どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ   作:はないちもんめ

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久し振りの連続投降


1.3 細かい所には目をつぶることも大切さ

「ティアー!!久し振りーー!!会いたかったよ!!」

 

「あー、もう会って早々抱きつかないでよ!恥ずかしいじゃない!」

 

「だって半年振りの生ティアなんだよ!?もうちょっと私の感動を分かってよ!!」

 

「はいはい」

 

思わず苦笑してしまう。確かに半年以上会わないということは六課に居た時からすると考えられないが、ここまで感激することだろうか。

 

とはいえ私も嬉しいことには代わりないし、スバルが私に会うことを心から喜んでくれることには素直に感謝したい。

 

あいつも多少はこういう気持ちを持つべきなのだ。クソニートで犯罪者の分際で私のような美少女エリート執務官と二人で食事に行けることを心から感謝すべきなのだ。

 

「じゃあ、ティア!まずはご飯食べよっか!」

 

「あんたがご飯食べたら一、二時間じゃ済まないでしょ?だからちょっとその前に私の買い物に付き合ってくれる?」

 

まあ良い。今日は本当に久し振りの休暇に親友と会えているのだ。今は諸悪の根元のことは忘れよう。

 

「うん、いいよー。でも、何処に行くの?」

 

「知り合いのアイテム屋兼情報屋よ。執務官として行くわけには行かない場所だから休みの日じゃないと行けないのよ」

 

「?どういうこと?」

 

頭をかしげるスバル。まあ、この説明だけじゃ分からないわよね。

 

「付いてくれば分かるわよ。とりあえず一緒に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

「おう、嬢ちゃん!久し振りじゃねぇか!今日は何のようだ?それとそっちの女の子は誰だ?嬢ちゃんと同じく別嬪だな」

 

「久し振りですね、タジルさん。新しく入荷されたアイテムを見に来たんですよ。掘り出し物があるかもって。そしてこの子はスバルです。まあ、私の相棒ですね」

 

「始めましてタジルさん!私スバルって言います。仲良くして下さいね!」

 

「ああ。あんたほどの美人ならこっちからお願いしたいくらいだぜ。それに素直な子じゃねぇか。嬢ちゃんとは大違いだな」

 

「余計なお世話です。大体私がこうなったのは、ほとんどあいつとタジルさんのせいじゃないですか」

 

「それは違うぞ。ほとんどあいつのせいだ。俺はほとんど関係ない」

 

「ああ。それもそうですね。失礼しました」

 

「あいつは周囲に悪影響を与える天才だからなぁ…」

 

「本当ですよね…」

 

「あのー、ちょっと良い?」

 

私とタジルさんがしみじみとこの世の不条理について嘆いているとスバルが声をかけてきた。

 

「どうしたのよ、スバル?」

 

「さっきから二人が言ってるあいつって誰?」

 

「何だ嬢ちゃん。話してなかったのか?」

 

「そういえば、話していませんでしたね」

 

口に出すと問題を起こしそうで嫌だったから、そう言えば話していなかった。

 

しかし何と説明すべきか。あれほど説明し辛い奴も難しい。何と言うべきか…

 

「スバル。台風って知ってる?」

 

「知ってるけど、それがどうしたの?」

 

「それみたいな奴よ」

 

「意味が分からないんだけど!?」

 

何故分からないのだろう。これだけ分かりやすい説明もないだろうに。

 

隣ではタジルさんが我が意を得たりと言わんばかりに頷いている。分かりやすいですよね?この説明。

 

「流石嬢ちゃんだ。正にそうだな」

 

「ですよね?これ程分かりやすい説明もないですよね?」

 

「ああ、ないな。ついでに言わせて貰えばあいつには台風の目何て優しいものは付いてないがな」

 

「全部が暴風域ですからね。辺りにあるものを片っ端から巻き込んでいきますからね」

 

「二人で盛り上がらないで!?私も会話に参加させて!台風みたいな人ってどんな人なの!?」

 

「「会えば分かる」」

 

「結局そーなるの!?」

 

この説明で分からなければ会うしかない。会えば後悔しかしないだろうが。

 

そんな話をしていると視界の隅に虫が飛んでいることに気が付いた。

 

「姐御ーー!!こんなとこで会うなんて奇遇ですね!やっぱり俺と姐御は何かの縁で結ばれて、つぶほう!!」

 

「ティア!?」

 

どうやら突然私たちの中に入り込もうとした虫を無意識に潰してしまったらしい。スバルが何故か驚いているけど何かあったのだろうか?

 

「どうしたのスバル?何があったの?」

 

「今、正に、私の目の前で事件が起こってるよ!事件は会議室じゃなくてアイテム屋で起こってるよ!何でいきなり話しかけた人に魔法を使ったの!?」

 

「ああ、そうか、ごめん間違えたわ。執務官の時の癖で非殺傷設定を使っちゃったわ。次は殺傷設定で殺るから許してね」

 

「違うよ、ティア!?論点がずれてるよ!修正不能だよ!だからデバイスを構えたら駄目だったらぁ!?」

 

クロスミラージュを構え、虫の息の根を止めようとする私を羽交い締めにして止めるスバル。離しなさいよ、この変態はあいつと違う意味で救いがないんだから。

 

「おい、止めろよ!」

 

「ほら、ティア、怒ってるよ!ごめんなさいって素直に謝って!そうすればきっとこの人も許して」

 

「何でその青髪の女の子は姉御を止めるんだよ!止めんじゃねぇよ!」

 

「私!?私に怒ってるの!?何で!?どう考えても助けてあげたと思うんだけど!?」

 

「誰がそんなこと頼んだよ!余計なことしやがって!さあ、姐御!俺は何時でも準備はできてるぜ!」

 

そう言うと変態は一瞬でふんどし一丁の姿になる。正に早業。恐らく一秒もかかっていない。このことに感動も尊敬もしないけど。

 

その姿を見てスバルは顔を真っ赤にして叫び声をあげて、タジルさんはため息を吐く。私は道端に落ちている犬の糞を見るような目でソイツを見る。

 

しかし、そんな他人の目を欠片も気にしない変態はふんどし一丁のまま、四つん這いになり叫び続ける。

 

「さあ、俺を踏んでくれぇ!何時ものように鞭で叩きつけてくれぇ!クロスミラージュの先っぽでグリグリしてくれぇ!早く姉御の攻めで俺の昂りを静めてくれぇ!」

 

ようやく自分達とは種族が違うことを悟ったのかスバルはゆっくりと距離を取っていく。それが正常な反応ね。

 

できれば私もそうしたいが、この変態は何かしらの処理をしないとあのような下品な言葉をずっと叫び続けるだろう。

 

私の評判を考えても、それはあまり良いことではない。

 

なので私は店内を見渡すと手頃な木刀を見つけた。

 

「タジルさん。これ幾らですか?」

 

「嬢ちゃんはお得意様だしな。無料でやるよ。ずっとあんな18禁ワードを叫ばれたらこっちも迷惑だしな」

 

「ありがとうございます」

 

そう言うと木刀を振り回しながら変態に近付く。そんな私の行動が眼に入ったのか変態も流石に顔を青褪める。

 

「ちょっ、姐御?流石にそれは愛情表現にしても度が過ぎてると思うんだ。そりゃ、姉御がツンデレなのは俺も知ってるよ?だけど、ツンデレと暴力は違うんだよ。このままじゃ唯の暴力になって、姉御の魅力のツンデレが失われて、ウギャー!!!」

 

何か訳が分からないことを言う変態のケツの穴に無言で木刀を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、このアイテムも面白いですね」

 

「だろ?手に入れるのに結構苦労したんだぜ?スバルの嬢ちゃんのデバイスもまだカスタマイズの余地はあると思うぜ?これなんかどうだ?」

 

「ねぇ、二人ともスルーなの?あそこでケツから血を出して全く動かない人には触れないの?」

 

せっかくタジルさんが良いアイテムを紹介してくれてるのに何を見てるのかしら。

 

「唯の生け花でしょ?あれがどうしたのよ?」

 

「あれのどこが生け花なの!?どう考えても殺人現場何だけど!?」

 

「まあまあ、落ち着けよ。これが気にくわないなら、あれならどうだ?今のマッハキャリバーの出力を10%上げられるぞ?」

 

「確かに凄いですけど、これ明らかに正規品じゃないですよね?違法ですよね?」

 

「大丈夫よ、スバル。今日の私たちは非番で管理局員じゃないんだから。ちょっとくらい法に触れても問題ないわよ」

 

「問題しかないよ!ティアー戻ってきてー!私が知ってるティアは何処に行ったの!!?」

 

「そんなもんとっくの昔に廃品回収に出されたわよ」

 

「懐かしいな。会ったばかりの時の嬢ちゃんもこんな感じじゃなかったか?」

 

「そうですね。今では信じられませんけど」

 

あのバカに完全に毒されてしまった私はもう戻れないだろう。

 

できれば、スバルにはこのまま純真でいて貰いたいものだ。純真でいて下さい、お願いします。

 

「そう言えば、タジルさん。情報の方は?」

 

「おう、忘れてた。ほれ、これだ」

 

「ありがと。これ代金ね。機会があればまた来るから」

 

まだギャアギャアと騒いでいるスバルを引っ張って店を出る。これで用事は終わりだ。後は、せっかくの休みを精一杯楽しもう。

 

「ごめんね、スバル。わざわざ付き合わせて。それじゃ、ご飯行こうか」

 

「そ、それは良いけど。ティアは随分性格変わったね・・・」

 

「変わらざるを得なかったのよ・・・どうして変わったのか教えてあげようか?一日じゃ終わらないと思うけど」

 

「本当にごめん!!もう言わないから!!だからその目を止めて!!」

 

おかしいわね、皆私がこの話をしようとすると止めるのよね。そんなに怖いのかしら?

 

そんなことを考えていると携帯の音が鳴った。私とスバルは同時に携帯を取るが私のではなくスバルの方だったようだ。

 

何を話しているのかは分からないがスバルの顔からするとただ事ではないようだ。その様子から私も自然と臨戦態勢になる。

 

内容を知るために、スバルの会話が終わったのを見計らって話しかける。

 

「どうしたの?ただ事じゃなさそうだけど」

 

「うん、それがね。飛行機の墜落事故があったんだよ」

 

「飛行機の墜落事故!?大事故じゃない!!」

 

「しかも、それがねSt.ヒルデ魔法学院に落ちたんだって」

 

「St.ヒルデ魔法学院!?」

 

ヴィヴィオたちの学校じゃない!!

 

「ヴィヴィオたちは!?大丈夫なの!?」

 

「まだ分かんない。飛行機が落ちたって情報しか入ってないから。それで念のためにギン姉からできれば手伝って欲しいって頼まれたの!!ティアも来てくれる?」

 

「当たり前でしょ!!」

 

その言葉にスバルが笑顔になる。

 

「ティアならそう言ってくれると思ってた!!じゃあ行こう!!」

 

「ええ。行きましょう」

 

皆待ってて。直ぐに助けに行くからね。

 

 

 

 




休みとは何だったのか

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