ロキ・ファミリアに父親がいるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
秋夜は満足と達成感に満たされながら目を覚まして背伸びをする。
充実した一夜に心から満たされた秋夜の隣ではシーツに顔を半分隠しているリヴェリアが秋夜を睨んでいた。
「覚えていろ………」
辱めを受けさられ、その後も何度も何度も執拗に攻められたリヴェリアは羞恥心でいっぱいだった。
今も体が碌に動かないリヴェリアの頭を秋夜は優しく撫でた。
「リヴェの反応が可愛くてつい、な。でもリヴェも嫌じゃなかったろ?」
「………言わせるな、馬鹿者」
シーツで顔まで隠すリヴェリアに秋夜は微笑みを浮かべたまま。
普段は見せない自分だけしか知らない妻の反応に秋夜は嗜虐心が刺激されて張り切ってしまった。
反省も後悔も微塵も存在しないが、リヴェリアが復活したら説教ぐらいは覚悟しておかなければと心に留めておく。
顔を隠してそっぽを向かれた秋夜はシーツの上からもう一度リヴェリアの頭を撫でて服に着替える。
「皆からは俺が言っておくからもう少し寝てろ。普段からお前は頑張り過ぎなんだから」
「………」
無言で答えるリヴェリアに秋夜はやれやれと呆れながらこれはやり過ぎたと反省しない。
むしろ、今からもう一度してもいいとさえ思っているが拗ねているリヴェリアにこれ以上して魔法でも放たれたら流石に命に関わる為に控えておく。
何事も引き際が肝心。
秋夜は部屋を出て取りあえずは朝飯と思い大食堂に足を運んだ。
「はよ~」
欠伸をしながら団員達に挨拶を済ませる。
「お父様、朝からだらしないですよ」
大食堂に足を運んだ秋夜にいの一番の言ってくるルフェルはいつものエルフが好むような服装ではなく極東が着る着物を身に着けている。
純白な色に桜柄が施された着物に秋夜は目が覚めた。
「おおっ!似合ってるぞ、ルフェル!
秋夜は妻と娘に送る物に関しては妥協はしない。
全て
愛ゆえに金は惜しまない秋夜は今すぐにでも娘を抱きしめてその喜びを行動で表現したいが、それで娘の機嫌を損ねてデートを却下されたら膝から崩れ落ちてしまう。
「そんなに楽しみにしていてくれたなんてお父さんは嬉しいぞ!」
「喜んでいただけたら何よりです。ところでお母様は?」
「リヴェなら遅くまで起きていたからまだ寝かせている。日頃から頑張っているからたまにはゆっくりと寝かせてやってくれ」
「そうですね。お母様は常に忙しい方ですし」
秋夜の言葉に納得するように頷くルフェルは本当にいい子だなと思う。
こんな愛らしい我が娘に
愛娘を見てしみじみそう思っていると秋夜の後ろからティオネ達が大食堂にやってくると秋夜の顔を見て勢いよく後方に跳んだ。
それも頬を赤く染めて。
「……お父様、何かしたのですか?」
「いや、待てよルフェル。真っ先に躊躇いもなくお父さんを疑うなんて地味にショックだぞ。何もしてねえよ、なぁ、ティオネ、ティオナ、レフィーヤ」
「うううううっさい!この変態!野獣!」
「そうだそうだ!!」
「秋夜さんはもっと慎みを知るべきです!!」
「………お父様、少々御話が」
「おい、お前等!!朝から何言いやがる!?あんなの当然だろうが!!というかいったいどこに変態要素があるって言うんだ、ああ!?あの程度は普通なんだよ!!過剰に反応し過ぎだ!!」
三人の思わぬ発言に反論する秋夜。
そのすぐ後ろではルフェルは感情の込められていない目で秋夜を見ている。
これは本気で何とかしなければ朝から説教される。
ここ最近本気で危惧しているのはモンスターではなく娘からの説教なのだ。
娘の説教を受けるか、階層主を倒すかの二択に迫られたら秋夜は迷うことなく階層主を倒しに行く。
「第一盗み聞きしているお前等の方がよっぽど変態だろうが!?俺達は夫婦、接吻だって当たり前だ!!そっから先も当然の行為だ!!俺は正しい!!」
「ちょっとそこに正座してください。全員」
愛娘の一言に逆らえず朝から説教を受けることになった秋夜達だった。
「ああ、せっかくの愛娘とのデートが………」
「しつこいわよ。いい加減に諦めなさい」
賑わう街中で肩を落とす秋夜にティオネが呆れながら告げる。
説教を受けた秋夜はルフェルだけでなくティオネ達と共に祭りに参加している。
これでは子守りを任された親だ。
いや、親であることには変わりはないが予想していたのよりも断然違う。
「お父様がお母様とそういう行為をしたのは……まぁ、いいでしょう。ですが、見せつけるのは別問題です」
頬を朱色に染めながら咎めるように告げるルフェルに秋夜は反論する。
「何を言う、愛娘よ。俺はティオネ達が見たいものを見せただけだ。そこで恥じればそれは愛を恥じるということ。溢れんばかりの俺とリヴェの愛を見せてやっただけだ」
「そこは恥じてください!!」
当然と言わんばかりに胸を張る秋夜にレフィーヤが顔を真っ赤にして叫んだ。
だが、秋夜は鼻で笑う。
「ハッ、恋もしていない小娘達に俺とリヴェの愛に意見する資格はない!」
「私はしてるわよ!」
秋夜の言葉に反論の言葉を述べるティオネだが、秋夜は聞き流す。
「そうですか、でしたら私も恋をしてもいいですね。そうすればお父様とお母様の愛に意見する資格は得るのですから」
「駄目だ、ルフェル!!いいか、男っているのは常に女を欲情の目を向けている危険な生物なんだぞ!!それでもルフェルが恋をしたいというのなら俺は涙を呑んで耐えるが、その前にルフェルが恋をしたい
「駄目だこりゃ………」
真剣な顔つきでルフェルに問い詰める秋夜の手には既に刀を握っており、これからの先が容易に想像できたティオネ達はこの親バカに呆れてものも言えない。
その真剣さを普段から出せと内心で愚痴る。
ルフェルもこんな親バカを持って苦労しているな、と同情の眼差しを送る。
「ラウル?ベート?クルス?それとも他派閥?もしかしてガレス……はないか。フィンという線もなくはないが少しでいいからお父さんに教えてくれない?ちょっと今から話をしてくるから」
微笑みを浮かべるも眼は笑っていない秋夜にルフェルは嘆息する。
「嘘ですよ、お父様。私は恋一つもしていませんから刀から手を離してください」
「本当か?無理しなくていいんだぞ?」
「していません。しつこいと嫌いになりますよ?」
「さぁ、祭りを楽しむぞ!お前等今日は俺の奢りだ!!」
ガラリと意識を祭りに切り替える秋夜にルフェルはまた息を吐いた。
「大変ね、ルフェルも……」
「いいえ、私を大切にしてくれているのは本当ですから。ただ、もう少し落ち着てくれたらと思うと………」
「うんうん、今日は秋夜のお金をガンガン使っちゃおう」
「あはは……」
肩に手を置くティオネ達に苦笑するレフィーヤ。
「あ、そうだ。ルフェル、悪いがティオナ達を連れて先に闘技場に行って席を取っといてくれ。俺は整備している愛刀を受け取ってくるから」
「え、それは………わかりました。行きましょう、ティオネ、ティオナ」
「え、ちょっと」
「押さないでよ~」
「まぁまぁ。レフィーヤはお父様と一緒にいてあげてください」
「は、はい」
ルフェルに背中を押されて先に闘技場に足を運んでいくティオネ達。
三人の姿が見えなくなると秋夜はレフィーヤに問う。
「どうした?そんな思い悩んだ顔して」
「え?わ、私そんなに顔に出てますか?」
「ああ。ルフェルもそれに察したんだ。後で礼を言っておけよ」
突然の秋夜の言葉とレフィーヤの様子に察したルフェルは邪魔者にならないように空気を読んでティオネ達を連れて行った。
落ち込んでいる自分に気付いて察して行動できるこの親子は凄いなと思いながら普段はだらしなくてもこういうのには鋭いからずるいなと思ったレフィーヤは思い切って尋ねた。
「どうして私もリヴェリア様の後釜なのですか………?」
レフィーヤは魔導士。そしてルフェルも魔導士だ。
片方はLv.3に対して片方はLv.5。
白兵戦が苦手なレフィーヤと違って白兵戦もこなせるルフェル。
魔導士という一点に関してもルフェルの方が数倍実力は上だ。
当然といえば当然かもしれない。
ルフェルはオラリオ最強の魔導士とオラリオ最強の剣士であるリヴェリアと秋夜の二人の子供なのだから。
何もかも全てがレフィーヤを上回っているルフェル。
にも拘らずにレフィーヤもルフェルと同じリヴェリアの後釜とされていることが不思議で仕方なかった。
「………まぁ、確かにルフェルはリヴェに似て美しく可憐で一輪の華のようで眉目秀麗の自慢の娘だ。性格だって真面目で努力を怠ることなく素直で優しく察しもいい。そんなルフェルに近づいてくる
所々娘自慢をしながら語る秋夜にレフィーヤの耳はへこむように曲がる。
聞いただけでもう勝ち目なんかないではないかと落ち込む。
「だけどな、レフィーヤ。完璧な奴なんてこの世の中で一人もいないんだぞ?」
「え?」
「ルフェルは確かに才能が豊富だ。それでも欠点というものもある。そこをレフィーヤが助けてやって欲しいからリヴェはお前を自分の後釜にしたんだ」
「えっと……ルフェルさんの補佐としてですか?」
「違う。ルフェルの背中を預けられる人物としてお前を選んだんだ。いずれは【ロキ・ファミリア】の魔導士部隊の双璧として立って貰えるようにな」
信用しているってことだ。と付け加える秋夜にレフィーヤの唖然とする。
そんな風に思われているとは微塵も思ってはいなかった。
「そもそもレフィーヤ。お前は自分では気づいていないのかもしれないがお前も十分ルフェルに負け劣らずの魔力を持ってんだぞ?いや、攻撃魔法だけならルフェルを上回っているんだからもう少し自分に自信を持てと前にリヴェから言われただろうが」
「あ……」
前の遠征で似たようなことを言われたことを思い出した。
「俺も同意見だ。レフィーヤ、お前は十分な実力と才覚はある。後はお前の努力次第だ」
「きゃ」
唐突に頭に手を置かれて小さな悲鳴を上げるレフィーヤの頭を乱暴に撫でる。
「ルフェルの背中を守ってあげてくれ。あいつは無駄に俺に似て無茶をすることもあるからな」
「はい………っ」
愛娘の背中を小さな妖精の魔導士に託す秋夜はその返答に満足気味に頷く。
「後、
「………はぁ」
見直したと思ったらやっぱりこの人は親バカだなと呆れたレフィーヤだった。