの学校の子を人質に取って管理局と交渉するなんて!何で子供がこんなに戦闘力高いんですか!ボスがやって下さいよ!」

 

「何言ってんだよ。本物はお前世界と交渉してたんだぞ?偽物名乗るなら管理局の部隊長との交渉くらいはこなさねぇとな」

 

「だからごめんなさいって言ってるじゃないですか!本当は俺ザキュニナ何て名前じゃなくてタケシって名前なんです…アニメ見て、格好良いなぁと思って真似しちゃっただけなんです。もう俺ニビジ○に帰りますから。大人しくマ○ラタウンから来るトレーナーに負け続ける人生送りますから許して下さい」

 

「お前タケシなめんなよ。あいつ凄いからな。ゲームとポ○スペじゃあ、確かにパッとしないけど、アニメじゃ凄いから。ドクター目指してるから。夢持ってるから。お前とは格が違うんだよ」

 

何か物凄く聞き覚えがある声が聞こえてくる。そんな訳がない。あいつがこんな所にいるわけがない。

 

そうは思いながらも脳裏に掠める不安な気持ちが押さえられずに思わず、ギンガさんから電話を奪い取る。

 

「おい」

 

自分でもビックリするくらい低い声が出た。その声で突然電話を奪った私を止めようとしたギンガさんやスバルの動きが止まる。

 

冷や汗を流しているが、そんなことに構ってる暇はない。

 

「な、なんだね?悪いんだが、今は君と話している時間は」

 

「そこに黒髪で短髪の刀みたいなデバイスを持っている傍若無人なクソヤロウはいる?」

 

私のその問いにザキュニナとかいう男の声が止まる。

 

決まりだ。

 

予定変更だ。人質を助けるよりもやらなければいけないことができた。

 

私は容赦なく学園に向けてクロスミラージュを連発した。

 

建物の屋根は今の攻撃で吹き飛んだが、まあ仕方ない。これは必要な犠牲だ。

 

「ギャアアア!!??な、何を考えているんだい君は!?人質がどうなっても構わないというのか!?」

 

「しょうがないのよ。誰かを助けるということは誰かを助けないということなのよ」

 

「どこの魔術師殺し!?」

 

電話先でザキュニナが悲鳴をあげているが無視する。あいつに利用されたのだろうが、諦めて貰おう。恐らくハイジャックは自主的にやったのだろうから、自業自得だ。乗っていた乗客が悪かったわね。

 

「「何やってるのティア!!???」ナ!!!??」

 

「こうなったら仕方ないです。ギンガさん全員突撃です。行くわよスバル。ヴィヴィオ達には諦めて貰いましょう。この先あいつに迷惑を受ける人のことを思えば必要な犠牲よ」

 

「突然どうしたのティアナ!?そんなことできるわけないでしょう!」

 

「そうだよ、ティア!?人質の命が第一だよ!」

 

何を悠長なことを言っているのだ。何をしでかすか分からない爆弾が目の前にいるのだ。今一番考えなければならないことは人質ではなく、爆弾の解体(処刑)だ。

 

だからこそ、何とかギンガさんとスバルを説得しようとしていたのだが、突然犯人が電話口から声をかけてきた。最も既にそれはザキュニナではなかったが。

 

「何でテメェがここにいるんだコラ!?管理局は人命第一だろうが!俺たち人質のことを考えやがれ!」

 

「人質?笑わせんじゃないわよ。あんた犯人でしょうが」

 

「か弱いビジネスクラスの乗客だよ!お前が守るべき一般市民だよ!」

 

「残念ながら私の一般市民のカテゴリーにあんたは含まれてないわね。諦めて死になさい。骨ごと消し去ってあげるから」

 

「この不良執務官が!そっちがその気なら人質にも考えがあんぞ!」

 

直感的に嫌な予感がした。その場から逃げようと思ったが遅く上空から降ってきた爆弾に直撃した。

 

「「ティア」ナ!!」

 

少し離れた所にいたおかげで爆弾の直撃から逃れられたギンガさんとスバルは私の心配をしてくれるが、大した怪我はしていない。その代わり

 

「…」

 

スバルに会う前に美容院で整えた髪はアフロになり、買ってから一回しか来てない私服はボロボロになった。

 

怒りでプルプル震える私を見て別の危険を悟ったギンガさんとスバルは私から離れる。

 

「あんたよくもやってくれたわね」

 

バリアジャケットを装着する。やられたらやり返す。人質?そんなものはもう知らない。

 

「ぷぷぷ。いや、その髪型と服も良いんじゃね?斬新だよ。最先端だよ」

 

「じゃあ、あんたには更に最先端をあげるわよ。真っ赤に染まった服をプレゼントよ」

 

「わりーけど、それは俺の趣味じゃないな」

 

その声と同時に学園から子供たちと乗客と思われる人達が飛び出してくる。

 

その光景に戦闘を開始しようとしていた私の足も止まる。これは予想外だ。

 

それを見て他の管理局の人達が慌てて人質を保護する。喜んでいるが、私には疑念しか湧かない。何を考えている?

 

「どーしたのよ、突然。何考えてんの?」

 

「お前がいたら、交渉なんてできるわけないだろ?だから諦めて逃げることにしたわ」

 

「この状況で逃げれると思ってるわけ?」

 

学園は管理局が完全に包囲している。いくらこいつでも逃げられる隙は全くない。

 

「思ってるに決まってるだろ。色々手はあるんだよ。例えば」

 

人質に気を取られて学園の方から完全に目を離していた隙にあいつは学園の屋上に立って魔法を発動させようとしていた。楽しそうに笑っている。嫌な予感しかしない。

 

「突然大爆発が起こる…とか?油は火で燃えるって知ってるか?」

 

その言葉と同時にあいつは火の魔法を放った。しかしその方向は私の方向ではない。向かう先には大破した飛行機。ヤバイ!!

 

「全員死にたくなければ、その場に伏せなさい!」

 

急いで全員に伏せるように命令した直後に大爆発が発生する。

 

その大爆発で発生した煙で視界が完全に塞がれる。暫く経って視界が開けて来た時に目の前には

 

見るも無惨な姿になった学園と飛行機の残骸が転がっていた。周囲の被害も甚大だ。普通に考えればあのクソヤロウも死んだと思うだろうが、あいつがこんなことで死ぬ訳がない。自分が逃げる隙を作るために飛行機を爆発させたのだ。

 

「誰がこの跡始末をしなきゃいけないのよ…」

 

周りが予想外の事態に呆然としている中私は1人呟いた。


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