偉い人達が私を対リンドウの暗殺者と勘違いしている 作:九九裡
キングアーサーで敵ボッコボコにするのが最近のお気に入りです(いやGEやれよ)。
今は昔。彼女の物語はここで終わる。
ハッピーエンドと言っても、それがどのようなものかは多々考えられる。
例えばそれは。
例えばそれは。
例えばそれは。
例えばそれは。
例えばそれは。
例えばそれは。
例えばそれは。
人生はハッピーエンドの連続だ。
「……現状を表すなら」
爪牙を構える獣ども。
視界を埋める屑。
「間違いなく
来るといい獣共。
彼女は踏ん張り、得物を構える。
お前達が神を名乗るなど烏滸がましいったらないのだ。屑から這い上がったヒトの力を見せてやろう、と。
「友情、努力、勝利、でしたっけ。えっと、三原則?」
友情は得た。君がくれた。
努力はした。始まりは君のためではなかったけれど、巡り巡って君のため。
なら後はーー
「あなたに勝利を捧げましょう……いや、そんなもの要らないって言われちゃいそうです」
その様を想像し、くすりと笑いが溢れる。
エメラルドのような瞳から、ポロポロ涙を零しながら、必死に私の名前を呼んで。この場から連れ去られ逃げ延びた、あの子。
可愛い顔がぐちゃぐちゃだった。涙を拭いてあげたかった。
掴んでと手を伸ばしていた。叶うならその手を取りたかった。
ああーー
「未練、ですね」
振った神機が獣の横っ腹を裂く。溢れる臓物、鮮血、命。
光弾を防ぎ一息で懐に潜り込み殺す。
喉を掻っ捌いて殺す。
焼き尽くして殺す。
殺す、殺す、殺す殺す殺す殺す。
「でも、未練があるってことは」
獣の奥。思い通りにならず、喚いている獣の親玉。
アレを殺せば、私の勝ち。
「いい人生だったってことだ……ですよね。アグネス」
ああ、本当にーー
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〈side・アグネス〉
「きみがアグネス・ガードナーくんか」
やだもう……オオグルマファッ◯ューに遭遇してしまった。なんか私が支部長の手駒(笑)なせいか、いやにフレンドリーに話しかけて来るし。
なんなのこの人。ちょっと顔を寄せないで貰えます?誰かこの迷える仔羊にキ◯リトールガムを!
「……初めまして、オオグルマさん」
「ああ、初めまして。君は本部から送られて来たんだって?漸く日和見主義のあの男達も、自己保存のために重い腰を上げたということかな?」
「……」
いや、知らんし。
しかし本部には、やはり裏切り者がいるらしい。爺に報告せねばならぬ。母さんが自己ルートでそんな情報を確保した日には……そう、待つのはフェンリルの崩壊のみ。上層部の人間がまるっと生きていた痕跡さえ残さず消滅する未来しか見えない。凄腕のゴッドイーターでさえあの人には一発の銃弾で沈められてしまう……いや流石にそれは無理……無理、だよね?強ち不可能と言えないのが怖い。
ま、まあとにかく。母さんが動く前に爺に連絡してささっと自浄してもらおう。本部の老害が漏らした汚汁は同じく老害にモップでキュキュッと片付けさせるのが道理なのだ。
昔も、昔も、昔もーー
『私■■■にこ■■■ね!■■■!』
ーーああ。苛々する。
屑どもは幾ら駆除しても湧いてくる。台所の黒い悪魔みたいに。本当うざい。
「ひっ」
?、なんかオオグルマが青い顔してる。お腹壊したのだろうか。……うん、不摂生が祟ってそうではあるし。あんまり立たせたままにするのも悪いか。
私も私で、今日はユウとコウタとアリサの新人に向けたサカキ博士の解説講座に出席する予定なのだ。私も助手としてお呼ばれしてるから、早く行かないと。
私はオオグルマに軽く頭を下げる。
「それでは失礼します、オオグルマさん。ーー精々お気をつけて」
「……ッ」
たじろぐオオグルマ。
サヨナラの挨拶もないとは。ホントこの人嫌い。
永遠にサヨナラさせてやりたいレベルで大ッ嫌いだ。
私はオオグルマの顔も見ることなく踵を返すと、とっとことっとこ、サカキ博士の研究室に歩いた。
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「サカキ博士と」
「アグネス先輩の」
「「ワクワク☆フェンリル講座〜」」
ぱちぱちぱちぱち……とユウが一人拍手する音が虚しく響き、それっきり部屋は沈黙する。おいサカキ博士。アナタがやれって言ったんじゃないか。白けてるじゃん。今にもアリサさんの口から『ドン引きです』が飛び出しそうだよ⁉︎
そしてバカラリー。貴様はいつから寝ている。私のターン!ホルスターからクイックドロウ!
「起きて」パァン!
「ぎゃああああ!……あれ?死んでない」
跳ね起きると同時に体の無事を確認するコウタ。そのコウタの目の前にしゃがんで、私は特別に用意したリボルバー拳銃をプラプラ揺らす。
「今のは空砲。今日は寝たらこれで起こす。でもこのリボルバーには六分の一で実弾が入ってるから……何発目に当たるかな。心配しなくてもその時には眠れるから。エターナル」
「ぉ、おきまっす……」
「そう?良かった」
ヒクヒクとほっぺたを引きつらせてカクカクと頷くコウタ。目は覚めたようで何よりだ。アリサは顔が青いけれど、ユウはもう慣れちゃったみたいでやれやれみたいなおじいちゃん的な顔をしている。うちの爺とチェンジで。
あと心配しなくてもホントは全部空砲だから。……おい待て、誰だ今「えっ!?」とか思った奴。
「今日はオラクル細胞について学ぼうか。オラクル細胞が発生したのは2050年代。出現当初はアメーバ状だった」
サカキ博士がキーボードを叩くと、前世の中学校の理科で見たような、なんかうにゅうにゅした生き物がプロジェクターからボードに映し出される。
「しかし彼らはすぐにミミズ状、小動物状と急激に姿を変えた。その後は地球上のあらゆる物体ーー建築物や人間に始まる生命体、兵器などを捕食しながら今のアラガミという姿を取るようになったとされる。 その旺盛な食欲と進化速度で瞬く間に地球上の都市文明の大部分を壊滅させた、まさに人類の敵といえるね」
画像はアメーバからミミズ、犬と変わり、最終的にコンクリをボリボリ食べてるオウガテイルに変わった。
アラガミの体を構成するそれぞれのオラクル細胞は、「眼であれば眼らしく」「牙であれば牙らしく」集まってその器官を形成し、アラガミの個体としての姿をなしている。
特にコアと呼ばれる器官はアラガミを構成するオラクル細胞全体の統制を司る、謂わば心臓や脳に当たる部位であるので、これが無くなるとオラクル細胞は霧散しアラガミは消え去るとされている……が、ハンニバルなんかはコアを自分で作れるんだったかな、確か。
しかし霧散したオラクル細胞はしばらくすると再び集合し新たなアラガミを形成するため地球上からアラガミを駆逐する事は事実上不可能なのだ。
「……ので、私達の目的はアラガミの根絶じゃない。それは研究者が模索すること。私達はあくまで、アラガミの脅威から人々を守るために動く。これだけは、忘れないように」
「はい」
「うす!」
「……はい」
うん。よい返事ですな。
「博士、続きどうぞ」
「ああ。アグネス君の言う通りだね。次に、アラガミがなぜ形状を変えるのかだけれどーー」
結局その日、空砲はもう一回鳴った。肝太いなコウタ。
授業に関しては特に出番は無かったが、オオグルマが出たならそろそろの筈だ。
万事を尽くして、天命を。
一先ず報告を兼ねて実家に電話しようか。私は受話器をーー
『おおアグネスゥゥ!アグネスか!どうした⁉︎極東支部で虐めに遭っておらんか⁉︎変わったことはないか!すぐにでも迎えをーー!』
「死ね」
ガチャン。ツーツーツー……。
掛け間違えました。やはり爺は頼りにならなかったようだ。
気を取り直して。
『アグネスッ⁉︎気に障ったのなら謝ろう!頼むから嫌いにならんでくれんかのぅ!』
「安心して。元から嫌いだから。それよりーー真面目な話。頼みたいことが、ある」
『ふむ。任せるがよい』
……あるぇ?
「返事早くない?まだ何も言ってないけど」
『真面目な話なのじゃろう。ワシはアグネスを信用しておる。必要なことなんじゃろう?』
「……」
『アグネス?どうかしたかの』
「……偽物?」
『酷いなワシの孫!でも可愛いから許す!』
……好きじゃないけど。ちょっとだけ、評価を上方修正しようかな。
『好感度アップも狙えるしの。なんじゃ、「おじいちゃん大好き!」と言ってくれてもーー』
やっぱダメだコイツ。
まあ今みたいに、いつもの方が安心してしまうけれど。
「シックザール支部長!アグネス・ガードナーは本当に味方なのですか⁉︎私のことを殺しそうな目でーー」
「(そういえば洗脳は好かないと言っていたな……。)問題ない。単純に君が嫌われているだけだろう」
「しかしですな」
「ーー問題ないさ。ああ、問題ないとも」