コミック版との差異はどうなるのでしょうね。またスケアクロウはどうなるのかな?
【黒山羊】からの返事はyesであった。
CCGと喰種との協力関係、その先駆けとなる【黒山羊】と手を結ぶ。
今後の対応、それぞれの取り決めのため、急遽、CCGと【黒山羊】との話し合いが行われることなる。
話し合いの場所がCCGなら喰種側に不利であり、警戒されてしまう。かといって24区へ行くのも、とても危険。
そこで選ばれたのは東京ドーム。
ここならCCG、喰種双方の知っている場所であり、広い分、いざとい時に対処が取りやすい。
「やはり、こうなったか」
私室で政は報告書に目を通す。
それなりの数の捜査官たちがCCGを出奔、旧多とオッガイの仲間になってしまったとの内容。
部屋にいるのは政とウリエの2人っきり。
「この事は予想していたが、思ったよりも多いな」
喰種との協力関係の構築。喰種に対して、のっぴきならない恨みを持っている捜査官は多い。
そういった者たちがCCGを出ていくことは予想していた。
「敵に回るなら、容赦する必要はないがな」
いずれは旧多とオッガイとは戦うことになるだろう、なら敵に情けはかけられない。
「……」
押し黙るウリエ。CCGを出奔した中には、六月と晋三平がいる。
晋三平は、伯母の安浦清子のことで【黒山羊】のリーダー、ハイセ(カネキ)を憎悪し、逆に六月はハイセ(カネキ)に恋心を持っている。その恋しさゆえに、出て行った。
(戦うことになるのか、六月と晋三平……、俺はどうすればいい?)
もし六月と戦うことになれば、戦えるのか戦えないのか、どうなるか解らない。
どちらにせよ、六月に特別な感情を持っているウリエには辛い選択。
ライ、ジューゾーはお菓子を食べながら、お茶を飲んでいる。
「もうすぐ、ハイセに会えるのですね。聞きたいことは山ほどあります」
「本名は佐々木琲世ではなくて、金木研だと、メールに書いてあった」
佐々木琲世は記憶を失っているときに付けた名前。
「あ、そういえば、これからはカネキと呼ぶことになったって通達がありました」
会議の時は本人の希望でカネキと呼ぶことになったと上層部より、通達があった。
「ハイセでもカネキでも一緒、同じ人。違いはありませんです~」
美味しそうにお菓子を食べるジューゾー。
「僕たちはそうだけど、CCGの全員がそうじゃないからね」
それが、この先の不安要素。
地下、24区。
CCGの申し出に乗ることにした【黒山羊】はカネキ、ヨモ、ニシキ、月山、松前、ミザ、ナキ、平子、ハイルで会議。
「まず遠征班と防衛班を組織します」
カネキの案。話し合いに行く遠征班、24区に残る防衛班。
「CCGと【黒山羊】の合流は旧多にとっては、何としても阻止したいことでしよう。道中、襲撃がある可能性が高い、従って遠征班は戦力が必要です。かと言って、ここを手薄にするわけにもいきません」
遠征班と防衛班のメンバー選びは慎重を期す。
「勿論、僕はカネキくんに着いていくよ」
「習様が行くなら、私も参ります」
【黒山羊】のリーダーであるカネキは遠征班に加わるのは決定事項。それに着いていく月山と松前。
後のメンバーは……。
「後、ライには注意しなくてはなりません」
それを聞いたミザは、
「おい、ライは信頼できると言っていただろ」
確かにカネキも松前も、ライは信頼できると言っていた。
「ええ、ライは信頼できる人物ですが、同時に油断の出来ない人物でもあります」
何度か仕事もしたし、交流も深かったので、それなりにライの人物像を見ている。
「ライは他人の心理を読む術に長けています、それでいて決して自分の腹の内を他人には読ませません」
その事はCCGから来た、平子とハイルも感じ取っていること。
「ライは敵に回したら、この上なく恐ろしい相手、味方にすれば頼もしい人物でもある半面、油断の出来ない相手」
『コクリア』で高槻泉の言った“最後に忠告をしておこう、決して【皇】は敵に回すな”の台詞が思い出される。
「なるほど、交渉の相手としては有益であり、厄介いだね」
月山財閥を動かしていた観母を父親に持つ月山は、多少なりとも交渉事には通じている。
「ええ、慎重に事を進めましょう。この交渉は喰種の未来がかかっています」
出発前夜、24区で開かれるカネキとトーカの結婚式。日本式でもなく、西洋式でもない、独特のスタイル。
高台に民族衣装のような正装で寄り添う、カネキとトーカ。
すでに盛り上がっている面々、酔っぱらったヨモは普段の彼からは考えられないほどの乱痴気ぶり。
「夜もじ、今日は明るいね」
そんなヨモを見たシオ。
「酒は憂いの叩きだな」
酒は憂いの玉箒を間違っているナキ。
「アニキのペースに合わすなって」
吐きそうにンっている承正を窘める、ホオグロ。
いつも通り、黙って飲んでいる平子。
人として生まれ、嘉納により半喰種にされたカネキ、喰種として生まれたトーカ。2人は出会い、そして、今宵、結ばれた。
式の翌日、カネキはCCGとの話し合いに【黒山羊】を率いて地上へと赴く。
居残りメンバーの中にはトーカの姿もあり。彼女はカネキの子供を身籠っていた。
道を歩く、黒い帽子に黒いコート、片手には日本刀の一団。自称【本局特殊捜査官】、その正体は【V】、成熟した0番隊、旧多の手駒の1つ。
「どこへいくつもりかね」
キリンマスクの大きな男が立ち塞がる。1人だけじゃない、怪鳥のマスク、金色マスク、そして、
「CCGと【黒山羊】の会議の邪魔はさせない」
亜門鋼太朗は素顔。
「出来損ないが――」
刀を抜き、独特の型を取る【V】たち。
亜門に斬りかかる【V】、怪鳥のマスク、リオが羽赫を放つ。
このチームの中で、一番、ちっちゃいリオ。でも戦闘力は一番高い。
SSSレートの羽赫で全身を貫かれ【V】は1人が絶命。
しかし他の【V】に怯む様子は無し、リオに斬りかかった。
どしっと飛び出したキリンマスク、篠原が切りかかる。
【V】は振り下ろされた武器を日本刀で受け止めた。
篠原の手にした武器は鉈型のクインケ、《オニヤマダ》に似ているが、刃は超高周波振動。
重量と超高周波振動の刃が受け止めた日本刀ごと【V】を真っ二つ。
追撃を仕掛ける金色マスクのジェレミア、超高周波振動の剣を突き刺す。
亜門も大きなブレード型のクインケ、《クラ》と同じ形の超高周波振動の武器で戦う。
この中で、一番、弱いのは亜門。しかし技量と信念で、それを補う。
斬りかかってきた日本刀を赫子で受け止め、《クラ》で胴を薙ぐ。
亜門と篠原の武器は、彼らの使っていたクインケに似せて作られたもの。
見た目だけではなく、長さ重量も2人の注文通り。
【V】の連携は見事なではあった。だがリオたちの連携は、それを越える。
「全く骨の折れる仕事だわい、少しは年配者のことも考えろ」
【V】を片付け終えた篠原は嘆息、首をコキコキ鳴らす。
その時だった、物陰に隠れていた【V】が背後から斬りかかる。篠原や亜門たちが反応できないタイミングを狙っての攻撃。
途端、【V】の首にワイヤーの付いた苦無が絡まる。
「!」
ワイヤーを掴んだ咲世子が飛び降りてくる。反対に【V】の体が吊り上げられ、宙吊り、足をジタバタさせ、もがく。
咲世子がワイヤーをピンと弾く、首つりになっていた【V】が絶命。
「篠原殿、油断をなさらぬように」
ワイヤーを解くと、ドサッと【V】は落ちる。
「助かった、恩に着る」
丁寧に礼を述べる。
倒した【V】の遺体を確認するジェレミア。
「……変ですね」
浮かぶ疑問。
「何が?」
リオは首を傾げる。【V】を倒したのに、何が変なのか?
「襲撃するにしては戦力が不足しています」
CCGと【黒山羊】の会議を阻止するにしては、明らかに戦力が不足。
「それにオッガイが1人もいないのもおかしい」
亜門も同意。旧多の虎の子であるオッガイが1人もいないのはおかしすぎる。
これではまるで捨て駒。
「だとすれば、こいつら目的はCCGと【黒山羊】の会議の阻止ではないということか」
篠原の正確な分析、流石は特等。
「何を考えている旧多……」
篠原は、すでに動かなくなった【V】たちを見る。
東京ドームに集まるCCGと【黒山羊】。
CCGの代表は政、丸手、黒磐、ジューゾー、宇井、ライ、ウリエ。
【黒山羊】代表は月山、松前、ニシキ、万丈、ハイル、皆はマスクを被っている。
護衛のためのCCGの捜査官と【黒山羊】の喰種。捜査官の中には才子とシャオと髯丸の姿もある。
ハイルがマスクを被っていても宇井には誰なのか解った。自然に突っ張った宇井の顔が綻ぶ。
「見たところ、リーダーの姿が無いようだが」
今日の政は髪と髯を整え、ちゃんとスーツを着ている。
肝心なリーダーのカネキの姿が無い。会いたがっていたジューゾーは、どこかにいないかとキョロキョロ。
「“虫の知らせ”が働いてね、途中で引き返したんだよ。まさかとは思うが、騙し討ちなんかしてないだろうね」
代理を任された月山。
「僕はそんなことしないよ」
一歩、前に出るライ。
「いえ、ライ殿は信じておりますが、CCGはどうでしょう?」
松前は顔を隠すケープに触れる。マスクをしているのは、完全にCCGを信用していない証。
ふっと鼻で笑う政。
「今更、そんな騙し討ちをして、私たちにどんな得があると? 旧多を喜ばせるだけだ」
CCGと【黒山羊】が決裂して対立するのを、一番、喜ぶのは旧多。漁夫の利である。
ならカネキの“虫の知らせ”は取り越し苦労なのか?
「一つ、聞きたいことがある」
【黒山羊】たちを眺めるライ。
「ここへ来るまで、オッガイの襲撃は無かったのか?」
見たところ、戦闘があった形跡は見られない。
「ああ、襲撃はなくてね、こっちは拍子抜けしてしまったよ」
そう月山は答えた。襲撃に備え、兵を集めてきたのに無駄骨。
「おかしい」
「ああ、おかしい」
ライと政の意見が揃う。
ここへ来るまで、CCG側にも襲撃は無かった。旧多にしてみればCCGと【黒山羊】の合流は、邪魔以外の何物でもないはずなのに。
「そちらで、何か異変はありませんでしたか?」
24区で何か異変は無かったかと、ライが問う。
「異変、しいて言えば、捕虜を1人確保したぐらいかな。捜査官に追われていたのを助けて、地下に連れて来たんだがオッガイのスパイだった」
月山が答える。甲と名乗ったオッガイのスパイ、葉月ハジメのこと。
「そいつは抵抗して捕まったのか、それともあっさりと降伏したのか?」
ライの表情が険しいものに変わった。
「私たちが取り囲んだら、あったりと降伏しました」
ハイルが平子と0番隊たちと、一緒に取り囲んだら、あっさりと降伏。
「やられたな」
政は溜息を吐く。
「やられたって、どういう何ことだよ?」
状況を万丈は掴めない。
「敵の本拠地を見つけ出すため、よく使われる手だよ。スパイを潜入させる。そいつが本拠地の位置を知らせることが出来ればそれでOK。捕まっても仕掛けておいた発信機や盗聴器で仲間に場所を伝えることができる」
様々な知略にライは長けている。
「それはない! ちゃんとボディチェックはした」
月山自身もボディチェックに立ち会ったので確かなこと。怪しいものは何も見つからなかったはず。
「体の中までは、調べてはいないだろう」
政が言ったとき、月山も事態が掴め、サッと顔色が変わった。
何も衣服に仕掛ける必要はない、体の中にも発信機や盗聴器を仕掛けることはできる。
「カネキくん!」
慌てて戻ろうとする月山。
「止めたまえ」
それを止める政。
「行ったところで、すでに手遅れだ」
東京ドームから24区までは遠く、到底、間に合わない。
「じゃ、カネキくんを見捨てろというのか!」
間に合わないとは解っていても、居ても立っても居られない。『20区の梟討伐戦』の時のような思いは、もう二度とごめん。
「何も見捨てるとは言ってねぇ、ただな、焦って行っても事態は好転しない、悪化するだけだ。それに旧多のこと、足止めの部隊も用意しているだうさ。まぁー、捨て駒だろうが、冷静さを欠いた状態でぶつかりでもしたら、痛い目を見るのはこっちだぜ」
丸手も窘める。
24区の危機、自分たちの王の危機、動揺が喰種たちの間に広がる、見て取れるほどに。
「旧多はCCGと【黒山羊】の合流阻止よりも地下へ行くことを選択した。つまり、それだけのことを地下で旧多はやろうとしているんだ。でもね、僕たちは、それが“何か”を掴めてはいない」
ライもカネキとは親しい間柄、心配な気持ちを持っている。
「急いては事を仕損じる」
焦りは禄でもないことしか、生み出さないことを理解している。
「局へ戻るぞ」
唐突に出された政の指示。
カネキや24区の者たちを見捨てるのか?
旧多が地下で“何か”をやろうとして、其処へカネキが向かった。とても危険な状態。
カネキと近い関係にあったウリエ、才子も気が気じゃない。
喰種側だけでなく、捜査官側にも動揺が走る。
「旧多が何をやろうとしているかは知らんが、私たちのやることは変わらない。準備をする、各局の捜査官にも準備を急がせろ」
支持を受けた、丸手を初め捜査官たちは行動を開始。
月山たちの方を見るライ。
「おやおや、意外と早くにCCGと【黒山羊】の共同作戦が取られるみたいだね」
リオくんたちの出番が欲しかったので、足止め部隊と戦わせました。
ジューゾーが旧多に行っていないので、24区戦では代理が必要になります。