東京喰種:re 皇と王   作:マチカネ

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 あの御方が出てきます。


第27章 終結

 19区の地下大空洞に潜ったカネキとアヤト。他には誰の姿もない、2人以外で存在しているのは“落とし児”のみ。

 貴未の予想通り、地下には“竜”が残っていて、多くの“落とし児”が胎児状態で眠っていた。

 地下の毒の濃度は高い、半喰種と喰種にもきついので2人はガスマスクを着用。

 無線で貴未のサポートを受けつつ、進んでいく。

 何故か進むに連れ、カネキは彼女、リゼの気配を強く感じるようになる。

『嘉……の……ノートに……った……資料と……致……』

 やがて電波状態が悪化、貴未との通信が不能に。

 それでも歩みは止めることは出来ない。

 バキッと殻が割れ、“落とし児”が産み落とされた、かなりの数の。

 目覚め動き出す“落とし児”たち。

 飛び降り、走り、カネキとアヤトは逃げるが、向こうも早い、このままでは追い付かれる。

「食い止める、行け!」

 立ち止まり、

「お前の代わりはいねーんだよ、こんな所で体力使うな!」

 叫ぶアヤト。

「真っすぐだ、進め、カネキ」

 向かい来る“落とし児”に立ち向かう。

「後で」

 まっすぐ進むカネキ、アヤトは背中で見送る。

「頼むぜ、クソ兄貴」

 

 

 

 

 最前線でリオはフクロウと戦い、盾と剣の両方の役目をこなす。六月は赫子を巻きつけ、拘束し動き封じ。

 そこを各捜査官たちと【黒山羊】の喰種たちが攻撃、整った連合連携。

 傍から見ればフクロウを追い詰めているように見えるが、このフクロウは傀儡に過ぎず、遠隔で操っている奴を何とかしない限り、倒せやしない。

 操っていた【ピエロ】のウタ、ドナード、イトリ、ニコを感覚に優れたヒナミが見つけ出し、亜門とヨモが戦う。

 

 

 突如、暴れ回っていたフクロウの動きが止まった。亜門とヨモがやってくれた証。

「“梟”の動きが止まったぞ」

「包囲して、抑制剤をボルトでぶち込め!」

 テンションマックスの捜査官たち。

 肩で息をしている六月、疲労が激しい。リオも疲労はしているが、まだ頑張れる。

 これで残る強敵は黒帽子『V』だけだと思われた矢先、新たな敵影が確認される、それも多数。

 現れたのは『魔猿』と『ブラックドーベル』、『あんていく』の仲間の古間とカヤが率いるチームのはず。

「終わったらコーヒーにしよううううううううう」

「あなたアナタアナタ冗談じゃないわんわんわんわん」

 様子がおかしい。

「これほど変態的なクインケ造り、嘉納はまことに惜しい人材だった」

 ニチャと芥子は笑う。

 【オルゴール】ドイツ語で【シュピールドーゼ】。過去に廃棄されたアイディア、自立式人型クインケ。クインケの赫包コントロールと遠隔起動機構を応用している。

 喰種の身体能力をそのまま生かすのが特長、ドイツで試験運用されたが、旨く行ってはいなかった。

「古間さん、カヤさん……」

 動揺するリオ。SSSレートの強さを持つ彼の弱点、優しさ。

 力の差はある、しかし古間とカヤ相手では、とてもではないがリオは戦えない、一歩ずつたじろぐ。

 古間が襲い掛かってくる、反撃できないリオ。

 振り下ろされた赫子を《ハイアーマインド(高次元精神領域)もしくは[天使の羽ばたき(エンジェルビート)》が受け止める。

 リオと古間の間に割り込んできた田中丸。

「ここは引き受けよう、リオボーイは“落とし児”を頼む」

 一瞬だけ、躊躇はあったものの、

「解りました」

 “落とし児”たちに向かう。

「やれやれ、操られるとは情けないではないか、お猿さん!」

 力任せに古間を殴りつける。

 

 

 和修家は捜査官の死体を喰っていた。

 ニチャニチャ、勝ちを誇ったように芥子は告げる。

「今、力は我にあり、我々こそが“法の王”。これからは我々が、我々にとって都合の良い、秩序をつくる」

 SSSレートの芳村の赫包で造ったクインケを展開、一振りで何人もの捜査官の命を奪う。

 フクロウとの激戦で疲労しているところへの敵の増援に加え、SSSレートのクインケを持った芥子。

 形勢は逆転してしまった。

 だが捜査官たちは諦めやしない、疲労し体に鞭を打ち必死の覚悟で戦う。

 芥子率いる『V』、『ピエロ』の雑兵、“落とし児”、クインケと化した古間とカヤ、『魔猿』と『ブラックドーベル』の猛攻。

 健闘むなしく、徐々に追い詰められていく捜査官と【黒山羊】たち。

 ウタを叩きのめしたヨモが駆けつけて、ニシキ、月山『あんていく』メンバーで芥子を連携攻撃。

「功善の使いガラスがっ」

 3対1という不利戦いなのに引けを取らず、むしろ押していたが、いきなり背後からの攻撃を受け、芥子は肩ごと右腕を切断される。

「秩序をつくる……か、たく、旧態依然とした、お前らの思想で法なんて作れるわけ、ねーだろうが」

 背後にいたのはエト、ドナードが死んだことにより、コントロールを脱して復活を果たす。

「秩序って言うのは“全員に都合がよくなきゃ”力も保てねーんだよ」 芥子に中指を立てる。

「だからバランスが壊れた今」

 上から飛び降りて来たのは、

「俺らには、クソほど話し合うことがある」

 24区で殿を務めて死んだと思われていたナキ。

 ナキだけではない、白スーツも健在し参戦。

「話し合う気がねーんなら、消えろ」

 オオッと、ナキに白スーツが声援を送る。

 

「ジェレミア・ゴットバルト、助太刀いたす!」

 戦線にジェレミアが乱入、メーザーバイブレーションソードで敵を斬る、今回はマスク無しで素顔のまま。

「ジェレミア殿、助太刀はありがたいが、我儘を言わせてもらえば、あと一人、腕利きの助っ人が欲しいところだ」

 感謝しつつ、篠原は本音を漏らす。何せ、フクロウ戦で疲労しているので。

「それなら心配ご無用と申しておきましょう、とびっきりの助っ人が来ています」

 

 

「やれやれ、遠路はるばる来たというのに、ライはいないのか」

 ジェレミアと同じ、小型の人間用メーザーバイブレーションソードを持った女性が現れた。

 周囲を見回し、

「どうやら、あんたが敵で最強のようだな」

 ピタリと芥子で視線を止める。

 芥子は交戦していたけヨモ、ニシキ、月山を同時に弾き飛ばす。

「なめるな、人間の女風情が」

 ニチャと相手を人間の女と侮った嫌な笑い。

「私はナイトオブナイン、ノネット・エニアグラム」

 彼女が名乗った時には、既に芥子は斬られていた、喰種でなかったら真っ二つになっていただろう。

「なっ」

 いつの間に移動した? いつの間に斬られた? 戸惑う芥子に連続攻撃。

 ヨモ、ニシキ、月山の三人を相手にしても引けを取らなかった芥子が防戦一方を強いられる。

 

 

 突然現れたノネットの戦いぶりに見入るヨモ、ニシキ、月山。

 一体、彼女は何者なのかと思っていたら、

「彼女と互角に渡り合えるのはライだけだ」

 と亜門が話してくれる、彼はドナードを倒し、ここへ来た。

 孤児院の仲間たちは亜門にとって家族、その家族を喰ったドナードは、許せない仇。

 同時に育ててくれた父でもあり、ドナードも亜門だけには手を出さす、捜査官に掴まった時も、致命傷を与えられているのに亜門の元へ向かおうとした。

 絡み合った葛藤を乗り越え、亜門はドナードを仕留めた。

「あのマドモアゼル、それほどに強いのですか」

 月山は、ライの強さは松前か聞いて知っている。

 そのライと互角に渡り合えるとは、どれほどの手練れか。

 ヨモ、ニシキにしてみても、現実に目の前でノネットの強さが示されている。

 見とれてばかりではいられない、ヨモ、ニシキ、月山、亜門も戦闘に加わる。弱ければ足手まとい、邪魔になるだけだが、この三人と亜門は、そうではない実力を有す。

 

 

 チッ舌打ちする芥子。とんでもない戦闘力を持つノネット、おまけにヨモ、ニシキ、月山に亜門まで攻撃を仕掛けてくる。

 “落とし児”、ピエロ、フクロウ、【オルゴール】。何重にも仕掛けをしていたのに、【JAIL】、死んだと思われていたナキたち白スーツの乱入、エトの復活、ノネットとジェレミアの参戦。

 ことごとく計算が狂い過ぎた。

 今や計画は破綻してしてしまった。ならばいつまでも戦っている意味はない、芥子は、この場を逃げし、体制を立て直そうことを決める。

 一気に後方へ飛び、距離を稼いでから逃げようとした。

「どこへ行くつもりですか、逃がしはしませんよ」

 退路を宇井とハイル、平子が塞ぐ。

「なっ!」

 最悪の失態、ノネットに全く無防備状態をさらけ出してしまう。

 しまったと認識したときには、背中を深々とメーザーバイブレーションソードで斬られたいた、一回ではない、二回もXの字に斬られる。

 Xの字の致命傷。動きが止まったところへ、平子が両手に持ったクインケで顔を輪切り。

「竜に、われわれの、せ――」

 それが芥子の最後の言葉。

 

 

 芥子が倒された上、残存勢力は一割。

「なんだ、殆ど終わっているじゃないか」

 腰に小狐丸を差したライが現れた。

 動揺が『V』を襲う。ライは旧多が殺しに行ったはず、なのに何故ここにいるのか?

 入れ違いになったのかとの僅かな願望も、ライの手にある長巻が打ち砕く。

 あの長巻は旧多の持ち物、それがライの手にあるということは1つしか答えがない、万事休す。

 生き残っていた『V』逃走を開始。

『追跡班以外は戦闘を終了する。各自、負傷者の保護に当たれ。繰り返す――』

 本部からの指令、『V』との決戦が終了した瞬間である。

「ライ、久しぶりだな!」

「ノネットさん!」

 瞬きの間さえも無かった。あっという間にライを捕まえ、ブリタニア式乳固め。

 流石のライも、この必殺技からは逃れらる術無し、幸せな悶絶を味あう。

 男性陣の中には羨ましそうに見ている者が多かったが、乳固めの経験者であるウリエは同情的に見ていた。

 

 

 

 

 ほぼ同じ時間、貴未は毒のある“落とし児”を産み落とす“竜”、卵管の消滅を確認。

 これで捜査官と喰種の連合の勝利が確定した。

 

 

 




 ノネット姐さんの登場! 腹パンチ、ブリタニア式乳固め、お持ち帰りのコンボ、あれ良かった。
 原作通り、次回は6年後になります。

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